Column2 心エコーの指標これだけは理解しようPart7908●組織ドプラ指標:e’,E/e’〈PCWP〉)の上昇はなく,14より大きければ左室拡張末期圧が上昇しているとされます.8~14の間はグレーゾーンであり,ほかの指標と合わせて考えます.中隔側と側壁側の2か所の平均を取るのが基本ですが,中隔側のE/e’のみを使うときは15,側壁のみではE/e’ 13より大きい場合を左室拡張末期圧上昇と考えます. E/e’は血行動態を考えるうえで非常に有用で,e’波速度単独よりも広く使われます.ただし,E波,e’波が正しく計測されていない場合には不正確になるので,E/e’の値を盲信するのは危険です.また,僧帽弁の変性例や弁輪石灰化(MAC)が存在する症例,僧帽弁閉鎖不全症(MR),僧帽弁手術後やペースメーカー挿入例などでは左室拡張末期圧上昇を正しく反映しないことがあります.また,正常心ではE/e’と左室拡張末期圧はあまり相関しないともいわれています.このような限界があることを知ったうえで,E/e’を正しく評価することで病態を評価することができます.なお心房細動症例でもE/e’の高値は左室拡張末期圧を示すと考えられます. なお,a’波速度は心房の収縮機能を示唆するものと考えられていますが,臨床的にはあまり用いられません.収縮期にはs’波とよばれるe’波,a’波と逆方向の速度波形を認め,長軸方向ストレインと同じく左室の心尖方向への収縮を示します.ただし,e’波速度と同様に心臓と超音波の方向の間の角度に影響を受けるため左室長軸ストレイン(GLS)のほうがすぐれています.e’波とa’波の読み方・ 僧帽弁弁輪移動速度におけるe波,a波という名前は,左室流入波形と同じく,それぞれ拡張早期(early relaxation),心房(atrial)に由来します.左室流入波形のE波,A波と区別するために“ ’(アポストロフィー)”を付け,それぞれ“イープライム”,“エープライム”と読みます.・ E/e’は“イーオーバーイープライム”,または“イーバーイープライム”と読みます.a’波速度とs’波速度
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