B●ドプラエコーの指標:左室機能78図1 組織ドプラによる僧帽弁弁輪移動速度側壁側のほうが中隔側より各速度は大きい.を計測していることもあり,注意が必要です.また,片方のみで計測しても記載していない例もあるので注意が必要です(不明な場合は検査部門に確認しましょう). 一般に,e’波速度は側壁側のほうが速度が大きく,中隔側で8 cm/s以上,側壁側で10 cm/s以上を正常と考えます.弛緩能が低いほどe’波速度は低下し,E/Aと異なり直線的に低下します.したがって,E/Aのように偽正常型などで悩むことはありません.心筋そのものの動きをみているので,心外膜疾患などでは左室(LV)としての拡張能は低下していても,心筋に病変が波及していない場合はe’波速度は保たれます. ただし,e’波速度の計測では超音波の方向などにより誤差が生じる可能性があり,e’波速度が正常以下であるとしても,すぐに左室拡張障害とはいえません.E/Aなども含めた複数の指標から総合的に判断を行う必要があり,Part 2-B-09「心エコーによる左室拡張障害の診断」(p. 80~88)のフローチャートによる左室拡張障害の診断はその一例です. 左室流入血流速度波形のE波速度Eをe’波速度e’で割ったE/e’は左室拡張末期圧と相関し,非侵襲的な左室拡張末期圧の指標としてよく使われます(左室拡張末期圧は左室充満圧ともよばれます).中隔と側壁のE/e’の平均を指標とし,平均E/e’が8未満では左室拡張末期圧(≒肺動脈楔入圧E/e’と左室拡張末期圧
元のページ ../index.html#2