64列CTの急速な普及とともに心疾患の最新診断技術として注目されている心臓CTの実践書である.教科書的記載を極力排し,現場で即活用できるタイムリーな内容を盛り込んだ.監修ならびに編集の各氏はその創生期から心臓CTの普及に努力した経験を基に,具体的な現状認識に立脚して読者のニーズに即応できるよう企画を練り上げている.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
1 心臓CT画像における冠動脈の解剖
A. 冠動脈の解剖
B. CT画像での冠動脈のセグメント分類の把握
2 冠動脈狭窄,プラーク診断に必要な画像の種類とその解釈
A. MDCTにおける各種画像表示法の比較
B. 冠動脈狭窄
C. プラーク診断
3 前処置,撮影,再構成,解析の流れ
A. 検査前の注意事項
B. 検査時の投薬と指示
C. 単純CT
D. 造影CTの撮影
E. 再構成法
F. 解析の手順
4 撮影プロトコール□■この機種で撮影する
① 64列CT
② Philips社Brilliance iCT
③ 320列CT(Aquilion one)
④ Definition Flash 50
⑤ HDCT(Discovery CT 750HD)
5 疾患別画像の解釈
① 冠動脈狭窄,閉塞例,ステント
② CTでみる急性冠症候群のプラーク,他モダリティとの比較
③ MDCTによるCABG術後の診断
④ 先天性冠動脈奇形,冠動脈myocardial bridge,冠動脈瘤,
大動脈炎症侯群,心筋疾患
6 被ばく量の意味と減少させる工夫
A. 放射線被ばくの基礎知識
B. 心臓CTにおける被ばく低減
C. 被ばく低減の補助手段としてのβ遮断薬
7 画質が悪い際の対応と画質向上のための工夫
A. 息止め不良症例
B. 高心拍症例・心拍不安定症例
C. 不整脈症例でより良好な画質を目指す
D. 心電図同期単純撮影
8 医療安全の面からみた心臓CT
A. 造影剤副作用発現時の処置について
B. 血管外漏出時における処置
C. ビグアナイド系糖尿病薬服用患者への注意
D. β遮断薬との併用について
E. ペースメーカー使用患者への注意
F. 造影剤使用・被ばく線量について
G. 医療機器安全管理─CT
心臓CT用語集
索 引
ページの先頭へ戻る
序文
監修にあたって
わずか3年ほどの間に,64列を中心にしたMDCTは驚異的な普及を遂げ,今や冠動脈疾患をはじめとした心臓疾患の診断,治療に欠くことのできない重要な手段であり,侵襲度の低い安全な方法として多くの患者さんの期待に応え得る存在となっています。しかし,その発展,普及があまりにも急激であったため,これまで出版された書籍の多くは先ず医家向けのものであり,難解で実用性に欠くきらいがありました。本書はこのような状況を発展的に解決すべく,CT室の現場や解析室など実践の中で臨機応変に活用していただくことを主眼に据えて企画いたしました。
この目的に沿うため,今回は監修者3名,編集者3名と計6名もの布陣で慎重に企画を練り上げました。特に器材の説明や原理などすでに他書に記載されているものは極力省き,実践を多く経験され技術的にも卓越した方々を厳選して執筆をお願いしました。こうした事情から執筆者には医師だけではなく,日夜現場で活躍されている放射線技師や管理部門の方を網羅し,過不足なきよう万全の配慮をしたつもりであります。なかでも特に重点配慮したのは,実績の豊富な施設で実際に活用されているプロトコール,撮影時のコツ,合併症への配慮をはじめ,読影の基本心得と難渋する症例,安全管理や精度管理,さらには初心者にとっての難解な用語に至るまで懇切丁寧に解説しました。
本書は心臓CTに取り組み始めて間もない施設やこれから取り組もうとする施設のスタッフにとって,まさに最適な解説書であると確信しています。大いに活用されんことを期待します。
2011年3月
児玉和久 大阪警察病院名誉院長,尼崎中央病院顧問(心臓血管センター長)