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書籍詳細

研修ノート

皮膚科研修ノート診断と治療社 | 書籍詳細:皮膚科研修ノート

自治医科大学学長

永井 良三(ながい りょうぞう) シリーズ総監修

東京大学教授

佐藤 伸一 (さとう しんいち) 編集

筑波大学教授

藤本 学(ふじもと まなぶ) 編集

初版 A5判 並製 712頁 2016年04月20日発行

ISBN9784787821348

定価:9,680円(本体価格8,800円+税)
  

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皮膚科医が知っておくべき心得や勉強法・コミュニケーションなどの基本姿勢から,皮膚の構造や病理組織などの基礎知識,臨床で活かせる検査手技・治療法,社会的知識と制度,各種書類の書き方まで網羅した研修医・若手医師必携の書.付録として皮膚科領域の代表的薬剤一覧を収載.

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目次

第1章 皮膚科医をめざすために
Aはじめに
1. 皮膚科医をめざす諸君へ 宮地良樹
B 勉強方法
1. 皮膚科研修で学ぶべきこと 戸倉新樹
2. 教科書・参考書の選び方と活用法 鶴田大輔
3. 論文の検索方法と読み方 山本俊幸
4. カンファレンスの聞き方と発表のしかた 佐野栄紀
5. 診療ガイドラインの活用法 尹 浩信
6. 学会・研究会に入ろう 室田浩之
7. 学会発表の準備と発表のしかた 大山 学
8. ポスター発表 山﨑研志
9. 論文の書き方 浅野善英
10. 皮膚科専門医になるには 佐山浩二
11. サブスペシャリティをめざすための勉強法 杉浦一充
12. 留学しよう 椛島健治
C皮膚科医が活躍するフィールド
1. チーム医療における皮膚科医の役割 小寺雅也
2. 開業医か勤務医か 安部正敏
3. 学校保健にたずさわる 岡村理栄子
4. 研究者としての皮膚科学者への道 天谷雅行
5. 企業(製薬・香粧品関連)で働く 中鉢知子
6. 皮膚科の境界領域 沢田泰之
7. 美容皮膚科医とは 小林美和
8. 皮膚科医として働き続けるために
~女性医師のためのワークライフバランス~ 多田弥生

第2章 皮膚科医の基本
A皮膚科の診察
1. 診察の方法(1)医療面接・診察にあたって気をつけること 加藤則人
2. 診察の方法(2)視診・触診 土田哲也
3. 発疹の種類とその記載方法 相馬良直
4. 皮膚科外来の諸問題 石黒直子
5. 臨床写真の撮り方・整理・保存のコツ レパヴー・アンドレ ジェイムズ
B皮膚科の検査(皮膚病理検査以外)
1. 皮膚科で行われる検査 清島真理子
2. ダーモスコピー検査 田中 勝
3. 細菌検査 桒野嘉弘
4. 真菌検査 常深祐一郎
5. ウイルス検査 三井 浩
6. 皮膚アレルギー検査 藤本和久
7. 光線検査 川原 繁
8. エコー・画像検査 大畑恵之
C皮膚の構造と病理組織のポイント
1. 皮膚生検とHE染色標本作製のコツ 福本隆也
2. 正常皮膚の構造と機能 久保亮治
3. 病理所見の診かた 安齋眞一
4. 病理報告書の読み方・書き方 阿南 隆
5. 使いこなせるようになりたい皮膚病理用語 泉 美貴
6. 肉眼所見・ダーモスコピー・病理組織像の関係 古賀弘志
7. 組織化学染色・免疫染色の種類と診かた 清原隆宏
8. 電子顕微鏡でわかること 石河 晃
D皮膚科の治療(内科的側面)
1. 皮膚科治療の概要 佐伯秀久
2. まずはスキンケアから 江藤隆史
3. ステロイドを使いこなせれば一人前 鳥居秀嗣
4. 抗真菌薬の選択のコツ 常深祐一郎
5. 抗菌薬の選択のコツ 山﨑 修
6. 抗ヒスタミン薬の選択のコツ 森田栄伸
7. ステロイド・免疫抑制薬の内服療法 今福信一
8. 光線療法 森田明理
9. 放射線療法 宮澤一成,鹿間直人
10. 悪性腫瘍の化学療法・分子標的療法 並川健二郎
11. 漢方薬を上手に取り入れよう 前田 学
E皮膚科の治療(外科的側面)
1. 皮膚外科の概要 門野岳史
2. 外来で対応可能な小手術の心得と基本的手技のコツ 石井貴之
3. レーザー治療 岸 晶子
4. 難治性皮膚創傷への対応~外科的処置,創傷被覆材の選択~
立花隆夫
5. 美容皮膚科で行われる手術・手技 山本有紀
6. 皮膚外科学を極める 中村泰大


第3章 おもな皮膚疾患
A皮膚炎・湿疹
1. 接触皮膚炎・光接触皮膚炎 足立厚子
2. 脂漏性皮膚炎 奥山隆平
3. アトピー性皮膚炎 竹原和彦
4. 貨幣状湿疹 西岡和恵
5. 自家感作性皮膚炎 中村晃一郎
6. 手湿疹 矢上晶子,松永佳世子
7. 汗疱・異汗性湿疹,汗疹 西澤 綾
8. 皮脂欠乏性湿疹 菊地克子
9. 酒さ様皮膚炎 寺木祐一
10. 【アトラス】その他の皮膚炎 伊藤明子
B紫斑・血管障害
1. IgA血管炎(Henoch-Schonlein紫斑病) 川上民裕
2. その他の血管炎 川上民裕
3. 慢性色素性紫斑 田口詩路麻
4. うっ滞性皮膚炎・うっ滞性脂肪織炎 久木野竜一
5. 下腿潰瘍 久木野竜一
6. 【アトラス】その他の紫斑を呈する疾患 藤本徳毅
C蕁麻疹・痒疹・掻痒症
1. 蕁麻疹 森田栄伸
2. 血管性浮腫 秀 道広
3. 痒 疹 佐藤貴浩
4. 皮膚掻痒症 木下綾子,須賀 康,髙森建二
5. 【アトラス】その他の蕁麻疹様皮疹・痒疹を呈する疾患 福永 淳
D紅斑症
1. 多形滲出性紅斑 牧野輝彦,清水忠道
2. 環状紅斑 新井 達
3. 結節性紅斑 原田和俊
4. Sweet病・Behcet病 金蔵拓郎
5. 【アトラス】その他の紅斑を呈する疾患 梅林芳弘
E膠原病と類症
1. エリテマトーデス 衛藤 光
2. 全身性強皮症 長谷川 稔
3. 限局性強皮症 神人正寿
4. 皮膚筋炎 濱口儒人
5. 壊疽性膿皮症 池田高治
6. 【アトラス】その他の膠原病  吉崎 歩
F薬 疹
1. 薬 疹 相原道子
2. Stevens-Johnson症候群・中毒性表皮壊死症 阿部理一郎
3. 薬剤性過敏症症候群 藤山幹子
4. 抗がん剤(分子標的薬)による皮膚障害 中原剛士
5. 移植片対宿主病~薬疹との鑑別~ 宮垣朝光
6. 【アトラス】その他の薬疹 水川良子
G外傷・物理的/化学的皮膚障害
1. 熱 傷 吉野雄一郎
2. 化学熱傷 湊原一哉
3. 褥 瘡 立花隆夫
4. 凍瘡・凍傷 入澤亮吉
5. 日光皮膚炎(サンバーン) 上出良一
6. 胼胝・鶏眼 中西健史
H肉芽腫
1. 環状肉芽腫 塚本克彦
2. サルコイドーシス 岡本祐之
3. 【アトラス】その他の肉芽腫 伊崎誠一
I水疱症
1. 天疱瘡 山上 淳
2. 類天疱瘡 石井文人
3. 【アトラス】水疱を生じるその他の疾患 石井 健
J乾癬と類症・角化症・角化性疾患,膿疱症
1. 乾 癬 小宮根真弓,大槻マミ太郎
2. 膿疱性乾癬 馬渕智生
3. 掌蹠膿疱症 村上正基
4. 類乾癬 山中恵一
5. 扁平苔癬 藤田英樹
6. 毛孔性苔癬 谷岡未樹
7. Gibertばら色粃糠疹 川村龍吉
8. 【アトラス】その他の膿疱症 大久保ゆかり
K代謝異常症
1. 黄色腫 村田 哲
2. ムチン沈着症 籏持 淳
3. アミロイドーシス 末木博彦
4. 痛 風 檜垣祐子
5. 弾性線維性仮性黄色腫 宇谷厚志
6. 【アトラス】その他の代謝異常症 中野 創
L細菌感染症
1. 伝染性膿痂疹 池田政身
2. ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 池田政身
3. 毛包炎・せつ・癰 多田譲治
4. 丹毒・蜂窩織炎 盛山吉弘
5. 壊死性筋膜炎・ガス壊疽 伊藤周作
6. トキシックショック症候群,トキシックショック様症候群,
ビブリオ・バルニフィカス感染症 井上雄二
7. 【アトラス】その他の細菌感染症 木花いづみ
Mウイルス感染症
1. 疣贅(尋常性疣贅・青年性扁平疣贅) 江川清文
2. 伝染性軟属腫 浅田秀夫
3. 麻疹・風疹 日野治子
4. 水 痘 渡辺大輔
5. 帯状疱疹 加藤徳子,渡辺大輔
6. 口唇ヘルペス 清水  晶
7. Kaposi水痘様発疹症 川口博史
8. 伝染性紅斑 神﨑美玲
9. 手足口病 杉浦 丹
10. 伝染性単核球症 満間照之
11. 【アトラス】その他のウイルス感染症 日野治子
N真菌感染症・抗酸菌感染症
1. 白 癬 望月 隆
2. カンジダ症 加藤卓朗
3. 癜 風 清 佳浩
4. 深在性皮膚真菌症 望月 隆
5. 皮膚結核 石井則久
6. 抗酸菌感染症 高木 肇
O虫・動物性皮膚疾患
1. 疥 癬 和田康夫
2. シラミ症 和田康夫
3. マダニ刺咬症 橋本喜夫
4. ツツガムシ病 竹之下秀雄
5. 虫刺症 夏秋 優
6. 毛虫皮膚炎 夏秋 優
7. 【アトラス】その他の虫・動物性皮膚疾患 夏秋 優
P性感染症
1. 尖圭コンジローマ 尾上智彦
2. 梅 毒 伊東文行
3. 性器ヘルペス 安元慎一郎
4. HIV感染症 斎藤万寿吉
Q皮膚付属器の疾患
1. ざ 瘡 林 伸和
2. 円形脱毛症 伊藤泰介
3. 壮年性脱毛症 天羽康之
4. 多汗症 横関博雄
5. 陥入爪 倉片長門
6. 【アトラス】爪の疾患 東 禹彦
R腫 瘍
1. 皮下腫瘍の診かた 浅井 純
2. 炎症性粉瘤・外歯瘻・毛巣洞 帆足俊彦
3. 稗粒腫 出月健夫
4. 毛細血管拡張性肉芽腫 木花 光
5. 脂漏性角化症・軟性線維腫 廣瀬寮二
6. 付属器腫瘍の診かた 三砂範幸
7. ガングリオン・粘液嚢腫 緒方 大
8. 皮膚線維腫 是枝 哲
9. 指先・爪下の腫瘍の診断と対処 田村敦志
10. ケロイド・肥厚性瘢痕 牧野英一
11. 基底細胞癌 爲政大幾
12. 日光角化症・Bowen病 持田耕介,天野正宏
13. 有棘細胞癌 竹之内辰也
14. 乳房外Paget病 吉野公二
15. 悪性黒色腫 宇原 久
16. リンパ腫 菅谷 誠
17. 血管肉腫 藤澤康弘
S色素異常症
1. 母斑細胞母斑・単純黒子 占部和敬
2. 雀卵斑・肝斑 堺 則康
3. 尋常性白斑 大磯直毅
4. 【アトラス】その他の色素異常症 川口雅一
T先天性皮膚疾患への対処
1. 表皮水疱症 澤村大輔
2. 魚鱗癬 高橋健造
3. 掌蹠角化症 山本明美
4. Darier病・Hailey-Hailey病 高木 敦,池田志斈
5. 色素性乾皮症 森脇真一
6. 太田母斑・先天性巨大色素細胞母斑 大西誉光
7. 血管腫 岸 晶子
8. 先天性色素異常症 鈴木民夫,阿部優子
9. 母斑症 金田眞理
10. 毛髪の先天性疾患 下村 裕
11. 遺伝カウンセリング 新熊 悟
U年齢からのアプローチ
1. 新生児・乳児にみられる生理的皮膚変化と皮膚疾患 馬場直子
2. 妊娠に伴う皮膚疾患 川上理子
3. 加齢に伴う皮膚変化 種井良二


第4章 救急対応が必要な皮膚疾患
1. 入院患者編 橋爪秀夫
2. 救急外来患者編 岩田洋平
3. 当直で必要になる外科的応急処置 岩田洋平


第5章 皮膚科医が知っておくべき社会的知識と制度
1. 法律全般 田邉 昇
2. 感染症法 石井則久
3. リスクマネジメント 永井弥生
4. インフォームド・コンセント 多田弥生
5. セカンドオピニオン 室 慶直
6. 医療過誤と医療事故 田邉 昇
7. 医療保険制度 玉木 毅
8. 保険診療で知っておくべきルール 古田淳一
9. ジェネリック医薬品の諸問題 大日輝記
10. 皮膚科領域における医療費 若林正治
11. 医薬品副作用被害救済制度 末木博彦


第6章 書類の書き方
1. カルテ 宇原 久
2. 診断書・意見書 松村由美
3. 紹介状・返事 柿沼 誉
4. 処方箋 小茂田 昌代
5. 入院診療計画書・説明書・同意書 福島 聡
6. 英文診断書・紹介状・返事 内山真樹
7. 死亡診断書・死体検案書 安田正人


付 録
■皮膚科領域の代表的薬剤一覧 大谷道輝
■索 引
 和文索引
 欧文索引


◆Column
Blaschko線 相馬良直
Tzanck試験 太田有史
上手い文章を書く,たった5つのポイント! 泉 美貴
学会でしばしば耳にする間違った表現 泉 美貴
化粧品の基礎知識 関東裕美
子どもの診察・処置をうまくやるコツ 馬場直子
抗ヒスタミン薬が効かない痒みの対処 江畑俊哉
この薬はこう使う① タクロリムス(プロトピックR) 佐伯秀久
この薬はこう使う② DDS(レクチゾールR) 大山文悟
この薬はこう使う③ アダパレン(ディフェリンR) 林 伸和
この薬はこう使う④ エトレチナート(チガソンR) 川田 暁
子どもの手術はどうやるか? 中川浩一
アトピービジネス 竹原和彦
接触皮膚炎を起こしやすい植物 原田 晋
接触皮膚炎を起こしやすい薬品(外用薬) 高山かおる
社会的な問題となった「加水分解コムギの経皮・経粘膜感作によるコムギアレルギー」とは
  矢上晶子,松永佳世
日常生活での金属の摂取・金属への対応 足立厚子
リベドをみたら 戸田憲一
蕁麻疹の検査 森桶 聡
エピペンR 千貫祐子
毛染めについての知識 猪又直子
抗核抗体検査の進め方 茂木精一郎
膠原病を疑う皮膚所見~患者さんの手を取ろう~ 沖山奈緒子
薬疹の検査法 竹中 基
雑誌「薬疹情報」から~舌をかみそうな薬剤名が多い分子標的薬~ 福田英三
サンスクリーン剤の基礎知識 上出良一
糖尿病と皮膚 中西健史
自己免疫性水疱症の診断の手順 青山裕美
マラセチア毛包炎 清 佳浩
ロドデノール含有化粧品による白斑被害 松永佳世子
妊娠中の薬の注意 中島 研
腋臭症 増井友里
破傷風や狂犬病などへの対応 加治賢三
難病制度 新関寛徳
ハンセン病の歴史 石井則久
油症とは 内 博史
バイオシミラー(バイオ後続品) 大日輝記
逆紹介をスムーズにするコツ 矢澤徳仁
薬局・薬剤師との連携 小茂田 昌代
皮膚科における病診連携とは 根本 治

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序文

シリーズ総監修の序

 「研修ノート」は,かつての「研修医ノート」シリーズを全面的に刷新し,新シリーズとして刊行するものである.
 旧シリーズ「研修医ノート」は内科研修医のためのテキストとして1993年に出版された.その後,循環器,産婦人科,小児科,呼吸器,消化器,皮膚科など,診療科別に「研修医ノート」が相次いで刊行された.いずれも一般のマニュアルとは異なり,「基礎的な手技」だけではなく「医師としての心得」や「患者とのコミュニケーション」などの基本,あるいは「書類の書き方」,「保険制度」など,重要ながら平素は学ぶ機会の少ない事項を取り上げ,卒後間もない若手医師のための指導書として好評を博してきた.
 しかしながら,時代の変化により研修医に要求される内容は大きく変化した.地域医療の確保が社会問題化するなかで,研修教育の充実はますます重要となった.さらに医療への信頼回復や医療安全のためには,患者やスタッフとのコミュニケーションの改善も必須である.
 このような状況に鑑み,「研修医ノート」シリーズのあり方を再検討し,「研修ノート」の名のもとに,新シリーズとして刊行することとした.読者対象は後期研修医とし,専門分野の決定後に直面するさまざまな問題に対する考え方と対応を示すことにより,医師として歩んでいくうえでの“道標”となることを目的としている.
 本シリーズでは,全人的教育に必要な「医の基本」を記述すること,最新の知見を十分に反映し,若い読者向けに視覚的情報を増やしながらも分量はコンパクトとすることに留意した.編集・執筆に当たっては,後期研修医の実態に即して,必要かつ不可欠な内容を盛り込んでいただくようお願いした.“全国の若手医師の必読書”として,本シリーズが,長く読み継がれることを願っている.
 終わりにご執筆頂いた諸先生に心より感謝を申し上げます.

 2016年3月吉日
 自治医科大学学長
 永井良三


編集の序

 今回,「皮膚科研修ノート」が,新たに「研修ノート」シリーズに加わることになり,皮膚科専門研修医にとっては,大きな福音になるものと確信しています.
 皮膚は人体最大の臓器であり,単なる外界からのバリア機能を担うだけではなく,代謝機能,免疫機能などさまざまな機能を有しています.さらに,皮膚科学は皮膚に変化をきたす疾患をすべて扱う診療科であり,疾患の皮膚病変のみを取り扱う診療科では決してありません.したがって,皮膚科学がカバーする領域は広範囲になり,アトピー性皮膚炎や乾癬といった皮膚科学固有の疾患のみならず,皮疹を伴う膠原病,感染症などといった内科的な疾患,さらには悪性黒色腫に代表される皮膚悪性腫瘍に対する外科的な治療まで多彩な疾患をその守備範囲としています.さらに,皮膚科学の多様性は疾患のみならず,年齢層も多彩であり新生児から高齢者まで取り扱います.また,皮疹は直接眼で見ることができるため,皮膚科学の診療は視診,触診から始まり,診断の困難な場合には皮膚生検を施行し,病理診断も自身で行うため,すべての診断プロセスを包括しています.このように皮膚科学は非常に幅広い総合科学といえます.
 このような多岐にわたる皮膚科学を学ぶうえで,皮膚科研修医にとって必要かつ十分な情報を提供することが本書の目的です.本書の最も大きな特徴としては,これから専門医をめざす方にとって,疾患の理解のみならず,勉強方法や将来のキャリアパスに関わる情報まで幅広く網羅されている点です.これから皮膚科の勉強を開始する方にとって,教科書の選び方,論文の書き方,学会発表の仕方といった勉強方法や,リスクマネジメント,医療訴訟といった社会的知識は重要であるにもかかわらず,1冊の本の中で系統的に解説した書籍は極めて少ないのが現状です.本書はこういった皮膚科に関連する周辺情報も含めて,専門研修に役立つものはすべて網羅しています.本書が手元にあれば,実際の皮膚科研修で困ることはないと思います.また,本書は「研修ノート」と名づけられてはいますが,医学生,初期研修医,すでに専門医を取られた先生にも役立つ内容となっています.本書が読者の皮膚科学理解の一助になればと願っています.

 2016年3月吉日
 東京大学大学院医学系研究科皮膚科学教授
 佐藤 伸一