10年ぶりの改訂となる本書は,「初学者でも読みやすく」「症例からポイントを理解する」など,初版のコンセプトはそのままに,この10年の変化を踏まえ内容をアップデート.新規症例や新たなコラムも追加され,さらに充実した内容となっています.小児内分泌の苦手意識を払拭したい,楽しんで学んでもらいたい,という著者の熱意にあふれた,入門書として最適な1冊です.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
推薦のことば 緒方 勤
改訂第2版にあたり
はじめに
入門編
Ⅰ 徴候・検査値の異常からどういう内分泌代謝疾患を思い浮かべるか
1.低身長(身長増加率の低下を含む)
・参考1 Turner症候群とは?
・参考2 GH分泌不全症
・参考3 移行期医療という言葉を聞いたことがありますか?
2.体重増加不良(減少)
3.肥満
4.思春期遅発
5.思春期早発
・参考4 思春期早発を簡単にまとめよう
6.多飲・多尿
・参考5 DIに対する維持治療
・参考6 より詳細なNDIにおける高ナトリウム血症に対する輸液療法
7.新生児期・乳児期の低血糖
8.新生児期・乳児期早期の筋緊張低下
9.新生児期・乳児期早期の呼吸障害
10.新生児期・乳児期早期の外性器異常
・参考7 性分化疾患(DSD)
・参考8 21水酸化酵素欠損症の概説
11.小児期の低カルシウム血症
・参考9 ビタミンD欠乏症
12.小児期の低ナトリウム血症
Ⅱ 症例から学ぶ初期治療のポイント
1.糖尿病性ケトアシドーシス
・実践編 DKA シミュレーション ―こんな子がきたら…最重症編―
2.急性副腎不全
・実践編 プレドニゾロンなどの糖質コルチコイド製剤を治療で長期使用されている症例での急性副腎不全予防
3.低血糖
・実践編 先天性高インスリン血症(CHI)と考え,ジアゾキシドを処方している1例
4.脱水
・参考10 脱水治療のポイント
・実践編 (経静脈的)脱水の治療
Ⅲ 内分泌データの読み方
発展編
Ⅰ 小児内分泌疾患の分類
Ⅱ 診断基準・ガイドラインをどう使うか?
Ⅲ 内分泌学総論
付録
Ⅰ 小児科医が学ぶべき範囲
Ⅱ 低張性脱水,高張性脱水のモデル
索引
■ちょっと知っておこう
軟骨内骨化
小児科医が身につけるべき思春期徴候の現実的カルテ記載
Turner症候群の低身長の成因
予測最終身長
1~2歳でみられるO脚
Turner症候群の診断
新生児期からはじまる低身長
高身長
疾患特異的成長曲線
体重増加は母親のよく聞く心配ごと
そのほかの非内分泌代謝疾患の成長曲線
肥満症について
肥満の評価
肥満に対する内分泌的スクリーニング検査
甲状腺腫大
多飲,多尿の児にはじめに必要な緊急検査
多飲,多尿患者で大切な身体所見
CDI,NDI,心因性・習慣性多飲の鑑別
DIに対する緊急時治療(経口からの飲水が期待できないとき)
ホルモン値
添付文書にも記載されているグリセオールの使用禁忌
メチルマロン酸血症は最も頻度の高い有機酸代謝異常症である
そのほかの代謝疾患の治療
新生児の陰茎長
新生児の17OHP高値
低カルシウム血症の症状
低カルシウム血症のときに行う検査オーダー・解釈のポイント
DKAで入院した児に対する話し方
CHIの診断,治療(特に)膵臓亜全摘/部分摘出術は集約化が必要
中年成人の水分維持量
特殊な状態での維持カロリー
低張性脱水でのNa喪失量
■ちょっと専門家気分
健常のバリエーションである低身長(家族性低身長,体質性思春期遅発症などを含む特発性低身長)の除外が診療の基本
Turner症候群での性腺補充療法
LOW T3症候群は“冬眠”のイメージ
新生児期に発症する塩喪失型21水酸化酵素欠損症でのフルドコルチゾン投与
GH治療はPrader-Willi症候群の運動発達に重要
思春期発来の内分泌学的変化の考え方
精巣の大きさ
精子を作るのは大変
LHRH依存性思春期早発症の治療
乳腺発達を主訴にくる女児
男児にみられる思春期発来時期の一過性乳腺発達
尿濃縮のメカニズム
DDAVP製剤によるNDIに対する治療
CDIに対するピットフォールと対策
脂肪酸分解の異常
mini-pubertyとは?
OTC欠損症を考えたときの急性期治療では確定診断を待たずに開始する
遺伝子変異の同定が極めて重要な小児内分泌疾患:第1位
5α還元酵素欠損
非古典型21水酸化酵素欠損症
21水酸化酵素欠損症の理想的治療とは?
HDR症候群
Ca感知受容体の機能亢進
V2受容体機能亢進変異
SIADH,SIAD:用語にこだわってみよう(チャレンジ編)
KATPチャネルを構成する遺伝子
2型糖尿病の治療
急性副腎不全(副腎クリーゼ):臨床現場でよく遭遇する場面
急性副腎不全(副腎クリーゼ):実務面での治療のポイント
敗血症ショック
CHIの鑑別
病的喪失量
■my opinion
国内での小児期のGH分泌不全症のGH治療
Prader-Willi症候群での成人GH治療
外来でみる体質性思春期遅発症
夜尿に対するDDAVP製剤投与
幼児期以降;成人までの陰茎長
■番外編
専門外来での冷や汗:診断までに時間のかかった症例①
専門外来での冷や汗:診断までに時間のかかった症例②
専門外来での冷や汗:診断までに時間のかかった症例③
専門外来での冷や汗:診断までに時間のかかった症例④
専門外来での冷や汗:診断までに時間のかかった症例⑤
専門外来での冷や汗:診断までに時間のかかった症例⑥
専門外来での冷や汗:医原性のけいれんを生じた症例
研修医として必要な社会的ポイント
初学者相手のよい講義のあり方
外来・病棟での説明のあり方
初学者相手のよい教育的時間のあり方
ページの先頭へ戻る
序文
推薦のことば
この度,長谷川行洋先生による『はじめて学ぶ小児内分泌 改訂第2版』が出版されることになり,とてもうれしく思います.私は,第1版である『はじめて学ぶ小児内分泌』を楽しく拝読させていただき,勉強させていただきましたが,今回の第2版は,それをより充実させたものとなっており,長谷川行洋先生による『たのしく学ぶ小児内分泌』とともに,小児内分泌学の面白さ・魅力を余すことなく伝えるものなっています.このような網羅的な本を書くことができる背景には,長谷川先生の小児内分泌に対する熱意,患者・家族に対する思いがあると確信しています.長谷川先生と同じ時間を共有した医師であれば,誰もがその真摯な姿勢,絶えることのない好奇心,教育に対する情熱を感じているに違いありません.おそらく,長谷川行洋先生にとって小児内分泌というJobは,そのまま小児内分泌というHobbyなのだと思います.
この本をみていただくと,その構成の面白さに惹かれます.「入門編」として,「徴候・検査値の異常からどういう内分泌代謝疾患を思い浮かべるか」「症例から学ぶ初期治療のポイント」「内分泌データの読み方」が記載され,その後,「発展編」として,「小児内分泌疾患の分類」「診断基準・ガイドラインをどう使うか?」「内分泌学総論」と続き,読者に飽きる隙を与えません.さらに,秀逸な点は,「付録」で「何をどこまで学ぶか」について言及され,そして,「番外編」が鏤められていることです.特に,この「番外編」では,ご自身の経験を踏まえた教訓的な症例が提示されています.同じ内容でも,このように記載されていると,実際の臨床現場にいるような臨場感を持ちながら,そして,その内容を物語のように楽しみながら勉強ができ,本当に楽しいです.また,患者・家族への説明や教育の在り方についても言及されており,臨床現場,教育現場における良き実践書となっています.
正直,一人の医師がよく,ここまで書けるものだと驚嘆します.長谷川行洋先生の小児内分泌学への貢献の大きさは,顕著なものであり,深く敬意を表したいと思います.そして,この本を楽しみながら,一人でも多くの人と一緒に小児内分泌を学んでいきたいと思います.最後に,長谷川先生の益々のご発展・ご活躍を確信し,推薦のことばとさせていただきたく思います.
2021年9月
浜松医科大学特命研究教授
浜松医療公社常務理事
緒方 勤
改訂第2版にあたり
10年ぶりに改訂を行いました.長い間,購入をしていただいたこと御礼申し上げます.今回,前版の大枠は踏襲し,①初学者でも読みやすいように,②実際の症例からポイント理解できるように,しております(第1版の「はじめに」の部分で当初の意図をご説明しています).
今回,変更したこととして,①症例を約10例変更,②「参考」を5項目追加,③「ちょっと専門家気分」を3項目追加,④あらたな企画として,「my opinion」を作成し,学術的,あるいは個人的意見を記述,⑤小児内分泌学会HPに掲載されている新しい成長曲線を可能な限り利用,⑥ガイドライン,新しい治療法のUp date,などを行いました.
前版と同様に,教科書的な記載,すでに内分泌の世界では確立していることが大部分ですので,多くの場合に,特別な引用文献をあげていませんが,記述の確認をする場合は,PubMed, Updateで検索,あるいはわれわれの中で長く使われている教科書であるWilliams Textbook of Endocrinoloogy (14th ed.)を利用しています.文献を調べたいが難しいとき,あるいは本文での内容が気になるときは遠慮なく,yhaset@gmail.comまで連絡してくださいませ.
いずれにしても小児内分泌の苦手意識が払拭され,その楽しみに目覚めちれる方がひとりでも多く出てくることを期待します.なお,今回の改訂では以下に示した2021年度に自分のチームで一緒に仕事をし,勉強,研究をしているメンバーにお手伝いいただきました.以下にお名前をあげ,謝辞とさせていただきます.
■謝辞
2021年度のメンバー
今野麻里絵,千葉有美子,池側研人*,鳴海宏子,馬場義郎,鈴木貴大,赤星祥伍*,瑞慶覧宏彰,末岡秀文,秋葉和壽,島田 綾**,荻原康子**,中尾佳奈子**
*:臨床試験科 森川和彦医長との合同研修プログラムでの研修
**:外来担当
2021年8月吉日
東京都立小児総合医療センター
内分泌・代謝科部長
長谷川 行洋
はじめに
小児内分泌疾患は難しそうだ,理解しにくいという声をときどき聞く.われわれはそうは考えていない.むしろ,臨床で必要な基本的な小児内分泌疾患あるいはそれに関連する事項は理解しやすく,楽しいものだと考えている.また小児内分泌疾患というと頻度の少ない,特殊なものというイメージをおもちの方も多いと思う.しかし,外来で内分泌代謝疾患を疑う,診断することは決して少なくない.小児内分泌疾患の基本事項の一つである成長,思春期は小児を診るすべての医師が学ぶ必要がある.
本書では,初期・後期研修医,その後の若手医師を主な対象として,小児内分泌疾患の大きな柱を理解することを目的とし,難解なこと・例外的なことは省き,基礎知識なく容易に読めるように努力した.内容の大部分は,小児科疾患を診ている医師が現場ですぐに活用できるようになるべく興味がもてるように,平易に,実務に役立つように書く努力をした.コメディカルの方,医学部5~6年生も興味をもっている方は特に,お読みいただきたい.
本書の入門編,「徴候・検査値の異常からどういう内分泌代謝疾患を思い浮かべるか」では徴候,日常的な検査値の異常から疾患を鑑別した.そこでは内分泌疾患を主に説明する形にしたが,その徴候に関係した小児科のほかの疾患も短く説明した.これは,よくある徴候の中に小児内分泌疾患が混じっていることを理解していただくためである.「症例から学ぶ初期治療のポイント」では,緊急性のあるものとして,糖尿病性ケトアシドーシス,副腎不全,低血糖を,小児科医師の常識として脱水の治療について説明した.
発展編では,内分泌疾患の分類,診断基準・ガイドラインの使い方,内分泌疾患総論について言及した.この部分は,高度な内容も含んでいるが,決して拒否反応をきたすようなレベルではない.ぜひ一度はチャレンジしていただきたい.
本書の構成は一頁目から通読していただければ段階を経て理解いただける,あるいは患者さんで勉強する機会がある度ごとに,関連するページを読む方法でもよいようにまとめてある.本書を活用して,実地臨床の中で内分泌代謝疾患の勉強が進むことを期待したい.
本書で勉強していただいた方に,臨床で必要な内分泌代謝疾患を理解することは決して難しくない,楽しいものだと実感していただければ,筆者の望外の喜びである.本書よりもっと難易度の高い内容,しかし一段と楽しい部分まで内分泌疾患を理解したい方は姉妹書の『たのしく学ぶ小児内分泌(小児内分泌疾患を楽しく学ぶ,改訂3版,2003 をもとに執筆中)』をあわせて読まれることをお勧めしたい.
内容に関して,不明点,質問などあれば,yhaset@me.com までメールしていただければ幸いである.最後に,診断と治療社 坂上昭子氏の助けなしには,本書は完成していなかったと思われる.ここに深謝申し上げる.
2011年4月吉日
都立小児総合医療センター
総合診療科部長・レジデント教育責任者
内分泌代謝科部長
遺伝子研究科部長
長谷川 行洋