呼吸器専門医を志す後期研修医・および指導医が対象.各疾患の診断・治療はもちろん,呼吸器医としての心構え,知っておくべき基本事項・検査,診察の進め方等,臨床現場のエッセンス180項目を収録.また、本書は呼吸器を学んでいく上で必要となる画像診断,臨床腫瘍学,さらに呼吸器外科,膠原病等々の,隣接科のエッセンスを賄ってくれる教科書,日常診療のポケットブック的なリファレンスにもなっている.
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目次
第1章 呼吸器専門医として知っておくべき基本事項
A解剖学・組織学 /富永正樹,福岡順也
B病理学
1.悪性新生物 /富永正樹,福岡順也
2.間質性肺炎 /富永正樹,福岡順也
C正常胸部CT像 /芦澤和人
D気管支鏡
1.正常気管支鏡所見 /大泉聡史
2.肺癌の気管支鏡所見 /大泉聡史
E各種疾患の臨床分類,病期分類表
1.臨床分類 /萩原弘一
2.TNM分類 /萩原弘一
3.結 核 /萩原弘一
4.じん肺 /萩原弘一
F膠原病・特定疾患の診断基準 /萩原弘一
G身体障害者診断書・意見書(呼吸器機能障害用) /萩原弘一
H介護度,要介護認定 /萩原弘一
I呼吸器で頻用される薬剤
1.ステロイド /乾 直輝
2.気管支拡張薬 /乾 直輝
3.抗コリン薬 /乾 直輝
4.抗菌薬 /舘田一博
5.免疫抑制薬 /稲瀬直彦
6.麻薬とWHO癌性疼痛に対する3段階除痛方式 /小林国彦
J抗腫瘍薬
1.抗腫瘍薬の特徴 /岡本 勇
2.抗腫瘍薬の効果判定 /岡本 勇
3.抗腫瘍薬の副作用のGrade /岡本 勇
K呼吸器で使用される計算式 /三木 誠
第2章 呼吸器研修でのアドバイス
A呼吸器専門医への道
■呼吸器専門医を目指す諸君へ /中西洋一
B研修の概要
1.後期研修と研修施設の選び方 /中西洋一
2.後期研修医のライフスタイル /中西洋一
3.専門医試験の概要 /中西洋一
C勉強の仕方
1.文献検索の仕方 /木下勝弘,西岡安彦
2.医学論文の読み方・書き方 /木下勝弘,西岡安彦
3.学会への取り組み方 /木下勝弘,西岡安彦
4.大学院・医学博士・留学について /木下勝弘,西岡安彦
5.呼吸器科医にとって研究とは何か? /木下勝弘,西岡安彦
6.利益相反 /興梠博次
第3章 医療現場でのコミュニケーションと医療事故
Aチーム医療
1.看護師との連携 /丹野美紀
2.薬剤師との連携 /田中昌代
3.理学療法士との連携 /佐野裕子
4.MEとの連携 /岩下邦夫
5.臨床検査技師との連携 /國島広之
6.医療相談室との連携 /丸岡良子,目黒英子
7.医療ボランティアと医療現場 /森田晃弘
B医療事故の予防と対応
1.医師法およびその関連法 /野木尚郎
2.研修医の日常生活の注意点 /大塚英郎,海野倫明
3.研修医の当直時の注意点 /又野秀行
4.インシデントレポート /松田千恵子
5.医療事故への対応 /齋藤泰紀
6.医療従事者に対するケア
①精神的ケア /吉川 徹
②身体負担の軽減 /吉川 徹,和田耕治,保坂 隆
C感染対策
1.院内感染対策 /徳江 豊
2.輸入感染症 /原 悠,前田卓哉
D患者および家族への説明(インフォームド・コンセント)―気管支鏡検査,胸腔鏡下肺生検,手術,放射線・化学療法,病理解剖,患者検体を用いた研究 /三木 誠
第4章 社会と医療
呼吸器診療と社会
1.呼吸器診療の社会的需要と現状・未来 /木村 弘
2.女性医師支援 /駒瀬裕子
3.医療現場でのリスクマネジメント /高橋祥友
4.うつ状態と自殺 /高橋祥友
第5章 診察の進め方
A診 察
1.呼吸器診療における医療面接 /冲永壮治
2.呼吸器患者の身体所見のとり方 /冲永壮治
B外国人患者への対応
■英語での問診 /赤津晴子
第6章 研修で学ぶべき検査
A血液検査(一般検査,特殊検査) /片岡健介
B画像診断
1.胸部単純X写真とCT
①胸部単純X写真の基本的事項 /芦澤和人
②CTの基本的事項 /森谷浩史
③異常所見の解析
Ⅰ.肺の限局性陰影 /青木隆敏
Ⅱ.肺のびまん性陰影 /小野麻美,岡田文人
Ⅲ.肺以外の病変 /栗原泰之
2.MRI /藪内英剛
3.核医学検査 /小川洋二
C血液ガス検査
1.動脈血液ガス検査 /桂 秀樹
2.パルスオキシメータ /桂 秀樹
D呼吸機能検査
1.スパイログラム /一和多俊男
2.その他の呼吸機能検査 /一和多俊男
E喀痰・胃液検査 /菅野治重
F気管支鏡検査 /大泉聡史
G各種生検手技
1.CTガイド下肺生検 /中川純一
2.エコーガイド下肺生検 /中川純一
3.胸膜生検 /中川純一
4.生検所見の解釈 /富永正樹,福岡順也
※.TBLB(気管支鏡の項参照),VATS(外科手術の項参照),開胸肺生検(外科手術の項参照)
第7章 研修で学ぶべき処置,治療法
1.吸 引 /山崎 進
2.酸素投与 /山崎 進
3.吸入療法(手技,去痰器) /山崎 進
4.気胸,胸水への対応 /山崎 進
5.呼吸リハビリテーション /塩谷隆信
6.人工呼吸療法 /中原善朗,岡村 樹
7.在宅人工呼吸療法 /岡村 樹
8.在宅酸素療法 /岡村 樹
第8章 特別な注意を要する患者グループ
1.妊婦と呼吸器病 /小林隆夫
2.老人と呼吸器疾患 /寺本信嗣
3.合併症のある患者と呼吸器病
①循環器病患者 /髙恊M吾,林 彰仁
②糖尿病患者 /林 龍二,戸邉一之
③腎不全患者 /中村典雄
第9章 救急患者への対応―呼吸器緊急処置クイックリファレンス
1.気管支喘息発作 /臼井一裕
2.呼吸停止・心停止 /臼井一裕
3.緊急処置が終わったら /臼井一裕
4.各種疾患への対処 /臼井一裕
第10章 各疾患のみかたと対応
A心不全,呼吸不全
1.心不全 /塩井哲雄
2.呼吸不全 /南方良章
B肺炎,気道感染症
1.急性上・下気道炎 /高橋 洋
2.市中肺炎 /長岡健太郎,栁エ克紀
3.院内肺炎 /朝野和典
4.免疫不全状態にある患者の肺炎 /照屋勝治
5.人工呼吸器関連肺炎 /知花なおみ
6.抗菌薬の正しい使い方 /菊地利明
7.肺化膿症 /平間 崇
8.インフルエンザと新興呼吸器ウイルス /川名明彦
9.肺結核症 /鈴木克洋
10.非結核性抗酸菌症 /藤田昌樹
11.肺真菌症 /松井芳憲,赤川志のぶ
12.肺・胸腔寄生虫症 /大西健児
C慢性気道炎症を原因とする疾患
1.気管支喘息 /中込一之
2.慢性閉塞性肺疾患 /石井健男
3.嚢胞性肺疾患 /金子公一
4.気管支拡張症 /小橋吉博
5.副鼻腔気管支症候群 /小橋吉博
6.びまん性汎細気管支炎 /小橋吉博
7.閉塞性細気管支炎 /今泉和良,長谷川好規
8.ニコチン依存症と喫煙関連肺疾患 /阿部眞弓
D腫瘍性疾患
1.原発性肺癌 /田中洋史,吉澤弘久
2.転移性肺腫瘍 /松原信行
3.まれな肺腫瘍 /松原信行
4.縦隔腫瘍 /坂口浩三
5.胸膜腫瘍 /軒原 浩
E間質性肺疾患
1.特発性間質性肺炎 /岩本博志
2.薬剤性肺障害 /大西広志
3.放射線肺炎 /濱田泰伸
F免疫系が深く関与する肺疾患
1.過敏性肺炎 /宮崎泰成
2.サルコイドーシス /濱田泰伸
3.好酸球性肺炎 /庄田浩康
4.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 /庄田浩康
5.膠原病,血管炎と肺疾患 /半田知宏,長井苑子
G特殊な肺疾患
1.Goodpasture症候群 /木村守次,深川雅史
2.リンパ脈管筋腫症 /佐藤輝彦
3.肺ランゲルハンス細胞組織球症 /田澤立之
4.IgG4関連疾患 /松井祥子
5.アミロイドーシス /前野敏孝
6.肺胞蛋白症 /鈴木拓児
7.Relapsing polychondritis /東 直人
8.肺胞微石症 /仁多寅彦
9.炎症性筋線維芽細胞腫 /松元信弘,中里雅光
H職業性肺疾患 /玄馬顕一
I換気障害
1.換気障害:序論 /赤柴恒人
2.原発性肺胞低換気症候群 /赤柴恒人
3.睡眠時無呼吸症候群 /赤柴恒人
4.過換気症候群 /赤柴恒人
J肺高血圧をきたす疾患
1.肺血栓塞栓症
①急性肺血栓塞栓症 /田辺康宏
②慢性肺血栓塞栓症 /田辺康宏
2.原発性肺高血圧症 /佐藤 徹
3.膠原病による肺高血圧症 /小倉高志
K肺血管の交通異常
1.肺動静脈瘻 /花田豪郎,岸 一馬
2.肺分画症 /稲垣雅春
第11章 呼吸器外科
1.基本的呼吸器外科手技
①開胸法 /齋藤 元
②胸腔鏡下肺生検 /大石 久
③縦隔鏡 /石橋洋則
2.呼吸器外科手術麻酔 /渋澤雅和,黒澤 伸
3.代表的疾患の手術適応・術式・術後管理
①肺 癌
Ⅰ.肺切除術
Ⅰ-①病期上の適応と手術成績 /桜田 晃
Ⅰ-②術前評価と機能的適応 /星川 康
Ⅰ-③術後合併症と周術期管理 /坪地宏嘉
Ⅰ-④術後補助化学療法について /福本紘一,横井香平
Ⅱ.胸腔鏡下手術 /坂尾幸則
Ⅲ.気道狭窄に対する気管支鏡下処置 /遠藤千顕
②転移性肺腫瘍 /伊藤宏之,中山治彦
③胸膜中皮腫:胸膜肺全摘術 /濵武基陽,杉尾賢二
④自然気胸 /野田雅史
⑤重症筋無力症,前縦隔腫瘍に対する胸腔鏡下手術 /佐渡 哲
⑥肺アスペルギローマ /白石裕治
⑦急性膿胸,慢性膿胸 /岡林 寛
4.肺移植
①脳死肺移植 /岡田克典,近藤 丘
②生体肺葉移植 /岡田克典,近藤 丘
第12章 放射線治療
1.放射線治療の基本的事項 /西淵いくの,永田 靖
2.代表的治療法
①非小細胞肺癌 /中山優子
②小細胞肺癌 /塩山善之
③定位放射線治療 /大西 洋,荒木 力
④胸膜腫瘍,縦隔腫瘍 /副島俊典
⑤緩和的治療(脳転移・骨転移) /林 靖之
第13章 知っておくべき知識と制度
1.個人情報保護法 /長内 忍
2.医療保険制度 /小林弘祐
3.公費負担制度 /小林弘祐
4.医療費の実例 /小林弘祐
5.保険の査定 /小林弘祐
6.民間の医療保険 /井戸美枝
7.医薬品副作用被害救済制度 /久道周彦
8.感染症届け出基準 /國島広之
第14章 書類の書き方
1.紹介状,紹介医師への返事,病歴サマリー,診断書の書き方 /久田哲哉
2.英文カルテ,紹介状の書き方 /赤津晴子
付 録
略語一覧
索 引
◆Column
Last man standing /三木 誠
大医,中医,小医 /三木 誠
修・破・離 /三木 誠
積極的な連携で専門医不足に対応 /駒瀬裕子
See one,do one,teach one ! /三木 誠
「地方における呼吸器診療の均てん化.北海道は広いんです」 /大泉聡史
ゴミ片づけまでが一連の手技 /片岡健介
20年経っても診療では毎日悩むことばかり /中村典雄
外来の一日 /藤田昌樹
臨床研究の審査 /田澤立之
呼吸器外科研修のすすめ・呼吸器外科への道 /坂口浩三
急変時の気道確保のススメ /石橋洋則
ガンを看取る /石橋洋則
「胸腔ドレーン挿入時,患者さんがギャッというのは当たり前?」
(局所浸潤麻酔をしたら,処置まで5分は待ちましょう) /星川 康
針井先生? Hurry(ハリー)先生? /石橋洋則
「女性への胸腔ドレーン挿入時には,まず座位で乳房外側縁にマーキングを」 /星川 康
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序文
シリーズ総監修の序
「研修ノート」は,かつての「研修医ノート」シリーズを全面的に刷新し,新シリーズとして刊行するものである.
旧シリーズ「研修医ノート」は内科研修医のためのテキストとして1993年に出版された.その後,循環器,産婦人科,小児科,呼吸器,消化器,皮膚科など,診療科別に「研修医ノート」が相次いで刊行された.いずれも一般のマニュアルとは異なり,「基礎的な手技」だけではなく「医師としての心得」や「患者とのコミュニケーション」などの基本,あるいは「書類の書き方」,「保険制度」など,重要な事項でありながら平素は学ぶ機会の少ない事項を取り上げ,卒後間もない若手医師のための指導書として好評を博してきた.
しかしながら,時代の変化により研修医に要求される内容は大きく変化してきた.“医療崩壊”が社会問題となるなかで,研修教育の充実はますます重要となりつつある.さらに医療への信頼回復や医療安全のためには,患者やスタッフとのコミュニケーションの改善が必須であることはいうまでもない.
このような状況に鑑み,「研修医ノート」シリーズのあり方を再検討し,「研修ノート」の名のもとに,新シリーズとして刊行することとした.読者対象は後期研修医とし,専門分野の決定後に直面するさまざまな問題に対する考え方と対応を示すことにより,医師として歩んでいくうえでの“道標”となることを目的としている.
本シリーズでは,全人的教育に必要な「医の基本」を記述すること,最新の知見を十分に反映し,若い読者向けに視覚的情報を増やしつつも,分量はコンパクトとした.編集・執筆に当たっては,後期研修医の実態に即して,必要かつ不可欠な内容を盛り込んでいただくようお願いした.“全国の若手医師の必読書” として,本シリーズが,長く読み継がれることを願っている.
終わりにご執筆頂いた諸先生に心より感謝を申し上げます.
2011年4月吉日
東京大学大学院医学系研究科内科学(循環器内科学)教授
永井良三
編集の序
医療は社会と密接に関連しており,その様相は国や地域によって全く異なる.
医療の在り方は,その社会固有の制度,文化,慣習に影響されざるをえない.それゆえ,教科書には社会的な面を大きく盛り込むべきではないか.これが,本書の前身となる「研修医ノート」の編集方針だった.
「研修ノート」でも,この方針は変わらない.
さらに呼吸器病学は,感染,腫瘍,免疫,代謝など,あらゆる学問分野が一同に会する一大分野である.それを反映して,呼吸器病診療には多科横断的なアプローチが不可欠になっている.様々な診療科の目で呼吸器病学をみられるよう,呼吸器外科,放射線科の先生方,さらに呼吸器内科学分野でも市中病院で活躍している先生,大学で指導的な立場にある先生に編集いただいた.
そのため,本書は,呼吸器を学んでいく上で必要となる画像診断,臨床腫瘍学,さらに呼吸器外科,膠原病等々の,隣接科のエッセンスを賄ってくれる教科書,日常診療のポケットブック的なリファレンスにもなっている.
本書は
呼吸器学の知識の提供
「社会の中に存在する医療」の理解に必要な知識の提供
呼吸器診療に密接に関連する他科の知識の提供
ポケットブック的なリファレンスの提供
医療現場に根ざした実際的な知識の提供
のための教科書である.
本書の計画から2年が経った.辛抱強く本書の編集を行ってくださった小川原智氏に感謝を申し上げたい.
2011年4月6日
編者を代表して
埼玉医科大学呼吸器内科教授
萩原 弘一