第2章 不安症は不安障害ともよばれます.特別な理由もなく漠然とした不安,極端な場合には恐怖の感情が生じることで,過剰な緊張,次いで行動の抑制が生じる疾病です.健常者の「心配」の程度とは比較にならないほどの強いインパクトがあり,冷静になることさえできず,自分の力ではそれがどうしても抑えられない状態となります.症状が治まった後に不安の内容を冷静に考えれば,どうしてそのような言動になったか当事者が理解できないことが多いことからも,論理思考や理性をコントロールする前頭前野機能と情動をコントロールする扁桃体機能の連携不全が原因と考えられています.緊張しやすい特徴があることから,性格が内向的,気が弱い,内気と思われがちですが,多くのケースで発症後にこのような性格がみられようになることが多く,発症前まではこのような特徴はなく,むしろ活動的・社交的であったというケースも少なくありません(発症すると別人のようだと言われることさえあるのです). 発症には何かしらのストレスとなる出来事がありますが,ストレスと感じる個体差があるため好発年齢はありません.ただ,社会生活を始めたことで生じる様々な社会ストレスに加えて,予期しない高負荷やライフイベントをきっかけに発症するケースが目立ちます.不安症状によって生活に支障が生じるケースも少なくありません. 具体的には普段の生活のなかで,不安や恐怖を感じる必要など全く何もない場面で,不安・緊張・恐怖を感じ,その反応として動悸や発汗,ひどい場代表的なメンタル障害302不安症不安症・パニック症・強迫症
元のページ ../index.html#2