医療系従事者や学生を対象とした統計学の入門書.特徴:①初学者にも基本的な統計手法がきちんと理解できる丁寧な解説,豊富な図表,②データによって統計手法を選択できるフローチャートを掲載,③研究を始める前の注意点や研究発表のコツも掲載,④ホームページ上のデータを使って統計手法を学べる.
※弊社ホームページから,本書に掲載されているサンプルデータや問題の解答などのデータをダウンロードできます.
ページの先頭へ戻る
目次
●医療系のためのやさしい統計学入門●
…………………………………………………………………………………………………………………………
はじめに
統計手法の選び方
データ(変数)にあった統計手法を選ぶためのフローチャート
本書内で扱うサンプルデータ
…………………………………………………………………………………………………………………………
I章 研究を始める前に知っておきたいこと
1.研究のアウトライン 山縣然太朗
A はじめに / B EBM / C 因果関係 / D 根拠のレベル
2.情報収集(文献検索) 小笹晃太郎
A 情報収集の目的 / B 情報源 / C 2次資料の利用(キーワードと検索式) / D 文献の収集
3.研究における倫理的配慮 尾島俊之
A なぜ倫理的配慮が必要なのでしょうか / B 個人情報保護法と疫学研究倫理指 / C 説明と同意
/ D 倫理審査 / E 個人情報の安全管理
Ⅱ章 統計手法の基礎について勉強しよう ~Excelでできることを中心に~
1.代表値,ばらつき 定金敦子,中村好一
A データの種類 / B 質的データの記述統計 / C 数量データの記述統計
2.記述統計としての相関係数,1次回帰,オッズ比 栗山進一
A 散布図 / B 相関係数 / C 1次回帰 / D オッズ比
3.統計学的推論(推定と検定) 横川博英
A 推定と検定 / B 統計学的推定 / C 統計学的検定
4.平均の差(推定と検定) 鈴木孝太
A 平均の差における推定 / B 平均の差における検定
5.割合の差(推定と検定) 早坂信哉,尾島俊之
A 1つの母集団の割合 / B 2群の割合の差
6.相関係数と1次回帰係数(推定と検定) 西 信雄
A 相関係数 / B 1次回帰係数 / C これだけはやってはいけない
Ⅲ章 使えなくても理解できるようにしておこう ~生兵法はケガのもと,専門家と組んで解析したい~
1.交絡因子 藤野善久
A 交絡とは / B 交絡因子の制御方法 / C 仮説との対応
2.層化分析(マンテル・ヘンツェル法) 定金敦子,中村好一
A 層化とは / B マンテル・ヘンツェル法
3.ロジスティック解析 栗山進一
A ロジスティック解析の基礎概念 / B 前向きコホート研究・臨床研究での使用
/ C 症例対照研究・横断研究での使用
4.生存分析 横川博英
A カプラン・マイヤー法 / B 2群の生存確率関数の差の検定 C コックス回帰分析
5.分散分析,共分散分析 鈴木孝太
A 分散分析 / B 共分散分析
6.因子分析 尾島俊之
A 主成分分析 / B 因子分析 / C 主成分分析と因子分析の違い
7.一致性の検討(カッパ統計量) 西 信雄
A カッパ統計量の求め方 / B 重みづけカッパ統計量の求め方
8.ノンパラメトリック解析 松田晋哉
A マン・ホイットニーのU検定(独立2群間の検定)
/ B ウィルコクソンの符号つき順位和検定(対応のある2群間の検定)
/ C クラスカル・ワリス検定(独立多群間の検定) / D ノンパラメトリック解析を行う際の留意点
Ⅳ章 研究結果を公表してみよう
1.図表の描き方(グラフ,ヒストグラム,チャート) 安村誠司,山崎幸子
A 図と表 / B 図 / C 表
2.学会発表(演題申し込みから発表まで) 辻 一郎
A どの学会で発表するか / B 演題名を決める / C 共同演者を決める
/ D ポスター発表にするか口演発表にするか / E 抄録の作成 / F 発表資料の作成
/ G 予行演習 / H 発表そして質疑応答 / I 学会発表後に行うべきこと
3.論文投稿(執筆から校正まで) 中村好一
A 論文の主要部分の構成 / B 論文のその他の部分 / C 論文の順序 / D 著者を誰にするか
/ E 投稿する雑誌をどれにするか / F 論文完成から投稿まで / G 投稿
/ H 編集委員会とのやりとり / I 論文採用後の対応 / J 論文刊行後
Ⅴ章 専門家との共同研究
専門家と共同研究を行うにはどうすればよいか 松田晋哉
A 研究計画の段階から相談する / B きちんとした仮説をもつ / C 問題の構造を図示する
/ D 研究に正直であること / E データの質に責任をもとう
/ F 協力してくれた専門家には敬意を払う
/ G どこに行けば共同研究をしてくれる統計学専門家・疫学専門家に出会えるのか
…………………………………………………………………………………………………………………………
問題の解答
Excel関数での決まりごと
本書で用いるExcel関数一覧
索引
…………………………………………………………………………………………………………………………
○column○
タスキギー研究
動物実験の倫理
職員の学術研究のための個人情報ファイル
守秘義務
記名調査と無記名調査
小数点以下について
常用数字と自然対数
正規分布
幾何標準偏差
相関係数と偏差平方和,偏差積和
等分散かどうか
ピボットテーブル
マクネマー検定
ロジスティックモデルにおける説明変数間の相関
ロジスティックモデルと比例ハザードモデル
正規分布かどうかの判断
コクラン・アーミテージ検定とマンテル検定
自分のバイブルをもとう
文献検索におけるヒットを常に意識する
校正は慎重に
統計パッケージの選択
ページの先頭へ戻る
序文
はじめに
先に株式会社 診断と治療社から刊行した「論文を正しく読み書くためのやさしい統計学」は主として医学研究者や医師をターゲットに執筆したが,結構評判がよいらしい.そこで今度は,前書の姉妹版として,医療系従事者(コメディカルスタッフ)や学生を対象とした本書「医療系のためのやさしい統計学入門」を企画した.
統計学は難しいようで,基本をきちんと理解すればそれほど難解なものではない.しかしながら,何となくとっつきにくい印象を与えているのも事実である.その背景の1つに星の数ほどある難解な統計手法があると思う.しかし,通常使用する統計手法はその一部に限定されている.そしてその多くはExcelで何とかなるものである.本書ではスタンダードな手法のみしか紹介していないし,そもそも本書の執筆者のなかには,難解な統計手法を作り続けている「統計オタク」はいない(私が選んだのだから!).本書のⅡ章とⅢ章には明らかな違いがある.Ⅱ章で紹介しているものは「研究を行うからには,少なくともこの程度のことは使いこなしてほしい.使いこなせなくても『そのことは知っているよ』という程度でないと,研究は難しいかもしれない」というものである.これに対してⅢ章は,自分では使えなくても構わないから,たとえば論文を読んでいるときに,「そういえばこの手法はあの世紀の名著(この本のことですよ!)に書いてあったな.では,もう一度読んでみよう」程度のことでもよいのかもしれないものを紹介した. 医療系従事者の場合,日常業務を行うなかで抱いた「現状を改善したい」という思いが研究につながるのだが,一方で「研究」や「学会発表」,まして「論文執筆」というと大上段にも構えているようで,興味はありつつも,多少「引いている」という状況が見え隠れする.このような状況を少しでも打破することができれば,という思いから,Ⅰ章とⅣ章,Ⅴ章を設けた.思っているほど難しくはないんだ,という印象をもっていただければ幸甚である. 本書を何とか刊行にこぎつけることができたのは,迅速・丁寧に執筆・校正作業に取り組んでくれた執筆者と,株式会社 診断と治療社編集部の土橋,松本,両氏の尽力のおかげである.心から感謝する.
2009年8月
中村好一