株式会社 診断と治療社

小児の咳嗽診療ガイドライン2025

小児の咳嗽疾患に対する診断・治療ガイドラインが5年ぶりに改訂.咳嗽の原因を年齢別に,代表的疾患を重点的に解説し,巻頭フローチャートからすぐ確認したい疾患へ読み進められる仕様はそのまま,コロナ禍を経て求められる情報へアップデート.CQの追加,RSウイルスや過敏性肺炎,好酸球性細気管支炎等を新たに取り上げ,他学会や患者会による評価を充実させた.小児呼吸器患者を診療するすべての医師にご活用いただきたい一冊.
定価:
4,620円(本体価格 4,200円+税)
発行日:
2025/04/24
ISBN:
9784787826411
頁:
204頁
判型:
B5
製本:
並製
在庫:
在庫あり
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序文

刊行にあたって

日本小児呼吸器学会が「小児の咳嗽診療ガイドライン」の初版を刊行したのは,2014年4月のことです.この初版は,小児科領域における咳嗽の診療に関する包括的な指針として,一般診療において重要な役割を果たしてきました.咳嗽はその原因が極めて多様であるため,各疾患に特化したガイドラインとは異なるアプローチが必要です.そのため,咳嗽の性状や随伴症状などの特徴に基づいて診断を絞り込む手順をフローチャート形式で提示し,各種疾患に関する最新の診断および治療方法について詳細に解説する方向でまとめられました.この初版では,咳嗽の疫学,病態生理,診断に必要な検査,治療薬や理学療法に関する情報も盛り込み,実践的な診療の手引きとして使用されてきました.その後も,ガイドラインの改訂作業は継続的に進められ,2020年の改訂では,従来の内容を発展的に継承しつつ,特に治療法に焦点を当てた改訂が行われました.この過程では,代表的なクリニカルクエスチョン(CQ)の選定のために既存のシステマティックレビュー(SR)が精査され,質の高いレビューを基にして,その後の最新研究成果も考慮に入れたエビデンスレベルに基づく治療の推奨が提示されました.この方法には,日本医療機能評価機構の医療情報サービスMindsが提案する『診療ガイドライン作成の手引き』に準拠したガイドラインになっています.また,改訂作業には呼吸器専門の若手医師も参加し,日本呼吸器学会,日本小児耳鼻咽喉科学会,日本外来小児科学会などの外部委員による評価や意見も反映させました.
今回の改訂では,改訂後5年が経過して,従来の8つのCQについて再検討を行うとともに,新たに選定された4つのCQについても詳細に検討しました.さらに,各章の記載内容についても最新の文献を参照し,適切にアップデートされています.外部委員として新たに日本咳嗽学会や患者会にもご意見を伺いました.『咳嗽』は一般小児科診療において最も頻繁に遭遇し,特に長引く咳嗽は,その適切な鑑別による治療が難しいことは広く認識されています.この課題に対して適切な診療を普及させることが本学会の重要な使命のひとつであると考えています.そこで,本ガイドライン改訂2025が小児の咳嗽を診る全ての医師にとって,少しでもお役にたつことを心より願っております.
最後に,本ガイドラインの作成に際し,多大なご尽力を賜りましたすべての方々に,深謝申し上げます.

2025年3月

『小児の咳嗽診療ガイドライン2025』
監修 吉原重美
高瀬真人

目次

急性咳嗽の鑑別診断フローチャート ―経過が3週未満の咳嗽―
遷延性咳嗽の鑑別診断フローチャート ―3週以上8週未満続く咳嗽― 
慢性咳嗽の鑑別診断フローチャート ―8週以上続く咳嗽― 
救急外来でみる咳嗽のフローチャート 
カラー口絵 

刊行にあたって 
日本小児呼吸器学会「小児の咳嗽診療ガイドライン」作成委員会 
作成にあたって 


Part.Ⅰ CQ篇
 CQ-1 小児の長引く咳嗽に抗菌薬を推奨するか? 
 CQ-2 小児の長引く咳嗽にβ2 刺激薬吸入を推奨するか? 
 CQ-3 小児の長引く咳嗽にヒスタミンH1受容体拮抗薬を推奨するか? 
 CQ-4 小児の長引く咳嗽に吸入ステロイド薬(ICS)を推奨するか? 
 CQ-5 小児の長引く咳嗽にロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)を推奨するか? 
 CQ-6 小児の長引く咳嗽にプロトンポンプ阻害薬(PPI)治療を推奨するか? 
 CQ-7 小児の急性気管支炎の咳嗽に経口β2 刺激薬を推奨するか? 
 CQ-8 小児の後鼻漏症候群による咳嗽に推奨できる薬剤はあるか? 
 CQ-9 小児の急性咳嗽に中枢性鎮咳薬を推奨するか? 
 CQ-10 小児の鼻汁を伴う咳嗽に鼻処置(鼻汁吸引・鼻腔洗浄)を推奨するか? 
 CQ-11 心因性咳嗽と診断された小児に対して心理療法を推奨するか? 
 CQ-12 咳喘息と診断された小児に対してICSによる治療を推奨するか? 


Part.Ⅱ 解説篇
第1章 咳嗽の概念,病態生理,評価法
 A.概念・分類 
 B.病態生理 
 C.咳嗽の評価法 

第2章 咳嗽の疫学
 A.総 論 
 B.海外との比較 
 C.成人との比較 

第3章 咳嗽の診断
 A.問 診(医療面接) 
 B.咳嗽患者の身体所見 
 C.咳嗽患者の検査所見
  1 血液・感染検査 
  2 生理学的検査 
  3 画像検査 
 D.鑑別診断(年齢による咳嗽の原因疾患の特徴) 
 E.確定診断の進め方
  1 急性咳嗽のフローチャート ―経過が3 週未満の咳嗽― 
  2 遷延性咳嗽のフローチャート ―3 週以上8 週未満続く咳嗽― 
  3 慢性咳嗽のフローチャート ―8 週以上続く咳嗽― 
  4 救急医療の必要な咳嗽フローチャート 

第4章 咳嗽の治療
 A.治療の進め方 
 B.薬物による治療
  1 中枢性鎮咳薬 
  2 抗菌薬 
  3 喀痰調整薬 
  4 β2刺激薬 
  5 副腎皮質ステロイド
  6 ロイコトリエン受容体拮抗薬 
  7 ヒスタミンH1受容体拮抗薬 
  8 ヒスタミンH2受容体拮抗薬とプロトンポンプ阻害薬 
  9 クロモグリク酸ナトリウム(DSCG) 
  10 抗コリン薬 
  11 Th2サイトカイン阻害薬 
  12 漢方薬 
 トピックス  選択的P2X3受容体拮抗薬 
 参 考   一般用医薬品(OTC医薬品)・民間療法 
 C.非薬物療法による治療
  1 呼吸理学療法 
  2 鼻汁吸引と鼻腔洗浄 
  3 加 湿 

第5章 おもな疾患
 A.気道系の先天異常
  1 上気道病変 
  2 下気道病変 
 B.感染症
  1 急性鼻咽頭炎(かぜ症候群) 
  2 鼻副鼻腔炎(ウイルス性・細菌性) 
  3 気管支炎・肺炎・胸膜炎 
  4 急性細気管支炎 
  5 百日咳 
  6 クループ 
  7 急性喉頭蓋炎 
  8 肺結核 
 トピックス  RSウイルス 
 C.アレルギー疾患
  1 喘 息 
  2 アレルギー性鼻炎(通年性・季節性) 
  3 咳喘息 
  4 アナフィラキシー 
  5 アトピー咳嗽/喉頭アレルギー 
  6 過敏性肺炎 
  7 好酸球性細気管支炎 
 D.気道異物・胃食道逆流症・誤嚥
  1 気道異物 
  2 胃食道逆流症(GERD) 
  3 誤嚥(吸引)・吸入 
 E.心因性咳嗽 
 F.その他
  1 喫煙・受動喫煙 
  2 大気汚染と室内空気汚染 
 G.咳嗽が遷延・重症化しやすい基礎疾患 

今後の課題と展望 

付録 咳嗽を伴うおもな疾患の特徴 
索引

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