
指定難病ペディア2019
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2025年版の序
この度,『シェーグレン症候群ガイドライン2017年版』を『2025年版』として,改訂いたします.この2025年版は,編集日本リウマチ学会,編集協力厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「自己免疫疾患に関する調査研究」班,承認学会日本シェーグレン症候群学会,日本口腔科学会,日本眼科学会,日本小児リウマチ学会,日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会,日本口腔外科学会の協働で編纂されたもので,執筆,監修,評価などにご参画していただいた,すべての皆様に深謝申し上げます.
2025年版の38項目のCQは2017年版と同様ですが,2017年版の2000年から2015年までのsystematic literature review(SLR)に,それ以降の2015年から2022年までのSLRを新たに追加しました.それらを包括し,各CQに対して推奨提示(推奨文,推奨の強さ,エビデンスの強さ,費用対効果の観点からの留意事項)と説明文(推奨作成の過程,SRレポートのまとめ)が記載されています.
今回の改訂に当たり,2017年版にはなかった2点を付け加えました.1点目は実地臨床において有用ではあるが,SLRに基づく説明文には反映されない内容を9つのコラムとしてまとめました.診療の一助になれば幸いです.2点目はPatient and Public Involvement(PPI)の一環として,『シェーグレン白書2020』による患者さんの実態と声の項を加えました.『シェーグレン白書2020』は,日本シェーグレン症候群患者の会が編集しNPO法人シェーグレンの会が発行した調査報告書です.2019年11月に日本シェーグレン症候群患者の会の会員に対して510部のアンケート送付を行い,276部(54%)の回収を得たアンケート結果をまとめたもので,日本のシェーグレン症候群患者さんの実態がきわめて詳細に述べられています.この項ではそれを7つに分けて,その内容を取り上げました.これも実地臨床において,患者さんとの距離を縮める一助になれば幸いです.
“Sjögrenʼs Syndrome”(シェーグレン症候群)は“Sjögrenʼs Disease”(シェーグレン病)への病名変更のプロセスにあり,また,日本でも様々な生物学的製剤の臨床試験が実施されています.この2025年版が,疾患の理解,診療の実践に広く役立ち,多くの患者さんのADL(activities of daily living)とQOL(quality of life)の向上に益することを祈念しております.
2025年3月吉日
日本リウマチ学会アドホック委員会
シェーグレン症候群診療ガイドライン委員会
委員長 川上 純
2025年版の発刊にあたり
膠原病に属する疾患は,どの疾患も患者数は人口の0.1%未満であり,比較的稀な疾患ですが,働き盛りの女性に比較的多い病気でもあります.原因は不詳,治癒を目指す治療法は未確立で,長期療養を要することから,多くは難病医療法に基づいて難病と指定され,申請して認められれば,中~重症患者には国と都道府県が医療費を助成する制度が適用されます.日本リウマチ学会では,「厚生労働省難治性疾患政策研究事業」の各調査研究班と協力して,診断基準,重症度分類,診療ガイドラインの整備を進めています.シェーグレン症候群も上記の基準を満たす難病と指定され(認定番号53),令和4年度の特定医療費受給者証保持者数は19,290人です.
シェーグレン症候群は,乾燥性角結膜炎,慢性唾液腺炎を主徴とする原因不明の自己免疫疾患で,発症好発年齢は30~60歳代,発症率は女性が男性の10倍以上です.欧米では,シェーグレン病と呼びます.眼・口腔の乾燥症状に加えて,他の粘膜表面の乾燥や疲労,関節痛を含む全身症状も一般的です.本疾患の70%は炎症性関節炎,皮膚病変,血液学的異常,神経障害,間質性肺疾患,腎障害,B細胞リンパ腫などの腺外病変を伴い,生活の質に大きな影響を及ぼします.しかし,一部の対症療法を除けば,治療法が確立されておらず,患者の継続的な不満・不安が大きな疾患です.
だからこそ,個別化された管理やケアが必要であり,そのための診療ガイドラインの整備が待望されていました.2017年に「自己免疫疾患に関する調査研究班」(住田孝之班長)を中心に,「シェーグレン症候群診療ガイドライン2017年版」が発表されましたが,今回,日本リウマチ学会ではシェーグレン症候群診療ガイドライン小委員会(川上純委員長)を中心に,「日本リウマチ学会 シェーグレン症候群診療ガイドライン2025年版」を作成し,パブリックコメントを経て理事会で承認しました.38のクリニカルクエスチョンに対し,GRADE法に準じて,2017年版に加えて2015年から2022年までのsystematic literature reviewが行われ,それぞれに推奨文,説明文,エビデンスレベルが記載されています.また,解説を補完するコラムを9項目作成し,さらに,「シェーグレン白書2020」による患者の実態と声の項を新たに作成しました.
作成にあたっては,「厚生労働科学研究費補助金自己免疫疾患に関する調査研究班」(渥美達也班長),「日本シェーグレン症候群学会」(中村英樹理事長)ほか,「日本口腔科学会」「日本眼科学会」「日本小児リウマチ学会」「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」「日本口腔外科学会」のご協力も得ました.ご尽力いただいた関係の皆様には心から厚く御礼申し上げます.
シェーグレン症候群診療の実践に広く役立てて,疾患を正しく理解し,様々な問題点に的確に対処することを目指していただければと期待致します.それによって,多くの患者の皆様の心の支えにつながればと心から祈念申し上げます.
2025年4月吉日
一般社団法人日本リウマチ学会
理事長 田中良哉
2025年版の序
2025年版の発刊にあたり
2017年版の発刊にあたり
2025年版の執筆者一覧
2017年版の執筆者一覧
推奨と解説の読み方
ガイドラインサマリー
診療アルゴリズム
重要用語の定義
略語一覧
第1章 作成組織・作成経過
1 ガイドライン作成組織
2 作成経過
第2章 スコープ
1 疾患トピックの基本的特徴
1-1 臨床的特徴
1-2 疫学的特徴
1-3 診療の全体的な流れ
2 診療ガイドラインがカバーする内容に関する事項
3 システマティックレビューに関する事項
4 推奨作成から公開に向けた最終調整,公開までに関する事項
第3章 推 奨
CQ 1 診断,治療方針の決定に有用な口腔検査は何か
コラム1 口唇生検をどういうときにすべきか
CQ 2 診断,治療方針の決定に有用な眼科検査は何か
コラム2 眼科検査についての実情―分類基準に含まれる検査と実施している検査の違いなど
CQ 3 予後に影響する腺外病変にはどのようなものがあるか
CQ 4 特徴的な皮膚病変は何か
CQ 5 特徴的な腎病変は何か
CQ 6 特徴的な末梢神経障害は何か
CQ 7 特徴的な中枢神経障害は何か
CQ 8 特徴的な肺病変は何か
CQ 9 特徴的な関節病変は何か
CQ 10 診断に有用な自己抗体は何か
コラム3 自己抗体の測定方法,流れ
CQ 11 診断に有用な血液検査所見は何か
CQ 12 腺病変の評価に有用な画像検査にはどのようなものがあるか
コラム4 画像検査の比較―どの検査を実臨床で使用しているか
CQ 13 唾液腺エコー検査は診断,重症度,治療反応性評価にどれだけ寄与するか
CQ 14 唾液腺MRI検査は診断,重症度,治療反応性評価にどれだけ寄与するか
CQ 15 唾液腺シンチグラフィ検査は診断,重症度,治療反応性評価にどれだけ寄与するか
CQ 16 唾液腺造影検査は診断,重症度,治療反応性評価にどれだけ寄与するか
CQ 17 予後に影響する合併症は何か
CQ 18 合併する悪性リンパ腫の特徴は何か
CQ 19 悪性リンパ腫合併のリスク因子は何か
CQ 20 小児患者の腺病変を反映する臨床所見は何か
CQ 21 小児患者の腺外病変を反映する臨床所見は何か
CQ 22 小児患者の診断に有用な血液検査所見は何か
CQ 23 小児患者の腺病変を反映する検査所見は何か
CQ 24 口腔乾燥症状の改善に有用な治療は何か
コラム5 口腔治療―口腔リンスやピロカルピンやセビメリンの漸増など治療の工夫
CQ 25 再発性唾液腺腫脹にはどのような対応が有用か
CQ 26 ジクアホソル点眼液・レバミピド点眼液・ヒアルロン酸点眼液は,ドライアイの角結膜上皮障害,涙液分泌量,自覚症状の改善に有用か
コラム6 眼科治療―点眼の工夫など
CQ 27 涙点プラグはドライアイの涙液量,角結膜上皮障害,自覚症状の改善に有用か
CQ 28 グルココルチコイドは腺病変の改善に有用か
CQ 29 グルココルチコイドは腺外病変の改善に有用か
CQ 30 免疫抑制薬は腺病変の改善に有用か
CQ 31 免疫抑制薬は腺外病変の改善に有用か
CQ 32 生物学的製剤は腺病変の改善に有用か
CQ 33 生物学的製剤は腺外病変の改善に有用か
コラム7 今後期待される新規治療戦略は何か?
CQ 34 グルココルチコイドの全身投与は小児患者の腺病変・腺外病変の改善に有用か
CQ 35 免疫抑制薬は小児患者の腺病変・腺外病変の改善に有用か
CQ 36 生物学的製剤は小児患者の腺病変・腺外病変の改善に有用か
CQ 37 漢方薬,ムスカリンレセプター刺激薬,気道粘液潤滑薬は,小児患者の腺外病変・腺病変の改善に有用か
CQ 38 女性患者の妊娠出産管理における留意点は何か
コラム8 抗SS?A/Ro抗体陽性女性から出生する児における新生児ループスの各病変の生じる頻度や生じやすい時期は?
コラム9 重症度分類で軽症になる患者さんでも軽症高額で医療費助成の対象となりうること
第4章 シェーグレン白書2020による患者の実態と声
1-1 調査の目的と方法
1-2 回答者の基本情報
1-3 診療内容や治療薬選択について
1-4 病状・病態解明や新薬治療開発への要望
1-5 日常生活や職業選択の制限,社会への要望について
1-6 初診から診断までの期間について
1-7 考察
第5章 公開後の取り組み
1-1 公開後の組織体制
1-2 導入
1-3 普及・活用・効果の評価
1-4 改訂
索引
第6章 付 録((株)診断と治療社HP(https://www.shindan.co.jp/)にて閲覧可能)
1 クリニカルクエスチョン設定表
2 エビデンスの収集と選定(各CQ,CQ1~CQ38)
SR-1 データベース検索結果
SR-2 文献検索フローチャート
SR-3 二次スクリーニング後の一覧表
SR-4 引用文献リスト
SR-5 評価シート:介入研究(行った場合のみ)
SR-6 評価シート:観察研究
SR-7 評価シート:エビデンス総体
SR-8 評価シート:エビデンス総体(絶対効果指標の結果を記入する場合)
SR-9 定性的システマティックレビュー
SR-10 メタアナリシス(行った場合のみ)
SR-11 システマティックレビューレポートのまとめ
SR-12 結果のまとめ(SoF 表)(ペア比較のメタアナリシス)
SR-13 結果のまとめ(SoF 表)(ネットワークメタアナリシス:様式1)
SR-14 結果のまとめ(SoF 表)(ネットワークメタアナリシス:様式2)
SR-15 Future Research Question(記載分のみ)
3 外部評価まとめ
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