Professor of Medicine Mayo Clinic College of Medicine Chair Division of Endocrinology Diabetes Metabolism & Nutrition at Mayo Clinic Rochester Minnesota USA
アメリカのメイヨークリニックの教授で,世界で最も著名な内分泌臨床医・研究者であるWilliam F. Young, Jr.著.メイヨークリニックでの長年にわたる実診療から,下垂体・副腎の疾患30 caseについて,診療における重要ポイントである“クリニカルパール”を紹介.各caseについて,臨床情報,その診断・治療に関連する問題,その解答と解説,そしてそのcaseに関する“クリニカルパール”の紹介という形式で書かれている.
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目次
The Mayo Clinic Story
PREFACE (William F. Young, Jr.)
刊行にあたって (成瀬光栄)
序文 (平田結喜緒)
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【下垂体】
Case 1(22歳 女性) 下垂体柄病変
Case 2(28歳 女性) 原発性empty sella症候群に伴うホルモン所見
Case 3(34歳 男性) 女性化乳房
Case 4(36歳 女性) 下垂体囊胞
Case 5(58歳 男性) 下垂体偶発腫瘍
Case 6(62歳 男性) 多尿,多飲,脳神経麻痺を伴うトルコ鞍腫瘤
Case 7(36歳 男性) Cushing症候群のスクリーニング検査としての24時間尿中遊離コルチゾール
Case 8(54歳 女性) Cushing症候群のスクリーニング
Case 9(20歳 男性) ACTH依存性Cushing症候群の病型診断
【副腎】
Case 10 (21歳 女性) 妊娠中のCushing症候群
Case 11 (22歳 女性) 副腎疾患患者における眼所見
Case 12 (50歳 女性) 囊胞性副腎腫瘤
Case 13 (66歳 女性) どの時点で悪性褐色細胞腫と診断すべきか
Case 14 (22歳 女性) MEN type2A患者における副腎腫瘤
Case 15 (22歳 女性) 妊娠合併原発性アルドステロン症
Case 16 (28歳 女性) 妊娠合併褐色細胞腫
Case 17 (24歳 女性) 遺伝子異常が疑われる褐色細胞腫の診断
Case 18 (30歳 女性) 慢性浮腫を伴う高アルドステロン血症
Case 19 (32歳 女性) スペル(発作)と褐色細胞腫の検索
Case 20 (33歳 女性) 褐色細胞腫に対する副腎静脈サンプリング
Case 21 (34歳 女性) 原発性アルドステロン症におけるスクリーニング
Case 22 (41歳 女性) 副腎不全のステロイド補充療法
Case 23 (46歳 男性) 原発性アルドステロン症における副腎静脈サンプリング
Case 24 (43歳 女性) 両側多発副腎腫瘍によるCushing症候群
Case 25 (51歳 女性) 巨大副腎腫瘤の術後治療
Case 26 (55歳 男性) ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬と副腎静脈サンプリング
Case 27 (58歳 女性) 褐色細胞腫のスクリーニング検査
Case 28 (59歳 女性) 副腎不全の最も頻度の高い原因
Case 29 (68歳 女性) 側腹部痛と両側副腎腫瘤
Case 30 (73歳 男性) 急速に増大する副腎腫瘤
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序文
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PREFACE
“Endocrine Clinical Pearls” are unique clinical endocrine insights based on lessons learned from caring for patients with complex adrenal and pituitary disorders for over 30 years at Mayo Clinic in Rochester, Minnesota, USA. Thirty challenging clinical scenarios are presented, each of which leads to a multiple choice question addressing the best clinical management. The correct answer is provided and is followed by a discussion that includes: an overview of the disorder; rationale for why the correct answer is correct; and, explanations for why the distractors are incorrect. Pertinent references from the medical literature are provided. Each clinical vignette is then summarized in the form of 1 to 5 clinical pearls. These pearls are valuable clinical lessons─ learn them, keep them in a safe place, and don’t lose them! I hope clinicians find the clinical pearls helpful as they navigate the complex care of patients with adrenal and pituitary disorders.
September, 2015
William F. Young, Jr., MD, MSc
Professor of Medicine, Mayo Clinic College of Medicine, Chair, Division of Endocrinology, Diabetes, Metabolism, & Nutrition at Mayo Clinic, Rochester, Minnesota, USA
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執筆者プロフィール
William F. Young, Jr.先生は米国ミネソタ州ロチェスターにあるMayo ClinicのMayo Clinic College of Medicineの教授で,特に,名誉あるTyson Family Endocrinology Clinical Professorshipの称号を受けておられます.Mayo Clinicの内分泌部門のChairでもあり,世界で最も大きな内分泌内科のリーダーとして活躍されており,米国内分泌学会の前会長でもあります.これまで内分泌性高血圧,副腎や下垂体疾患に関する240以上の論文を発表されており,citationも約8,500と,非常に多く引用されています.さらに,教育に関する多くの受賞歴,米国内あるいは国際的な会議での350回以上の講演,世界の100以上の医療機関での客員教授など,まさに世界を代表する内分泌の臨床医・研究者です.
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刊行にあたって
“Pearls”の意味はもちろん,「真珠」であるが,同時に「貴重なもの」との意味で使われる.著者であるDr. William F. Young, Jr.は米国Mayo Clinic Department of Endocrinologyの教授で,臨床内分泌学の分野では,米国のみならず世界で最も著名な内分泌臨床医・研究者の一人である.本書はDr. YoungのMayo Clinicでの長年にわたる実診療から,副腎疾患,下垂体疾患の30例の症例を選び,「内分泌診療の重要なエッセンス」を抽出,執筆いただいた.実際の症例をもとに,臨床情報,その診断・治療に関連するKey question,その解答の解説の形式となっている.2015年3月に企画され,半年で30篇の原稿の執筆という,大変な作業となったが,Dr. Youngはまさに着々と執筆され,時には1週間に3篇も執筆されることもあった.本企画の当初より大変快くお引き受けいただき,また米国内分泌学会の主要な役職,Mayo Clinicでの診療,世界各地での講演など,超多忙なスケジュールであるにもかかわらず,「誠実に約束は守る」との先生のお人柄を表す作成過程であった.翻訳は私と先端医療センター病院長の平田結喜緒先生,国立国際医療研究センター病院の田辺晶代先生の3名で分担したが,原稿の英語は簡潔で意味は理解できても,それを適切な日本語に翻訳するのに時として苦労したのも事実である.
Dr. Youngとは2008年に弘前で開催された日本内分泌学会総会(須田俊宏会長)の招待講演で来日されて以来の親交である.以降,本年まで計8回にわたり来日いただき,Mayo-Japan Endocrine Seminarを京都および東京にて開催してきた.先生の明解で面白く,入念に準備された講演は毎回,多くの参加者に感動を与えている.本書はそのダイジェスト版ともいえるもので,先生の長年の内分泌診療の極意を短時間で知ることができると言って過言ではない.米国と日本の保険医療制度の差から,必ずしもすべてがそのままわが国に適応できるとは限らないが,米国の内分泌診療を知るよい機会でもある.英語の表現など,そのままの文章を是非見ていただきたいところがあったが,国内での出版であるため翻訳は避けて通れなかった点,ご容赦願いたい.是非,気楽に読んで内分泌の日常診療に役立つ“Endocrine Clinical Pearls”を楽しんでいただければ幸いである.
2015年11月
国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター副センター長
内分泌代謝高血圧研究部長
成瀬光栄
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序文
一般診療では患者の病歴,身体所見,検査所見から鑑別診断をあげて診断を絞り込んでいく過程は臨床医にとって最も醍醐味のあるものといえ,内分泌疾患の診療も同じである.病態に関連する病歴の巧みな聴取能力,ホルモン異常に基づく特有の身体的特徴(顔貌,体型など)や異常な検査値を見逃さない鋭い観察力,そして鑑別に必要で適切な内分泌検査や画像検査を選択し,得られた情報から推論し最終的に的確な臨床診断を下すといった科学者としての深い洞察力,そして科学的根拠に基づいた最適の治療選択肢を患者に提供──といったこれら一連の知識と技能が内分泌専門医には要求される.
しかし若手医師が内分泌疾患患者を診療する際に,みたことがない徴候,難解なホルモン異常の病態生理,あるいは難渋する診断や治療といった場面に遭遇することは少なくない.このような時に指導医からの適切なアドバイスやコメントは大変貴重なものとなる.臨床では指導医からのちょっとしたヒントは適切な診断や治療に結びつくことがしばしばある.それは長い臨床経験と科学的根拠に裏打ちされた指導医の適切な言葉として若手医師に伝えられる.米国ではこのような指導医の貴重な助言を“Clinical Pearl”(「臨床的珠玉」)とよんでいる.
今回国際的に著名な臨床内分泌学者であるMayo ClinicのYoung教授が“Endocrine Clinical Pearls”と題して自ら経験した30例の副腎・下垂体疾患の症例を選び,症例ごとに画像や写真を駆使して症例の提示,診断と治療の設問,その解答の解説,関連文献,そして最後に彼の貴重な内分泌の助言(クリニカルパール)で完結している.Young 教授の講演を何度か聴講したことがあるが,若手医師にとって症例提示型の大変わかりやすい教育的な内容である.彼がMayo Clinicで医学生,レジデント,スタッフから内分泌教育に関する賞(ベストティーチャー)を何度も授与される由縁である.このような教育に卓越した臨床医は高く評価,尊敬され,米国ではMaster Clinician(臨床医の師)とよばれている.まさに彼こそ臨床内分泌学における最上のMaster Clinicianとよぶにふさわしい.
今回刊行される「内分泌クリニカルパール」はMayo Clinicでの彼の臨床内分泌学の教育法のダイジェスト版ともいえる良書である.現在わが国で内分泌診療に従事している指導医,専門医,専攻医,総合医,研修医,医学生といった幅広い読者を対象に,一人でも多く彼の内分泌診療のエッセンスに触れていただきたい.
2015年11月
先端医療振興財団先端医療センター病院長
東京医科歯科大学名誉教授
平田結喜緒