硬膜動静脈瘻を治療するうえで重要となる血管解剖・成因などの疾患の理解から,血管内治療である塞栓術の基礎知識,および治療の標準手技・応用手技を写真・図表を多用してわかりやすく解説.新たに開発された液体塞栓物質なども紹介し,日々進歩しているデバイスや技術をあますところなく網羅.硬膜動静脈瘻塞栓術をまとめた初めての書.『頚動脈ステント留置術』『脳動脈瘤コイル塞栓術』に続く第三弾.
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目次
硬膜動静脈瘻塞栓術ハンドブック
CONTENTS
序文 /滝 和郎
A 硬膜動静脈瘻の治療の歴史 /滝 和郎
B 血管奇形の分類-脳・脊髄・頭頚部 /小宮山雅樹
C 硬膜動静脈シャントの成因 /寺田友昭
D 硬膜動静脈瘻の自然歴 /里見淳一郎
E 硬膜動静脈瘻の分類 /当麻直樹
F 血管発生-硬膜動静脈瘻に関連する脳脊髄静脈と静脈洞の発生
/田中美千裕
G 動脈解剖
1.内頚動脈・顎動脈系 /松丸祐司
2.椎骨動脈系,後頭咽頭動脈系,脊髄 /江頭裕介,吉村紳一
H 静脈解剖
1.海綿静脈洞,深部静脈 /久保道也
2.脳表静脈,上矢状・横・S状静脈洞,頭蓋頚椎移行部,脊髄 /西尾明正
I 硬膜動静脈瘻の画像診断 /清末一路,田上秀一
J
硬膜動静脈瘻塞栓術の適応-治療適応,治療法(TAE/TVE)の選択,
インフォームドコンセント /坂井信幸,坂井千秋
K 硬膜動静脈瘻塞栓術の合併症と対策 /杉生憲志
L 使用機材・周術期管理 /朝倉文夫
M 塞栓物質-コイル,NBCA,OnyxRなど /宮地 茂
N 部位による診断・治療のポイント
1.海綿静脈洞部 /長島 久
2.横・S状静脈洞部 /近藤竜史,松本康史
3.前頭蓋底部,SSS部,テント部,ACC部,頭蓋頚椎移行部など /松原俊二
4.脊髄 /淺野 剛
O 標準手技
1.テクニカルな観点から標準的なTAE,液体塞栓物質を用いたTAEなど
/村尾健一
2.標準的なTVE /根本 繁
P 応用手技
1. Direct sinus packing /阪井田博司
2. superselective shunt occlusion /佐藤 徹
3.ステントを用いた硬膜動静脈瘻の治療 /中原一郎,岩室康司
4. OnyxRによる経動脈的塞栓術 /新見康成
索 引
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序文
硬膜動静脈瘻は比較的まれな疾患でありながら,近年の脳神経血管内治療の発展の機動力になった,興味深い疾患である.複雑な血行動態や病期の進行など,血管内治療の初心者にとっては,若干難解な疾患かと思う.一方,病態や成因が解明されてきた時期ならびにその治療法の変遷が行われた時期が,血管内治療の発展の時期に一致したことから,脳神経血管内治療の発展とともにあった疾患である.脳神経血管内治療専門医にとって,この疾患ほど,その診断治療を通じて,血管解剖・カテーテル・塞栓材料の適切な選択,カテーテル誘導技術など多くを知ることができるものはないように考えている.
さて知る人ぞ知るという印象のある本疾患だけを取り上げた医学書は,わが国ではこの本が最初ではないかと思う.各章を御担当いただいた先生方それぞれのこの疾患についての熱い思いがこもった,血管内治療を学ぶ者にとって,内容が豊富で濃厚な本に仕上がっている.ぜひお楽しみいただきたい.
2011年9月
三重大学理事・副学長
滝 和郎