PET/MRIは蠕動による位置ズレもなく,異なるモダリティによる同時撮像ができるため診断能が高い.また被曝もないこともあり非常に有用性が高いといえる.導入施設がまだ少ない中,PET/MRI装置を導入した各施設やメーカーが情報交換を行うワーキンググループを結成.
本書では,装置の特長や検査の手順,各部位別の画像の実際や今後の展望などについて,ワーキンググループのメンバーが丁寧かつ詳細に解説.
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目次
序文 岡沢秀彦
執筆者一覧
第1章 PET/MRIの現状
■世界および国内におけるPET/MRIの開発および稼働状況 岡沢秀彦/伊藤 浩
第2章 PET/MRI装置の概要・特長,減弱補正
A GEヘルスケア SIGNATM PET/MR 原田裕介,栗本貴子,貝原 雄
B フィリップス・ジャパン Ingenuity TF PET/MR 新山大樹
C シーメンスヘルスケア Biograph mMR 井村千明
第3章 PET/MRI検査の手順・方法
■PET/MRIの特徴,撮像手順,全身撮像 岡沢秀彦
第4章 臨床各領域での有用性と画像の実際
A 脳 伊藤 浩/岡沢秀彦
B 頭頸部 関根鉄朗/辻川哲也
C 肺野 野上宗伸,渡邊祐司
D 縦隔 伊藤公輝/佐々木道郎
E 乳腺 佐々木道郎/伊藤公輝
F 腹部 野上宗伸/関根鉄朗
G 骨盤内臓器 辻川哲也/関根鉄朗,伊藤 浩
H 骨軟部 菅原茂耕
I 骨髄・造血系 辻川哲也/野上宗伸
J 検診・ドック 田所匡典/吉川健啓
第5章 PET/MRI診療ガイドラインに関して
■ガイドライン改訂を読み解く 村上康二
第6章 臨床研究の現状
A 各施設での現状・動向 岡沢秀彦
B グローバルでの動向 関根鉄朗
第7章 今後の可能性と期待できること,期待すること
A 脳 岡沢秀彦/伊藤 浩
B 腫瘍 中本裕士
索引
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序文
序 文
わが国でもPET/MRIを導入し,臨床PET研究を発展させるべきだろう,と思案しはじめてから約10年が経過した.導入の仕方を画策していた当時は,夢のような装置が入れば臨床画像研究の幅は無限に広がるだろう,と期待に胸を膨らませていた.その後,福島県立医科大学に国内第1号機が設置され,2年後に国内3機目となるPET/MRI装置が実際に自施設に導入された際,まず頭を悩ませたのが,PET/MRIを臨床で有効利用するためのMRI画像は一体どの様に撮像すれば良いのだろうか,という問題であった.PET研究には20年以上携わっており,最初に確認すべきチェック項目や有効な活用法はすぐに思いつく.さらに近年は,技術の進歩により,リストモードでPETデータさえ収集しておけばあとで如何ようにでも加工し画像を再構成できる.しかしMRIはこれまで,画像の読影や位置情報データ,脳機能解析等,決められた撮像法により得られた画像を一般的な方法で利用してきたのみであった.PET/MRIにおいて,その様なルーチンのみで済ませて良いのか,研究的にも有効に活用するため,限られた時間内でより多くの情報を得られないものだろうか,と担当スタッフ全員で議論したものである.導入当初はまさに手探り状態であった.
そうした中で,九州大学,国立がん研究センター,神戸大学と,徐々にPET/MRIを導入する研究施設が増え始め,同様な悩みを相談できる機会が増えていった.いずれの施設も独自で考案した撮像法や,メーカーを介して得られる情報に基づき工夫しながら臨床,研究に活用し始めていた.しかし,実際に検査の実情を聞いてみると,やはり同じような悩みを多くの施設で抱えていることが分かり,そうした問題点を話し合う場の必要性が感じられた.以上のような理由から,日本核医学会公認の「PET/MRIの標準的撮像法の確立と定量性評価」ワーキンググループを立ち上げることとなり,PET/MRI装置を導入した国内の全施設から,各施設少なくとも1名の担当者に参加していただき,装置メーカーも交えて本音で話し合える場を設けることができた.少なくとも年2回,春と秋の学会時にワーキンググループメンバーが一堂に会し,自施設での撮像法を紹介し,他施設からのアドバイスやメーカーへの要望,今後の方向性などについて熱く語り合った.議論の中心となるのはやはりMRIをどの様に撮像して臨床や研究に活かすかといった話題で,限られた検査時間の中で最大限にPET/MRIの可能性を引き出す方法について話し合われた.また,ワーキンググループメンバーの多くは「FDG-PET/MRI診療ガイドライン」改訂作業の業務にも携わっていたため,独自性,先端性を話し合うとともに効率的な一般的検査法についても話し合われた.PET研究が国内で開始された頃,「PET夏の学校」(現サマーセミナー)で国内PET施設の研究者が熱く議論したものである(と聞いている)がPETとMRIに関心の高い若手~中堅研究者によるPET/MRIの熱い議論からは,当時を彷彿とさせる熱気が伝わってきた.
日本核医学会公認のワーキンググループ活動は平成29〜30年度の2年間で終了したが,コロナ禍を経て学会活動が正常化した暁には,今後もできるだけ年一回程度の話し合いを続けていきたいと考えている.ただ,これまで蓄積したPET/MRIの知識や情報を,ワーキンググループメンバーの記憶に留めるのみでは惜しいと感じられ,活動を公認していただいた日本核医学会に感謝するとともに,日本の核医学発展に少しでも貢献できるよう,書籍の出版という形で記録を残すことにした.ワーキンググループメンバーには,活動に御参加いただいたのみでなく,原稿執筆という大きな負担をお願いすることとなったが,各章の担当者にはいずれも快くお引き受けいただくことができ,感謝の念に堪えない.書籍出版に御協力いただいた診断と治療社はじめ,御支援いただいた関係各位に厚く御礼申し上げる次第である.
令和2年8月
福井大学高エネルギー医学研究センター 岡沢秀彦