株式会社 診断と治療社

内服薬・外用薬・注射薬 まるっと理解 上手なステロイドの使い方Q&A

ステロイドの効果的で安全な処方のためのQ&A集.初学者が知っておくべき薬剤の作用機序,薬物動態,他剤との相互作用,剤形別の使い分け,特に注意すべき患者への対応などの特徴や副作用対策に加え,各項目にミニ症例,処方例,実際の投与プロトコール例などをちりばめ,実践的なノウハウを伝授.文章量は最小限に抑え,図表や写真で直感的に理解できる誌面で,ステロイドの要点がつかめる,実臨床に役立つ1冊.
定価:
4,620円(本体価格 4,200円+税)
発行日:
2025/04/18
ISBN:
9784787827081
頁:
224頁
判型:
A5
製本:
並製
在庫:
在庫あり
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序文

 副腎皮質ステロイド(コルチコステロイド:corticosteroids)は「ステロイド」との略称が広く人口に膾炙しているが,免疫・炎症の制御に用いられているのは「グルココルチコイド:glucocorticoids(GC)」である.臨床応用から70年以上が経過し,作用が多岐にわたるGCとは対極にある分子標的薬(生物学的製剤や一部の免疫抑制薬)の開発が日進月歩であるにもかかわらず,今なお多くの免疫・炎症性疾患における第一選択薬としてGCが用いられている.その理由は迅速な効果発現と高い臨床的奏効率が短期的には副作用リスクを凌ぐからである.そのように卓越した有効性を支えているのは作用機序以上に数mgから数百mgまでの範囲で投与できる柔軟性であり,費用負担の面からも短期的には他の追従を許さない.
 そして長期的なリスク・ベネフィットバランスを最適化する投与法も次第に国内外で普及しつつある.それは「橋渡し:bridging」療法としてのGC使用である.初期治療において必要十分量のGCを,しかもその後の急速な減量を可能にするために必要な(しばしば複数の)免疫抑制(修飾)薬・生物学的製剤と併用し,遅くとも半年以内にはプレドニゾロン換算で5 mg/日以下とし,その後可能なら中止するというものである.
 編者はGCの研究グループを統括していた市川陽一先生のもとで医療人としてのスタートを切り,多くの敬愛する先輩諸兄と議論しながらGCの最適な使用法を模索してきた.少々勇み足かと不安になった時期もあったが,現在では海外のガイドラインと編者らの治療法に差異がみられなくなっている.
 本書はQ&A方式で,日常診療での疑問に可能な限り,しかも簡潔に答えることを主眼として編集された.多忙な日々のなかで執筆してくださった仲間の先生方,辛抱強く対応してくださった診断と治療社の皆様に心より感謝を申し上げ,本書が診療の最前線で患者さんと向き合っている多くの医療人にとって,そしてその結果として患者さんのQuality of Lifeの最大化に少しでも役立つことができればと願っている次第である.

2025年4月
亀田秀人

目次

序文…亀田秀人
執筆者一覧

Part1 ステロイド処方の基本
 ●ステロイドとはそもそも何者なのか
  Q1 どんなときにステロイドを使いますか?…亀田秀人
  Q2 コルチゾールの分泌と概日リズムはどうなっていますか?…平田絢子
  Q3 ステロイド製剤にはどのような種類があるのですか?…久次米吏江
 ●ステロイドの作用機序
  Q4 ステロイドに関連する受容体はどのようなものでしょうか?…平田絢子
  Q5 グルココルチコイドの生理作用は何ですか?…平田絢子
 ●ステロイドの薬物動態(経口薬・注射薬・外用薬)
  Q6 ステロイドの使い分けはどのように行っていますか?…今泉ちひろ
  Q7 ほかの治療薬との組み合わせで作用は増減するのですか?…今泉ちひろ
 ●ステロイドの副作用が多様である理由
  Q8 ステロイドで副作用が出るのは過量であったから,という理解で正しいですか?…小倉剛久
  Q9 ステロイド投与で,ほかのホルモン分泌にどのような影響が起こり得ますか?…小倉剛久

Part2 ステロイドの副作用対策
 ●ステロイド開始時のスクリーニング
  Q10 ステロイド開始時のスクリーニング検査にはどのようなものがありますか?…武中さや佳
  Q11 ステロイド開始時に予防投与として何が必要なのですか?…武中さや佳
 ●ステロイド投与中の副作用モニタリング
  Q12 ステロイド投与中の副作用モニタリングはどのように行っていますか?…武中さや佳
 ●感染の予防と対処
  Q13 ステロイドによる感染症の誘発,感染症の増悪はなぜ起こるのですか?…峰岸靖人
 ●骨粗鬆症・骨壊死の予防と対処
  Q14 ステロイドによる骨粗鬆症はなぜ起こるのですか?…伊東秀樹
  Q15 ステロイドによる無菌性骨壊死はなぜ起こるのですか?…伊東秀樹
 ●消化器症状の予防と対処
  Q16 ステロイド潰瘍はなぜ起こるのですか?…久次米吏江
  Q17 消化管カンジダ症はなぜ起こるのですか?…髙倉悠人
 ●精神症状の予防と対処
  Q18 ステロイドによる精神症状はなぜ起こるのですか?…峰岸靖人
 ●高血圧の予防と対処
  Q19 ステロイドによる血圧上昇はなぜ起こるのですか?…伊東秀樹
 ●動脈硬化,脂質異常症の予防と対処
  Q20 ステロイドによる脂質異常はなぜ起こるのですか?…今村宗嗣
  Q21 ステロイドによる血栓症はなぜ起こるのですか?…亀田秀人
 ●耐糖能異常の予防と対処
  Q22 ステロイド糖尿病はなぜ起こるのですか?…久次米吏江
 ●白内障・緑内障の予防と対処
  Q23 ステロイド緑内障はなぜ起こるのですか?…今村宗嗣
  Q24 ステロイド白内障はなぜ起こるのですか?…今村宗嗣
 ●副腎不全の予防と対処
  Q25 ステロイドによる離脱症候群はなぜ起こるのですか?…髙倉悠人
 ●患者とのリスクコミュニケーション
  Q26 飲み忘れや飲めなくなったときの対応やステロイドカバーは何ですか?…前澤怜奈
  Q27 妊娠・授乳中のステロイド投与は大丈夫でしょうか?…前澤怜奈
  Q28 ステロイド加療中に予防接種を受けてよいのでしょうか?…前澤怜奈
  Q29 ムーンフェイス(満月様顔貌)はなぜ起こるのですか?…髙倉悠人
  Q30 小児への投与上の注意点は何でしょうか?…今泉ちひろ
  Q31 高齢者の服用にあたっての注意点は何でしょうか?…今泉ちひろ
  Q32 ステロイドによる月経異常はなぜ起こるのですか?…髙倉悠人
  Q33 ステロイドミオパチーはなぜ起こるのですか?…今泉ちひろ

Part3 アレルギーその他疾患の診療に必須の診察方法・手順
 ●処方総論
  Q34 ステロイドは悪性腫瘍に影響しないのですか?…髙倉悠人
  Q35 ステロイドの薬剤間の対応量はどのように決めますか?…亀田秀人
  Q36 ステロイドの作用機序はどこまでわかっていますか?…小倉剛久
  Q37 疾患によって,期待するステロイドの作用はどのように異なりますか?…小倉剛久
  Q38 ステロイドの強さの違いはありますか?…前澤怜奈
  Q39 皮膚外用薬の種類と特徴はどのようなものですか?…前澤怜奈
  Q40 ステロイドと併用禁忌および併用にあたって注意すべき薬剤は何ですか?…小倉剛久
  Q41 ステロイド投与が有効とされる感染症とその理由は何ですか?…今泉ちひろ
  Q42 内服の単回投与・分割投与・隔日投与の違いは何ですか?今泉ちひろ
  Q43 経口薬と注射薬では効果が違うのでしょうか?…峰岸靖人
  Q44 ステロイドパルス療法はどんなときに行うのでしょうか?…峰岸靖人
  Q45 ステロイドの初期量はどのくらい続けるのでしょうか?…亀田秀人
  Q46 ステロイドの初期量からさらに増量することはありますか?…亀田秀人
  Q47 ステロイドの減量はどうすればよいのでしょうか?…亀田秀人
  Q48 ステロイドの減量中に再燃したらどうするのですか?…亀田秀人
  Q49 ステロイドの中止は可能なのでしょうか?…小倉剛久
  Q50 コルチゾールの概日リズムに合わせた投与について教えてください…小倉剛久

付録 主なステロイド薬一覧
索引

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