株式会社 診断と治療社

多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2025

2015年に刊行された『多発性筋炎・皮膚筋炎治療ガイドライン』,2020年に公開された暫定版診療ガイドラインの,待望の最新版が発刊!今回の改訂では,若年性を含む内容となり,若年から成人までを対象に診断・治療のクリニカルクエスチョン(CQ)を網羅.CQは,最新のエビデンスに基づき内容を更新,脳神経内科,膠原病・リウマチ内科,小児科,皮膚科の専門家による議論を経て,新たなCQも作成されました.本疾患にかかわる方必携の一冊です!
定価:
4,400円(本体価格 4,000円+税)
発行日:
2025/03/03
ISBN:
9784787826015
頁:
156頁
判型:
B5
製本:
並製
在庫:
在庫あり
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序文

刊行によせて
厚生労働省「自己免疫疾患に関する調査研究」班において,2020年に小児と成人を統合した新しい診断基準と新しい診療ガイドラインが公開された.それを基盤として,不十分であった診断領域についても充実させることで,診断から治療までを包括的に含めた完全版ガイドラインとして「多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2025」がこのたび刊行されることとなった.
多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)は,希少疾患であり,多様な病像を呈するため,多診療科にわたる横断的な診療が必要であること,さらには根治的療法がいまだ確立していないことから,その診断および治療において標準化された指針が必要とされてきた.
2020年の「暫定版」では,診断基準について,若年者と成人の統合および最近の保険収載された検査項目を含むものにアップデートされたが,昨今の診療ガイドラインでは,可能な範囲でよりエビデンスに基づいた客観的な内容が必要とされる.しかしながら,希少疾患である本症の領域では必ずしもエビデンスレベルの高い論文が豊富であるとはいえないため,エキスパートオピニオンとして疾患概念,診断,治療などの詳細な内容も扱っているのが,本ガイドラインの特徴の1つである.
本ガイドラインでは,若年性PM/DMに関するガイドラインを包含して,若年者から成人まで,診断から治療までクリニカルクエスチョン(CQ)を漏れなく扱う包括的な内容となるよう,いろいろな工夫が施されている.具体的には,全体のデザインとして,2020年の暫定版においてシステマティックレビューを行ったCQはそのまま残しながら,新しいエビデンスを検索してアップデートされている.これらに関しては,PubMed,Cochrane Library,医中誌Webをデータベースとした文献検索を行ったうえで,システマティックレビューを施行し,推奨文・解説文の改訂を行っている.一方で,従来の診療に重要なCQとして含められていなかった内容で,新たに作成すべきものを,脳神経内科,膠原病・リウマチ内科,小児科,皮膚科のそれぞれの領域で討議し,リストアップしたうえで横断的に議論を尽くし取捨選択を行って作成したと聞いている.
発刊に関して多大なご尽力をなさった藤本先生をはじめてとして,本ガイドラインの作成にかかわられた皆様のご努力に心から敬意を表したい.また,本ガイドラインがPM/DMの診療現場で利活用されることを切に願っている.

2025年1月
厚生労働省「自己免疫疾患に関する調査研究」班 前・研究代表
東京科学大学生涯免疫医療実装講座/
聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科
森 雅亮



刊行によせて
多発性筋炎/皮膚筋炎は代表的な全身性自己免疫疾患の1つであり,その病変は筋組織に限定されないため,多くの診療科がその診療にかかわる必要がある.しかも,この疾患のフェノタイプや重症度に多様性があり,グルココルチコイドや免疫抑制薬を使用しても寛解に至らない例や,たとえ寛解に入っても容易に再燃する症例も多く,日常診療では本疾患が文字通り「難病」であることをしばしば実感する.その多様性のため,「多発性筋炎/皮膚筋炎」としてひとくくりにした治療の標準化は困難とされてきた.
厚生労働科学研究費補助金「自己免疫疾患に関する調査研究」班の多発性筋炎・皮膚筋炎分科会は複数の診療科医師で構成され,本疾患での適正な診療について横断的に議論を積み重ねてきた.そして2020年,「多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン 暫定版」を公開し,これまでの状況に一石を投じた.この暫定版を基盤にして,さらにこの疾患に関連する学会やパブリックコメントによる議論を加えて刊行に至ったのが本書「多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2025」である.本ガイドラインは,PubMed,Cochrane Libraryなど,複数のデータベースを用いて多発性筋炎/皮膚筋炎に関する最新の情報を検索し,基本的にはエビデンスに基づいた推奨文が作成されている.暫定版に含まれるシステマティックレビューを行ったクリニカルクエスチョン(CQ)については,新たに文献検索を行い,内容が更新されている.一方で,診療に必要なCQに対してエビデンスが不足している場合は,ナラティブなレビューを行い,実臨床に必要な情報をエキスパートオピニオンとしての推奨文のかたちで記載している.
本ガイドラインのまとめにあたり,脳神経内科,皮膚科,膠原病・リウマチ内科,小児科など,さまざまな分野の専門家が議論して共同作業で推奨文や解説文を作成しているため,本ガイドラインを参照すれば総合的な視点からの診療が期待できるはずである.さらに,小児発症例にも適用できるよう,随所に小児患者へのアセスメントについて触れられている.
多発性筋炎/皮膚筋炎の診療にかかわる本邦のエキスパートが総力をあげてまとめあげた本ガイドラインが,本疾患の標準治療として日常診療に生かされることを願ってやまない.

2025年1月
厚生労働省「自己免疫疾患に関する調査研究」班 研究代表
北海道大学大学院医学研究院免疫・代謝内科学教室
渥美達也



序 文
厚生労働科学研究費補助金「自己免疫疾患に関する調査研究」班による「多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン」は,2011年に当時の住田孝之班長と上阪 等分科会長のもとで作成が開始され,2015年に「治療ガイドライン」としてはじめて発刊された.当時,本邦における診療ガイドラインはまだ多くなく,筋炎診療も診療科によって少しずつ異なっているという実態があった.2015年版治療ガイドライン作成と研究班内の協力体制を通じた診療科横断的なコンセンサスの確立により,本邦の筋炎診療は飛躍的に向上したといっても過言ではない.
2015年版ガイドラインは,治療方針の決定に重点を置く23のCQで構成される内容であった.その後の改訂にあたって,診断から治療に至るまでの包括的な「診療ガイドライン」の作成を目指すことになり,2020年に当時の森 雅亮班長のご指導のもとで完成を迎えた.このガイドラインでは診断に関する総論を巻頭に掲載するスタイルを採用したが,作成中の委員会内での議論にて,総論の内容も個別のCQとして作成した方がわかりやすいという方針となり,このガイドラインをたたき台としてさらに大幅な増補改訂作業を行うこととなった.しかし改訂にはさらに数年を要すると推測されたため,少しでも早くアップデートされたガイドラインを臨床現場にお届けすべく,「診療ガイドライン2020年暫定版」として研究班のホームページ上で全文を公開した.
今回,森 雅亮前班長と渥美達也班長のご指導のもと,膨大な改訂作業を経て,「多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2025」として刊行される運びとなった.この2025年版では,2020年暫定版の27個のCQを46個へと大幅に増加し,小児から成人までを対象とした統一的なガイドラインとして,診断,検査,治療を包括的にカバーする内容となっている.
本ガイドラインの刊行にあたり,前研究代表の森 雅亮先生,現研究代表の渥美達也先生をはじめ,ガイドライン作成当初からご指導いただいた住田孝之先生,上阪 等先生,ガイドラインのご承認をいただいた日本小児リウマチ学会,日本神経学会,日本皮膚科学会,ならびに多大なご指導をいただいた日本リウマチ学会の関係者の皆様に深く感謝申し上げる.また,作成委員会の諸先生方にはエビデンスの収集や執筆,討論に多大な時間と労力を割いていただいたことに心より御礼申し上げる.さらに,2020年暫定版では筑波大学皮膚科の沖山奈緒子先生(現東京科学大学),2025年版では大阪大学皮膚科の植田郁子先生に,事務局として多大な編集業務を担っていただいたことに特に感謝したい.書籍の出版にご尽力いただいた診断と治療社の土橋幸代さん,島田つかささんにも感謝の意を表したい.
本ガイドラインが筋炎診療にかかわる医療従事者にとって有用な指針となり,患者一人ひとりの生活の質向上に寄与することを願っている.

2025年1月
厚生労働省「自己免疫疾患に関する調査研究」班 多発性筋炎・皮膚筋炎分科会長
大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学教室
藤本 学

目次

刊行によせて 森 雅亮
刊行によせて 渥美達也
序 文 藤本 学
執筆者一覧
CQ・推奨一覧
略語一覧

第1章 作成組織

第2章 スコープ
1 診断基準
2 診療ガイドラインがカバーする内容に関する事項
3 システマティックレビューに関する事項
4 推奨作成から最終化,公開までに関する事項

第3章 重要なクリニカルクエスチョン
CQ1 PM/DMはどのように分類されるか?【小児に関する内容を含む】
CQ2 筋力評価はPM/DMの診療に有用か?【小児に関する内容を含む】
CQ3 どのような筋力低下がみられた場合にPM/DMを疑うか?
CQ4 PM/DMの診療に有用な血液検査は何か?
CQ5 PM/DMの診療に有用な画像検査は何か?
CQ6 PM/DMの診療に筋電図検査は有用か?
CQ7 PM/DMを示唆する重要な筋電図所見は何か?
CQ8 PM/DMの診療に筋生検は有用か?
CQ9 PM/DMを示唆する重要な筋病理所見は何か?
CQ10 PM/DMの診断に有用な皮膚病変は何か?
CQ11 DMの皮膚病変の生検は有用か?
CQ12 PM/DMの診療における皮膚病変評価ツールは何か?【小児に関する内容を含む】
CQ13 自己抗体はPM/DMの診断および病勢評価に有用な指標となるか?【小児に関する内容を含む】
CQ14 PM/DMの重要な鑑別疾患は何か?
CQ14-1 膠原病内科
CQ14-2 脳神経内科
CQ14-3 皮膚科
CQ14-4 小児科【小児に関する内容を含む】
CQ15 PM/DMによる筋力低下とステロイドミオパチーによる筋力低下は臨床的にあるいは何らかの検査(血液,EMG,MRI,筋生検など)で鑑別可能か?
CQ16 PM/DMはどのような機能予後や生命予後をたどるか?【小児に関する内容を含む】
CQ17 筋力低下の機能予後や治療反応性を予測できる臨床症状や検査は何か?【小児に関する内容を含む】
CQ18 治療強化の検討を要する筋炎再燃の指標は何か?【小児に関する内容を含む】
CQ19 血清CK値と筋力のどちらが筋炎の病勢を反映するか?【小児に関する内容を含む】
CQ20 PM/DMに合併する間質性肺疾患の診断に画像診断,血液検査,呼吸機能検査,気管支鏡検査,肺生検は有用か?
CQ21 間質性肺疾患(急性/亜急性,慢性)の発症および予後を予測できる因子は何か?
CQ22 PM/DMにみられる筋症状,皮膚症状,間質性肺疾患以外の全身症状には何があるか?
CQ23 PM/DMに合併する悪性腫瘍の検索はどのように行うか?
CQ24 JPM/JDM患者の成人期合併症は何か?【小児に関する内容を含む】
CQ25 PM/DM治療の第一選択薬は何か?【小児に関する内容を含む】
CQ26 妥当な副腎皮質ステロイドの初期投与量はいくらか?【小児に関する内容を含む】
CQ27 副腎皮質ステロイドによる治療によって,治療前に比べて,いったん萎縮した筋が回復することはあるか?
CQ28 寛解後に副腎皮質ステロイドを中止することが可能か?【小児に関する内容を含む】
CQ29 免疫抑制薬の併用は,どのような症例で検討すべきか?【小児に関する内容を含む】
CQ30 副腎皮質ステロイドの早期減量に免疫抑制薬の併用は有用か?【小児に関する内容を含む】
CQ31 副腎皮質ステロイド以外に用いる免疫抑制薬は何か?【小児に関する内容を含む】
CQ32 治療抵抗性の症例では大量免疫グロブリン静注療法による治療を考慮すべきか?【小児に関する内容を含む】
CQ33 筋炎再燃の場合に選択される治療方法は何か?【小児に関する内容を含む】
CQ34 間質性肺疾患を副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬で治療する場合に日和見感染症対策は必要か?
CQ35 治療早期からリハビリテーションは有効か?【小児に関する内容を含む】
CQ36 慢性期の筋炎患者の筋力低下はリハビリテーションで回復するか?【小児に関する内容を含む】
CQ37 嚥下障害を伴う場合の治療法は何か?【小児に関する内容を含む】
CQ38 PM/DMに合併する間質性肺疾患(ILD)に対して,寛解導入治療として副腎皮質ステロイドおよび各種免疫抑制薬・血液浄化療法は有用か?【小児に関する内容を含む】
CQ39 心筋障害が合併する場合の治療法は何か?
CQ40 皮膚症状のみのDM患者や皮膚症状のみが遷延したDM患者の治療法は何か?【小児に関する内容を含む】
CQ41 DM患者の石灰沈着に対する治療法は何か?【小児に関する内容を含む】
CQ42 悪性腫瘍合併筋炎では,悪性腫瘍の治療とともに筋炎に対する治療を行うべきか?

第4章 システマティックレビュー
SR-CQ1 成人のPM/DMの筋症候に対して,寛解導入治療として副腎皮質ステロイドおよび各種免疫抑制薬,JAK阻害薬,生物学的製剤は有用か?【小児に関する内容を含む】
SR-CQ2 成人のPM/DMに合併する間質性肺疾患に対して,寛解導入治療として副腎皮質ステロイドおよび各種免疫抑制薬,JAK阻害薬,生物学的製剤,抗線維化薬は有用か?
SR-CQ3 成人のPM/DMに伴う筋症候に対して,副腎皮質ステロイドに大量免疫グロブリン静注療法を追加することは有用か?
SR-CQ4 小児のPM/DMの筋症候に対して,寛解導入治療として副腎皮質ステロイドおよび各種免疫抑制薬,JAK阻害薬,生物学的製剤は有用か?【小児に関する内容を含む】

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