株式会社 診断と治療社

新生児感染症マニュアル

NICUで働く医師,新生児の抗菌薬についてコンサルトを受ける感染症科の医師,そして新生児の発熱をみるとドキッとする先生には,ぜひご覧いただきたい1冊です.成人と小児が異なるように,小児と新生児もちがうんです!東京小児総合医療センターの新生児科と感染症科がタッグを組み作り上げた,新生児に特化した感染症マニュアル.実際の具体的な処方例も記載し,プラクティカルな仕上がりになっています!新生児にかかわる医療者はmust buy.
  • 東京都立小児総合医療センター新生児科 部長 岡崎 薫編集
  • 東京都立小児総合医療センター感染症科 部長 堀越 裕歩編集
定価:
6,050円(本体価格 5,500円+税)
発行日:
2025/04/24
ISBN:
9784787826541
頁:
352頁
判型:
A5
製本:
並製
在庫:
在庫あり
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序文

序  文

ヒトの歴史において,いつの時代も新興感染症・再興感染症など感染症はつねに人類の脅威であり,新生児医療においても,免疫が脆弱な新生児,とくに早産児にとって感染症は,後遺症や,時に死をもたらす重要な疾患の1つです.新生児の予後を改善するためには,われわれ新生児科医師が感染症診療に精通することは重要な課題です.
NICUやGCUでは,嫌になるぐらい,どこの病棟よりも感染症予防対策に力を入れています.とくに感染予防の基本である石鹸・流水による手洗い,擦式アルコール消毒剤の使用は,日常生活でも反射的に行えるほど徹底されていますが,同時に,手荒れに悩まされる医療従事者も少なくありません.病院から高級手荒れ防止クリームを配給していただきたいものです.
感染症治療の基本は,感染臓器と原因微生物を特定し,適切な抗菌薬を使用することです.しかし,新生児や早産児でこれらを行おうとすると,検体量や被曝,検査室への移動など限界があり,小児や成人とまったく同じようにはいきません.それでも感染臓器と原因微生物を特定するために,最大限の努力をしなくてはいけません(治療前にできるだけ培養検体を採取し,「新生児だから血培は1セットでいい」ではなく,2セットとるメリットとデメリットを天秤にかけて,毎回,可能かどうか検討する).感染症治療の失敗は,後遺症や死に直結します.私たちは最大限の努力を惜しむべきではありません.また,アンチバイオグラムなどを利用して,適切な抗菌薬を選択するための努力も必要です.
当院では,感染症科医は新生児科医の大切な仲間です(決して敵ではありません).感染症科から専門的な助言を得て,患者全体を俯瞰的に見て,新生児科医が検査や治療の選択などの最終決断をします.新生児科医は感染症科医から専門的な知識を学び,感染症科医は新生児科医から新生児という特殊な領域の治療を学ぶことで,ともに成長し,なによりも新生児が最高の治療を受けることができる,そんな誰も損をしないwin-winな関係が構築されます.腹立つこともありますが,人間関係はそんなものではないでしょうか.
本書は,新生児科と感染症科それぞれの立場から,新生児感染症の治療について書かれています.多くの医療従事者,そして,なによりも可愛い新生児にとって少しでもお役に立てることを願っています.共同編集者の堀越裕歩先生,診断と治療社編集部 福島こず恵様には厚く感謝申し上げます.

2025年4月
東京都立小児総合医療センター新生児科部長
岡崎 薫




序  文

2010年,東京都立小児総合医療センターが開院してしばらくしたところで,私はカナダのトロントから,新設された感染症科に赴任しました.当時の感染症科は小規模で,病床ももたず,私1人だけのスタートでした.一方,前身である八王子小児病院と清瀬小児病院から引き継がれた新生児科は,NICUとGCU合わせて72床もの規模を誇り,大勢の新生児科医が活躍する巨大な診療科でした.感染症科の診療は,他の診療科からの相談やコンサルテーションがなければ成り立たない性質をもっています.その中で新生児科は,非常にオープンな姿勢で積極的に相談をしてくれ,医療をチームでよくしていこうという姿勢をもっていました.医療現場では,時として「隣の診療科は外国よりも遠い」と言われるほどセクショナリズムの壁が厚いことがあります.とくに感染症は,相談しなくてもできると思われがちな分野です.感染症科を新生児医療チームの一員として迎え入れてもらえることは大変ありがたいものでした.
時が経つのは早く,気づけば15年が過ぎました.この間,感染症科と新生児科は,診療において密接に連携するだけでなく,ともに研究や論文執筆にも取り組んできました.また,新生児医療では避けて通れない感染アウトブレイクへの対応に,一緒に頭を悩ませることもありました.そのような経験を通じて,感染症科も少しずつ成長を遂げていきました.最初は小さな科でしたが,次第に若手医師たちが門を叩いてくれ,仲間が増えていきました.現在では,もっとも多くの小児感染症専門医を輩出するまでになり,卒業生が全国で活躍しています.
本書は,そうした感染症科と新生児科の現役医師や出身者たちが協力して作り上げたものです.この執筆陣の構成は非常にユニークであり,まさに本書の強みです.新生児科医と小児感染症科医の両方の視点が融合し,日々の診療に役立つ知見を深く掘り下げています.ぜひ本書を手に取っていただき,日常の診療に活用していただければ幸いです.

2025年4月
東京都立小児総合医療センター感染症科部長
堀越裕歩

目次

序文 岡崎 薫,堀越裕歩
編集者一覧
執筆者一覧
本書で使用する略語一覧

Chapter1 感染症を疑う新生児に対する診療の進め方
 感染症診療のキホン  伊藤健太
 抗菌薬・抗真菌薬の予防投与  森 晴奈
 免疫学的特徴を知る  岡崎 薫

Chapter2 検査
 培養検査  野口裕太
 血液検査  大隅敬太
 髄液検査・尿検査  福井加奈
 画像検査  有山雄太

Chapter3 感染症治療薬の概要
 新生児の薬物動態の発達的変化  近藤昌敏
 抗菌薬・抗真菌薬の使用時に注意すべき併用薬と配合変化  諏訪淳一
 薬物血中濃度モニタリングの重要性  諏訪淳一
 抗菌薬
  ①抗菌薬の種類・分類と選択  桜井博毅
  ②治療日数の実際  桜井博毅
  ③アンチバイオグラムの実際  伊藤健太
 抗真菌薬  桜井博毅
 抗ウイルス薬  伊藤健太

Chapter4 院内感染対策
 NICUでの感染対策,院外出生児の入院時対策  芝田明和
 医療関連感染対策  多田歩未
 同胞面会  芝田明和
 監視培養  芝田明和

Chapter5 重症敗血症・敗血症性ショック
 敗血症をとりまく各種用語の定義  山口美穂子 100
 播種性血管内凝固  泉 絢子
 敗血症に対する抗菌薬の使い方  鈴木亮子
 敗血症に対するそのほかの治療  生形有史

Chapter6 中枢神経系感染症
 髄膜炎・脳膿瘍  堀越裕歩1
 脳室内シャントおよび関連器具に伴う髄膜炎  多田歩未

Chapter7 呼吸器感染症
 肺炎・肺膿瘍  山中崇之
 人工呼吸器関連肺炎  山中崇之

Chapter8 尿路・泌尿器関連感染症
 尿路感染症  荒木孝太郎

Chapter9 血管内感染症
 カテーテル関連血流感染症  村井健美
 感染性心内膜炎  村井健美

Chapter10 腹部感染症
 壊死性腸炎  水口卯生子
 腹膜炎  水口卯生子

Chapter11 皮膚・軟部組織感染症
 表面の限局した病変(伝染性膿痂疹・毛囊炎)  板垣考洋
 深部で急速に進展する病変(蜂窩織炎・壊死性筋膜炎)  板垣考洋
 手術部位感染症  山口哲司
 市中感染型MRSAによる皮膚・軟部組織感染症  黒田淳平

Chapter12 骨髄炎・化膿性関節炎
 急性骨髄炎・化膿性関節炎  石井 翔

Chapter13 そのほかの関連感染症
 眼科関連感染症  米田 立
 頭・頸部感染症  米田 立

Chapter14 重要な細菌とその臨床像
 B群溶血性レンサ球菌  芝田明和
 大腸菌  荒木孝太郎
 リステリア菌  荒木孝太郎
 ブドウ球菌  村井健美
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌  村井健美
 腸球菌  堀越裕歩
 セレウス菌  舟越葉那子
 多剤耐性菌  山中崇之
 先天性結核  米田 立
 梅毒トレポネーマ  蟹江信宏
 ウレアプラズマ  藤田基資

Chapter15 ウイルス・真菌・原虫とその臨床像
 サイトメガロウイルス  多田歩未
 トキソプラズマ  舟越葉那子
 風疹ウイルス  車 健太
 麻疹ウイルス  蟹江信宏
 単純ヘルペスウイルス  倉持 由
 水痘・帯状疱疹ウイルス  倉持 由
 パルボウイルスB19  車 健太
 ヒト免疫不全ウイルス  車 健太
 B型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルス  車 健太
 カンジダ  蟹江信宏

Chapter16 予防接種
 退院までに考慮すべき予防接種の種類とスケジュール  石井 翔
 予防接種と血液製剤,そのほか特殊な対象  石井 翔
 医療従事者に対する予防接種  舟越葉那子

付録 新生児のおもな抗微生物薬投与量

索引

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