先天代謝異常症をはじめとした,特殊ミルクを用いた治療の実際をわかりやすく解説.小児慢性特定疾病・指定難病を中心とした疾患ごとの掲載で,使用する特殊ミルクや適応年齢などがひと目でわかる構成となっている.最新のエビデンスをもとに,ミルクの用い方や指導法を推奨度入りで解説した.これまで明確な基準のなかった特殊ミルク治療の指針となる一冊!特殊ミルクリスト・特殊ミルク成分表を巻末に収録した.
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目次
序 文 大浦敏博
発刊にあたって 中村公俊
執筆者・委員一覧
総論
a 特殊ミルク供給体制と課題 大浦敏博
b 特殊ミルクの種類とおもな適応症 大浦敏博
c 特殊ミルクの申請方法 大浦敏博
本書の使い方
各論
《A 先天代謝異常症》
フェニルケトン尿症 石毛美夏
メープルシロップ尿症 松本志郎
ホモシスチン尿症 小林正久
高メチオニン血症 田中藤樹
高チロシン血症1, 2, 3型 坂本理恵子
シトリン欠損症 城戸 淳,中村公俊
カルバミルリン酸合成酵素欠損症/オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症 城戸 淳
シトルリン血症Ⅰ型/アルギニノコハク酸尿症 城戸 淳
高アルギニン血症 城戸 淳
高オルニチン血症・高アンモニア血症・ホモシトルリン尿症(HHH)症候群 沼倉周彦
リジン尿性蛋白不耐症 野口篤子
メチルマロン酸血症/プロピオン酸血症 中島葉子,但馬 剛
イソ吉草酸血症 畑 郁江
3-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ欠損症(メチルクロトニルグリシン尿症) 市野井那津子
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸血症(HMG-CoAリアーゼ欠損症) 深尾敏幸
メチルグルタコン酸尿症(Ⅰ型:3-メチルグルタコニルCoAヒドラターゼ〈MGCH〉欠損症) 野口篤子
グルタル酸血症1型 長谷川有紀
極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症 山田健治
三頭酵素(TFP)欠損症 李 知子
カルニチン回路異常症 坊 亮輔,渡邊順子
グルタル酸血症2型 山田健治
糖原病 福田冬季子
ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(GALT)欠損症:ガラクトース血症Ⅰ型/ガラクトキナーゼ(GALK)欠損症:ガラクトース血症Ⅱ型 伊藤哲哉
ミトコンドリア病 村山 圭,中村公俊
原発性高カイロミクロン血症 (家族性リポタンパクリパーゼ欠損症を含む) 城戸 淳
ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(コレステロールエステル蓄積症,Wolman病) 小林博司
先天性門脈-体循環シャント 城戸 淳
《B 内分泌・電解質疾患》
先天性高インスリン血症 春名英典
脂肪萎縮症 山本幸代
偽性副甲状腺機能低下症 森 潤
副甲状腺機能低下症 位田 忍
偽性低アルドステロン症Ⅰ型 小山さとみ
低ホスファターゼ症 川井正信
特発性乳児高カルシウム血症 井ノ口美香子
《C 消化器疾患》
乳糖不耐症 位田 忍
先天性グルコース・ガラクトース吸収不良症 瀧谷公隆
胆道閉鎖症 位田 忍
アラジール(Alagille)症候群 位田 忍
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症 原 光彦
嚢胞性線維症 内田則彦
シュワッハマン・ダイアモンド(Shwachman-Diamond)症候群 幾瀨 圭
《D 慢性腎臓病》
小児慢性腎臓病(P-CKD) 濱崎祐子
《E 神経疾患》
グルコーストランスポーター1(GLUT1)欠損症 髙橋幸利
ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症 髙橋幸利
難治てんかん 髙橋幸利
………………
付録
1 特殊ミルクリスト
2 特殊ミルク成分表
索引
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序文
序 文
フェニルケトン尿症の患児にフェニルアラニン制限食が有効であると報告されたのは1953年である.この食事療法に不可欠なミルクとしてフェニルアラニン含量の少ない特殊ミルクが開発された.初めての治療用特殊ミルクの誕生である.その後も,先天代謝異常症領域では多くの疾患で食事療法の有用性が確かめられ,様々な特殊ミルクが開発された.わが国では1977年の新生児マススクリーニング開始をうけて,先天代謝異常症の治療に必要な特殊ミルクの安定供給を図るための特殊ミルク共同安全開発事業が1980年に発足,特殊ミルク事務局が母子愛育会総合母子保健センター研究開発部に置かれた.本事業の助成対象となるミルクは「登録特殊ミルク」に分類され,かかる経費は公費と乳業メーカーで負担し,適応はおもに先天代謝異常症の治療に限定された.また,登録品以外の特殊ミルクは「登録外特殊ミルク」に分類され,全額乳業メーカーの負担で供給されている.
近年,先天代謝異常症だけでなく,内分泌,消化器,腎,神経などの領域でも特殊ミルクの有効性が報告され,供給量も増え続けているため,適応症の見直しが急務となってきた.このような状況を受け,特殊ミルクを用いた治療のエビデンス収集と適正使用の強化に向けて『特殊ミルク治療ガイドブック』を編集することとなった.本ガイドブックでは,特殊ミルク事務局に送られた特殊ミルク供給申請書に記載のあったおもな疾患を対象に,最新のエビデンスに基づいて,特殊ミルクを用いた治療の実際を解説した.登録・登録外特殊ミルクのリスト(付録の特殊ミルクリストP124参照)に掲載されている特殊ミルクに関しては登録・登録外の分類も記載した.本ガイドブックではリストにない新規適応症の候補があげられているが,登録品を適応症以外に使用した場合は登録外扱いとなり,乳業メーカーの負担が増大するので供給は難しい.そのため,現時点で適応症に記載のない疾患に対して使用した特殊ミルクは登録・登録外の分類を記載しなかった.今後,有効性が明らかな特殊ミルクの新規疾患への適応拡大や登録品化に向けての検討が望まれる.本ガイドブックで示されたエビデンスが適応症の拡大,適正使用推進の一助となれば幸いである.
2020年4月
日本小児医療保健協議会(四者協)治療用ミルク安定供給委員会
委員長 大浦敏博