子どもの偏食相談スキルアップ
定価:3,960円(税込)
ゴーシェ病(Gaucher disease)は,グルコセレブロシダーゼ活性の低下により,その基質であるグルコセレブロシドが細網内皮系に蓄積するために発症するライソゾーム病(lysosomal storage disease)である.
1882年にPhillipe Gaucher氏が初めて臨床例を報告し,その後,蓄積物質の同定,欠損酵素の証明,遺伝子の単離,治療法の開発が行なわれ,現在に至っている.ゴーシェ病は神経症状の有無と重症度により1型(慢性非神経型),2型(急性神経型),3型(亜急性神経型)の3つの病型に分類される.さらに,同じ病型においても臨床表現型に差異があったり,亜型が存在したりと臨床的異質性の強い疾患である.これら臨床的異質性については,遺伝子型/表現型の解析によりその一部が明らかにされている.治療法については,1990年に酵素補充療法(enzyme replacement therapy;ERT)が開発されたことで,患者さんの予後が改善した.しかしながら,ERTにも課題が存在する.造血幹細胞移植も一部の患者さんに行われている.最近では基質合成抑制療法(substrate reduction therapy;SRT)が日本でも認可され,実地臨床の場で用いられるようになった.さらに神経型ゴーシェ病に対する化学的シャペロン療法のヒト臨床治験が進んでいる.
このように,ゴーシェ病は歴史ある疾患であるが,最近の診断・治療の進歩が目覚ましい疾患である.しかしながら,ゴーシェ病に関する症例集・ガイドブックなどは刊行されているものの,ゴーシェ病の歴史・生化学・遺伝子などの基本知識,臨床的異質性に関する視点からの症例報告のまとめ,生化学診断・遺伝子診断の進歩,治療法の最新情報などを包括的にまとめた書籍は存在しなかった.そこで今回,この1冊を読めばゴーシェ病のすべてがわかるような成書を企画した.本書を通じ,ゴーシェ病に対する理解が深まり,適切な診断・治療がなされ,その結果,患者さんの予後やQOLが改善することを切に願っている.
末筆になりましたが,本書の出版にあたり,お忙しい中,編集と執筆の労をお取りいただいた先生方,ならびに編集・制作にご尽力いただいた診断と治療社の方々に感謝申し上げます.
2016年7月吉日
井田博幸
東京慈恵会医科大学小児科 教授
衞藤義勝
一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療研究センター センター長/東京慈恵会医科大学 名誉教授
巻頭カラー口絵
序 文 井田博幸,衞藤義勝
編集・執筆者一覧
A ゴーシェ病の歴史
1 ゴーシェ病の歴史 衞藤義勝
B 病因と病態
1 病態生理 衞藤義勝
2 生化学 檜垣克美,難波栄二
3 遺伝子変異 井田博幸
4 分子生物学的病態 大橋十也
C 臨床症状
1 総 論 酒井規夫
2 1型ゴーシェ病 坪井一哉
3 2型ゴーシェ病 若林太一
4 3型ゴーシェ病 成田 綾
5 新生児型ゴーシェ病 小林正久
6 進行性ミオクローヌスてんかん(PME)を呈するゴーシェ病 重松秀夫
7 若年性パーキンソン病を呈するゴーシェ病 河野 智
8 3c型ゴーシェ病 平岩里佳,前垣義弘
9 腹腔内リンパ節腫大と石灰化,難聴,腸管浮腫を呈したゴーシェ病
本郷輝明,平野恵子,谷岡書彦
D 診 断
1 臨床診断 髙柳正樹
2 生化学的診断 苛原 香,酒井規夫
3 遺伝子診断 難波栄二,足立香織
4 出生前診断 酒井規夫
5 新生児マススクリーニング 奥山虎之
E 治 療
1 酵素補充療法(ERT) 小須賀基通
2 基質合成抑制療法(SRT) 井田博幸
3 シャペロン療法 成田 綾
4 造血幹細胞移植 加藤俊一
5 遺伝子治療 大橋十也
6 整形外科的治療 阿部哲士
7 対症療法―呼吸管理,栄養管理,痙攣コントロール 成田 綾
F 遺伝カウンセリング
1 遺伝カウンセリング 奥山虎之
G 附 録
1 診断施設 横井貴之
2 患者会 小野寺 綾,日本ゴーシェ病の会会員一同
和文索引
欧文-数字索引