本邦初の看護師向け脳血管内治療ポケットマニュアルの改訂第3版が登場!血管内治療の最新デバイスであるフローダイバーター,WEBなどをはじめ,脳血管内治療で使うデバイスの説明が大幅アップデート!“サッと出し,パッと見て,すぐ使える!”をキーワードに,疾患,治療の詳細などの重要箇所が一目でわかる工夫が満載!看護師だけでなく脳血管内治療にかかわる全ての人へおくる1冊.
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目次
改訂第3版の序文
改訂第2版の序文
初版の序文
執筆者一覧
キャラクター紹介
1 血管解剖 ~まずは血管の説明から~
1 穿刺部血管
a)大腿動脈(femoral artery)
b)橈骨動脈(radial artery)
c)橈骨動脈遠位(distal radial artery)
d)上腕動脈(brachial artery)
2 大動脈弓部
3 内頚動脈系
a)頚部頚動脈
b)頭蓋内内頚動脈(Fischer分類)
c)前大脳動脈(anterior cerebral artery:ACA)
d)中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)
e)後大脳動脈(posterior cerebral artery:PCA)
4 椎骨脳底動脈(V-B)系
a)椎骨動脈(vertebral artery:VA)
b)脳底動脈(basilar artery:BA)
5 外頚動脈(external cerebral artery: ECA)
6 脳静脈および静脈洞(cerebral vein, sinus)
7 脊髄血管
2 疾患と治療 〜どんな病気があるの?〜
1 脳動脈瘤
a)各部の名称・分類
b)未破裂脳動脈瘤(囊状動脈瘤)
c)破裂脳動脈瘤
d)解離性動脈瘤
e)血栓化動脈瘤(部分血栓化動脈瘤)
f)細菌性脳動脈瘤
2 虚血性疾患
a)脳梗塞
b)頚動脈狭窄症
c)頭蓋内血管狭窄症
d)鎖骨下動脈狭窄症
e)遅発性脳血管攣縮(くも膜下出血後)
3 動静脈シャント疾患
a)脳動静脈奇形(脳AVM)
b)脊髄動静脈瘻
c)硬膜動静脈瘻(dAVF)
d)外傷性動静脈瘻
4 頭頚部腫瘍
a)髄膜腫(meningioma)
b)傍神経節腫(paraganglioma)
c)血管芽腫(hemangioblastoma)
5 難治性慢性硬膜下血腫
3 器具と薬剤,検査の基本 ~基本事項をマスターしよう!~
1 基本セット
a)アンギオキット梱包
b)共通機具
2 使用器具
a)シース
b)ガイディングシース
c)マイクロパンクチャーイントロデューサーセット(クックメディカルジャパン)
d)診断用カテーテル
e)ガイドワイヤー(診断用およびガイディングカテーテル使用時)
f)ガイディングカテーテル
g)バルーン付きガイディングカテーテル
h)インナーカテーテル
i)サポートカテーテル/ DAC
j)マイクロカテーテル
k)マイクロガイドワイヤー
l)血管内異物除去用カテーテル
m)Yコネクタ
n)三方活栓
o)止血弁
p)止血に使用する機材
q)用手圧迫止血機材
3 血管内治療に関係する薬剤と血液検査
a)点滴,注射
b)内服薬
c)ACT(activated clotting time)測定用器具
d)VerifyNow(アイ・エル・ジャパン)
4 脳・脊髄血管造影検査 〜造影検査ってどんな検査?〜
1 脳血管造影検査
a)大腿動脈経由
b)上腕動脈経由
c)橈骨動脈経由
2 脊髄血管造影検査
3 造影剤と放射線防護
a)造影剤
b)放射線防護
4 その他の検査
a)CT/CTA/CTP
b)MRI(DWI,FLAIR,T2*),MRA/MRP
c)SPECT
d)頚動脈エコー
e)TCD(trans cranial doppler):経頭蓋ドップラー検査
5 脳動脈瘤の治療 ~デバイスの特徴を理解しよう~
1 概要 脳動脈治療のおさらい
a)瘤内塞栓術
b)ステント併用瘤内塞栓術
c)フローダイバーター(Flow diverter:FD)
d)PAO(parent artery occlusion:母血管閉塞)
2 おもな使用機材
3 脳動脈瘤治療時に用いられる用語,略語
4 コイルとおもな離脱装置
a)よく使われるコイルの一覧
b)離脱装置
5 WEB(テルモ)
6 脳動脈瘤塞栓術支援用ステント
a)セレノバス エンタープライズ VRD(Cerenovus Enterprise®2)
b)ニューロフォームアトラス(Neuroform Atlas)(日本ストライカー)
c)LVIS ステント,LVIS,LVIS Jr(テルモ)
d)パルスライダー(Pulse rider)(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
7 脳動脈瘤治療用フローダイバーター
a)パイプライン / Pipeline Flex with Shield Technology (Pipeline Shield)(日本メドトロニック)
b)フレッド(FRED)(テルモ)
c)Surpass Streamlineフローダイバーターシステム(日本ストライカー)
8 脳動脈瘤塞栓術支援用バルーン
a)Scepter C/XC (テルモ)
b)HyperGlide / HyperForm occlusion balloon(日本メドトロニック)
c)TransForm(日本ストライカー)
d)SHOURYU(カネカメディックス)
e)Super政宗 ストレート(富士システムズ)
9 周術期ケアのポイント
a)未破裂脳動脈瘤塞栓術
b)破裂脳動脈瘤塞栓術
c)PAO (parent artery occlusion:母血管閉塞)
6 頚部頚動脈狭窄症の治療 ~ステント・プロテクションの種類と組み合わせを覚えよう~
1 概要
2 頚動脈用ステント
a)頚動脈用プリサイス(PRECISE Pro RXStent)モノレール(カネカメディックス)
b)頚動脈用ウォールステント モノレール(Carotid WALL Stent)(日本ストライカー)
c)PROTÉGÉ(プロテージ)頚動脈ステントセット モノレール(日本メドトロニック)
d)CASPER Rx 頚動脈ステント(テルモ)
3 プロテクションデバイス
a)カロチド ガードワイヤー(2022年時点で製造中止)
b)バルーン付きガイディングカテーテル
c)MOMA ウルトラ(日本メドトロニック)
d)アンジオガード(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
e)フィルターワイヤーEZ(ボストン・サイエンティフィックジャパン)
f)スパイダー・プロテクション・デバイス(日本メドトロニック)
4 血栓除去用カテーテル
5 血管形成術用バルーン
6 IVUS(血管内超音波)
7 TCD(経頭蓋ドップラー検査)
8 NIRS(近赤外線スペクトロスコピー)
9 周術期ケアのポイント
7 急性脳梗塞の治療 ~各治療法の注意点をマスターしよう~
1 rt-PA アルテプラーゼ(遺伝子組換え)静注用
a)rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法の基本
b)rt-PA静注療法/機械的血栓回収療法までの流れ
c)rt-PA静注療法のチェックリスト
2 経皮経管的血栓回収療法(機械的血栓回収療法)
a)血栓回収機器の分類
b)機械的血栓回収療法の実際
3 局所線溶療法(現在実施の機会はほとんどなくなっている)
4 頭蓋内血管形成術
5 頭蓋内動脈狭窄治療用ステント
a)Wingspan(日本ストライカー)
b)冠動脈用ステントの流用
8 AVM,d-AVF,腫瘍の治療 ~塞栓術のコツを学ぼう~
1 使用する塞栓物質
a)オニックス/Onyx(日本メドトロニック)
b)NBCA(n-butyl-2-cyanoacrylate)
c)エンボスフィア/Embosphere(日本化薬)
d)PVA粒子
e)血管閉塞用コイル(ファイバー付き)
2 脳動静脈奇形(経動脈的塞栓術)
a)マイクロカテーテル
b)Onyx
c)NBCA
d)コイル
3 脳動静脈奇形(経静脈的塞栓術)
a)マイクロカテーテル
b)Onyx
4 硬膜動静脈瘻に対する経動脈的塞栓術(TAE)
a)マイクロカテーテル
b)Onyx
c)NBCA
d)コイル
5 硬膜動静脈瘻に対する経静脈的塞栓術(TVE)
a)マイクロカテーテル,ガイディングシステム
b)ガイドワイヤー
c)コイル塞栓
d)NBCA
e)Onyx
9 血管内治療に関連する試験 ~BOTとCSSってどんな試験?~
1 バルーン閉塞試験(balloon test occlusion:BOT)
2 海綿静脈洞サンプリング(cavernous sinus sampling:CSS)
10 治療前準備 ~まずは準備を完璧に!~
1 治療前準備の流れ
a)手術前日
b)当日病棟
c)カテ室内での準備(備品)
d)薬剤
e)治療室での患者の準備
11 治療後の管理・ケア ~最後まで気を抜かずに!~
1 治療後の管理
a)シース抜去のタイミング
b)シース抜去に使用する器具
c)止血後 シース留置時の観察点
2 治療後に発生する合併症・副作用
a)穿刺部仮性動脈瘤
b)後腹膜血腫
c)コレステロール結晶塞栓症
d)脱毛
付 録
1 よく使う略語
2 よく使うスケール,グレード
a)GCS(Glasgow coma scale)
b)WFNS分類(くも膜下出血の重症度分類)
c)Hunt and Kosnik分類(くも膜下出血の重症度分類)
d)Hunt and Hess分類(くも膜下出血の重症度分類)
e)JCS(Japan coma scale)
f)MMT(manual muscle test:徒手筋力テスト)
g)Fisher分類(くも膜下出血のCT分類)
h)mRS(modified Rankin scale:日常生活の自立度分類)
i)TICI(thrombolysis in infarction:頭蓋内血管閉塞の再開通度判定)
j)Spetzler-Martin Grade(AVMの外科治療難易度判定)
k)ASPECTS,ASPECTS-DWI(脳梗塞の範囲評価)
l)Cognard分類(硬膜動静脈瘻の分類)
m)Borden分類(硬膜動静脈瘻の分類)
n)Raymond分類(脳動脈瘤塞栓術の評価)
o)CHADS2 スコア(心房細動患者における脳梗塞発症リスクの評価方法)
p)UCASスコア(3年間の破裂率予測)
q)PHASESスコア(5年間の破裂率予測)
3 デバイススペック表(2022年7月現在)
a)ガイディングカテーテル
b)造影カテーテル(インナー用)
c)DAC関連
d)マイクロカテーテル
e)ガイドワイヤー
f)マイクロガイドワイヤー
g)アシストバルーン
h)アシストステント
i)コイル
j)血栓回収デバイス(吸引型)
k)血栓回収デバイス(ステント型)
l)頚動脈ステント
m)プロテクションデバイス
n)フローダイバーター(Flow diverter:FD)
o)WEB
p)パルスライダー(Pulse rider)
用語索引
器具索引
ここは押さえよう!
・破裂脳動脈瘤で頻度が高い部位の順位
・大動脈炎症候群(高安動脈炎)
・前脊髄動脈(ASA)と後脊髄動脈(PSA)の違い
・脊髄を栄養する血管の基本
・シャントの閉塞方法
・ledge effect
・ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)II型
・ACT測定のポイント
・アスピリン/クロピドグレル抵抗性と過敏性
・コイルの種類と選択
・TCDによる脳血管攣縮の検出
・オクルージョンイントレランス
・頚動脈反射による徐脈と低血圧
・CAS後過灌流症候群/脳出血
・バルーンについて
・Onyxの使用ポイント
・ACT測定の手順
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序文
改訂第3版の序文
初版から10年近い歳月が過ぎ,脳血管内治療は大きな進歩を遂げました.血栓回収療法によって脳血管内治療の裾野が広がり,脳血管内治療そのものが標準的治療として認識されるようになりました.これは,脳血管内治療の有益性を直接経験することによって,多くの医療従事者に支持された結果だと思います.
課題はまだあるものの,フローダイバーターによって動脈瘤が完全治癒することが示され,動脈瘤治療の最終目標が脳血管内治療で達成できることが証明されたことも,長年脳動脈瘤治療に携わってきた者にとって感慨深いものがあります.今後も多くの革新的なデバイスが登場し,脳血管内治療は発展していくと思います.
今回の改訂では,脳血管内治療に関連する疾患,治療の詳細に関する記載を増やしました.看護師さんのみならず,研修医を含めた多くの医療関係者のお役に役に立てるものができたと思っています.巻末には増加するデバイスを系統立ててまとめる意味も含め,スペック表を収載しました.デバイスの理解と選択の一助になればと思います.
改訂に伴い,ご尽力いただいた診断と治療社の皆様,脳血管内治療に携わってくださっているスタッフの皆様,初版,第2版執筆にあたってご協力いただいた皆様,資料提供と作成に協力をいただいた各メーカーの皆様に心より感謝いたします.
2022年9月
北海道大野記念病院 統括診療部長 兼 脳血管内治療センター長
片岡丈人
改訂第2版の序文
脳血管内治療の進歩はめざましく,本書初版から2年の間にも,次々に新しい機器が登場しました.Solitaire FR, Trevo ProVueといった新たな血栓回収機器が承認され,一躍急性期脳塞栓治療の主役の一つとなりました.Penumbraのように改良を重ね,新たなテクニックの考案で存在感を維持している機器もあります.血栓回収機器を使用することは常識となりましたし,その有効性も科学的に証明されつつあります.また,Wingspanの登場によって,頭蓋内狭窄性病変に対する血管内治療も,一気に表舞台に登場しました.Embosphereが本邦初の頭頚部に使用可能な粒子塞栓物質として承認されたことも非常に大きな進歩といえます.Pipelineといった脳動脈瘤治療用Flow Diverter の承認も今後大きな変化を起こすことは間違いないでしょう.コイルも各社改良を続けておりその効果は明白です.動脈瘤塞栓術支援用バルーンも,Scepter, TransFormが登場し,マイクロカテーテルも各社改良が続いています.最近の特徴は,新しく承認,改良された機器が優れていれば,あっという間に標準的な治療に取って代わることで,機器の進歩が患者さんの利益に直結していることでしょう.
しかし,いくら機器が進歩しても変わらないことがあります.それは,使用するのはわれわれ医療者であり,適切な症例に適切な方法で使用し,安全に治療を実施することが絶対条件ということです.いくら最新の医療機器であっても,様々な危険性をはらんでおり,個々の患者さんにとって本当に有益であるかどうかは,紙一重かもしれません.そのためには,治療に関係するチームの全員が知識を共有することが必要です.「脳血管内治療看護ポケットマニュアル」が,脳血管内治療に関係する看護師,診療放射線技師,臨床検査技師,血管内治療を志す研修医の方々に少しでもお役に立てればと思っています.
今回,このような機器の進歩をふまえて,改訂第2版を出版いたしました.ご尽力いただいた診断と治療社の皆様,苦楽を共にしてきた「中村記念病院 脳血管内治療チーム」の皆様にあらためて感謝いたします.
2015年4月
札幌西孝仁会クリニック 脳神経外科部長 片岡丈人
初版の序文
わが国ではじめて,電気離脱式の脳動脈瘤塞栓術用コイルであるGDCが保険収載されたのは,1997年のことです.16年の歳月が過ぎ,コイル塞栓術は今では一般の患者さんにも知られる標準的な治療となりました.その後,2008年に頚動脈用ステントが保険収載され,またたく間に頚動脈狭窄症に対する治療の主役の一つになりました.2010年には,頭蓋内血栓回収用機器が登場したことで急性期脳梗塞に対しても積極的に脳血管内治療が行われるようになり,脳卒中急性期治療に大きな変化がもたらされました.急速に発展し続ける脳血管内治療を円滑に進めていくためには,医師,看護師,放射線技師のチームワークや,共通意識が重要で,特に緊急度が高い治療ほどこれらの影響は顕著になります.しかし,個々の看護師さんがデバイスに接する機会は限られています.このため,当院救急放射線看護部では,経験を共有する目的で詳しいマニュアルが制作され,活用されてきました.
昨年,私のパートナーである元看護師が,20年ぶりに復職することになりました.しかも,北海道でも有数の手術件数を誇る心臓血管外科でした.すでに知識が希薄になっていた彼女につき合い有名書店の看護書コーナーを訪れた私は,循環器領域のポケットマニュアルの数の多さに驚き,脳血管内治療に関するポケットマニュアルが存在しないことに二度驚きました.そこで,高橋美香教育担当師長と協力し,看護師さんがポケットに入れて,必要なときに取り出して使えるポケットマニュアルを作ることになりました.
看護師さんには,必要なときにサッとポケットから取り出し,パッと調べて日常の脳血管内治療に役立てていただけると幸いです.これまでマニュアル作成に携わった歴代の看護師さん,脳血管内治療センターの医師,御尽力いただいた出版社の方々に感謝いたします.
2013年5月
中村記念病院 脳血管内治療センター長 片岡丈人