保険診療におけるカルテの記載要件はより細分化,複雑化する一方,診療報酬審査の厳密化,第三者への開示に対応するためにも,適切なカルテ記載のあり方が求められている.本書では,実際に書く際の考え方,やってはいけない点など,具体的な事例を紹介しながら,カルテの適切な書き方,留意点等についてわかりやすく解説している.改訂第4版では,具体的事例を追加するとともに,算定要件としてのカルテの記載事項を更新した.
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目次
改訂第4版 序
はじめに
A基本的事項
1 カルテ記載の法律的根拠
2 保険診療におけるカルテの様式
3 保険診療以外のカルテ
4 電子カルテの記載画面について
5 カルテの欄の記載義務について
6 個々の欄に記載する場合の留意事項
a.共通事項
b.受給資格,被保険者番号等欄
c.傷病名欄
d.症状・所見等欄
B具体的事項
1 共通事項
a.更新時要約
b.訂正の方法
2 傷病名欄について
a.傷病名
b.傷病名の整理(1)
c.傷病名の整理(2)
d.傷病名の変更
e.傷病の範囲,部位,急性,慢性の別
f.保険病名(レセプト病名)の禁止
3 症状・所見等欄
●一般的事項
a.記載手段,判読性
b.診療の都度記載すること
c.電話等の再診
d.時間外等
e.患者への説明と同意についての記載(1)
f.患者への説明と同意についての記載(2)
g.外傷,火傷等の発生日時等の記載(1)
h.外傷,火傷等の発生日時等の記載(2)
i.責任の所在
j.診断根拠の記載
k.部位,範囲等の記載
●検査について
l.検査計画・必要性
1.検査理由の記載がないもの/2.検査項目がセット化され,その必要性の記載がないもの/3.検査計画を記載するよう心がける
m.検査結果の判定
1.当日実施された胃内視鏡検査結果の記載がないもの/2.前回施行した検査結果の判定の記載がないもの
●投薬等について
n.約束処方
o.do処方
p.処方は薬剤の規格単位,服用時点も記載すること
q.治療計画,治療方針の記載6
1.投薬の方針の記載がないもの/2.治療方針の記載,投薬理由の読みとれるもの
r.治療効果の判定のないもの
1.漫然投薬,無診投与が疑われる例/2.投薬の効果判定,見直し等の記載がないもの/3.リハビリの治療効果判定等の記載がないもの
●算定要件としての必須記載事項(指導・管理等)
s.特定疾患療養管理料の管理内容の記載がないもの
t.特定疾患療養管理料の記載例
u.特定薬剤治療管理料の算定要件の記載がないもの
v.悪性腫瘍特異物質治療管理料の算定要件
w.在宅自己注射指導管理料の算定要件
x.呼吸心拍監視料の算定要件
y.臨床研修病院入院診療加算の算定要件
4 点数等欄
a.種別,項目の記載を行うこと
b.症状,所見等を点数等欄に記載しないこと
c.一部負担金
d.チェックマーク方式の記載はまちがいの元であることに注意
C算定要件としての診療録の記載について
D問題志向型診療記録(POMR)について
1 具体的事例と手順
a.問題点リスト作成
b.所見欄に記載
c.問題解決へ
2 事例のSOAP記載
Eまとめ
1 総合的なこと
2 傷病名欄について
3 症状,所見等欄について
4 点数等欄
5 DPCの注意事項
Fカルテの電子媒体保存について
1 真正性の確保
a.作成責任者の識別および認証
b.確定操作
c.識別情報の記録
d.更新履歴の保存
e.過失による虚偽入力,書き換え,消去および混同を防止すること
f.使用する機器,ソフトウエアに起因する虚偽入力,書き換え,消去,混同を防止すること
g.故意による虚偽入力,書き換え,消去,混同を防止すること
2 見読性の確保
a.情報の所在管理
b.見読化手段の管理
c.情報区分管理
d.システム運用管理
e.利用者管理
3 保存性の確保
a.媒体の劣化対策
b.ソフトウエア・機器・媒体の管理
c.継続性の確保
d.情報保護機能
4 その他・相互利用性,運用管理規定,プライバシー保護等
5 電子カルテ記載の自己チェックポイント
a.一般的事項
b.真正性について
c.見読性について
d.保存性について
e.請求作業関連
G診療録等の開示について
〔付録〕診療情報の提供に関する指針
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序文
改訂第4版 序
最近,点数改正のたびに算定要件としての診療録記載の必要な項目が多数追加されています.点数改正の中身が細分化,複雑化しており,医学の進歩並びに患者サービスの観点から待ち時間の短縮等の努力要請などとも合わせ,現場の医師の負担は並大抵のものではないと推測されます.
このような状況は,さらに次世代に向かって拡大していくものと思われます.
一方でDPCの普及により若い医師たちの算定要件への関心が希薄になるのではないかと危惧されるところです.
置かれた状況にもよりますが,基本的事項を確認することが必要ではないかと思われます.
今回の改訂では算定要件の一覧表を更新しました.
また,若干の具体的事例も追加しました.
本書が皆様のお役にたてば幸いに存じます.
2015年5月
髙木 泰
はじめに
保険診療におけるカルテ記載について
診療録(カルテ)は原則開示される時代になりました.
つまり診療記録を含めた医療記録は開示によって第三者にも見られるということです.
官民を問わず,いまや多くの地域の中核病院が診療録開示マニュアルを持っていると思われます.開示の理由はさまざまですが,いつ開示されても耐えられる記載を心がけねばならないということです.
また,行政指導等によって診療録の記載不備の指摘を受けたり,それに伴う返還金等の措置を受けたりすることから,特に医育機関において診療録記載マニュアルを作成しているところも増えてきているように思われます.
ここ数年,医療のIT化は急速に進行しオーダリングはもちろんのこと,電子カルテ(診療録のOA機器による記載と電子媒体による保存のこと),画像検索システム等の普及はめざましいものがあります.
また,診療報酬請求におけるオンライン化も進んでおり,近い将来診療報酬審査においても審査のIT化がさらに拡大することが予想されます.
診療報酬改正は2年に1回実施されることになっておりますが,そのつど算定要件としての診療録への記載の求められる項目が増加しております.
医療現場の医師にとっては負担が増える一方ですが,請求根拠としての診療録の記載は自己の診療の評価をしてもらうために必要かつ重要であると思われます.
最近はDPCを採用する病院が増加し,すべての病床の過半数以上を占めるようになりました.DPCの包括部分に含まれる請求項目については審査上査定されることもないので,出来高請求に比較して自院でのレセプト点検の精度,診療録の記載が甘くなりがちであります.
また,DPCにおけるコーディングの根拠としての診療録記載のあり方が問われるようになりました.
このような状況で各制度の問題等に触れず,診療録の記載に特化して述べるのはいささかの抵抗がありますが,医師として困らないために現状を理解して本書を活用いただければ幸いに存じます.
2015年5月
髙木 泰