支持療法は,小児がんとたたかう子どもたちを支える重要な役割を担っています.そのような支持療法を実践するにあたって必要な要素について,幅広く取り上げました.素早く要点を把握できるよう,おさえておきたいポイントは見やすく簡潔にまとめ,そのあとに理解をさらに深める解説を掲載しています.はじめて小児がん診療に携わる際に,常にお手元においてご活用いただきたい一冊です.
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目次
編集・執筆者一覧
序…今村俊彦
本マニュアルの使用にあたって…大曽根眞也
総 論 入院から退院まで
I 化学療法をはじめる前に…齋藤敦郎,大曽根眞也
1 化学療法開始前の検査
2 化学療法を安全に行うための準備
3 環 境
4 登録・申請
Column JACLSからJCCGへ
Column 小児・思春期・若年がん患者の妊孕性温存療法
II 寛解導入療法の注意…齋藤敦郎
1 寛解導入療法開始前の注意
2 寛解導入療法開始後の注意
III おもな抗がん薬…山本雅樹
1 ビンカアルカロイド系
2 アントラサイクリン系
3 アルキル化薬
4 代謝拮抗薬
5 トポイソメラーゼ阻害薬
6 ステロイド
7 プラチナ製剤
8 キナーゼ阻害薬
9 抗体医薬品
10 その他の抗がん薬
Column 有害事象共通用語規準(CTCAE)
IV 輸血・アルブミン製剤…鈴木 資
1 ポイント
2 赤血球液(RBC)
3 濃厚血小板(PC)
4 新鮮凍結血漿(FFP)
5 アルブミン製剤
6 輸血の副作用
Pick Up 輸血関連急性肺障害(TRALI)と輸血関連循環過負荷(TACO)
V 食事の管理…三木瑞香
1 感染対策としての食事の管理
2 栄養としての食事の管理
VI 退院後の管理…三木瑞香
生活基準のめやす
各 論 各種合併症に対する支持療法
I 感染症の予防と治療…篠田邦大
1 定 義
2 ポイント
3 好中球減少時の治療の流れ
4 STEP 1〈好中球減少時〉
5 STEP 2〈FN:好中球減少下で38.0℃以上の発熱を認めた場合〉
6 STEP 3〈STEP2の治療でも48時間以内に解熱傾向を認めず,全身状態が不良な場合〉
7 STEP 4〈STEP2やSTEP3の治療でも4~7日以内に解熱傾向を認めない場合〉
8 抗菌薬以外の感染症関連薬剤
Pick Up こんなときは
II 間質性肺炎…金山拓誉
1 ポイント
2 検 査
3 治 療
III 敗血症性ショック(septic shock)…辻本 弘
1 定 義
2 症状・初期所見
3 治 療
Pick Up ステロイド療法
IV 播種性血管内凝固症候群(DIC),肝類洞閉塞症候群(SOS)/肝中心静脈閉塞症(VOD)…鈴木 資
1 播種性血管内凝固症候群(DIC)
2 肝類洞閉塞症候群(sinusoidal obstruction syndrome:SOS)/肝中心静脈閉塞症(veno-occlusive disease:VOD)
V 腫瘍崩壊症候群(TLS)…伊藤 剛
1 ポイント
2 リスク分類
3 リスク別の予防対応
4 診 断
5 重症度分類
6 治 療
VI Hyperleukocytosisとleukostasis…伊藤 剛
1 ポイント
2 おもな症状
3 注意すべき検査所見
4 緊急対応
VII 悪心・嘔吐…大曽根眞也
1 ポイント
2 おもな制吐薬
3 抗がん薬の催吐性リスク分類
VIII 抗がん薬の血管外漏出…山本雅樹
1 予 防
2 漏出時の症状と処置
IX 中心静脈カテーテル(CVC)の合併症…山本雅樹
1 カテーテル関連血流感染症(CRBSI)・トンネル感染
2 末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)による機械的静脈炎
3 カテーテルの閉塞と静脈内血栓/fibrin sheath
4 カテーテルの位置異常
5 カテーテルの破損
6 カテーテル抜去時の注意点
7 カテーテル断裂,切断時の対応
X L-アスパラギナーゼ(L-ASP)関連合併症…今井 剛,大曽根眞也
1 急性膵炎
2 凝固異常
3 その他の副作用
XI メトトレキサート(MTX)大量療法…今井 剛
1 開始基準
2 投与前準備
3 MTX排泄遅延や重篤な副作用発現にかかわる薬剤等の中止,回避
4 MTX投与開始後の血中濃度基準値
5 投与中の注意点
XII 心毒性…大曽根眞也
ポイント
XIII 便秘・麻痺性イレウス…大曽根眞也
ポイント
XIV 神経毒性…大曽根眞也
1 中枢神経障害
2 末梢神経障害(CIPN)
XV 消化管粘膜障害…辻本 弘
1 口腔粘膜障害
2 下 痢
XVI 高血糖…今井 剛
ポイント
XVII 電解質異常…金山拓誉
1 抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH)
2 尿崩症
3 高カルシウム血症
XVIII 出血性膀胱炎…金山拓誉
1 ポイント
2 予 防
3 治 療
XIX 鼻出血の対処…金山拓誉
ポイント
XX リハビリテーション…大曽根眞也
ポイント
XXI 疼痛の管理…多田羅竜平
1 小児がんに伴う疼痛の種類
2 疼痛の病態生理に基づく分類
3 小児の疼痛の評価
4 小児がんの持続的な疼痛に対する薬物治療
5 オピオイドの副作用
6 オピオイドの変更
7 Patient-Controlled Analgesia(PCA)
Column 全人的苦痛としての疼痛
おわりに…大曽根眞也
用語索引
薬剤名索引
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序文
序
小児白血病をはじめとする小児造血器腫瘍の治療成績は年々向上し,今や多くの患者さんが治癒を見込める時代となりました.その要因は多岐にわたりますが,支持療法の進歩も治療成績の向上に大きな役割を果たしており,これは臨床に携わる皆様が日々の診療のなかで感じておられることと思います.
小児白血病研究会(JACLS)は,1996年の発足時から支持療法小委員会を立ち上げ,小児がん治療における支持療法のあり方について検討を重ね,JACLS参加施設の経験をもとに,2016年に「小児がん支持療法マニュアル」を上梓しました.幸いにも,本マニュアルは小児がん治療の現場で好評を博し,これまで3,000名を超える先生方にご活用いただきました.
しかし,「小児がん支持療法マニュアル」も発刊から間もなく5年が経過し,小児がん領域の治療および支持療法もこの間に大きく進歩しました.小児がん診療に携わる者にとって,適切な支持療法の“アップデート”は欠かせません.そこで,小児がん支持療法のエキスパートであるJACLS支持療法小委員会が,『小児がん支持療法マニュアル』を改訂し,『新版 小児がん支持療法マニュアル』としてリニューアルいたしました.
今回の改訂では,感染対策や輸血,食事や緩和ケアといった初版に記載していた項目に加え,2016年以降に登場した新薬の副作用対策,中心静脈カテーテルの合併症とその対応,神経毒性,消化管粘膜障害,肝類洞閉塞症候群に対する対応,がんのリハビリテーションなどの項目を追加し,最新の小児がん治療に即した内容になっています.
また,これから小児がん診療にかかわる方々にとっても,読んでわかりやすく実践的な内容になっています.さらに,初版と同様にポケット版となっており,小児がん診療にかかわる皆様の日々の診療に役立てていただけるようにというJACLS支持療法小委員会の先生方の願いが込められています.
本書が初版同様,小児がんの診療に携わる医師をはじめとしたすべての医療スタッフの方々に利用され,病気と戦う子どもたちのために役立つことを祈念いたします.
最後に,本書の出版にあたり執筆にご尽力いただきましたJACLS支持療法小委員会の皆様,初版に引き続き「疼痛の管理」の項を執筆していただいた大阪市立総合医療センターの多々羅竜平先生,そして診断と治療社の西川弘美氏にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます.
2021年3月
小児白血病研究会運営委員長
京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学講師
今村俊彦
本マニュアルの使用にあたって
小児がんは稀少疾患であるため,小児科専門医を目指している医師でも,小児がんの診療を経験する機会は少ないと思われます.このマニュアルは,これから病棟で小児がんの患者さんを診ることになったけれど,経験がなくて不安だ……そのような研修医や若手小児科医をおもな対象として作成しました.
がん自体に対する治療は臨床試験に従って行われることが多くなり,そうでなくても治療方針はおもに上級医が決めているのではないかと思います.しかし,治療による有害事象やがん自体による症状を緩和する支持療法は,患者さんに日々接している若手医師に多くが委ねられます.実のところ,支持療法の良し悪しは治療の成否や患者・家族の生活の質に大きくかかわり,子どもたちを直接診療する先生方の役割は重要なのです.
本マニュアルの起源は,20年ほど前に原純一先生(現 大阪市立総合医療センター副院長兼小児医療センター長)からご提供いただいた,大阪大学医学部小児科のマニュアルです.その後,歴代の小児白血病研究会(JACLS)支持療法小委員会の先生方の手によって改訂が繰り返され,長年にわたりJACLSの参加施設で用いられてきました.これを改訂して,2016年に医薬ジャーナル社から「小児がん支持療法マニュアル」を刊行したところ,全国の若手医師から大きな支持を得ることができました.そしてこのたび,内容を更新しつつ新たな項目も加えて,よりパワーアップした本マニュアルを,診断と治療社から世に送り出す機会を得ました.
本マニュアルが全国の小児がん診療の現場で,若手医師のよきパートナーとなって,よりよい小児がん診療に少しでも貢献することができれば幸いです.
本書を使うにあたっての注意点を以下に記します.
1.薬剤名は一般名を記載していますが,各施設で使用している商品名を記載できるように( )を設けています.抗がん薬については,商品名を選択できるボックスを設けましたので,ご活用ください.
2.小児がんの支持療法は,明確なエビデンスに乏しいものが多く,小児に保険適用のない薬剤の用法用量も一部記載している点にご注意ください.
3.小児がんの支持療法は,施設によって治療環境や方針が異なることも多く,本書の内容を画一的に適応できるものではありません.各施設や患者さんの状況にあわせて,よい支持療法を実践していただければと思います.
JACLS支持療法小委員会委員長
新版小児がん支持療法マニュアル編集責任者
京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学講師
大曽根眞也