学校で食物によるアナフィラキシーが起こったときの危機管理(だれが何をすべきか)と起こさない安全管理(あらゆる場面を想定した対応策)について可能な限りイラストや写真を使って対応をポイント解説した.学校職員や生徒の健康管理に関わる人全員が共通認識しておきたい知識が満載.
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目次
1章
学校で食物アナフィラキシーが起こったら
さあどうする?どう対応する?
A.まずは先生が異変を知ること
1.子どもに異変が起きていても,先生に伝わらなければ対応はできません ● 木村彰宏
2.動かずに先生を呼びましょう ● 木村彰宏
B.症状の観察と聞き取り
1.自覚症状と他覚症状を覚えておきましょう ● 木村彰宏
2.アナフィラキシーを疑うとき① ● 木村彰宏
3.アナフィラキシーを疑うとき② ● 木村彰宏
4.アナフィラキシーが起きるきっかけを覚えておきましょう ● 木村彰宏
C.異変を起こした子どもへの最初の対応
1.アナフィラキシーを疑ったら ● 小島崇嗣
2.子ども本人から積極的に症状を聞き取る ● 福田典子
3.体を横にする ● 福田典子
4.応援を呼ぶ ● 木村彰宏
2・3・4は並行して行うこともあり得ると考えましょう!柔軟な対応が必要です。
D.手あてをする・救急車を呼ぶ・保護者へ連絡する
1.養護の先生の出番です ● 小島崇嗣
2.アナフィラキシー専用救急セットを子どもの手もとに取り寄せましょう ● 佐藤仁美
3.記録をとる ● 小島崇嗣
4.主治医に連絡する ● 小島崇嗣
5.緊急薬を服用する ● 小島崇嗣
6.まわりの子どもを移動させる ● 小島崇嗣
7.子どもを運ぶ ● 小島崇嗣
8.救急車を呼んで迎える ● 小島崇嗣
9.保護者へ連絡する ● 小島崇嗣
1〜9は並行して行うこともあり得ると考えましょう!
柔軟な対応が必要です。
E. 正しくエピペン®を使用する
1.エピペン®の適応を確認しましょう ● 佐藤仁美
2.手順に従ってエピペン®を使用しましょう ● 佐藤仁美
コラム エピペン®の効果と有害事象 ● 笹井みさ,笠原道雄
2章
学校職員による
アナフィラキシー対策トレーニング方法
1.食物アレルギー対応委員会の役割 ● 森岡芳雄
2.エピペン®トレーニングと管理方法 ● 笹井みさ,笠原道雄
コラム 練習用トレーナーと本物のエピペン®との相違点 ● 木村彰宏
3.ロールプレイングの方法と注意点 ● 山本千尋,小野 厚
3章
日頃から備えておきたい!
学校現場における食物アレルギー児の個別対応計画
A.食物アレルギー児の個別対応計画
1.学校における食物アレルギー児の個別対応計画についての保護者への説明 ● 田村京子
2.食物アレルギー調査のポイント ● 田村京子
3.食物アレルギー調査書類
a. 学校生活管理指導表 ● 田村京子
b. 食物アレルギー診断書 ● 田村京子
c. 食物アレルギー除去申告書 ● 田村京子
4.エピペン®携帯になった理由と過去に起きた症状の聞き取り方 ● 田村京子
5.食物アレルギー携帯カードの作成方法 ● 田村京子
6.食物アレルギー児の個別対応計画の作成方法 ● 田村京子
7.給食の除去レベルの決定方法 ● 田村京子
B.学校生活を安全に送るための注意点
1.体育・部活動中の注意点 ● 谷内昇一郎
2.調理実習を行う際の注意点 ● 谷内昇一郎
3.食べ物を取り扱う授業での注意点 ● 谷内昇一郎
4.掃除のときの注意点 ● 谷内昇一郎
5.宿泊を伴う学校行事の注意点 ● 谷内昇一郎
6.登下校中の注意点 ● 谷内昇一郎
C.学校給食の注意点
1.安全なアレルギー対応の学校給食を提供するための基本事項 ● 佐守友仁
2.除去のレベルに基づいた給食方法 ● 佐守友仁
3.安全に食事を取るための注意点 ● 佐守友仁
4.給食室から教室までの注意点 ● 佐守友仁
5.給食当番の注意点 ● 佐守友仁
6.給食中の注意点 ● 佐守友仁
7.後かたづけの注意点 ● 佐守友仁
8.お弁当持参時の注意点 ● 佐守友仁
9.ユニバーサル献立の必要性 ● 木村彰宏
4章
食物アレルギーとアナフィラキシーについて
これだけは覚えておきたいこと
1.食物アレルギーとは何か,注意すべき原因食物とは何か? ● 西野昌光
2.食物アレルギーの重症度を正しく評価する方法 ● 西野昌光
3.口腔アレルギー症候群 ● 黒田英造
4.食物依存性運動誘発アナフィラキシー ● 黒田英造
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序文
監修の序
平成26年3月に文部科学省から「今後の学校給食における食物アレルギー対応について」という通知がだされました。その1年後の本年3月には「学校給食における食物アレルギー対応指針」がだされ,文部科学省・日本学校保健会より「学校生活上の留意点(食物アレルギー・アナフィラキシー)」,「緊急時の対応」などの資料・DVD教材が配られると同時に文部科学省のホームページにも公開されました。
各学校ではこれまでも,それぞれの地域の現状に合わせた形で,給食を中心に学校生活における食物アレルギー対策と誤食時などの緊急時の対応について研修を重ねてこられたことでしょう。今後,学校現場ではこれまで以上に適切な食物アレルギー対応を行うことが求められるようになってきます。
理論はわかるが,それでは具体的にはどうしたらよいのか。本書はまさにこの点について,タイトルで示されるように,いざというときに学校生活で役立つ食物によるアナフィラキシーへの対応の仕方を具体的に示したガイドブックです。
本書の企画・編集・執筆にあたられた先生方の属される兵庫食物アレルギー研究会は1991年2月に発足し,2015年で230回を超える例会が開かれたと伺っています。その後も月に1回の例会が開かれています。本書は学校関係者の座右の“書”となるばかりでなく,学校関係者からいろいろと質問を受けられる先生方にも大変参考になる書と考えます。
本書が食物アレルギー児の安全で楽しい学校生活の実現に役立つことを心から願っています。
2015年3月
同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科 伊藤節子
編集の序
食物アレルギーに関連した本は既に数多く出版されています。本書は学校現場の実情に即して実践できることを目的として編集しました。毎日多忙な学校現場におられる先生方にとって食物アレルギーは日常業務の一部に過ぎません。しかし見逃すと命にかかわります。そんな厳しい環境のなかにおられる先生が児童・生徒のちょっとしたサインを見逃すことなく,的確に行動できるように工夫しました。
食物アレルギーの症状は紀元前400年頃ヒポクラテスによって「異常体質(idiosyncrasy)」という言葉で表現されていました。昔はアレルギーを単に本人の特異的な体質として真剣に取り組んでいませんでした。このような考え方が浸透してしまった結果,アレルギーは特別の人だけに起こる特殊なこととして世間に定着してしまいました。その転機の事件が1988年の札幌で起こりました。そばアレルギーの児童が学校給食のそばを食べてしまって,帰宅途中に死亡する事故が発生したのです。この件に関しては1992年に,担任の教諭と札幌教育委員会の安全配慮義務違反とする判決がでました。これを転機に文部科学省は2004年に全国の学校におけるアレルギー調査を行い,その結果児童・生徒のアレルギー疾患有病率が高く,食物アレルギーは2.6%との報告がなされました。これを受けて,2008年に「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」が発行され,同時に学校生活管理指導表も作成され,学校現場の対応は万全のように思えました。しかし2012年12月に調布市において牛乳アレルギーの女児が誤ってチーズ入りじゃがいものチジミを食べ死亡するという痛ましい事故が起きてしまったのです。しかもエピペン®を持っていたにもかかわらずです。今必要なことは即実践で役に立つことです。何をふだんから準備し,症状から何を考え,いつ何をするのか。現場で求められていることは実際の行動です。単なる知識だけでは事故を防ぐことができません。
本書は随所にチャート・グラフを用い,現実に症状がでたときいかに早く気がつき,適切に次の行動に移れるか,ふだんから準備すべきことなどについて具体的に記載しています。本書が先生の座右の書として役立ち,食物アレルギーの児童・生徒が安心して学校生活を,そして先生自身も自信をもって本来の教師としての生活に専念できることを心から祈念してやみません。
2015年3月
くろさか小児科・アレルギー科 黒坂文武