子どもの皮膚疾患の症例写真がわかりやすくまとまった書籍.改訂にあたり,最新の症例にも対応し,症例写真200点以上を新たに収録.今でも通常の外来診療では,皮膚疾患は目で診て診断をつけることが大半で,できるだけ多くの症例を経験し診る目を養うということは,いつの時代になっても最重要である.症状や疾患の説明,親へのインフォームドコンセントについて見開き構成でわかりやすく解説したカラーアトラス書.
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目次
改訂に寄せて
序文(初版)
症状アイコンINDEX
第1章 皮膚炎・蕁麻疹
1)乳児脂漏性湿疹
2)おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)
3)乳児期のアトピー性皮膚炎
4)幼児期・学童期のアトピー性皮膚炎
5)アトピー性皮膚炎に随伴・合併する症状
6)接触皮膚炎
7)蕁麻疹
第2章 薬疹・紅斑・脱毛ほか
1)薬疹
2)Stevens-Johnson症候群(SJS)・中毒性表皮壊死症(TEN)
3)薬剤性過敏症候群(DIHS)
4)皮膚移植片対宿主病(GVHD)
5)新生児ループス
6)全身性エリテマトーデス(SLE)・若年性皮膚筋炎
7)Sjogren症候群
8)全身性強皮症・限局性強皮症
9)川崎病の皮疹
10)脱毛症・抜毛症
11)尋常性白斑・サットン白斑
12)汗疹(あせも)・多汗症
13)爪の異常
14)無(減)汗性外胚葉形成不全症
15)被虐待児症候群の皮膚症状・自損症
16)癖による子どもの皮膚疾患
17)熱傷・凍傷
18)掌蹠膿疱症・infantile acropustulosis・砂かぶれ様皮膚炎
第3章 角化症・遺伝性皮膚疾患
1)乾癬・膿疱性乾癬・滴状類乾癬
2)掌蹠角化症・毛孔性紅色粃糠疹
3)線状苔癬・光沢苔癬・毛孔性苔癬
4)尋常性魚鱗癬・X連鎖性潜性魚鱗癬
5)表皮融解性魚鱗癬・道化師様魚鱗癬・先天性魚鱗癬様紅皮症・葉状魚鱗癬
6)Netherton症候群,Sjogren-Larsson症候群
7)色素性乾皮症
8)先天性表皮水疱症
9)色素失調症
10)Marfan症候群・Ehlers-Danlos症候群
第4章 母斑(症)・血管腫・皮膚腫瘍
1)扁平母斑・カフェオレ斑
2)神経線維腫症1型(NF1)・McCune-Albright症候群
3)脂腺母斑・脂腺母斑症候群(Schimmelpenning症候群)
4)先天性皮膚欠損症・Goltz症候群
5)表皮母斑・表皮母斑症候群
6)先天性色素性母斑・神経皮膚黒色症・悪性黒色腫
7)Spitz母斑(若年性黒色腫)
8)Gorlin症候群・LEOPARD症候群
9)Peutz-Jeghers症候群・Carney症候群(複合)
10)脱色素性母斑・白皮症・伊藤白斑
11)結節性硬化症
12)太田母斑・異所性蒙古斑
13)色素血管母斑症
14)毛細血管奇形(ポートワイン母斑・単純性血管腫)・サモンパッチ・ウンナ母斑
15)乳児血管腫(苺状血管腫)
16)血管芽細胞腫(房状血管腫・tufted angioma)・Kaposi肉腫様血管内皮細胞腫(KHE)
17)先天性血管腫(NICH・RICH)・蛇行状血管腫
18)先天性血管拡張性大理石様皮斑
19)クモ状血管腫・血管拡張性肉芽腫
20)静脈奇形(海綿状血管腫・静脈性蔓状血管腫・Maffucci症候群・グロムス静脈奇形)
21)被角血管腫・eccrine angiomatous hamartoma(sudoriparous angioma)
22)リンパ管奇形(リンパ管腫)
23)肥満細胞腫(症)(色素性蕁麻疹)
24)若年性黄色肉芽腫
25)平滑筋母斑・Michelin tire baby症候群
26)乳児線維性過誤腫・結合組織母斑
27)Langerhans細胞組織球症・congenital self-healing reticulohistiocytosis
28)横紋筋肉腫・皮膚白血病・リンパ腫の皮膚浸潤・脳腫瘍の皮膚転移
29)石灰化上皮腫・皮膚石灰沈着症
30)皮様嚢腫・脂肪腫・表在性皮膚脂肪腫性母斑
31)乳児指趾線維腫症・肛門垂(肛門部贅皮状丘疹)
第5章 感染性皮膚疾患
1)伝染性膿痂疹(とびひ)・ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)・猩紅熱
2)せつ・丹毒・蜂窩織炎・外歯瘻
3)痤瘡・好酸球性膿疱性毛包炎
4)尋常性疣贅・伝染性軟属腫(みずいぼ)・青年性扁平疣贅・尖圭コンジローマ
5)単純ヘルペス・Kaposi水痘様発疹症
6)水痘(みずぼうそう)・帯状疱疹
7)手足口病
8)麻疹(はしか)・風疹(三日ばしか)・突発性発疹
9)伝染性紅斑(りんご病)・Gianotti症候群・砂かぶれ様皮膚炎
10)白癬・Celsus禿瘡・癜風
11)皮膚カンジダ症・スポロトリコーシス
12)非結核性抗酸菌症・BCG接種後副反応
13)虫刺症・疥癬・頭じらみ・毛じらみ
14)蚊刺症・蚊刺過敏症
子どもの皮膚疾患~診療のポイント~
索引
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序文
改訂に寄せて
2006年5月に初版を上梓してから15年が経過した.相変わらず私はずっとこども医療センター皮膚科にいて27年が経過し,20年目からやっと念願の二人体制にしてもらうことができた.この間,皮膚科学の診断も治療も随分進歩し,初版の内容はすっかり古いものとなってしまった.実は10年目くらいの時点で,診断と治療社の編集部からそろそろ改訂しましょうという提案をいただいており,私もその必要性を感じていたのだが,常に雑務に追われてなかなかとりかかれずにいた.編集部の方々に何度も何度も叱咤激励していただいたお蔭で,やっと5年がかりで改訂にこぎつけることができ心より感謝している.
改訂に当たって,初版をしみじみ読んでいると,この15年間に多くの皮膚疾患の病因・病態が解明され,新しい治療が生まれ広く普及していることにきづかされた.病因に関してはサンガーシーケンサー,続いて次世代シーケンサーの登場によって,多くの先天性皮膚疾患の遺伝子変異が明らかとなってきた.そして,従来から考えられてきた先天性皮膚疾患だけでなく,母斑や腫瘍,小児期発症の炎症性疾患に至るまで,遺伝子診断が有用な疾患の数は増え続けている.原因遺伝子が同定されると,それらの作用機序が解明され,途中過程において重要な酵素や代謝産物などにピンポイントに作用する新薬が開発され,次々と世に出ている.例えば,結節性硬化症の血管線維腫に塗るだけで劇的に効くラパマイシンは画期的であった.また,偶然の発見であった乳児血管腫に対するプロプラノロール内服薬は,急速に増大する血管腫を早期に抑え込み瘢痕を最小限にし,患児や家族のQOL向上に大きく貢献した.さらに巨大母斑の切除後や先天性表皮水疱症の皮膚欠損部に,自家培養表皮シートを植皮することができるようになったことも,以前から考えると夢のような新治療である.皮膚科医としての37年の間に,このような画期的な治療法の向上を経験できたことは本当に幸せだと思う.
遺伝子診断がかくも有用になった今でも,相変わらず通常の外来診療では,皮膚疾患は目で診て診断をつけていることが95%以上を占めている.やはりできるだけ多くの症例を経験し診る目を養うということは,いつの時代になっても最重要である.この本は臨床写真が命のアトラスであり,写真枚数は初版の247枚から,482枚に増量した.私はあと3年足らずで定年を迎えるので本書は恐らく私にとって最後の本となると思う.未来につながる小児皮膚科の後輩たち,皮膚科を専門としない小児科医,小児を専門としない皮膚科医,そして初版を書いていた頃は反抗期真っ盛りの中学生だったが,今は図らずも小児科医となった次男への遺言書と思って仕上げた渾身の一冊である.それぞれの先生方に何らかの形で少しでもお役に立てればこの上ない喜びである.
2021年8月
馬場直子
序文(初版)
子どもの皮膚疾患ばかり診るようになって13年,それ以前の大学病院や市中病院で大人を主に診てきた10年の期間を凌いでしまった.赴任してきた当初,まだほんの赤ちゃんだった子どもが,今では中学生となりすっかり大人びた雰囲気に成長した姿を見るにつけ時の経つ速さを感じる.
つくづく,子どもと大人の皮膚疾患は違うと思う.まず,母斑・母斑症をはじめとする先天性皮膚疾患を診る機会が多い.とびひ,みずいぼ,あせものような子ども特有の皮膚疾患もある.そして,最も数が多いアトピー性皮膚炎でも乳児期,幼児期,学童期では症状にそれぞれ特徴があり,成人の
アトピー性皮膚炎とはかなり臨床像が異なる.また,先天性皮膚疾患の中には,数年かかって自然消退が期待できるもの,そのまま不変で残るもの,増大したり悪性化する恐れのあるものなど,予後は千差万別である.できるだけ早い治療を要するもの,気長に待つ必要があるもの,非常に長い経過での予後を考えなければならないもの,成長を加味したうえで考慮しなければならないものなど,治療方針を考えるうえでも成人とは随分異なる.そして,この少子化の時代に,やっと授かった一家の宝である大切な子どもが,何らかの異常を持って生まれてきたとき,家族の嘆きと悲しみは大変なものである.たとえそれが不治の病というほどではなく,アトピー性皮膚炎や母斑のようなものであったとしてもである.そのような場合の,家族へのインフォームドコンセントの大切さは,成人の場合の何倍にも及ぶ.ただ単に病気の説明をするだけではなく,ときには励まし,慰め,精神的支えになることを要求され,母親のカウンセラー的な役割を引き受けなければならない場合もある.そういった,さまざまな子ども特有の難しさを孕んでいるのが小児皮膚科だと思う.
皮膚の病気は誰の目にも見えるだけに,ものごころつき始めた子どもはもとより,家族も大変気になり,治したいという思いは募る一方である.それに対して,今の我々がどのくらいまで応えられるか,その最先端の限界を常に知っておくことはとても大切である.決していい加減なことや,もう古くなった常識をかざしてはならない.常に知識をリニューアルしておくことが我々の義務であると思う.皮膚疾患は目で見えるから簡単,ほんの少し見学すれば誰にでもできると思われがちであるが,実は決してそんなに簡単ではない.きちんと皮膚疾患を診るためのトレーニングが必要であるし,何十年も臨床経験を重ねていてもなお難しくて,とても一生かかっても究められないと思えることもある.
とはいえ,やはり目で見えることは皮膚科の最大の利点である.他の人に皮膚疾患の特徴や診方を伝えるうえで,100の言葉より1枚の臨床写真の方が多くを語ってくれる.本書は,臨床写真をできるだけ多く載せて,子どもの皮膚疾患を診ていくうえでの要点と,今現在のスタンダードな治療方針,家族への注意点を簡潔にまとめてみた.子どもの皮膚疾患を診るうえで,少しでもお役に立てれば幸いである.
2006年4月
馬場直子