進歩する科学技術に伴い解明されつつある「心身相関医学」の最新の知見と日常診療への応用について,それぞれの分野の専門家がていねいに解説. かゆみや痛みといった感覚や,食欲,睡眠,疲労,発熱など,日常よく遭遇する症候と心理的因子との関係を紐解く1冊.理解を助けるための図表を多用し、巻頭にはカラー写真も多数掲載した.医師やさまざまな医療関係者のみならず,患者・家族にも読んでいただきたい.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
CONTENTS
口絵カラー
序 文 久保千春
第1章 心身相関研究の進歩と日常診療への応用 久保千春
第2章 食欲と心身相関―肥満と神経性食欲不振症 春田いづみ,浅川明弘,乾 明夫
第3章 生体リズムと睡眠・病気 大塚邦明
第4章 疲労の分子神経メカニズムと抗疲労法の開発 渡辺恭良
第5章 末梢のかゆみのメカニズムとかゆみの対応 中原真希子,中原剛士,古江増隆
第6章 痛みの仕組みと心身相関 柿木隆介
第7章 心因性発熱の機序と治療―感染症に伴う発熱と比較して 岡 孝和
第8章 心身相関研究の新たなターゲット―腸内細菌を介した脳腸相関 須藤信行
索 引
ページの先頭へ戻る
序文
序 文
食欲,睡眠は日常生活の基本であり,大変重要なものです.また,疲労,かゆみ,痛みや発熱などの症状は日常,よくみられるものです.これまで,これらの症状の機序について多くの研究がなされてきました.そして最近の分子生物学的手法や脳画像の進歩によって,これらの症状はこころと身体の結びつき,すなわち心身相関が非常に強いことが明らかにされてきています.
ところで近年,増加している病気として,①生活習慣病(糖尿病,高血圧,心筋梗塞,脂質異常症,肥満,がんなど),②老年病(肺炎・肺気腫・慢性気管支炎などの慢性呼吸器疾患,脳血管障害,認知症など),③ストレス病(不安障害,うつ病,過敏性腸症候群・緊張型頭痛・摂食障害などの心身症など),があげられます.このような病気には食欲不振,睡眠障害,疲労,かゆみ,痛みや発熱などの症状がしばしばみられます.そして,これらの症状は上記の基礎疾患の治療経過の持続・増悪因子として大きな影響を及ぼすため,これらの症状に適切に対応することは大変重要です.また,これらの症状を呈していてもはっきりと病気とは診断されないようなとき,すなわち半健康な状態の日常生活においてもしばしばみられます.そのようなときからこれらの症状に対処することは,病気の発症を予防することにつながると思われます.
本書を読むことで,これらの症状のメカニズムを知り,心理的因子(ストレス)と身体が大きく関係していること,すなわち,心理的因子が身体に影響を及ぼしていることが理解されると思います.一方,身体症状も精神症状に影響を及ぼします.これが,すなわち心身相関です.
本書では,それぞれの分野の第一線で活躍されている先生方に執筆をお願いし,それぞれの症状の心身相関について最近の知見を交えてご解説いただきました.読者の方にわかりやすく理解していただけるよう,たくさんの図表が取り入れられております.編者として立派な本ができたと思っております.
本書は医師やさまざまな医療関係者のみならず,さらに患者・家族の皆様にも読んでいただき活用していただければ幸いです.
本書刊行にあたり,著者の方々ならびに,協力いただいた診断と治療社編集部の堀江康弘様と福島こず恵様に深謝いたします.
平成25年11月
九州大学病院病院長 久保千春