臨床研修医および専攻医、指導医が対象.神経内科診療の進め方・検査・疾患(治療)に関する知識はもちろん,専門分野の決定後に直面する問題を解決し,神経内科専門医としての技量,コミュニケーション能力を習得するための必携の書.
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目次
第1章 神経内科研修でのアドバイス
Aこれから神経内科医になる人へ
■これから神経内科を目指す人へ 鈴木則宏
B研修の概要
1.
日本神経学会専門医への道—日本神経学会専門医研修カリキュラムについて 水澤英洋
2.
神経内科領域の関連学会について 水澤英洋
3.
女性医師への研修アドバイス—復職支援も含めて 荻野美恵子
C医療現場でのコミュニケーション
1.
インフォームドコンセント—説明と同意と自己選択 大生定義
2.
遺伝性疾患のインフォームドコンセント 高橋祐二
3.
神経疾患における地域連携(病診連携,在宅医療) 犬塚 貴
4.
神経疾患におけるチーム医療 村井弘之
第2章 診療の進め方
1.
神経内科診療における医療面接 荒木信夫
2.
神経学的診察法およびカルテへの記載法
① 意識レベル 高橋一司
② 高次脳機能(失認,失行,失語) 高橋一司
③ 脳神経(I〜XII脳神経) 高橋一司
④
運動系(筋萎縮,筋トーヌス,筋力,不随意運動,小脳症状,
歩行と姿勢) 高橋一司
⑤ 感覚系(表在感覚,深部感覚,複合感覚) 高橋一司
⑥ 反射(腱反射,表在反射,病的反射) 高橋一司
⑦ 髄膜刺激徴候(項部硬直,Kernig徴候) 高橋一司
3.
英語による医療面接と診察 柴田 護
第3章 神経内科研修で学ぶべき知識と技術
1. 血液検査 森まどか
2. 抗神経抗体検査 田中惠子
3. 抗ガングリオシド抗体検査 海田賢一
4. 遺伝子検査 高橋祐二
5. 腰椎穿刺および脳脊髄液検査 川井元晴
6. X線検査
① 頭 蓋 高里良男
② 頸椎,腰椎 谷口 真
7. 頸動脈超音波検査 星野晴彦
8. 経食道心エコー検査 星野晴彦
9. 経頭蓋超音波ドプラ検査 星野晴彦
10.
頭部CT検査 島谷直希,土屋一洋
11. 頭部MRIおよびMRA 島谷直希,土屋一洋
12. 重要なMRIの特殊撮像法 島谷直希,土屋一洋
13. 筋の画像診断(CT・MRI) 中山貴博
14. 脊髄および脊椎のCT・MRI 谷口 真
15. 脳血管撮影 佐藤栄志
16. シンチグラフィー
① 脳血流 百瀬敏光,高橋美和子
②
In-111 DTPAによる脳槽シンチグラフィー
百瀬敏光,高橋美和子
③ タリウム:Tl-201シンチグラフィー 百瀬敏光,高橋美和子
④ MIBG,DATスキャン 高橋一司
17. PET 石井賢二
18. 脳 波 大石 実
19. 脳磁図 金子 裕
20. 筋電図および神経伝導検査 叶内 匡
21. 誘発電位 叶内 匡
22. 自律神経機能検査 山元敏正
23. 筋生検 西野一三
24. 神経生検 中野雄太,神田 隆
25. その他の臓器生検 森まどか
26. 神経疾患におけるリハビリテーション 原 行弘
27. 血漿交換と血液浄化療法 松尾秀徳
28. 在宅酸素療法と人工呼吸器管理 近藤清彦
第4章 症候からのアプローチ(救急を含む)
1. 意識障害 伊藤義彰
2. 痙攣(てんかん重積状態,てんかん発作を含む) 赤松直樹,辻 貞俊
3. 頭 痛 古和久典,中島健二
4. めまい 安部貴人
5. 運動障害 福田倫也
6. 運動失調 金 正門,寺山靖夫
7. 歩行障害 望月仁志,宇川義一
8. 記憶障害 伊東大介
9. 視野障害・複視 高嶋修太郎
10. 構音障害 山口啓二
11. 嚥下困難 鈴木重明
12. 感覚障害,しびれ 中里良彦
13. 膀胱直腸障害 中里良彦
第5章 神経内科疾患の診療
A脳血管障害
1. 虚血性脳血管障害
① アテローム血栓性脳梗塞 出口一郎,棚橋紀夫
② 心原性脳塞栓症 北川一夫
③ ラクナ梗塞 卜部貴夫
④ 一過性脳虚血発作 野川 茂
⑤ 血管性認知症(認知症全体との関係も含めて) 佐々木貴浩
⑥ 高血圧性脳症 瀧澤俊也
⑦
Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome
太田晃一
⑧
Posterior Reversible Encephalopathy Syndrome
太田晃一
2. 脳出血 出口一郎,棚橋紀夫
3. 脳静脈洞血栓症 伊藤康男,荒木信夫
4. 脳動脈瘤,くも膜下出血 杉山達也,水谷 徹
5. 脳動脈解離 水谷 徹
6. もやもや病 池田俊貴,栗田浩樹
7. 脳血管奇形 柴田碧人,栗田浩樹
B変性疾患
1. 大脳変性疾患
① Alzheimer病 小松潤史,山田正仁
② 前頭側頭型認知症 玉岡 晃
③ Lewy小体型認知症 髙橋 真,織茂智之
2. 基底核の変性疾患
① Parkinson病 下 泰司,服部信孝
② 進行性核上性麻痺 森 秀生
③ 大脳皮質基底核変性症 饗場郁子
④ Huntington病 長谷川一子
3. 小脳の変性疾患
① 孤発性脊髄小脳変性症 松島理明,佐々木秀直
② 遺伝性脊髄小脳変性症 石川欽也
③ 遺伝性痙性対麻痺 瀧山嘉久
4. 運動神経の変性疾患
① 筋萎縮性側索硬化症 林 健太郎,中野今治
② 脊髄性筋萎縮症 斎藤加代子
③ 球脊髄性筋萎縮症 鈴木啓介,祖父江 元
5. 多系統の変性疾患
① 多系統委縮症 三井 純
C脱髄疾患
1. 多発性硬化症 吉良潤一
2. 急性散在性脳脊髄炎 長山成美,松井 真
D自己免疫性神経疾患
1. stiff-person症候群とIsaacs症候群 大矢 寧
2. 傍腫瘍性神経症候群 田中惠子
3. 自己免疫性脳炎(非ヘルペス性辺縁系脳炎,橋本脳症) 飯塚高浩
E感染症
1. ウイルス性髄膜炎および脳炎 綾部光芳
2. 細菌性髄膜炎および脳炎 石川晴美,亀井 聡
3. 真菌感染症 石川晴美,亀井 聡
4. 結核感染症 小島美紀,野村恭一
5. 神経梅毒 清水優子
6. 進行性多巣性白質脳症 三浦義治
7. HIV脳症 岸田修二
8. ヒトTリンパ球向性ウイルス脊髄症(HTLV-1関連脊髄症) 中川正法
9. プリオン病 三條伸夫
F遺伝性代謝性疾患
1. 白質ジストロフィー 松川敬志,辻 省次
2. Fabry病 関島良樹
3. 脳腱黄色腫症 吉長恒明,関島良樹
4. Wilson病 小林千夏,吉田邦広
5. 無セルロプラスミン血症 吉田邦広
6. ポルフィリア 諏佐真治
7. 筋型糖原病 杉江秀夫
G内科疾患に伴う神経系疾患
1. ビタミン欠乏症に伴う神経障害
①
ビタミンB1欠乏症(脚気ニューロパチーとWernicke脳症)
馬場正之
② ビタミンB6欠乏症 猪狩龍佑,加藤丈夫
③ ナイアシン欠乏症(ペラグラ) 大越教夫
④ ビタミンB12欠乏症(亜急性脊髄連合変性症) 安藤哲朗
⑤ 葉酸欠乏症 小池春樹,祖父江 元
2. 電解質代謝異常に伴う神経障害 杉江和馬,上野 聡
3. 肝性脳症 山下 賢,安東由喜雄
4. 腎疾患に伴う神経系障害 木澤真努香,水谷泰彰,武藤多津郎
5. 内分泌疾患に伴う神経系障害 加藤修明,吉田邦広
6. 膠原病に伴う神経障害 原 英夫
7. 血液疾患に伴う神経障害 松浦英治,出雲周二
8. 肺疾患に伴う神経障害 貴田浩志,谷脇孝恭
9. 神経Behçet病 久永欣哉
10. 神経Sweet病 久永欣哉
11. 神経・筋サルコイドーシス 熊本俊秀
H末梢神経疾患
1. 炎症性
① Guillain-Barré症候群 上田昌美,楠 進
② Fisher症候群 千葉厚郎
③ 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー 古賀道明
④ 多巣性運動ニューロパチー 宮城 愛,梶 龍兒
⑤ その他の免疫性ニューロパチー 桑原 聡
2. 遺伝性ニューロパチー
① Charcot-Marie-Tooth病 橋口昭大,髙嶋 博
② 家族性アミロイドポリニューロパチー 安東由喜雄
3. 絞扼性ニューロパチー
① 手根管症候群 小森哲夫
② 橈骨神経麻痺 長谷川 修
③ 尺骨神経麻痺 三井隆男,野村恭一
4. 神経叢障害
① 腰仙神経叢障害 木田耕太,清水俊夫
② 腕神経叢障害 芳川浩男
③ 神経痛性筋萎縮症 福島和広,池田修一
④ 胸郭出口症候群 園生雅弘
I脊椎・脊髄疾患
■脊椎・脊髄疾患 谷口 真
J筋疾患
1. 炎症性筋疾患(多発筋炎,皮膚筋炎) 大矢 寧
2. 筋強直性ジストロフィー 髙橋正紀
3. 筋ジストロフィー 西野一三
4. ミトコンドリア脳筋症 西野一三
5. 周期性四肢麻痺 倉重毅志
6. 先天性ミオパチー 倉重毅志
7. 悪性高熱 大矢 寧
K神経筋接合部疾患
1. 重症筋無力症 鈴木重明
2. Lambert-Eaton筋無力症候群 鈴木重明
L機能性疾患
1.
てんかん(てんかん重積の治療を含む)
井上岳司,松本理器,池田昭夫
2. 慢性頭痛
① 片頭痛 清水利彦
② 緊張型頭痛 竹島多賀夫
③ 三叉神経・自律神経性頭痛 今井 昇
④ その他の一次性頭痛疾患 藤木直人
⑤ 三叉神経痛,舌咽神経痛 永田栄一郎
3. 複合性局所疼痛症候群と神経障害性疼痛 住谷昌彦,松平 浩
4. めまい 大熊壮尚,北川泰久
5. 本態性振戦 安富大祐
6. 一過性全健忘 髙橋愼一
7. レストレスレッグス症候群 平田幸一
8. 発作性運動誘発性舞踏アテトーシス 山口啓二
M母斑症を伴う神経疾患
1. 結節性硬化症 白水洋史,亀山茂樹
2. von Recklinghausen病 増田 浩,亀山茂樹
3. Sturge-Weber症候群 伊藤陽祐,亀山茂樹
4. von Hippel-Lindau 病 園田真樹,亀山茂樹
N脳腫瘍
■脳腫瘍 植木敬介,樋口芙未
O水頭症
■特発性正常圧水頭症 松前光紀
P頭部外傷
■
頭部外傷 高里良男
Q中毒性神経筋疾患
1. 有機物質 古谷博和
2. 無機物,重金属 玉岡 晃
3.
薬 物 重藤寛史
R脳死(脳死判定基準)
■脳死(脳死判定基準) 横田裕行
S神経内科医に必要な外科の知識
■神経内科医に必要な外科の知識 森田明夫
第6章 知っておくべき知識と制度
1. 神経内科診療に関する法律の基礎知識 大平雅之
2. 個人情報保護 大平雅之
3. 医療事故 辻 貞俊
4. 医療保険制度と介護保険制度 荻野美恵子
第7章 書類の書き方
1. 診療記録の記載法 高橋祐二
2. 処方せんの書き方 髙橋愼一
3. 紹介状および紹介医師への返事の書き方 國本雅也
4. 英文の紹介状,診療情報提供書 桑原 聡
5. 退院サマリーの書き方 髙橋愼一
6. 死亡診断書および病理解剖の承諾書,依頼書 高尾昌樹
7.
身障者認定・難病等医療費助成・介護のための書類の書き方
荻野美恵子
索 引
◆Column
私の場合 荻野美恵子
IC取得は医療チームワークにも重要 大生定義
書類作成のポイント 犬塚 貴
ちょっとした英語表現の工夫について 柴田 護
神経症候学と脳機能画像 石井賢二
ALSと人工呼吸器 近藤清彦
いくつの頭痛がありますか 古和久典
軽い片麻痺のみつけかた 福田倫也
TIAの定義の変遷 野川 茂
疾患を深く理解するためには 太田晃一
症例報告のススメ 太田晃一
遺伝性痙性対麻痺の名称について 瀧山嘉久
例外は常にある 三井 純
患者・家族への説明について 吉良潤一
ナタリズマブ関連PML 三浦義治
酸素補充療法の開発秘話 関島良樹
Menkes病(kinky hair disease)—特徴的な毛髪異常に注目しよう 吉田邦広
Marchiafava-Bignami症候群 馬場正之
感覚性運動失調を起こす疾患の鑑別 安藤哲朗
治療可能なのに“悪性貧血”? 安藤哲朗
遺伝子検査で、筋生検はいらなくなる? 西野一三
病気の子供が神経内科を受診したとき 倉重毅志
慢性緊張型頭痛と慢性片頭痛の関係 竹島多賀夫
慢性緊張型頭痛と薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛) 竹島多賀夫
外科的治療の今後の課題 松前光紀
セカンドインパクト症候群 高里良男
外傷性高次脳機能障害 高里良男
過少申告 古谷博和
中毒性疾患を見逃さないための心構え 古谷博和
水俣病:有機水銀(メチル水銀)中毒 古谷博和
メチルアルコール中毒 古谷博和
スモンについて 重藤寛史
神経内科を目指す諸君 診断医になるな.積極的治療医たれ 森田明夫
紹介状はPCを利用して 國本雅也
異状死の届け出とは 高尾昌樹
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序文
シリーズ総監修の序
「研修ノート」は,かつての「研修医ノート」シリーズを全面的に刷新し,新シリーズとして刊行するものである.
旧シリーズ「研修医ノート」は内科研修医のためのテキストとして1993年に出版された.その後,循環器,産婦人科,小児科,呼吸器,消化器,皮膚科など,診療科別に「研修医ノート」が相次いで刊行された.いずれも一般のマニュアルとは異なり,「基礎的な手技」だけではなく「医師としての心得」や「患者とのコミュニケーション」などの基本,あるいは「書類の書き方」,「保険制度」など,重要な事項でありながら平素は学ぶ機会の少ない事項を取り上げ,卒後間もない若手医師のための指導書として好評を博してきた.
しかしながら,時代の変化により研修医に要求される内容は大きく変化した.“医療崩壊”が社会問題となるなかで,研修教育の充実はますます重要となりつつある.さらに医療への信頼回復や医療安全のためには,患者やスタッフとのコミュニケーションの改善が必須であることはいうまでもない.
このような状況に鑑み,「研修医ノート」シリーズのあり方を再検討し,「研修ノート」の名のもとに,新シリーズとして刊行することとした.読者対象は後期研修医とし,専門分野の決定後に直面するさまざまな問題に対する考え方と対応を示すことにより,医師として歩んでいくうえでの“道標”となることを目的としている.
本シリーズでは,全人的教育に必要な「医の基本」を記述すること,最新の知見を十分に反映し,若い読者向けに視覚的情報を増やしつつも,分量はコンパクトとした.編集・執筆に当たっては,後期研修医の実態に即して,必要かつ不可欠な内容を盛り込んでいただくようお願いした.“全国の若手医師の必読書” として,本シリーズが,長く読み継がれることを願っている.
終わりにご執筆頂いた諸先生に心より感謝を申し上げます.
2014年12月吉日
自治医科大学学長
永井良三
編集の序
新臨床研修制度が2004年に導入され10年が経過しました.神経内科領域の臨床研修も当初は研修制度変革の影響を大きく受けましたが,現在は研修医に続く神経内科専門医を目指す専修医の研修のシステムも安定してきたように思われます.しかし,新たに発足した一般社団法人日本専門医機構による新専門医制度が専門医の初認定を目指して整備されつつあり,現在,専攻医(日本専門医機構における研修医)に対する教育と研修のカリキュラムおよびプログラムの策定が日本内科学会および日本神経学会において進められています.本書は,神経内科研修がこのようにダイナミックに変貌を遂げつつある状況に対応すべく,新しい時代への研修のよりどころの一つとなるような書を目指して企画されました.
神経内科医にとって必要な疾患や症候に関する知識,技術(診察,検査など),治療について時代に即した内容となるように,日本神経学会および日本脳神経外科学会から荒木信夫先生,神田 隆先生,吉良潤一先生,塩川芳昭先生.西野一三先生,水澤英洋先生(五十音順)に編集者としてご協力いただきました.各項目の執筆者は,各編集者の先生方から神経内科臨床の第一線でご活躍の先生をご推薦いただきました.
臨床研修医・専攻医は,臨床現場での毎日の診療行為を通じて試行錯誤しながら知識や技術の獲得に励んでいます.本書は,そのような環境にある臨床研修医と専攻医を主たる読者対象とし,彼らが専門分野の決定後に直面する問題を解決し,神経内科専門医としての知識や技量,コミュニケーション能力を習得するための“必携の書”となることを最大の目的としました.また指導医にとっても役に立つ内容になることを願っております.
本書が,神経内科臨床の魅力を余すところなく読者に伝えることができれば,編集者にとってこれに優る喜びはありません.最後に,多数執筆者による本書の,全体を通しての一貫性とバランスに配慮して,終始編集に協力者として携わっていただいた,慶應義塾大学医学部神経内科専任講師 清水利彦先生に心から感謝いたします.
2014年12月吉日
編集者を代表して
慶應義塾大学医学部神経内科教授
鈴木則宏