耳鼻咽喉科・頭頸部外科医を志す研修医・若手医師を対象に,心構えから解剖・検査・疾患・手術,書類の書き方や最新トピックスまでを網羅.臨床現場で役立つ164項目を収載.第2版では新たに,専門医,国際学会,留学,アレルギー性鼻炎,Baha,咽頭癌手術,手術支援機器,小児聴覚障害,頭頸部癌,分子標的薬,遺伝カウンセリング,指定難病医療費補助制度,感染症届出基準,漢方薬,検査・周術期,妊産婦の項目が加わりさらに充実.
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目次
第1章 耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修でのアドバイス
A耳鼻咽喉科・頭頸部外科医になる諸君へ
■耳鼻咽喉科・頭頸部外科医を志す諸君へのメッセージ/小林俊光
B研修の概要
1.耳鼻咽喉科専門医の育成とそのシステム/奥野妙子
2.頭頸部がん専門医の育成とそのシステム/藤井 隆
3.サブスペシャルティ/奥野妙子
C知識の習得のしかた
1.研修の到達目標/土井勝美
2.教科書・参考書の選び方/鈴木光也
3.診療ガイドラインの活用法/工藤典代
4.医学論文の読み方・書き方/藤枝重治
5.カンファランスの聞き方,発表のしかた/肥塚 泉
6.学会での症例報告の準備と発表のしかた/肥塚 泉
7.国際学会での発表/平野 滋
8.耳鼻咽喉科・頭頸部外科医にとっての研究と学位/藤枝重治
9.留学と海外経験─藤枝重治
10.男女共同参画・復職支援・キャリアパス/飯野ゆき子
D医療現場でのコミュニケーション
1.患者とのコミュニケーションと説明のコツ/柿木章伸
2.メディカルスタッフとのコミュニケーション/吉田尚弘
3.チーム医療・多職種連携/福田 諭
4.他科の医師との関係/福田 諭
5.重症感染症のコンサルト・院内感染対策/保富宗城
6.地域連携の取り方(研修病院と診療所の関係)/飯野ゆき子
7.企業との関係/鈴木光也
第2章 解剖と機能
A解剖と機能
1.耳/桂 弘和,阪上雅史
2.鼻・副鼻腔/春名眞一
3.口腔・咽頭/中田誠一
4.喉頭/二藤隆春
5.気管・食道/今西順久
6.頸部/大上研二
7.正常画像/尾尻博也
第3章 研修で学ぶべき症状・症候のみかた
A問診・診察の進め方
■問診・診察の進め方/山岨達也
B症状・症候のみかた
1.耳痛・耳漏/井上泰宏
2.耳鳴・耳閉感/井上泰宏
3.難聴/山岨達也
4.めまい/鈴木 衞
5.鼻漏・後鼻漏,鼻閉/中島庸也
6.鼻出血/吉田隆一,中島庸也
7.嗅覚障害/三輪高喜
8.複視,視力低下/三輪高喜
9.味覚障害/任 智美
10.咽頭痛・嚥下痛/兵頭政光
11.いびき/宮崎総一郎
12.音声障害・構音障害/兵頭政光
13.咽喉頭異常感/原 浩貴
14.呼吸困難/梅野博仁
15.嚥下障害/兵頭政光
16.頸部腫脹/朝蔭孝宏
17.顔面神経麻痺/村上信五
第4章 研修で学ぶべき検査
A検査の基礎知識
1.耳領域
1)聴覚機能検査/日比谷怜美,角田篤信
2)平衡機能検査/岩﨑真一
3)顔面神経の検査/近藤健二,戸島 均
4)耳の画像検査/小川 洋
2.鼻・副鼻腔領域
1)主要な検査/竹野幸夫
2)鼻・副鼻腔領域の画像検査/浅香大也
3.口腔領域/吉原俊雄
4.咽頭領域/吉原俊雄
5.喉頭領域
1)主要な検査/角田晃一
2)咽頭・喉頭の画像検査/梅野博仁
6.気管・気管支・食道領域/原 浩貴
7.頸部領域
1)甲状腺の検査/古川まどか,古川政樹
2)頸部の画像検査/古川まどか,古川政樹
8.言語・構音に関する検査/堀口利之
第5章 主要な疾患
A耳領域
1.外耳疾患/土井勝美
2.中耳疾患/小川 郁
3.内耳疾患・後迷路疾患
1)難聴/福島邦博
2)平衡障害/堤 剛
4.顔面神経疾患/近藤健二
5.外耳・中耳腫瘍/中川尚志
B鼻・副鼻腔領域
1.アレルギー性鼻炎/吉川 衛
2.鼻・副鼻腔疾患/飯田 誠
3.鼻出血/市村恵一
4.鼻・副鼻腔腫瘍/波多野 篤
C口腔・咽頭領域
1.口腔疾患/余田敬子
2.扁桃・咽頭疾患/氷見徹夫
3.上咽頭腫瘍/吉崎智一
4.中咽頭腫瘍/猪原秀典
5.下咽頭腫瘍/朝蔭孝宏
D喉頭領域
1.喉頭疾患/塩谷彰浩
2.喉頭腫瘍/峯田周幸
E気管・気管支・食道領域
1.気管・気管支疾患/平林秀樹
2.食道疾患/片田彰博
3.異物症/片田彰博
F頭頸部領域
1.唾液腺疾患/河田 了
2.甲状腺疾患/家根旦有
3.頸部腫瘤/志賀清人
4.リンパ節疾患/岸部 幹,原渕保明
5.深頸部感染症/片山昭公,原渕保明
G外傷(側頭骨骨折,顎顔面外傷,気道外傷・熱傷)
1.側頭骨骨折/馬場俊吉
2.顎顔面外傷/松根彰志
3.気道外傷・熱傷/梅野博仁
H全身疾患と耳鼻咽喉科・頭頸部疾患
■全身疾患と耳鼻咽喉科・頭頸部疾患/安井拓也
第6章 基本的な手術治療
A基本的な手術治療
1.鼓膜切開術・換気チューブ留置術/須納瀬 弘
2.鼓室形成術・アブミ骨手術/須納瀬 弘
3.Baha/喜多村 健
4.人工内耳手術/山岨達也
5.鼻中隔矯正術・下鼻甲介切除術/松脇由典
6.内視鏡下鼻内副鼻腔手術/春名眞一
7.口蓋扁桃摘出術・アデノイド切除術・咽頭形成術/鈴木正志,渡辺哲生
8.喉頭微細手術/齋藤康一郎
9.音声再建手術/平野 滋
10.食道異物・気管支異物摘出術/平林秀樹
11.嚥下障害に対する手術/馬場 均
12.唾液腺に対する手術/河田 了
13.甲状腺に対する手術/家根旦有
14.上顎癌に対する手術/三谷浩樹,川端一嘉
15.舌癌に対する手術/三谷浩樹,川端一嘉
16.中喉頭癌に対する手術/吉本世一
17.下咽頭癌に対する手術/吉本世一
18.喉頭癌に対する手術/藤井 隆
19.頸部郭清術/鬼塚哲郎
20.頭蓋底手術/岸本誠司
21.手術支援機器/朝子幹也
第7章 臨床に役立つ基礎知識
Aリハビリテーションの基礎知識
1.聴覚障害
1)小児/福島邦博
2)成人/西山信宏
2.平衡障害/岩﨑真一
3.音声言語障害・構音障害/益田 慎
4.嚥下障害/香取幸夫
5.頭頸部癌/藤本保志
B悪性腫瘍治療に必要な基礎知識
1.放射線療法/佐々木良平
2.がん薬物療法/藤井博文
3.分子標的薬/清田尚臣
4.緩和医療/鬼塚哲郎
C感染症の基礎知識
■感染症の基礎知識/小池修治
D遺伝学の基礎知識
1.遺伝様式の判定/野口佳裕
2.遺伝学的検査/野口佳裕
3.遺伝カウンセリング/野口佳裕
第8章 知っておくべき知識と制度
A知っておくべき知識と制度
1.法律全般/畔柳達雄,伊澤 純
2.医療過誤・医療事故調査制度/鈴木賢二
3.医療事故とその予防/青柳 優
4.医療保険制度,公費負担制度/鳥海弥寿雄
5.医薬品副作用被害救済制度/見田 活
6.障害者認定/田内 光
7.指定難病医療費補助制度/飯野ゆき子
8.先進医療/西尾信哉
9.感染症届出基準/小池修治
第9章 書類の書き方
A書類の書き方
1.診療録の書き方と留意点/中島 務
2.診断書・意見書の書き方と記載例/將積日出夫
3.紹介状の書き方/西山信宏
4.処方箋の書き方/小林泰輔
5.入院時診療計画書,説明書・同意書の書き方/小林泰輔
6.英文紹介状とその返事の書き方/時田信博
7.身体障害者診断書・意見書の書き方/田内 光
第10章 主要な薬剤の使い方
A処方のコツ
1.抗菌薬/鈴木賢二
2.ステロイド/黒野祐一
3.抗アレルギー薬/黒野祐一
4.抗腫瘍薬/藤井正人
5.漢方薬/市村恵一
B 注意すべき薬剤管理
1.検査・周術期/吉田忠雄,曾根三千彦
2.妊産婦/田中 守
トピックス
1.老化とアンチエイジング
・アンチエイジング医学/山岨達也
・難聴/内田育恵
・平衡障害/岩﨑真一
・嗅覚障害/三輪高喜
・高齢者の味覚障害/任 智美,阪上雅史
・嗄声/平野 滋
2.再生医療
・耳介・鼻/星 和人
・鼓膜/金丸眞一
・内耳/細谷 誠
・顔面神経/藤巻葉子
・気管/大森孝一
3.遺伝子診断
・難聴/宮川麻衣子
・平衡障害/松永達雄
・神経変性疾患/内藤理恵
・頭頸部腫瘍/安藤瑞生
・甲状腺腫瘍/大月直樹,丹生健一
付録
■代表的な薬剤一覧/神崎 晶
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序文
シリーズ総監修の序
「研修ノート」は,かつての「研修医ノート」シリーズを全面的に刷新し,新シリーズとして刊行するものである.
旧シリーズ「研修医ノート」は内科研修医のためのテキストとして1993年に出版された.その後,循環器,産婦人科,小児科,呼吸器,消化器,皮膚科など,診療科別に「研修医ノート」が相次いで刊行された.いずれも一般のマニュアルとは異なり,「基礎的な手技」だけではなく「医師としての心得」や「患者とのコミュニケーション」などの基本,あるいは「書類の書き方」,「保険制度」など,重要ながら平素は学ぶ機会の少ない事項を取り上げ,卒後間もない若手医師のための指導書として好評を博してきた.
しかしながら,時代の変化により研修医に要求される内容は大きく変化した.地域医療の確保が社会問題化するなかで,研修教育の充実はますます重要となった.さらに医療への信頼回復や医療安全のためには,患者やスタッフとのコミュニケーションの改善も必須である.
このような状況に鑑み,「研修医ノート」シリーズのあり方を再検討し,「研修ノート」の名のもとに,新シリーズとして刊行することとした.読者対象は後期研修医とし,専門分野の決定後に直面するさまざまな問題に対する考え方と対応を示すことにより,医師として歩んでいくうえでの“道標”となることを目的としている.
本シリーズでは,全人的教育に必要な「医の基本」を記述すること,最新の知見を十分に反映し,若い読者向けに視覚的情報を増やしながらも分量はコンパクトとすることに留意した.編集・執筆に当たっては,後期研修医の実態に即して,必要かつ不可欠な内容を盛り込んでいただくようお願いした.“全国の若手医師の必読書”として,本シリーズが,長く読み継がれることを願っている.
終わりにご執筆頂いた諸先生に心より感謝を申し上げます.
2016年12月吉日
自治医科大学学長
永井良三
編集の序
2010年に診断と治療社「研修ノート」シリーズから「耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修ノート」を発行しました.初版の発刊から6年が経過し,新しい情報を追加する必要が出てきましたので,今回改訂を行うこととしました.具体的には,頭頸部がん専門医の育成とシステム,Baha,手術支援機器,指定難病医療費助成制度,先進医療などを新しく項目とし,処方のコツでは漢方薬を加え,注意すべき薬剤管理として,検査・周術期と妊産婦を加えました.すべての項目に加筆修正を行いましたが,特に鼻副鼻腔疾患からアレルギー性鼻炎の項目を独立させ,中咽頭癌と下咽頭癌に対する手術,リハビリの聴覚障害の小児と成人の項目を分け,さらに頭頸部癌の項目を入れました.基礎知識として遺伝カウンセリングについて,化学療法ではがん薬物療法に加えて分子標的薬の項目を,トピックスとしては老化とアンチエイジング,遺伝子診断の項目を加えました.
今回の改訂では,初版の6名の企画担当のうち5名の先生にお残りいただき,新しく宇佐美真一先生が参加しています.改訂に際しては初版と同じく耳鼻咽喉科を研修する医師が専門医レベルに到達するために必要な項目を網羅するようにしました.特にユニークな点は,日常臨床の診断,治療に必要な項目に限らず,研修の概要,知識習得のコツ,コミュニケーションなど,通常の教科書では得られない有益な情報も含めていることです.また社会的知識と制度や書類の書き方など,系統だった指導を受けにくい項目も取り入れ,さらに救急と外傷,全身疾患と耳鼻咽喉科など,初期研修医や他科の医師にも魅力あるテーマも取り上げました.薬剤についても刷新しました.
個々の診断,検査,治療,手術の項目につきましても,その領域のエキスパートでかつ研修指導を実践されておられる先生方に改訂や新たな執筆をお願いし,ここ数年間に導入された新規技術も取り込みました.各先生方がご自身で得られたコツやテクニックが随所に散りばめられています.症状・症候からの診断の進め方ではフローチャートを駆使し,どのような点に着目して診断を進めていけばよいのか理解しやすいように工夫し,経験の浅い研修医にも専門医の考え方がわかるように工夫しています.検査・治療機器,治療手技は日進月歩の勢いで進歩していますが,今回の改訂では最新のものまで取り上げました.
本書は専門医に魅力ある内容を含むだけでなく,医学生や初期研修医のテキストとしても十分役立つものとなっています.医学生や初期研修医が本書を手に取り,耳鼻咽喉科領域が多岐にわたりながらそのいずれもが魅力あるものであることを感じ,一人でも多くの方が耳鼻咽喉科を目指すようになれば望外の喜びであり,耳鼻咽喉科における研修・教育に大きく貢献することを心から願っています.
2016年12月吉日
編集者を代表して
東京大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科教授
山岨達也