患者のギモンに答える!
てんかん診療のための相談サポートQ&A診断と治療社 | 書籍詳細:てんかん診療のための相談サポートQ&A
国立精神・神経医療研究センター病院 てんかんセンター 編集
初版 B5 並製 164頁 2021年12月20日発行
ISBN9784787825018
定価:3,080円(本体価格2,800円+税)冊
てんかんは,だれもが発症する可能性がある脳の慢性の疾患で,わが国には約100万人の患者がいる.てんかん診療のゴールは,患者がてんかんを抱えながらも充実した人生を送ることである.本書は,患者や家族からよく受ける質問に適切な答えと,わかりやすい解説によって医療関係者の対応サポートをめざしている.2017年の国際抗てんかん連盟の新用語や,薬の最新情報,てんかんと併存する発達障害・精神障害なども網羅している.
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目次
口絵
はじめに
編集長挨拶
執筆者一覧
第1章 てんかんに関する基礎知識
Q01 てんかんとはどんな病気でしょうか?
Q02 てんかんの原因にはどんなものがありますか?
Q03 てんかんは遺伝しますか?
Q04 てんかんはどのようにして診断されるのですか?
Q05 てんかん発作はどんなものがありますか?(ILAE2017分類に基づいて)
Q06 てんかんはどのように分類されますか?(ILAE2017分類に基づいて)
Q07 てんかん発作以外の症状はどのようなものがありますか?
Q08 てんかんの治療はどの診療科を受診すればよいのでしょうか?
Q09 てんかんのオンライン診療はどんなものがありますか?
Q10 てんかん発作と間違えられることが多い病気はありますか?
第2章 てんかんに関連する検査
Q11 てんかんの問診を受ける際に気をつけたほうがよいことはありますか?
Q12 脳波検査・長時間ビデオ脳波検査とはどのようなものですか?
Q13 画像検査にはどんなものがあり,どんなことがわかりますか?
Q14 抗てんかん薬の血中濃度を測るのはなぜですか?
Q15 てんかんの検査入院はどういうことをするのですか?
Q16 どうして心理検査をすることがあるのでしょうか?
第3章 てんかんの薬物治療
Q17 どのようなときにてんかんの治療を開始するのでしょうか?
Q18 どの程度発作がなければ治療を終了できますか? 脳波異常があっても治療を終了できますか?
Q19 小児のてんかんで,抗てんかん薬はどのように選択されるのですか?
Q20 成人のてんかんで,抗てんかん薬はどのようにして選択されるのですか?
Q21 抗てんかん薬の副作用にはどのようなものがありますか?
Q22 どうして薬は毎日飲む必要があるのでしょうか?
Q23 飲み合わせに気をつけたほうがよい薬はありますか?
Q24 抗てんかん薬を長く飲んでいることは問題になりませんか?
第4章 てんかんの外科治療およびその他の治療
Q25 てんかんの外科治療はどのように行われるのですか?
Q26 脳梁離断術,VNSはどのように行われるのですか?
Q27 外科手術をして後遺症は残らないのでしょうか?
Q28 外科手術の適応の有無はどうやって決めるのですか?
Q29 外科手術で発作が止まれば薬は止められますか?
Q30 VNSをした場合には日常生活に影響はありませんか?
Q31 食事療法はどのように行われるのですか?
第5章 発作時・発作後の対応
Q32 病院でてんかん発作が起こった場合,どのように対応すればよいですか?
Q33 職場でてんかん発作が起こった場合,どのように対応すればよいですか?
Q34 学校でてんかん発作が起こった場合,どのように対応すればよいですか?
Q35 自宅でてんかん発作が起きた場合,家族はどうしたらいいでしょうか?
Q36 保護帽とはどんなものですか?
第6章 家庭生活の問題と対処
Q37 薬を飲んですぐに嘔吐しましたが,どうすればよいですか?
Q38 薬を飲み忘れたのに気づきましたが,どうすればよいですか?
Q39 国内旅行・海外旅行に行くときに気をつけることはありますか?
Q40 食べてはいけないものはありますか?
Q41 生活習慣が発作に影響を与えることはありますか?
Q42 アルコールやタバコは大丈夫ですか?
Q43 入浴中の発作に気をつけるポイントはありますか?
Q44 予防接種は受けさせても大丈夫でしょうか?
Q45 テレビゲームはさせないほうがよいのでしょうか?
Q46 子どもにどのようにてんかんを伝えたらよいでしょうか?
第7章 社会生活での問題と対処
Q47 学校側と話し合っておくことはどんなことでしょうか?
Q48 プールは控えたほうがよいのでしょうか?
Q49 てんかんが原因で成績が下がることはありますか?
Q50 てんかんと診断されると,就けない職種はありますか?
Q51 就職をするときには病名を告げたほうがよいのでしょうか?
Q52 就労を支援してくれるようなサービスはありますか?
Q53 てんかんと診断されると自動車の運転はできませんか?
Q54 結婚をするときに気をつけることはありますか?
Q55 妊娠する前に気をつけることはありますか?
Q56 出産後に気をつけることはありますか?
Q57 てんかんがあっても保険に入れますか?
Q58 就労したい人が利用できる制度はありますか?
Q59 収入をサポートしてくれる制度はありますか?
Q60 てんかんを発症すると「物忘れ」がひどくなりますか?
第8章 合併症関連
Q61 てんかん患者は発達障害が多いのですか?
Q62 高次脳機能障害とはどんな症状ですか?
Q63 てんかんに精神症状は合併しますか?
Q64 PNESの診断や治療はどうしますか?
第9章 てんかんのリハビリテーション
Q65 てんかんのリハビリテーションとは何ですか?
Q66 てんかんについて学びたいときはどうしたらよいですか?(本人)
Q67 てんかんについて学びたいときはどうしたらよいですか?(支援者)
Q68 てんかんのある人を応援するようなイベントはありますか?
第10章 てんかん診療支援コーディネーター
Q69 てんかん診療支援コーディネーターとは何ですか?
Q70 てんかん診療支援コーディネーターに期待されることは何ですか?
Q71 てんかん地域診療連携体制事業とは何ですか?
Q72 てんかんセンターとはどんな機能をもっていますか?
Q73 てんかんの専門家はどんな人たちでしょうか?
Index
付録 頻度・難易度・キーワード一覧
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序文
はじめに
てんかんは,小児から高齢者まで,どの年齢でも誰もが発症する可能性がある脳の慢性の疾患です.有病率は0.8~1%で,わが国では約100万人のてんかんがある人がおり,決して珍しくない病気です.高齢化社会に伴い,成人のてんかん発症率が高くなってきました.てんかんのある人の70~80%は,適切な薬による内科治療や難治なてんかんに対する外科的治療を行うことにより発作が抑制され,日常生活や就労を含む社会生活を営むことが可能です.しかしながら,てんかんを診る専門医が不足しており,加えて,てんかんに対する知識不足と偏見から,てんかんのある人の社会進出が妨げられています.また,必ずしも専門的な医療に結びついておらず,実際の治療は小児科,脳神経内科,脳神経外科,精神科など複数の診療科で行われていますが,まだまだ各診療科との連携がとりづらい状況です.さらに,一般医療機関の医師にてんかんに関する診療・情報などが届きにくく,適切な治療が行われにくい状況が続いています.
こうした背景を踏まえ,平成27年度から厚生労働省が「全国てんかん対策地域診療連携整備体制事業」を開始し,各都道府県単位でてんかんに関わる医療機関の調整役となる拠点機関を整備することになりました.国立精神・神経医療研究センター病院(NCNP)がてんかん全国支援センターに指定され,令和3年には,地域のてんかん支援拠点機関は23施設になりました.てんかん患者・家族が地域で安心して診療できるようになること,治療に携わる診療科間での連携がはかられやすいようにすること,行政機関(国・自治体)が整備に携わることで,医療機関間だけでなく多職種(保健所,教育機関など)間の連携の機会を提供することを目指して事業を行っています.
このたび,NCNPでは,高齢化社会に対応して,特に,成人てんかんの包括的診断と治療体制を充実させるために,新たに「てんかん診療部」の設置を行うことになりました.これからのてんかん診療を担う若手の医師(特に精神科,脳神経内科,脳神経外科)やメディカルスタッフの研修,育成の機関として,また思春期から成人,高齢者でてんかんのある人が安心して医療が受けられる施設として,引き続き役割を果たしてまいります.
まさしくちょうどこの機会に,『てんかん診療のための相談サポートQ&A』を発刊することになりました.少しでもこの本が,てんかんに悩まれている多くの人やご家族,てんかんに関わる介護者,医療従事者のお役に立つことを願っています
2021年11月
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院
特命副院長,てんかん診療部長,てんかんセンター長
中川栄二
編集長挨拶
「てんかんのある人,そして,その家族,友人,職場の仲間が『てんかんって何?』と疑問に思った時に気軽に読める,だけど実際に役立つような本を作りたい」と中川先生から伝えられたのは2020年4月だった.
国立精神・神経医療研究センター病院(NCNP)に着任したばかりで業務が少なく,前任地でも同種類の本にかかわった経験のある僕が何となく企画案を作ることになった.
その後,ちょうど1回目の緊急事態宣言が発出された.「業務縮小せざるを得ない今こそできることをやりましょう」と中川先生から熱いメールをいただいたのを覚えている.
僕ら医療者が想定するような質問ではなく,患者さんや家族が本当に知りたい質問に答えたいと思ったので,相談業務に携わっていらっしゃる日本てんかん協会東京都支部の方たちから意見を聞かせていただいた.病院のなかにいると知ることのできなかった皆さんのニーズや疑問を知ることができて大いに参考になった.
初夏の頃には「診断と治療社」の編集部の皆さんとZOOMで打ち合わせを行いQ&Aの項目を決めた.その頃はまだZOOM面談というものが目新しかったのを覚えている.そしていつの間にか編集長になっていた.
しかし,その後の仕事には苦労は皆無で,ただただ楽しかった.
「この質問だったらこの人に答えてもらおう」,すぐにNCNPのなかで誰に頼むべきかわかったからである.てんかんは老若男女に起こり,さらに合併症も色々で,診断や治療の方法も多様である.当然,質問も多岐にわたるが,幸いNCNPのなかにはそれらの質問に回答できる人材がたくさんいた.そして,皆が中川先生の志に賛同し執筆を快諾してくれた.診療や研究で忙しいが,出版の意図をくみ取って原稿を仕上げてくれた.さすが,その道のプロばかりという感じで,むずかしい内容もわかりやすく書いてくれているので,校正しながら大いに勉強になった.一部,原稿の遅い方は編集部の松田さんがその都度メールしてくれたので,編集長の僕が原稿をせっつく必要はなかった.おかげでNCNP内の人間関係も円満のままであったのも幸いだった.
本当は2021年2月にNCNPが主管の全国てんかんセンター協議会(JEPICA)でのお披露目出版を目指していたが,2020年末からのコロナ再拡大でJEPICAをオンライン開催に切り替えないといけないなどの事態が発生し忙しくなってしまった.JEPICAが終わると,5月のアジアオセアニアてんかん学会準備で忙しくなり,あれよあれよという間に10月のてんかん学会があり,さらに作業は遅れた.
気がつけばコロナワクチン接種も進み,コロナ感染は落ち着きつつある.
さらに僕たちNCNPのなかでは「もっとてんかんに集中しててんかんのあらゆる問題に取り組んでいこう」という目的で「てんかん診療部」ができることになった.
このような,なんとなくよいタイミングでこの本が出版されるのがうれしい.
当初の目的どおり,てんかんで悩んでいる人に一人でも多くこの本が届き,一つでもお役に立ててもらえることがあるならば編集長としてこれ以上の幸せはない.
2021年11月
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院
谷口 豪
~ポストコロナ時代にもこの本が役立つことを願って