好評書の改訂版.新たな写真・イラストで,脳解剖の知識から脳画像のポイント,リハビリテーションの実際までを分かりやすく紹介.疾患名を整理しなおし,小児に関する記述や、集団認知リハビリテーションや就業支援など,リハビリテーションの実際についてを充実させた.
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目次
著者略歴
第1章 脳の解剖を理解する
A.中枢神経系を取り囲む構造
1.頭蓋骨
頭部外傷(脳外傷)
小児の特徴
2.中枢神経系を包む膜
硬膜
くも膜
軟膜
3.脳脊髄液
4.脳血管系
脳循環・Willis動脈輪
脳血管と脳循環代謝
B.中枢神経系の構造
1.神経細胞と神経線維
2.大脳の構造
3.前頭葉
一次運動野・運動前野・補足運動野
前頭眼野・前頭前野
運動性言語野
前頭葉損傷を疑う症状
前頭葉損傷部位による特徴的な神経症状
4.頭頂葉
右頭頂葉の障害
左頭頂葉の障害
5.後頭葉
6.側頭葉
感覚性言語野
7.交連,大脳辺縁系
脳梁
海馬体
8.視床
9.視床下部・下垂体
10.大脳基底核
11.小脳
12.脳幹・脳神経系
嗅神経(I)
視神経(II)
動眼神経(III)・滑車神経(IV)・外転神経(VI)
三叉神経(V)
顔面神経(VII)
聴神経(蝸牛神経・前庭神経)(VIII)
舌咽神経(IX)
迷走神経(X)
副神経(XI)
舌下神経(XII)
Column
失語症の臨床分類
脳外傷後の言語の障害
振り返りのサイン
小児の失行
発達性Gerstmann症候群
小児の優位大脳半球の検査
手続き記憶
眼瞼下垂の後天性原因
小児の落陽現象
頭部外傷による眼球運動障害
脳外傷による顔面神経麻痺
乳幼児の聴覚
仮性球麻痺と球麻痺
第2章 高次脳機能障害の診断と評価・対応法
A.高次脳機能障害とは
B.症状・サイン
C.診断の手順
D.神経疲労(易疲労性)
E.失語症
F.半側空間無視
G.失行症
H.失認症
I.注意障害
J.記憶障害
K.遂行機能障害
L.社会的行動障害
M.病識の欠如
第3章 脳画像でおさえるべきポイント
A.高次脳機能障害をきたす疾患と画像診断
画像診断のポイント
画像診断に用いる検査62
B.脳血管障害
脳梗塞
脳出血
脳動静脈奇形
くも膜下出血
もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)
C.頭部外傷・脳外傷の特徴76
急性硬膜外血腫
急性硬膜下血腫
脳挫傷
びまん性軸索損傷(DAI)
慢性硬膜下血腫
小児の脳外傷
D.脳腫瘍
小児脳腫瘍
E.蘇生後脳症(低酸素脳症)
F.小児にみられる脳の障害
低酸素性虚血性脳症 (HIE)
脳室周囲白質軟化症(PVL)
急性脳炎
単純ヘルペス脳炎
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
急性脳症
Column
Evans Index
第4章 高次脳機能障害のリハビリテーション
A.リハビリテーションの考え方
B.集団認知リハビリテーション
羅心版の準備
羅心版のルール
自己紹介
主役の紹介
「やりたいこと」3つ
「今日・明日へのアドバイス」
実行に移すアドバイスを選択
羅心版を閉じる(クロージング)
C.リハビリテーションの原則
健康な身体作り
患者の障害(特性)を理解する
人(第三者)とつながる
D.診断書の書き方
精神障害者保健福祉手帳
身体障害者手帳(言語障害)
E.就学支援のポイント
F.就労支援のポイント
索引
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序文
私が2000年に神奈川リハビリテーション病院に赴任してすぐの頃に,国(厚生労働省)の施策として,2001年から高次脳機能障害支援モデル事業が始まりました.それまでは,高次脳機能障害は運動障害のリハビリテーションの阻害因子として捉えられ,医療者や支援者も積極的な治療やリハビリテーションの対象とは考えていませんでした.しかし,その後2004年に高次脳機能障害診断基準が定められ,高次脳機能障害は,保険診療の病名としても認められるようになりました.
従来,高次脳機能障害は,神経心理学で扱う学問として発展してきましたが,それらの研究は,必ずしも高次脳機能障害を改善させたり,治療したりすることに直結するものではありませんでした.このモデル事業をきっかけに,医師のみならず,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,心理療法士などの専門職がチームとなって,高次脳機能障害者とその家族を支援することが,結果として,高次脳機能障害を改善させ,患者の認知機能の向上や社会復帰につながることがわかってきました.
高次脳機能障害診断基準が作られてから早13年が過ぎようとしています.ほぼ全都道府県に高次脳機能障害支援センターが設置され,様々な医療機関や福祉施設で,高次脳機能障害の相談,診断,支援が行われるようになりました.
しかし,すべての問題が解決したわけではありません.もう一度基本に立ち返り,高次脳機能障害の基本的な理解を見直し,患者や家族にとって何が問題で,われわれ支援者は何を考え,どのように治療やリハビリテーション,社会支援を組み立てたらよいのかを見直す時期が来ているように思います.
本書が,子どもから高齢者まで,あらゆる高次脳機能の問題を抱えた患者とその家族の支援に関わる人々の助けになればと願っています.
最後に,高次脳機能障害リハビリテーション入門改訂版の制作に際し,大変お世話になった診断と治療社編集部の土橋幸代さんに心からの感謝を捧げたいと思います.
2017年4月
はしもとクリニック経堂 院長
橋本圭司