かかりつけ医のための認知症診療テキスト 改訂第2版
定価:4,620円(税込)
2012 年5 月に刊行した『多発性硬化症(MS)診療のすべて』では,当時利用できた疾患修飾薬(DMD),多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMO)の病態の違いなどを紹介し,MS 診療が新たな時代に入ったことを強調した.その後,十数年間を経て,MS・NMO の病態研究や薬剤開発は加速度的な進歩を遂げたことから,今回,書名を『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療のすべて』へと変更し,全面的な改訂を行った.旧版の特長である「病態を踏まえた医療」,「あきらめない医療」の実践を骨格として,現在の診療実態に合わないものは除き,必要な項目や内容を追加した.国内外の文献評価に基づいて執筆された診療ガイドラインとは異なり,本書の基礎は国立精神・神経医療研究センター(NCNP)病院多発性硬化症センターにおける長年の診療経験にあり,各項目の重み付けや治療薬に対する評価はガイドラインとは異なる面がある.なお,研究に関連した項目の執筆は研究に従事している専門家にお願いしているが,臨床的に大切な項目は臨床経験の豊富な専門医が担当している.なお,本書では「NMO」と「NMOSD」など一部の語句や表現について,編集者は一定以上の統一を図らない方針とした.
MS の治療戦略は,早期からいわゆる“high efficacy drugs” を用いる選択肢も含め,さらに多様になってきている.NMO では再発予防効果に優れた分子標的薬の開発が相次ぎ,多くの患者が再発を経験することなく生活できるようになってきている.MS の分子標的治療によって,世界中を飛び回っているビジネスマンや,30 年以上治療を継続しながら80 歳を過ぎても趣味を楽しんでいる女性の患者を診るにつけ,われわれの若い頃には予想もできなかったことが起こっていることを実感している.診療の初期に,もし別の治療を採用していたら,これらの患者の予後はどうなっていたであろうか? 二次性進行型MS(SPMS)になって苦労を重ねているケースのなかには,初期に何らかの理由で消極的な治療になってしまったか,病態に合わない薬剤を使い続けたことが尾を引いていると思われるケースがある.薬剤の選択肢も増えている現在,治療効果を予測できる薬剤を発症初期から積極的に使うことは決定的に重要であり,今回の改訂では早期治療の意義を強調している.
将来的には,MS・NMO の診断も臨床症候のみに依拠する時代はおそらく終わり
序文 山村 隆
執筆者一覧
「病態・疾患関連」略語一覧
「検査・尺度・指標関連」略語一覧
「薬剤・治療関連」略語一覧
第1章 多発性硬化症(MS)の診断
1 MSの診断―総論 山村 隆
2 MSの病型と診断の道筋 宮本勝一
3 画像診断
a MSの画像診断 木村有喜男/佐藤典子
b NMOSDの画像診断 池之内 穣/佐藤典子
c MOGADの画像診断 加賀谷理紗/佐藤典子
4 機能評価 勝元敦子
第2章 多発性硬化症(MS)の鑑別診断と関連疾患
1 鑑別診断のポイント 岡本智子
2 抗体陰性NMOSD 荒木 学
3 抗MOG抗体関連疾患(MOGAD) 勝元敦子
4 NINJA 竹脇大貴
第3章 多発性硬化症(MS)の臨床
1 外来診療の考えかた 山村 隆
2 外来治療,入院治療の判断,退院のタイミング
3 NEDA以外に考慮すべき因子 山村 隆
4 ステロイドパルス療法 林 幼偉
5 経口ステロイド 山村 隆/林 幼偉
6 疾患修飾薬(DMD)
a インターフェロン(IFN) 荒木 学
b グラチラマー酢酸塩(GA) 宮本勝一
c フィンゴリモド(FTY) 横山和正
d ナタリズマブ(NTZ) 濱谷美緒/近藤誉之
e フマル酸ジメチル(DMF) 横山和正
f オファツムマブ(OMB) 岡本智子
g シポニモドフマル酸 宮﨑雄生
7 免疫抑制薬 林 幼偉
8 実臨床における薬剤導入と切り替え 山村 隆
9 実臨床におけるcombination therapy 林 幼偉
10 精神症状への対応 野田隆政/中澤佳奈子/清水 悠/安藤久美子
11 対症療法
a 疼痛,痙縮など 岡本智子
b 疲労,倦怠感,睡眠障害など
12 妊娠・出産 清水優子
13 小児 佐久間 啓
14 MSのリハビリテーション 原 貴敏
15 視神経炎の鑑別診断と治療 毛塚剛司
第4章 視神経脊髄炎(NMO)の臨床
1 NMOの病態 宮本勝一
2 NMOの診断 岡本智子
3 NMOの再発予防
a ステロイドと免疫抑制薬 横手裕明
b 抗C5抗体製剤 宮本勝一
c 抗IL-6受容体抗体製剤 千原