新生児聴覚スクリーニングでの聴性脳幹反応(ABR),耳音響放射(OAE),さらに様々な難聴の精密聴力検査についてわかりやすく解説.第I部「基本的事項」では各種の検査法の目的,原理と方法を示した.第II部「臨床応用」では疾患の病態生理の解説と,各種の検査法,症例を組み合わせて示した.聴覚障害の全体像をとらえられるように工夫した.難聴にかかわる耳鼻咽喉科医,産科医,新生児科医,小児科医に実践的な1冊.
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目次
口絵カラー
序文 /加我君孝
執筆者一覧
第Ⅰ部 基本的事項
1 先天性難聴児
1)早期発見の歴史的発展 /加我君孝
2)どのようなときに疑うか /加我君孝
2 検査の目的と原理,検査の実際
1)ティンパノメトリー /竹腰英樹
2)耳音響放射(TEOAE,DPOAE,SOAE) /中川雅文
3)アブミ骨筋反射 /神崎 晶
4)蝸電図 /千原康裕
5)ABR ①気導ABR /加我君孝
②骨導ABR /坂田英明
③EABR(電気刺激聴性脳幹反応) /加我君孝
6)チャープABR /増田 毅,加我君孝
7)AABR(自動聴性脳幹反応) /新正由紀子
8)ASSR(聴性定常反応) /伊藤 吏
9)VEMP(前庭誘発筋電位) /金 玉蓮
10)事象関連電位(mismatchnegativity,P300) /加我牧子,軍司敦子
11)乳幼児・小児の各種誘発電位を正確に記録するための注意点 /中村雅子
12)聴覚行動発達と聴性行動反応聴力検査 /進藤美津子
第Ⅱ部 臨床応用
1 中耳疾患 /中原はるか
2 内耳疾患(感音難聴)
1)ABRとCORの関係 /安達のどか
2)ABR,ASSRとオージオグラム /坂田英明,浅沼 聡
3)内耳奇形と人工内耳手術 /南 修司郎
4)脳性麻痺 /力武正浩,加我君孝
5)染色体異常 /守本倫子
6)Usher症候群 /岩崎 聡,吉村豪兼
7)盲聾児と髄膜炎 /新正由紀子,加我君孝
3 蝸牛神経疾患
1)Auditory NeuropathyとAuditory Neuropathy Spectrum Disorder /加我君孝
2)蝸牛神経低形成 /浅沼 聡
3)聴神経腫瘍 /井上泰宏
4)聴神経腫瘍の術中モニタリング /宮崎日出海
4 中枢神経系の障害
1)脳幹障害 /加我君孝
2)先天性大脳白質形成不全症 /田中 学
3)先天性代謝異常 /加我牧子
4)Landau-Kleffner症候群 /加我牧子
5)聴覚失認 /加我君孝
索引
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序文
序 文
新生児聴覚スクリーニングが2001年より全国的に産科や新生児科で実施されるようになり,難聴疑いの“refer”という判定がされると,次のステップとして精密聴力検査に聴覚の専門医のいる耳鼻咽喉科に紹介されるようになりました.ここに至るまでに新生児聴覚スクリーニングでは自動聴性脳幹反応(AABR:automated auditory brainstem response),耳音響放射(OAE:otoacoustic emission)検査が行われます.
精密聴力検査ではクリック刺激によるABR,ティンパノメトリー,歪成分耳音響放射,聴性定常反応(ASSR:auditory steady-state response)という各種の他覚的聴力検査と同時に,聴性行動反応聴力検査(BOA:behavioral observation audiometry),少し成長が進むと条件詮索反応聴力検査(COR:conditioned orientation response audiometry)を行います.これだけでも多種類の聴覚検査になりますが,それぞれによい点と問題点があり,それを理解していないと過大あるいは過小な診断につながりかねません.
新生児聴覚スクリーニングがはじまって以来,耳鼻咽喉科医はもとより産科医,新生児科医,小児科医,言語聴覚士が難聴児の問題にかかわりを多くもつことが増え,聴覚が専門であってもなくても検査の原理や限界について理解が必要になっています.
本書は,このような現実を考慮し,各検査法についてわかりやすく解説し,実践的ですぐに役立つテキストとなるように企画しました.さらに,この問題の周辺の聴神経腫瘍,神経疾患,中枢聴覚伝導の障害も取り上げました.また,新生児・幼小児,小児の末梢から中枢の聴覚障害を取り上げ,聴覚障害の全体像もわかりやすく工夫しました.
本書の刊行にあたっては診断と治療社編集部の柿澤美帆さんに初めから最後まで御協力いただいたことに感謝申し上げます.
2012年9月
東京大学名誉教授
東京医療センター・感覚器センター名誉センター長
国際医療福祉大学教授
加我君孝