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書籍詳細

診断と治療社 内分泌シリーズ

薬剤性内分泌障害診療マニュアル診断と治療社 | 書籍詳細:薬剤性内分泌障害診療マニュアル

兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ健診センター センター長

平田 結喜緒(ひらた ゆきお) 編集顧問

医仁会武田総合病院内分泌センター・臨床研究センター センター長

成瀬 光栄(なるせ みつひで) 編集

国立病院機構京都医療センター 内分泌・代謝内科 診療部長

田上 哲也(たがみ てつや) 編集

国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 医長

田辺 晶代(たなべ あきよ) 編集

医仁会武田総合病院 薬局長

馬瀬 久宜(まぜ ひさのり) 編集

初版 B5判 並製 132頁 2022年09月09日発行

ISBN9784787824936

定価:4,950円(本体価格4,500円+税) 電子書籍はこちら
  

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近年,薬剤性の内分泌障害の経験が増加し,注目が集まっている.本書は,単に薬剤による副作用のまとめにとどまらず,薬剤による内分泌障害の特徴や早期診断・治療法を,①内分泌障害からそれを引き起こす薬剤,②薬剤の薬効別分類から引き起こされる内分泌障害,の二方向から解説を行い,実診療で検索しやすくしてある.
内分泌代謝の専門医のみならず,様々な専門分野の臨床医にとって,副作用の早期診断と適切な対処に役立つ1冊.

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目次

序文
執筆者一覧
略語一覧

総  論(代表的な内分泌障害別)
A 下垂体前葉機能低下症をきたす薬剤
 1 内分泌系薬
  ⓐ副腎皮質ホルモン薬
 2 抗悪性腫瘍薬
  ⓐ免疫チェックポイント阻害薬
B 高プロラクチン血症をきたす薬剤
 1 精神神経用剤
  ⓐ抗精神病薬
  ⓑ抗うつ薬
  ⓒ抗てんかん薬
  ⓓ麻薬,オピオイド系鎮痛薬
 2 消化器官用剤
 3 循環器官用剤
 4 内分泌系薬
C 抗利尿ホルモン不適切分泌症候群をきたす薬剤
 1 精神神経用剤
  ⓐ抗うつ薬,抗精神病薬
  ⓑ抗てんかん薬
 2 消化器官用剤
  ⓐプロトンポンプ阻害薬
 3 循環器官用剤
  ⓐ利尿薬
  ⓑ降圧薬
  ⓒ抗不整脈薬
 4 代謝系薬
 5 抗悪性腫瘍薬
 6 コメント
  ⓐメチレンジオキシメタンフェタミン(エクスタシー)
D 尿崩症をきたす薬剤
 1 精神神経用剤
  ⓐ躁病・躁状態治療薬
  ⓑ麻酔薬
  ⓒその他
 2 内分泌系薬
  ⓐ副腎皮質ホルモン薬
 3 代謝系薬
  ⓐ痛風治療薬
 4 感染症薬
  ⓐ抗菌薬
  ⓑ抗真菌薬
  ⓒ抗ウイルス薬
  ⓓその他
 5 抗悪性腫瘍薬
  ⓐイホスファミド
  ⓑニボルマブ
E 甲状腺機能異常をきたす薬剤
 1 精神神経用剤
 2 消化器官用剤
  ⓐ制酸薬
  ⓑスクラルファート,ポラプレジンク
  ⓒジメチコン
  ⓓヒスタミンH2受容体遮断薬(ファモチジン)
  ⓔプロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール)
 3 循環器官用剤
  ⓐ抗不整脈薬:アミオダロン(アンカロン)
  ⓑ急性循環不全改善薬:ドブタミン,ドパミン
 4 内分泌系薬
  ⓐゴナドトロピン放出ホルモン誘導体
  ⓑ女性ホルモン製剤
  ⓒ副腎皮質ステロイド薬
  ⓓソマトスタチン誘導体
 5 代謝系薬
  ⓐ脂質異常症治療薬
  ⓑ骨粗鬆症治療薬
 6 感染症薬
  ⓐ抗結核薬
  ⓑ抗ウイルス薬
  ⓒ抗真菌薬
  ⓓ子宮頸癌予防(ヒトパピローマウイルス)ワクチン
 7 免疫抑制薬
  ⓐインターフェロン製剤
  ⓑインターロイキン製剤
  ⓒシクロスポリン
 8 抗悪性腫瘍薬
  ⓐ免疫チェックポイント阻害薬
  ⓑ分子標的治療薬
  ⓒ内分泌系薬:ゴナドトロピン放出ホルモンの誘導体
  ⓓ内分泌系薬
  ⓔフルオロウラシル
  ⓕ多発性骨髄腫治療薬(サリドマイド)
F 副腎皮質機能低下症をきたす薬剤
 1 精神神経用剤
  ⓐ抗てんかん薬
  ⓑその他
 2 感染症薬
  ⓐ抗結核薬
  ⓑ抗真菌薬
 3 代謝系薬
 4 抗悪性腫瘍薬
  ⓐ免疫チェックポイント阻害薬
  ⓑチロシンキナーゼ阻害薬
G 偽アルドステロン症をきたす薬剤


各  論(薬効別)
A 精神神経用剤
  ⓐ抗精神病薬
  ⓑ躁病・躁状態治療薬
  ⓒ抗うつ薬
  ⓓ抗てんかん薬
  ⓔ催眠・鎮静・抗けいれん薬
  ⓕ麻薬・オピオイド系鎮痛薬
  ⓖ麻酔薬
B 消化器官用剤
  ⓐ消化管運動改善薬
  ⓑH2受容体拮抗薬
  ⓒプロトンポンプ阻害薬
C 循環器官用剤
D 内分泌系薬
  ⓐ副腎皮質ホルモン薬
  ⓑ卵胞ホルモン(エストロゲン)製剤(卵巣機能不全や月経困難症などの治療薬として)
  ⓒ卵胞ホルモン(エストロゲン)製剤(前立腺癌や末期乳癌の治療薬として)
  ⓓ黄体ホルモン製剤(メドロキシプロゲステロン)
  ⓔゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト
  ⓕソマトスタチン誘導体製剤
E 代謝系薬
  ⓐ脂質異常症治療薬
  ⓑ糖尿病薬
  ⓒ骨粗鬆症治療薬
F 感染症薬
  ⓐ抗ウイルス薬
  ⓑ抗結核薬
  ⓒ抗真菌薬
  ⓓ子宮頸癌予防(ヒトパピローマウイルス)ワクチン
G 免疫抑制薬
  ⓐインターフェロン製剤
  ⓑインターロイキン製剤(腎癌,血管肉腫)
  ⓒシクロスポリン
H 抗悪性腫瘍薬
 1 分子標的治療薬
  ⓐ分子標的治療薬(チロシンキナーゼ阻害薬)
 2 免疫チェックポイント阻害薬
  ⓐ免疫チェックポイント阻害薬
 3 その他の薬剤
  ⓐその他の抗悪性腫瘍薬
  ⓑ選択的エストロゲン受容体モジュレーター
  ⓒ多発性骨髄腫治療薬
I 漢方薬・グリチルリチン製剤

■column
 化学療法と性腺機能低下症
 胃薬による甲状腺機能低下症
 薬剤性の電解質異常:内分泌・代謝内科の立場から
 免疫チェックポイント阻害薬関連Basedow病の診断には十分注意を
 腰痛治療によるACTHおよびコルチゾールの低値

索引

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序文

内分泌障害は内分泌器官の病態により引き起こされるが,近年,薬剤性の内分泌障害の経験が増加し,注目されている.薬剤性内分泌障害は薬剤の「副作用」であるため,内分泌疾患の日常診療のなかでは主役ではなく「脇役」の位置づけであった.長年,アレルギー・自己免疫疾患,悪性腫瘍などの治療に用いられる「ステロイド薬」は,その薬理学的な作用を期待して生理的必要量をはるかに超えて投与するもので,それに伴う様々な副作用は十分に予想,予防できると考えられる.一方,本来の投与目的が内分泌学的作用の修飾(増強あるいは阻害)でない多数の薬剤に伴う内分泌障害は,想定外の副作用であり,また,多くの場合,診療に従事する医師は内分泌専門ではないため,副作用の診断と適切な治療が遅延する可能性も否定できない.中枢性尿崩症の治療薬DDAVPが開発されるはるか以前に,高度の尿崩症の症例を経験し,脂質異常治療薬のクロフィブレートや抗てんかん薬のカルバマゼピンなどで治療した経験(今では適応外使用である)があるが,バゾプレシン作用・分泌の増強という,本来の主作用とは異なる内分泌作用が大変印象的で興味深かったが,現在ではむしろ副作用となりうる.その後,抗不整脈薬アミオダロンによる甲状腺機能異常,さらに最近では悪性腫瘍に用いる免疫チェックポイント阻害薬による甲状腺機能異常を主とする内分泌障害が注目されている.多様な薬効の新規薬剤の開発,臨床応用に伴って,種々の内分泌障害が報告されるようになっていることから,単に薬剤ごとの副作用のまとめにとどまらず,薬剤による内分泌障害の特徴や早期診断,治療を系統的,包括的に整理しておくことが日常診療において重要と考え本書を企画した次第である.
本書では,1)主要な内分泌障害から,それを引き起こす薬剤の解説,2)薬剤の薬効別分類から,引き起こされる内分泌障害の解説,を行った.内容が重複した面もあるが,実診療で役立つように二方向から検索できるようにするとともに,可能な限り,記載の整合性にも配慮した.また,3)甘草などによる偽アルドステロン症のように50年以上前から報告されているものから,最近明らかになった免疫チェックポイント阻害薬による内分泌障害まで,可能な限り網羅的な内容となるように配慮した.右図は主要な内分泌障害と薬効別の薬剤との関連を模式的に図示し,重要度,頻度が高いものは青い太線にした.また本文中はゴシック体にて表記している.予想以上に多種多様の薬剤が内分泌障害と関連することが再認識される.本書が,内分泌代謝の専門医のみならず,様々な専門分野の臨床医にとって,かかわる疾患の治療に伴う副作用の早期診断と適切な対処に役立つことを期待している.最後に,新型コロナウイルス感染症の流行下,多忙な業務の時間を割いて本書の執筆にご協力いただいたすべての先生方に心より感謝申し上げる次第である.

2022年7月
医仁会武田総合病院内分泌センター・臨床研究センター センター長
成瀬 光栄