「食物アレルギーの診療の手引き2011」「食物アレルギー診療ガイドライン2012」の発表に伴いupdate.平易で分かりやすい内容はそのままに,消化管アレルギー,エピペン®の使用上の注意点など,社会事情に即した項目も取り上げる.食物アレルギーの病態から,検査法,治療,日常生活における注意点や指導まで,保護者と園・学校関係者との“食物アレルギーの理解のかけ橋”となるよう,必要な知識を盛り込んでいる.
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目次
保護者と学校の先生に伝えたい
食物アレルギーの基礎知識改訂第2版 もくじ
執筆者一覧
改訂の序
初版の序
I 食物アレルギーってどんな病気?
1 食物アレルギーはどうして起こるの? /安達克郎
2 食物アレルギーの子の身体の中ではこんなことが起こっています /西野昌光
3 食物アレルギーの最近の調査 /黒坂文武
4 食物アレルギーを起こす食物
1)卵アレルギー /伊藤節子
2)牛乳アレルギー /小野 厚
3)大豆アレルギー /山本明美
4)小麦アレルギー /谷内昇一郎
5)ピーナッツアレルギー・ナッツ類アレルギー /森岡芳雄
6)米アレルギー /田原義和
7)魚介類アレルギー /冨永弘久
8)食肉アレルギー /黒田英造
9)果物・野菜アレルギー /西野昌光
5 食物アナフィラキシーの症状とその対処方法 /黒坂文武
6 食物アレルギーの自然経過 /冨永弘久
II 病院へ行く前にこれだけは知っておこう
1 診察室ではこんなことを聞かれます /木村彰宏
2 食物アレルギーを診断,確認する検査
1)発見がいっぱいの食物日誌―つけ方とその読み方 /佐守友仁
2)適切な診断が治療のカギ―検査法とその評価 /佐守友仁
3)食物の除去試験と経口負荷試験 /木村彰宏
III 食物アレルギーの治療
1 基本的な治療の流れ /木村彰宏
2 除去食療法 木村彰宏
3 食物アレルギーのコントロールに使用される薬 /佐守友仁
4 いつから食べられるようになるの? /森岡芳雄
5 食物アレルギーの子が使わないほうがよい薬 /笹井みさ
IV 学校生活における食物アレルギーの知識
1 保育園・幼稚園・学校に提出する書類の書き方 /佐守友仁
2 医療者・園・学校関係者みんなと話し合おう /木村彰宏
3 給食を楽しもう! /森岡芳雄
4 誤食が起きにくい給食のとりかた /木村彰宏
5 お弁当を持たせる場合 /田村京子
6 もし園・学校で発症したら―エピペン® の使い方と対応 /黒坂文武
7 食べ物を使う授業を受けるとき /田村京子
8 校外活動や宿泊をするとき /田村京子
9 食物依存性運動誘発アナフィラキシー /谷内昇一郎
10 学校そしてクラスメイトとうまくやっていくために /赤城智美
11 子どもをもつ女性医師の立場からみた食物アレルギー /田中由起子
V 家庭生活における食物アレルギーの知識
1 除去食の解除経過中の注意点 /木村彰宏
2 きょうだいがいる場合に気をつけたいこと /木村彰宏
3 食物アレルギーの子のおやつ /田村京子
4 楽しく外食するために /安達克郎
5 栄養のとり方を工夫しよう―代わりの食品や調理方法 /笹井みさ
VI 食物アレルギーに関連したアレルギー疾患についての知識
1 アトピー性皮膚炎
1)アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係 /木村彰宏
2)家庭での対策 /田原義和
3)園・学校での対策 /森岡芳雄
4)ステロイド外用薬を含む軟膏療法 /佐守友仁
2 気管支喘息
1)気管支喘息にはこんな種類がある /西野昌光
2)気管支喘息の治療 /黒坂文武
3)運動と喘息―学校の管理区分に基づいた管理方法について /黒坂文武
3 花粉症
1)何に反応しているのかつきとめよう /森岡芳雄
2)アレルギー性鼻炎と鼻副鼻腔炎,中耳炎 /小島崇嗣
付表 アレルギー専門用語集
Column
・仮性アレルゲンとは /田原義和
・消化管アレルギーとは /山田佳之
・解除のための経口負荷試験 /木村彰宏
・経口減感作療法とは /木村彰宏
・買う前にうしろをチェック! 食品の表示制度 /西野昌光
・東日本大震災の教訓 /赤城智美,木村彰宏
・食物アレルギーの子の予防接種―予防接種は受けられる? /黒田英造
・学校でのシャワー浴について /小島崇嗣
・制服や体操服への気配り /森岡芳雄
・野外活動や宿泊をするときは /冨永弘久
・動物との接触やほこりの多い場所での注意点 /黒田英造
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序文
改訂の序
本書初版は,2011 年 4 月に上梓されました.その後,『食物アレルギーの診療の手引き 2011』『食物アレルギー診療ガイドライン 2012』が刊行されたことをうけ,最新の情報をお伝えしようと改訂版を出す運びとなりました.
この一年を振り返りますと,2011 年 5 月には,加水分解コムギを含む石鹸が経皮感作を引き起こし,自主回収に至る事件が起きました.9 月からアドレナリン自己注射薬(エピペン®)が保険適応となり,その普及に大きな弾みがつきました.エピペン®を携帯する子どもが増えたことで,保育所や学校などの集団生活の場でも,食物アナフィラキシーへの取り組みが広がりました.なにより,2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は,食物アレルギーがある子どもの,災害時の生活の困難さという深刻な問題を浮き彫りにしました.
今回の改訂にあたり,これらの社会事情の変化に応えるべく,いくつかの項目を追加いたしました.食物アレルギーの基本的な知識を深めるために“消化管アレルギー”の項目を追加し,経皮感作の問題やアナフィラキシーの対応とエピペン®の使用上の注意点について加筆いたしました.また,社会的な視点として,アレルギーがある子どもをもつ女性医師の視点からよりよいケアと対処法を考えるとともに,2011 年の東日本大震災における食物アレルギーの問題と教訓についても取り上げました.
お母さん方の生の疑問から出発し,できるだけ易しい言葉でお答えしようという視点は,改訂版でも大切にするよう心がけました.
本書が,食物アレルギーでお悩みのお母さん方のよき相談相手となり,食物アレルギーへの理解の輪がさらに広がることを,強く願っています.
2012 年 3 月
兵庫食物アレルギー研究会代表世話人 木村彰宏
初版の序
本書を企画・編集した兵庫食物アレルギー研究会は,1991 年 2 月に発足し,2011 年 2 月に 200 回目の例会を迎えました.例会では病院や診療所で働く小児科医師が集まり,日常診療でお母さん方からお受けした,食物アレルギーに関する様々な心配事や悩みの情報を交換しあっています.その交流のなかで,「食物アレルギーの子どもと学校生活」に焦点を当てた本書が企画されました.
本書には,食物アレルギーの子どもが園・学校生活を送るうえでの知識が満載されているとともに,二つの特徴があります.
一つめは,お母さん方の生の疑問にお答えする視点で書かれたことです.たとえば私たちがお受けしたご相談に,学齢期に達する頃になり学校に相談に出かけたところ,「大丈夫.心配しすぎないでください」と言われ,食物アナフィラキシーを軽く考えておられるようでかえって心配になった,食物アナフィラキシーが起きたときのエピソードを詳しく説明すると,「学校では何もできません.お弁当を持ってこられたら大丈夫でしょう」と敬遠されてしまったなど,何をどのようにお願いすれば良いのかわからないというものがありました.学校の先生と良い関係をつくるためには,正しい医学情報と,それを適切に伝える方法が必要です.本書には,お母さんの疑問にお答えする情報が網羅されています.
二つめは,お母さんにもわかりやすいよう,できるだけ易しい言葉で書かれていることです.専門用語をなるべく少なくして,一般の方にもわかりやすい言葉で説明するように心がけました.食物アレルギーの子どもが,安心して豊かな学校生活を送るためには,大勢の人が食物アレルギーへの深い理解を持たれることが大切です.本書が理解の輪を広げ,食物アレルギーの子どもの応援団を増やしていく一助となれば幸いです.
本書は,大阪総合保育大学児童保育学部 小林陽之助教授に監修をご担当頂きました.先生のご尽力がなければ本書を世に送り出すことはできなかったでしょう.心より御礼申し上げます.
本書が,お母さんと学校の先生方との「食物アレルギーの理解のかけ橋」となることを,強く願っています.
2011 年 3 月
兵庫食物アレルギー研究会代表世話人 木村彰宏