非侵襲的検査の定番として一般健康診断に適用されるほか,肝・胆・膵の精診においても力を発揮する腹部エコー法の実践ガイドブックである.初期研修医,技師のニーズに沿って,本法に独特な不明瞭画像の読み方を具体的症例に沿って解説する.
各章冒頭にまとめのメモを掲載し,より効率よく学習できるよう配慮した.症例写真をひとまわり大きくしてよみやすくしたほか,解説シェーマを写真に変更して具体性を高めた.
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目次
I 腹部エコー法の基礎
1.腹部エコー検査の基礎知識
A. 検査の実際
B. 断層法の基本的断面像
II 実践腹部エコー
2.肝 臓 8
A. 肝の解剖
B. 基本走査と正常像
C. 占拠性疾患
1. 肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)
2. 胆管細胞癌(肝内胆管癌)(cholangiocellular carcinoma:CCC) 19
3. 転移性肝癌(metastatic liver cancer)
4. 肝血管腫(hemangioma)
5. 肝嚢胞(liver cyst)
6. 肝膿瘍(liver abscess)
7. 腺腫様過形成(adenomatous hyperplasia)
8. 限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH) 24
9. 炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor)
D. びまん性疾患
1. 急性肝炎(acute hepatitis:AH)
2. 慢性肝炎(chronic hepatitis:CH)
3. 肝硬変(liver cirrhosis:LC)
4. 脂肪肝(fatty liver)
5. うっ血肝(congestive liver)
6. 日本住血吸虫症(Schistosomiasis japonica)
3.胆嚢・胆管
A. 胆嚢,胆管の解剖
B. 基本走査と正常像
C. 主な疾患
1. 胆嚢結石症(cholecystolithiasis,gall stone)
2. 胆泥(biliary sludge,debris echo)
3. 胆嚢炎(急性・慢性)(cholecystitis)
4. 胆嚢腺筋症(アデノミオマトーシス:adenomyomatosis)
5. 胆嚢ポリープ(gallbladder polyp)
6. 胆嚢癌(gallbladder cancer)
7. 総胆管結石(choledocholithiasis)
8. 肝内結石(hepatolithiasis)
9. 肝外胆管癌 (bile duct cancer)
10. 先天性総胆管拡張症(総胆管嚢腫)
(congenital dilatation of biliary duct)
11. 胆道気腫(pneumobilia)
4.膵 臓
A. 膵の解剖
B. 基本走査と正常像
C. 主な疾患
1. 膵癌(pancreatic cancer)
2. 膵嚢胞(pancreatic cyst)
3. 膵嚢胞腺腫 (cystadenoma of pancreas)
4. 膵炎(pancreatitis)
5.腎臓・副腎
A. 腎,副腎の解剖
B. 基本走査と正常像
C. 主な疾患
1. 腎細胞癌(renal cell carcinoma)
2. 腎血管筋脂肪腫(angiomyolipoma)
3. 腎嚢胞(renal cyst)
4. 腎結石(renal stone)
5. 尿管結石(ureteral stone)
6. 水腎症(hydronephrosis)
7. 慢性腎不全( chronic renal failure:CRF)
8. 褐色細胞腫(pheochromocytoma)
9. 形態異常
6.脾臓・門脈
A. 脾,門脈の解剖
B. 基本走査と正常像
C. 主な疾患
1. 脾腫(splenomegaly)
2. 脾嚢胞(splenic cyst)
3. 副脾(accessory spleen)
4. Gamna-Gandy結節
5. 悪性リンパ腫(malignant lymphoma)
7.消化管・後腹膜・その他
A. 消化管の解剖
B. 基本走査と正常像
C. 主な疾患
1. 胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor of stomach)
2. 胃癌(gastric cancer)
3. 十二指腸潰瘍穿孔
4. 腸重積(invagination)
5. 腸閉塞(イレウス:ileus)
6. 虫垂炎(appendicitis)
7. 大腸憩室炎(diverticulitis)
8. 全身性エリテマトーデス(SLE)の小腸病変
9. 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)
10. クローン病(Crohn disease)
11. 大腸癌(colon cancer)
D. 後腹膜疾患
1. リンパ節腫大(lymphadenopathy)
2. 腹部大動脈瘤(aneurysm of abdominal aorta:AAA)
3. 胸水(pleural effusion)
4. 心嚢液(pericardial effusion)
8.ドプラ法
A. ドプラ法の基礎
B. 各種疾患のカラードプラ
III 付録
1.肝腫瘤超音波断層法の診断基準
A. 存在診断
B. 存在部位診断
C. 質的診断
2.膵腫瘤超音波断層法の診断基準
A. 存在診断
B. 質的診断(充実性病変)
3.各臓器の正常計測値
索 引
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序文
はじめに
本書は,腹部超音波検査に従事する医師や技師が,日常診療の合い間にもパラパラとめくって見ることができるようなハンドブックを目標にしたものである。その前身は「腹部エコー法マスターガイド」として初版で6刷,改訂版で5刷を重ねることができた。読者諸賢のご厚情に感謝する次第である。基礎的な部分や教科書的要素をあえて割愛し,どのページからでもすぐ現場で役立つような構成が認められたものと,いささかの自負もある。さらに,この本が本当に実用的であるために,一般的な超音波の教科書にない現場の本音や現時点での超音波診断の限界をもあえて収載したことへの反響も少なからずいただいた。
このたび,新しいシリーズとして再スタートを切ることになり,改めて内容を吟味し,アップデートをはかる中で,近年,疾患概念の変更があった膵疾患については特に留意した。また,各臓器についてその臓器をみるポイントを冒頭にまとめた。あえて,できることとできないことをわかっていただこうという視点で書いたつもりである。こうした努力の結実が,読者の方々のベッドサイド診療に役立てば,著者らの最大の喜びである。
人間が独りでは生きていけないように,本書の成長過程にはさまざまな方々の言葉に尽くせないご助力があった。特に,広島市民病院超音波検査室の技師の皆さんや医師の皆さん,貴重な写真をご提供いただいた広島赤十字原爆病院臨床検査課長の西島敬治技師に心よりお礼申し上げる。
2011年3月
著者ら