職場におけるメンタルヘルス対策について,産業医,心理職,人事労務担当者などすべての産業保健スタッフがすぐに確認できるよう辞書的な“拾い読み”がしやすい構成でまとめた.コンパクトながら,女性労働者,高齢者,若年者,非正規雇用者や外国人,性的マイノリティへの支援についても幅広く記載されている.
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目次
はじめに(序文)
執筆者一覧
第1部 必須編
第1章 衛生委員会等
column 健康経営
第2章 職場巡視
第3章 健康診断
第4章 ストレスチェック制度
column ストレスモデル・理論
第5章 過重労働対策
column 働き方改革
column 睡眠衛生
第6章 情報管理
第2部 応用編
第7章 体制づくり
column リスクコミュニケーション
第8章 職場復帰支援
column リワークプログラム
第9章 適応支援(個別面接)
第10章 危機介入
column スティグマ
第11章 教育研修(ラインケア研修)
第12章 教育研修(セルフケア研修)
column 飲酒習慣(アルコール問題)
第13章 職場環境改善
column ポジティブ心理学
第14章 効果評価と報告
第15章 事業場外資源の活用
第16章 精神障害の労災認定
第3部 発展編
第17章 治療と仕事の両立支援
第18章 障害者雇用
第19章 ハラスメント
第20章 高齢者支援
第21章 若年者支援
column インターネット(スマホ)依存
第22章 外国人および性的マイノリティへの支援
第23章 非正規雇用者(派遣労働者)支援
第24章 女性労働者支援
第25章 新しい働き方への対応
付 録 有用なWEBサイトの紹介
産業保健スタッフに求められるキャリア論
結 語 ポストコロナ,Society5.0時代の職場のメンタルヘルス活動に求められるスキルや経験を考える
用語・略語一覧
索引
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序文
はじめに(序文)
本書は,産業医科大学産業生態科学研究所産業精神保健学研究室(旧・精神保健学研究室)の関係者が総力をあげて編集・執筆をした3冊目の専門書です.2冊目は,本書と同じく,診断と治療社から出版されたのですが,それから10年以上が経過しました.平成が幕を下ろして令和に改元となりましたが,職場のメンタルヘルスとその対策は,産業保健従事者のみならず,社会全体の関心事であり続けています.新しい動きとしては,災害精神保健がこれまで以上に注目されるようになり,健康経営の考え方が浸透し,さらには多様な働き方に伴う問題への対応が求められるようになってきました.職場のメンタルヘルスを扱う学術学会は,研究成果や実践報告などの情報を求める参加者を数多く集めています.
職場のメンタルヘルスの捉え方,対策の方向性を具体的に提案するガイドの必要性はますます高まっていると思います.
本書には,2つの特徴を持たせようとしました.
一つは,産業保健の実務に携わるようになってから日の浅い産業保健スタッフにも目を通してもらいやすいことです.繰り返し手にとろうと思わせるような書きぶりに努めることを,執筆者間で申し合わせました.長年メンタルヘルス対策に関わってきた中堅・ベテランに向けては,知識や方法論を確認するという使い方ができるようにしたつもりです.
もう一つは,前書以上に辞書的な使用,あるいは「拾い読み」がしやすい構成にすることです.他方で,複数の事柄(主題)を関連づけて整理できるよう,参照すると理解が深まる他章の紹介を散りばめるなどの工夫を施しています.
どこまで成功しているかは,読者のご判断に委ねるしかありませんが,「労働衛生のしおり」などとともに,執務をする机の近くにおいて,折にふれてページをめくってもらいたいという思いを込めました.
前書に引き続き大切にしたのは,職場で行われるメンタルヘルス対策は産業保健活動の一部であるという基調です.各々の活動には,様々な狙いを付加することが可能でしょうが,労働者の精神健康保持への支援という使命を蔑ろにすることは許されません.
小さい書物です.章ごとに実践のノウハウについての詳述や,豆知識(トレビア)の類を詰め込むようなことはしていません.しかし,時間をおいてであっても一通り玩読されれば,職場におけるメンタルヘルス対策の全体像を感じてはいただけるだろうと考えています.本書が,産業保健活動の伴侶のひとつとなれば幸いです.
今回も,寺町多恵子様に大変お世話になりました.深謝いたします.
2021年11月
産業医科大学名誉教授(元・精神保健学教授)
産業精神保健実践研究所
廣 尚典