最新の内分泌機能検査を取り上げ,内分泌系の系統別,疾患別に検査の目的,準備,実施方法,結果の評価,副作用と対処法,解説をコンパクトにまとめた実践的マニュアル.改訂第2版から8年を経た改訂第3版では,新規項目(唾液コルチゾール,下錐体静脈洞サンプリングなど)を追加し,全面的な内容のアップデートを行った.携帯に便利なポケットサイズの判定基準一覧表つき.
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目次
推薦のことば 肥塚直美
改訂第3版発刊にあたって 成瀬光栄
改訂第3版序文 平田結喜緒
執筆者一覧
試験名の表記について
略語一覧(頻出するホルモン名を中心に)
使用薬剤一覧
I総論編
1 内分泌機能評価の基礎知識 立木美香他
2 ホルモンの測定方法 小田桐恵美
3 一般的な検査の準備 田辺晶代
4 検査の危険性・注意点 平田結喜緒
5 検体の取り扱い注意点 福田いずみ
6 判定の注意点:予想外の結果が得られたら何を考えるか 立木美香他
7 内分泌機能検査の判定基準一覧 立木美香
II各論編
第1章 主要症候からの機能検査
1 高血圧 立木美香他
2 低ナトリウム血症 今城俊浩
3 低カリウム血症 立木美香他
4 高カルシウム血症 平田結喜緒
5 浮 腫 平田結喜緒
6 多 尿 山口実菜他
7 肥 満 大和田里奈他
8 食欲不振 大和田里奈他
9 体重減少 大和田里奈他
10 低血糖 福田いずみ
11 脱 毛 磯崎 収
12 無月経 髙木耕一郎他
第2章 視床下部・下垂体疾患
A 先端巨大症
1 診断基準・アルゴリズム 肥塚直美
2 75g経口ブドウ糖負荷試験 橋本真紀子
3 ブロモクリプチン試験 橋本真紀子
4 オクトレオチド試験 橋本真紀子
5 TRH試験 橋本真紀子
6 LHRH試験 橋本真紀子
7 CRH試験 橋本真紀子
B プロラクチノーマ
1 診断基準・アルゴリズム 土井 賢他
2 TRH試験 土井 賢他
3 ブロモクリプチン試験 土井 賢他
C クッシング病(異所性ACTH症候群を含む)
1 診断基準・アルゴリズム 平田結喜緒
2 デキサメタゾン抑制試験 高橋 裕
3 CRH試験 高橋 裕
4 DDAVP試験 高橋 裕
5 日内変動 土井 賢
6 唾液コルチゾール 土井 賢
7 下錐体静脈洞サンプリング 山田正三
D サブクリニカルクッシング病
1 診断基準・アルゴリズム 蔭山和則他
2 デキサメタゾン抑制試験 蔭山和則他
E TSH産生腫瘍
1 診断基準・アルゴリズム 田上哲也
2 TRH試験 田上哲也
F 下垂体前葉機能低下症
1 診断基準・アルゴリズム 福田いずみ
2 CRH試験 田中 聡
3 GHRP-2試験 福田いずみ
4 アルギニン試験 福田いずみ
5 インスリン低血糖試験 福田いずみ
6 GHRH試験 福田いずみ
7 LHRH試験 田中 聡
8 TRH試験 田中 聡
9 三者負荷試験 田中 聡
G 特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
連続LHRH刺激試験 臼井 健
H 尿崩症(中枢性)
1 診断基準・アルゴリズム 有馬 寛
2 水制限試験 石川三衛
3 高張食塩水負荷試験およびDDAVP試験 有馬 寛
第3章 甲状腺疾患
A 甲状腺ホルモン不応症
1 診断基準・アルゴリズム 田上哲也
2 T3試験 田上哲也
3 TRH試験 吉原 愛他
B 甲状腺髄様癌
カルシウム刺激試験 今井常夫
第4章 副甲状腺および関連疾患
偽性副甲状腺機能低下症
Ellsworth-Howard試験 岡﨑恭子他
第5章 副腎および関連疾患
A クッシング症候群
1 診断基準・アルゴリズム 田辺晶代
2 デキサメタゾン抑制試験 立木美香他
3 CRH試験 立木美香他
4 日内変動 田辺晶代
B サブクリニカルクッシング症候群
1 診断基準・アルゴリズム 明比祐子他
2 デキサメタゾン抑制試験 方波見卓行他
C BMAH(PMAH)
1 診断基準・アルゴリズム 沖 隆
2 食事負荷試験 沖 隆
3 LHRH試験 鈴木佐和子他
4 バゾプレシン試験 鈴木佐和子他
D 原発性アルドステロン症
1 診断基準・アルゴリズム 立木美香他
2 カプトプリル試験 成瀬光栄他
3 生理食塩水負荷試験 髙橋克敏
4 フロセミド立位試験 難波多挙他
5 経口食塩負荷試験 柴田洋孝
6 フルドロコルチゾン食塩負荷試験 柴田洋孝
7 選択的副腎静脈サンプリング(ACTH負荷) 田辺晶代他
E 褐色細胞腫
クロニジン試験 方波見卓行他
F 原発性副腎皮質機能低下症
1 迅速ACTH試験 方波見卓行他
2 連続ACTH試験 方波見卓行他
G 先天性副腎過形成
迅速ACTH試験 臼井 健
H 腎血管性高血圧
カプトプリル試験 立木美香他
I Bartter症候群,Gitelman症候群
サイアザイド負荷試験,フロセミド負荷試験 土屋恭一郎他
第6章 性腺疾患
A 多嚢胞性卵巣症候群
GnRH(LHRH)試験 髙木耕一郎
B 性腺機能低下症(女性)
1 クロミフェン試験 苛原 稔
2 GnRH試験 苛原 稔
3 hMG試験 苛原 稔
4 プロゲステロン負荷試験 岩原由樹他
5 エストロゲン・プロゲステロン負荷試験 岩原由樹他
C 性腺機能低下症(男性)
hCG負荷試験 岡田 弘
第7章 消化管ホルモン産生腫瘍
A インスリノーマ
1 絶食試験 泉山 肇他
2 選択的動脈内カルシウム注入試験 泉山 肇他
B ガストリノーマ
選択的動脈内カルシウム注入試験 泉山 肇他
索 引
Commentary
・ヘパリン生理食塩水について 成瀬光栄
・Dynamic Endocrine Testing William F. Young Jr., MD, MSc
・負荷試験の名称について 平田結喜緒
とじこみ付録
内分泌機能検査の判定基準一覧 立木美香
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序文
推薦のことば
内分泌疾患では,身体所見や一般検査所見などから疑って,血液や尿中ホルモンの基礎値の測定を行い,必要に応じて機能検査を組み合わせて内分泌機能を評価し,診断を行う.近年,ホルモン測定法の進歩でホルモンが精度よく高感度に測定できるようになり,必要のなくなった検査もある.機能検査を行う際にはホルモン分泌調節機構を理解したうえで,検査の適応を考え,何のための検査か,検査の原理は何か,さらには副作用についても十分説明して行うことが重要である.
本書『内分泌機能検査実施マニュアル』は,まず総論として,内分泌機能評価の基礎知識,検体の取り扱いや予想外の結果が出た際の対応などを解説した後,主要症候をみた際にどのように検査をすすめるかが解説されている.そして各疾患については,はじめに診断基準・アルゴリズムが提示されて,行われる機能検査について目的,原理,事前の処置,準備,実施方法,判定基準,副作用および注意点などを具体的にわかりやすく記載されている.
本書は2011年に改訂第2版が刊行されたが,2019年に最近の知見を取り入れ,updateした機能検査マニュアルとして改訂第3版が刊行されることとなった.
本書は内分泌疾患を診断していく際にどう検査を行っていくかの実践的マニュアルであり,また内分泌機能検査の意義を理解する書として,若い先生方のみならず,臨床経験を多く経験されている専門医の先生方にとっても内分泌診療に有用な書であると確信し,推薦する次第である.
2019年4月
東京女子医科大学 理事・名誉教授
肥塚直美
改訂第3版発刊にあたって
内分泌臓器および産生・分泌されるホルモンの種類は多く,その異常である内分泌疾患も多岐にわたる.適切な診断と治療の遅れは循環,糖・脂質,電解質,骨などの慢性的な代謝異常とそれに伴う標的臓器障害を招来するのみならず,患者生命にかかわる深刻なアウトカムをもたらす可能性がある.内分泌疾患の診療水準向上には,多数例の診療経験のみならず十分な最新の知識が必須である.このような実地臨床の視点に立って企画・刊行されたのが診断と治療社の「内分泌シリーズ」である.これまで,『内分泌代謝専門医ガイドブック』『原発性アルドステロン症診療マニュアル』『褐色細胞腫診療マニュアル』『もっとわかりやすい原発性アルドステロン症診療マニュアル』『クッシング症候群診療マニュアル』『甲状腺疾患診療マニュアル』『内分泌性高血圧診療マニュアル』『下垂体疾患診療マニュアル』など合計17の企画が発行されてきており,この『内分泌機能検査実施マニュアル』もその一つである.
内分泌疾患の機能異常の評価には内分泌機能検査が必須である.ホルモンの基礎値の測定のみでは機能亢進や機能低下を正確に評価することは困難で,各種の刺激試験,抑制試験が必要であるが,ホルモンの種類は多く,疾患ごとに必要な検査の種類も多種多様である.また,診療ガイドラインの整備に伴い,実施が推奨されるようになった検査がある一方,時代とともに実施されなくなった検査もある.さらに,検査の実施法や結果の判定方法が不統一な場合も見受けられる.『内分泌機能検査実施マニュアル』は,内分泌系の系統別,疾患別に検査の目的,準備,実施方法,結果の評価,副作用と対処法,解説をコンパクトにまとめた実践的なマニュアルである.2009年12月に発刊され,2011年に全体的なフォーマットの統一,検査結果の判定基準の記載・表現方法の統一を主とする改訂を行った.しかし,改訂第2版発刊後8年を経たことから,全面的な内容のアップデート,新規項目の追加(唾液コルチゾール,下錐体静脈洞サンプリングなど)を主とする改訂第3版を発行することとなった.1980年代に臨床現場で系統的かつ広範に実施されるようになった内分泌機能検査の最新かつ標準的な実施・判定マニュアルとして,内分泌疾患の診断に役立つことを期待している.紙面を借りて,今回の改訂に際してご無理をお願いした執筆者の先生方,ご助言頂いたMayo ClinicのWilliam F. Young Jr. 先生に改めて深く御礼申し上げる次第である.
2019年4月国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 客員研究員
成瀬光栄
改訂第3版序文
過去の臨床内分泌学では微量な血中ホルモンを測定することが困難なため,種々の負荷試験を行うことによってホルモン分泌の変化を生体の反応性(たとえば尿量,血圧,電解質など)で評価し,判定していた.そのため被検者には肉体的に大きな負担をかけることになり,また検者も煩雑で時間のかかる検体採取や測定に忙殺されていた.さらに内分泌検査の方法は複雑で,検査の精度や再現性も低いものが多かった.
このような古典的な内分泌検査に対して画期的な突破口になったのは,1960年代にBersonとYalowにより開発されたRIAの登場である.RIAやnon RIAの導入によりホルモン測定の感度,特異性は向上し,加えて測定法が自動化されて迅速にホルモンデータが臨床の現場に戻され,内分泌疾患の診断精度が格段に向上した.しかし測定法が多様化し,各測定系で異なる標準品や抗体を用いるため測定値の変動があり,判定には注意を要する.最近の診療ガイドラインでは診断基準や治療判定などにホルモンの測定値が示されることも多くなり,標準品の統一化や測定系間の互換性,精度管理などが今後の重要課題である.
最近では古典的な内分泌負荷試験の多くはもはや用いられなくなっている.しかしホルモンの基礎値だけで全ての内分泌疾患が診断できるというわけではない.生体内のホルモン分泌調節はネガティブフィードバック機構を代表として巧妙に制御されている.内分泌疾患でのホルモン分泌制御の異常は,これらの調節機構を利用した負荷試験によって正確にホルモンの自律性の有無や分泌予備能の評価,障害部位の判定などが可能となる.最近ではホルモン異常があっても,臨床症状を伴わないsubclinical(silent)の内分泌疾患や新たな遺伝子変異による内分泌疾患など,新たな疾患概念が次々と解明されている.したがって内分泌機能検査はその病態生理をより正確に把握するうえで重要といえる.
今回の改訂では有用な内分泌機能検査を取り上げ,まず内分泌検査法の基礎知識,測定と判定に関する注意点,臓器および疾患別に診断基準・アルゴリズムから各検査の目的,準備,方法,結果の判定,副作用と対処といった順でコンパクトに解説している.本書は診療の第一線で活躍しておられる一般医師,研修医,専攻医,内分泌代謝科専門医の方たちに役立つ実践的な検査実施マニュアルといえる.
2019年4月
兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ 参与
東京医科歯科大学 名誉教授
平田結喜緒