診療参加型臨床実習に不可欠な基本的臨床手技を,シミュレータも活用して修得するための指針となるテキスト.手技手順の紹介だけでなく,解剖学や生理学などの基礎医学,さらには関連する臨床医学と紐づけたテキストとなっており,入学直後からのすべての医学生に役立つ内容に.OSCE/Post-CC OSCEの受験勉強のポイント整理にも役立つ.
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目次
執筆者一覧
序
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本書の使用の手引き
医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)と本書項目との対応表
診療参加型臨床実習に参加する受験生に必要とされる技能と態度に関する学習・評価項目(第3.1版・平成29年1月26日)と本書項目との対応表
第1章 基礎編
1.臨床手技実習にのぞむにあたって
2.医療関連感染の対策
3.手指衛生
4.滅菌ガウンテクニック
5.滅菌手袋の着用
第2章 救急編
1.成人一次心肺蘇生法
2.AED(自動体外式除細動器)
3.心電図モニター付き除細動器の使用
4.乳児・小児救急処置
5.成人気道管理
第3章 検査編
1.血圧測定
2.静脈血採血
3.動脈穿刺とカテーテルの動脈留置
4.胸腔穿刺
5.腰椎穿刺
6.上腹部超音波検査
第4章 診察編
1.心臓診察
2.呼吸音聴診
3.耳科的手技
4.眼科診察
5.乳房触診
6.浮腫の診察
7.肛門診察と直腸診
第5章 処置編
1.皮膚縫合・結紮手技・抜糸
2.泌尿器科手技
3.IVR:Interventional Radiology
4.腹腔鏡下縫合結紮手技
第6章 資料編
1.患者安全を考えた医療手技
2.診療参加型臨床実習のための医学生の医行為水準
付録 テクニカルタームを覚える
●Column
・皮膚・粘膜曝露事故の発生とその対策/笠原 敬
・口腔外科診療FAQ/山川延宏・桐田忠昭
・PRT(Pit Recovery Time)-浮腫の判定方法-/赤井靖宏
●私がこの科を選んだ理由
・整形外科/田中康仁
・小児科/嶋 緑倫
・麻酔科/川口昌彦
・脳神経外科/中瀬裕之
・神経内科/杉江和馬
・耳鼻咽喉科/北原 糺
・消化器外科/庄 雅之
・放射線科/吉川公彦
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序文
―早期臨床手技実習のすすめ―
本テキストは,診療参加型臨床実習に不可欠な臨床手技をシミュレータを活用して修得するための,ナビゲータ役として作成したものです.単なる手技手順の紹介図書ではありません.解剖学や生理学などの基礎医学,さらには関連する臨床医学と紐づけたテキストで,入学直後からのすべての医学生を読者対象としています.
日本の医学教育はここ数年で劇的に変化すると思われます.いわゆる2023年問題が大きく影響しています.すなわち,2010年9月,米国のECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)が,2023年以降は,米国とカナダ以外の医科大学・医学部卒業生のUSMLE(US Medical Licensing Examination)の受験資格を「(入学時にすでに)国際基準で認証された医学部の卒業生に限る」との方針を決定したからです.これは,認証されていない医学部の卒業生に受験資格を与えないことを意味しています.しかし,より重要な点は,自校の医学教育水準が優れているといくら自負していても,認証されていない限り,国際基準に達していないといわれたに等しいことになる,というところにあります.
こうした事態に対して,全国医学部長病院長会議は検討委員会を2011年に設置し,関係機関の協力を得て,2015年にはJACME(日本医学教育評価機構)を正式発足させました.JACMEは,認証評価の試行実績を基に交渉を重ね,このほどWFME(世界医学教育連盟)から国際基準にあった医学教育の評価機関であることの認定を受けるに至りました.その結果,JACMEの認証を受けた医学部・医科大学(現時点で10数校)は,国際基準にあった「医学部」でありUSMLEの受験も可能となりました.今後,認証が順次進められていく予定になっています.
このWFMEの認証評価項目は包括的かつ多岐にわたり,わが国の現状では不足している項目も少なからずあります.その一つが,臨床実習平均50週前後のわが国の医学部・医科大学に大きな衝撃を与えた「臨床実習は72週以上実施すること」です.そして,もう一つが診療参加型臨床実習の実質化です.
現在,CBTとOSCEに合格した学生には,全国医学部長病院長会議名と在籍大学名のStudent Doctor認定証が授与されています.臨床実習の重みは今後ますます大きくなり,求められる水準も高くなっていくことでしょう.
本書が臨床手技に習熟した「Student Doctorになる!」そして「Student Doctorとして研鑽する!」ためのテキストとして,医学生,指導者の方々の役立つことを願っています.
2018年2月
細井裕司(奈良県立医科大学学長)