稀少てんかんの疾患概念や原因・治療についての最新知見,さらにケアや支援制度の解説を加え,臨床現場で役立つことをめざした包括的,かつ実践的な手引書.前書「稀少難治てんかん診療マニュアル」の発展形として,難治性疾患政策研究事業「希少難治性てんかんのレジストリ構築による総合的研究」班と日本てんかん学会が協力して作成し,かつ日本神経学会,日本小児神経学会,日本てんかん外科学会の協力を得た決定版.
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目次
口絵カラー
第1章 稀少てんかんの原因─総論
1. 遺伝子異常とてんかん 石井敦士,廣瀬伸一
2. 染色体異常症とてんかん 岡本伸彦
3. 先天代謝異常症とてんかん 酒井規夫
4. 皮質形成異常とてんかん 加藤光広
5. 異形成性腫瘍とてんかん 川合謙介
6. 免疫とてんかん 高橋幸利,大松泰生
7. 稀少てんかんの病理 柿田明美
第2章 疾患の特徴と診療指標
1. てんかん症候群
1-1 早期ミオクロニー脳症 須貝研司
1-2 大田原症候群(suppression-burstを伴う早期乳児てんかん性脳症) 小林勝弘
1-3 遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん 須貝研司
1-4 West症候群(点頭てんかん) 小国弘量
1-5 Dravet症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん) 今井克美
1-6 ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん(Doose症候群) 小国弘量
1-7 ミオクロニー欠神てんかん 池田浩子
1-8 Lennox-Gastaut症候群 青天目信,永井利三郎
1-9 徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症 池田浩子,井上有史
1-10 Landau-Kleffner症候群 浜野晋一郎
1-11 進行性ミオクローヌスてんかん─小児 須貝研司
1-12 進行性ミオクローヌスてんかん―成人 村井智彦,人見健文,池田昭夫
1-13 海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん 臼井直敬
1-14 片側けいれん・片麻痺・てんかん症候群 浜野晋一郎
1-15 Aicardi症候群 加藤光広
1-16 Rett症候群 松石豊次郎
1-17 PCDH19関連症候群 日暮憲道,廣瀬伸一
2. 神経皮膚症候群におけるてんかん
2-1 神経皮膚症候群とてんかん─総論 岡本伸彦
2-2 結節性硬化症 林雅晴
2-3 Sturge-Weber症候群 菅野秀宣
3. 染色体機能異常によるてんかん
3-1 Angelman症候群 齋藤伸治
3-2 環状20番染色体症候群 池田仁
4. 代謝異常症によるてんかん
4-1 ミトコンドリア病 青天目信
4-2 グルコーストランスポーター1(GLUT1)欠損症 小国弘量,伊藤康
5. 皮質形成異常によるてんかん
5-1 片側巨脳症 佐々木征行
5-2 限局性皮質異形成 川合謙介
5-3 神経細胞移動異常症 加藤光広
6. 異形成性腫瘍によるてんかん
6-1 視床下部過誤腫 白水洋史
6-2 その他の腫瘍 松尾健
7. 免疫介在性てんかん
7-1 Rasmussen脳炎(Rasmussen症候群) 高橋幸利,堀野朝子
7-2 自己免疫介在性脳炎・脳症 坂本光弘,松本理器,池田昭夫
7-3 難治頻回部分発作重積型急性脳炎 佐久間啓
第3章 稀少てんかんの検査
1. 生理検査 小林勝弘,白石秀明
2. 画像検査 松田博史,佐藤典子
3. 遺伝学的検査 石井敦士,廣瀬伸一
4. その他の検体検査 秋山倫之
5. 神経心理学的検査 橋本竜作,白石秀明
第4章 稀少てんかんの治療とケア
1. 治療総論
1-1 新生児期のてんかん管理 奥村彰久
1-2 高齢期のてんかん管理 赤松直樹
1-3 抗てんかん薬治療─小児 宮本雄策,山本仁
1-4 抗てんかん薬治療─成人 寺田清人
1-5 てんかん食(ケトン食療法等) 今井克美
1-6 その他の内科的薬物治療 高橋幸利,小池敬義
1-7 外科的治療 岩﨑真樹
1-8 てんかんのリハビリテーション 栗原まな
1-9 療育 藤森潮美
2. ケアとサポート
2-1 てんかんと遺伝カウンセリング 岡本伸彦
2-2 稀少てんかんと看護 永井利三郎
2-3 てんかんケアツール 本田涼子
2-4 ピアサポート 田所裕二
2-5 社会資源利用の支援 橋本睦美
2-6 小児慢性特定疾病と指定難病 林雅晴
第5章 稀少てんかんQ&A
A. 検査・遺伝に関連するQuestion
B. 診断についてのQuestion
C. 治療についてのQuestion
D. 社会・福祉・助成についてのQuestion
索引
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序文
平成25年に「稀少難治てんかん診療マニュアル」(大槻泰介他,編)が発刊されましたが,その後3年が経過し,新たな知見が増えてきたことに加え,改正児童福祉法と「難病の患者に対する医療等に関する法律」が施行され,多くのてんかん疾患が小児慢性特定疾病および指定難病となり,稀少てんかんの診療手引きを必要とする医師あるいは医療関係者の裾野が広がってきました.
このため,「稀少難治てんかん診療マニュアル」の発展形として,厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「希少難治性てんかんのレジストリ構築による総合的研究」班と日本てんかん学会ガイドライン作成委員会が協力して,疾患概念や原因・治療についての最新の知見を含み,ケアや支援制度の解説を加え,臨床場面で役に立つ稀少てんかん診療の包括的・網羅的なガイド本を作成することになりました.
疾患によっては,稀少ゆえにエビデンスに基づいた診療指針の作成が困難なこともあります.その場合には文献と経験を十分に織り込み,臨床に即した診療指標とすることをめざしました.それぞれの疾患のエキスパートが分担執筆しています.
本書は,てんかん発作が主要症状の一つとして生活に大きな影響を与えている稀少疾病*を取り上げています.しかし稀少てんかんはこれがすべてではありません.てんかん発作はあるものの,他の障害がより前景にある疾患は取り上げていません.また,特定の疾病や症候群に分類できないてんかんは多く,当研究班が行っているレジストリでは,難治な発作を有するてんかんで「その他のてんかん」としか分類できないものが半数以上を占めています.このなかには今後,共通する臨床特性や原因が特定され,一定の疾病あるいは症候群として新たに認知されるものがあると思われます.時代に合わせて,本書は改訂していく必要があります.
診療指標は日本神経学会,日本小児神経学会,日本てんかん外科学会の承認も得ています.本書を,稀少てんかんの実践臨床に携わる医療従事者の方々に広く利用していただければ幸いです.
2017年3月
「稀少てんかんの診療指標」編集委員
井上有史,小国弘量,須貝研司,永井利三郎
希少難治性てんかんのレジストリ構築による総合的研究班
日本てんかん学会ガイドライン作成委員会
*指定難病の定義に従い,患者数が0.1%程度以下を稀少とした.