
はじめて学ぶ小児血液・腫瘍疾患
定価:5,280円(税込)
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改訂第3版の序文
『骨・軟部腫瘍―臨床・画像・病理』は,初版(2011年),改訂第2版(2015年)の発刊以来,多くの読者の皆様に支持をいただき,骨・軟部腫瘍に関する診断・治療の進歩に対応するための実践的な教科書として広く活用されてきました.本書の改訂第3版をお届けするにあたり,これまで本書をご愛読いただいた皆様に深く感謝申し上げます.
改訂第2版発刊後の約10年余りの間にも,骨・軟部腫瘍の診断・治療において新たな知見が積み重ねられ,治療戦略や診断技術がさらに進化しました.2020年に改訂されたWHO分類では,腫瘍の新たなサブタイプや疾患概念が加えられ,分類体系がさらに精緻化され,さらにはCICやBCORなど診断名に腫瘍自身の遺伝子異常を冠する肉腫が登場しています.WHO分類改訂に対応して2022年には『原発性悪性骨腫瘍ガイドライン2022』が,2023年には『悪性軟部腫瘍取扱い規約 第4版』が発刊されています.ゲノム医療の実践,分子標的治療薬や免疫療法の進展により,治療の選択肢が広がり,従来の治療方針に大きな変化をもたらしました.
本書改訂第3版では,これらの新しい動向を反映し,最新のWHO分類をもとに疾患構成を再構築しました.また,最先端の治療法や分子遺伝学的病理診断などを詳細に解説し,日常診療に役立つ実践的な情報を加筆しています.編集体制は第2版から刷新され,北海道大学大学院保健科学研究院医用生体理工学分野 神島 保先生,名古屋市立大学大学院医学研究科整形外科学 木村浩明先生,そして初版から編集に携わってきた私の3名で進め,多角的かつ包括的な視点を取り入れることを心がけました.
執筆には,わが国の骨・軟部腫瘍診療において第一線でご活躍される専門家の先生方にご協力いただきました.これにより,本書は整形外科医,放射線科医,病理医が診療現場で必要とする最新の知識を網羅した一冊として完成しました.本書が,骨・軟部腫瘍の診療に携わる皆様の日々の診療にお役立ていただければ幸いです.
最後に,本書の執筆に際して日常の診療でお忙しい中ご尽力いただきました先生方に,この場をお借りして心より御礼申し上げます.また,本書を手に取ってくださった皆様が骨・軟部腫瘍診療のさらなる発展に貢献されることを祈念しております.
2025年3月
編集者を代表して
九州大学大学院医学研究院形態機能病理学分野 小田義直
初版の序文
骨・軟部腫瘍の研究は,わが国においては約40年前に日本整形外科学会の研究会が発足し,その後,日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会となり今日に至っています.この学会は整形外科医,放射線科医,病理医が一堂に会し「Jaffe’s triangle」を実践しているものであります.長年の研究,技術進歩により骨肉腫の治療成績におきまして,当時は5年生存率が10%程度であったものが,現在60%以上になってきています.手術も患肢切断から患肢温存手術の時代へ進歩しています.また骨・軟部腫瘍の知識不足による診断における見落とし,誤診,不必要な手術,不適切な手術も減少しています.しかし,医師の知識不足のため患者さんが不利益を生じる事態が今もって起こっているのも事実であり,骨・軟部腫瘍の現状を広く知っていただく必要性があります.その必要性から,1997年,21世紀を前に本書の初版ともいえる『Atlas Now 骨・関節疾患の画像診断1骨・軟部腫瘍』を刊行させていただきました.この初版は評判もよく多くの先生のお役に立つことができています.しかし医療における技術躍進はめざましいものがあります.そこで10年以上経過いたしましたので,最新の知識を取り入れた改訂版として本書を世に出すことを企画させていただきました.
「Jaffe’s triangle」は骨・軟部腫瘍を語るには切り離せないものであり,本著においては,前著の共同編集者の東京慈恵会医科大学放射線医学講座 教授 福田国彦先生と新たに九州大学大学院形態機能病理学教室 教授 小田義直先生に加わっていただき小生との3人共同で編集作業を進めました.執筆していただく先生は第一線にてご活躍で,それぞれの分野においてエキスパートの先生にお願い致しました.そしてまた編集者側の要望として治療,画像診断,病理診断全てにおいて2010年時点の最新の論文,知識を網羅して執筆をして下さるよう依頼いたしました.執筆された先生のご協力により,本書は整形外科医,放射線科医,病理医が日常診療を行うにあたって最低限度知っておかねばならない知識の習得に最適な教科書であるとともに,骨・軟部腫瘍を取り扱う専門医にも座右の書として価値のある書に出来上がりました.本書が骨・軟部腫瘍の診療に携わる先生方のお役に立つものと信じております.
文末ながら,日々の診療でご多忙にもかかわらず本書のご執筆にご尽力いただきました諸先生方にこの紙面をお借りして心より御礼申し上げます.
2010年11月
編集者を代表して
名古屋市立大学大学院医学研究科整形外科学分野 教授 大塚隆信
改訂第3版の序文
初版の序文
編集・執筆者一覧
第1章 総 論
1 単純X線写真の読み方 神島 保
2 CTの読み方 神島 保
3 MRIの読み方 神島 保
4 PET検査 村上康二
5 血管造影,超音波の読み方 奥田実穂
6 シンチグラフィの読み方 渡辺 憲
7 画像上,腫瘍と間違いやすい正常変異 福田健志
8 化学療法 相羽久輝
9 放射線療法(重粒子,陽子線含む) 今井礼子
10 悪性腫瘍の治療効果の判定 奥田実穂
11 手術療法 木村浩明
12 腫瘍の分類とその変遷 小田義直
13 生検,免疫組織化学染色と遺伝子診断 小田義直
第2章 骨腫瘍
1 軟骨形成性腫瘍
A 良性腫瘍
1.骨軟骨腫
骨膜性軟骨腫 山口岳彦,稲岡 努,木村浩明
2.軟骨腫
a.内軟骨腫 山口岳彦,稲岡 努,木村浩明
b.骨軟骨腫 山口岳彦,稲岡 努,木村浩明
c.軟骨芽細胞腫 山口岳彦,稲岡 努,木村浩明
d.軟骨粘液線維腫 山口岳彦,稲岡 努,木村浩明
e.爪下外骨腫 加藤生真,齋藤祐貴,木村浩明
f.傍骨性骨軟骨異形増生(BPOP) 加藤生真,姫野貴司,木村浩明
B 中間群(局所侵襲性)& 悪性
1.滑膜性軟骨腫症 田宮貞史,小橋由紋子,武内章彦
2.骨内異型軟骨腫瘍 & 骨内軟骨肉腫(Grade 1) 山口岳彦,山口雅之・三宅基隆,武内章彦
3.骨内軟骨肉腫(Grade 2/3) 山口岳彦,山口雅之・三宅基隆,武内章彦
4.淡明細胞型軟骨肉腫 山口岳彦,山口雅之・三宅基隆,武内章彦
5.間葉性軟骨肉腫 山口岳彦,山口雅之・三宅基隆,武内章彦
6.脱分化型軟骨肉腫 山口岳彦,山口雅之・三宅基隆,武内章彦
2 骨形成性腫瘍
A 良性腫瘍
類骨骨腫 石田 剛,稲岡 努,相羽久輝
B 中間群(局所侵襲性)
骨芽細胞腫 石田 剛,稲岡 努,相羽久輝
C 悪性腫瘍
1.低悪性度中心型骨肉腫 石田 剛,藤本良太,林 克洋
2.骨肉腫(通常型骨肉腫・血管拡張型骨肉腫・小細胞型骨肉腫) 石田 剛,青木隆敏,林 克洋
3.傍骨性骨肉腫 石田 剛,青木隆敏,林 克洋
4.骨膜性骨肉腫 石田 剛,藤本良太,林 克洋
5.二次性骨肉腫 石田 剛,青木隆敏,林 克洋
6.表在性高悪性度骨肉腫 石田 剛,奥田実穂,林 克洋
3 線維形成性腫瘍
A 中間群(局所侵襲性)
類腱線維腫 石田 剛,青木隆敏,相羽久輝
B 悪性腫瘍
線維肉腫 石田 剛,青木隆敏,相羽久輝
4 脈管性腫瘍
A 良性腫瘍
血管腫 小田義直,髙尾正一郎,木村浩明
B 悪性腫瘍
1.類上皮血管内皮腫 石田 剛,髙尾正一郎,木村浩明
2.血管肉腫 石田 剛,髙尾正一郎,木村浩明
5 富破骨細胞性巨細胞腫瘍
A 良性腫瘍
1.動脈瘤様骨囊腫 山口岳彦,福庭栄治,武内章彦
2.非骨化性線維腫/良性線維性組織球腫 石田 剛,青木隆敏・福庭栄治,武内章彦
B 中間群(局所侵襲性/低頻度転移性)
骨巨細胞腫 小田義直,青木隆敏,武内章彦
6 脊索性腫瘍
A 良性腫瘍
良性脊索細胞腫 山口岳彦,髙尾正一郎,相羽久輝
B 悪性腫瘍
脊索腫 山口岳彦,髙尾正一郎,相羽久輝
7 その他の骨間葉系腫瘍
A 良性腫瘍
1.単純性骨囊腫 田宮貞史,福庭栄治,三輪真嗣
2.線維性骨異形成 小田義直,神島 保,三輪真嗣
3.骨線維性異形成 石田 剛,福庭栄治,三輪真嗣
4.骨内脂肪腫 小田義直,髙尾正一郎,三輪真嗣
B 悪性腫瘍
1.アダマンチノーマ 石田 剛,髙尾正一郎,三輪真嗣
2.未分化多形肉腫 石田 剛,青木隆敏,三輪真嗣
3.骨平滑筋肉腫 小田義直,奥田実穂,三輪真嗣
8 骨造血系腫瘍(hematopoietic neoplasms of bone)
1.骨形質細胞腫 /骨髄腫 田宮貞史,青木隆敏,相羽久輝
2.悪性リンパ腫 田宮貞史,青木隆敏,相羽久輝
3.Langerhans細胞組織球症 小田義直,福庭栄治,相羽久輝
9 その他
1.骨Paget病 田宮貞史,福田健志,林 克洋
2.骨内ガングリオン 小田義直,福庭栄治,林 克洋
第3章 軟部腫瘍
1 脂肪性腫瘍
A 良性腫瘍
1.脂肪腫 久岡正典,福田健志,武内章彦
2.脂肪芽腫 毛利太郎,奥田実穂,武内章彦
3.血管脂肪腫 毛利太郎,栗原宏明・小嶋大地,武内章彦
B 中間型(局所侵襲性)&悪性
1.異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫 久岡正典,藤本 肇,武内章彦
2.脱分化型脂肪肉腫 毛利太郎,小黒草太,武内章彦
3.粘液型脂肪肉腫 久岡正典,藤本 肇,武内章彦
4.多形型脂肪肉腫 岩崎 健,栗原宏明・小嶋大地,武内章彦
2 線維芽/筋線維芽細胞性腫瘍
A 良性腫瘍
1.結節性筋膜炎 田宮貞史,藤本 肇,木村浩明
2.骨化性筋炎・指趾線維骨化偽腫瘍 田宮貞史,藤本 肇,木村浩明
3.弾性線維腫 田宮貞史,藤本 肇,木村浩明
4.腱鞘線維腫 柴 瑛介,神島 保,木村浩明
5.線維形成性線維芽腫 柴 瑛介,神島 保,木村浩明
B 中間型(局所侵襲性)
1.手掌線維腫症と足底線維腫症 田宮貞史,藤本 肇,木村浩明
2.デスモイド型線維腫症 田宮貞史,藤本 肇,木村浩明
C 中間性(rarely metastasizing)
1.隆起性皮膚線維肉腫(DFSP) 久岡正典,鈴木智大・江原 茂,木村浩明
2.孤立性線維性腫瘍 田宮貞史,杉本英治,木村浩明
3.乳児線維肉腫 田宮貞史,杉本英治,木村浩明
4.炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT) 綾田善行・山元英崇,鷺山幸二,木村浩明
D 悪性腫瘍
1.成人型線維肉腫 杉田真太朗,杉本英治,相羽久輝
2.粘液線維肉腫 杉田真太朗,杉本英治,相羽久輝
3.低悪性度線維粘液肉腫 岩崎 健,鷺山幸二,相羽久輝
3 線維組織球性腫瘍
A 良性腫瘍
腱滑膜巨細胞腫 山下享子,鈴木智大・江原 茂,武内章彦
4 血管腫瘍
A 良性腫瘍
血管腫(血管奇形) 久岡正典,長田周治,木村浩明
B 悪性腫瘍
1.血管肉腫 久岡正典,岩間祐基,木村浩明
2.類上皮血管内皮腫 杉田真太朗,木村浩明
5 血管周皮細胞性腫瘍
A 良性腫瘍・中間型
1.グロームス腫瘍 久岡正典,長田周治,相羽久輝
2.血管平滑筋腫 岩村隆二・松山篤二,小黒草太,相羽久輝
6 平滑筋性腫瘍
A 悪性腫瘍
平滑筋肉腫(炎症型平滑筋肉腫を含む) 久岡正典,鈴木智大・江原 茂,三輪真嗣
7 横紋筋性腫瘍
A 悪性腫瘍
横紋筋肉腫(胎児型横紋筋肉腫・胞巣型横紋筋肉腫・多形型横紋筋肉腫・紡錘形細胞型横紋筋肉腫) 孝橋賢一,三宅基隆,三輪真嗣
8 軟骨および骨形成性腫瘍
A 悪性腫瘍
骨外性骨肉腫 久岡正典,岩間祐基,林 克洋
9 末梢神経腫瘍
A 良性腫瘍
1.神経鞘腫 小田義直,神島 保,林 克洋
2.神経線維腫 綾田善行・山元英崇,三宅基隆,林 克洋
3.顆粒細胞腫 綾田善行・山元英崇,三宅基隆,林 克洋
B 悪性腫瘍
悪性末梢神経鞘腫 綾田善行・山元英崇,三宅基隆,林 克洋
10 分化不明の腫瘍
A 良性腫瘍
1.筋肉内粘液腫 元井 亨,長田周治,木村浩明
2.リン酸塩尿性間葉系腫瘍 小田義直,鈴木智大・江原 茂,林 克洋
3.血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa) 山下享子,林 克洋
B 悪性腫瘍
1.滑膜肉腫 元井 亨,岩間祐基,三輪真嗣
2.類上皮肉腫 元井 亨,三宅基隆,三輪真嗣
3.胞巣状軟部肉腫 元井 亨,長田周治,三輪真嗣
4.明細胞肉腫 久岡正典,岩間祐基,三輪真嗣
5.骨外性粘液型軟骨肉腫 久岡正典,三宅基隆,三輪真嗣
6.未分化肉腫 久岡正典,鈴木智大・江原 茂,三輪真嗣
7.NTRK遺伝子再構成紡錘形細胞腫瘍 加藤雅大,神島 保,三輪真嗣
8.線維形成性小円形細胞腫瘍 山下享子,三輪真嗣
11 その他
1.ガングリオン 田宮貞史,小橋由紋子,三輪真嗣
2.腫瘍状石灰症 田宮貞史,小橋由紋子,三輪真嗣
第4章 骨軟部組織発生未分化小円形細胞肉腫
1.Ewing肉腫 小田義直,青木隆敏,相羽久輝
2.Ewing like sarcoma(EWSR1-non-ETS融合遺伝子を有する円形細胞肉腫 ・CIC遺伝子再構成肉腫・BCOR遺伝子異常を有する肉腫) 吉田朗彦,三宅基隆,相羽久輝
第5章 骨軟部組織発生遺伝性腫瘍症候群
1.多発性軟骨腫症 山口岳彦,稲岡 努,相羽久輝
2.多発性骨軟骨腫症 山口岳彦,稲岡 努,相羽久輝
3.Li-Fraumeni症候群 戌亥章平,相羽久輝
4.McCune-Albright症候群 戌亥章平,相羽久輝
5.神経線維腫症1型 戌亥章平,相羽久輝
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