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書籍詳細

はじめて学ぶ 子どもの下痢・便秘診断と治療社 | 書籍詳細:はじめて学ぶ 子どもの下痢・便秘

大阪母子医療センター臨床検査科主任部長

位田 忍(いだ しのぶ) 編集

順天堂大学医学部小児科先任准教授

工藤 孝広(くどう たかひろ) 編集

初版 B5判 並製 152頁 2021年12月03日発行

ISBN9784787825117

定価:4,180円(本体価格3,800円+税)
  

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本書では,下痢・便秘の原因となるさまざまな器質的疾患だけでなく,機能的消化管疾患についても,Romeの考え方や全国調査研究の成果,ガイドラインでの検討をもとに詳しく解説している.また,患者さんや家族への説明の際に活用できるホームケアアドバイスも盛り込んでいる.研修医や一般小児科医に向けた「下痢・便秘の入門書」決定版!

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目次

序 文 位田 忍,工藤孝広
執筆者一覧

第1章 小児の機能性消化管疾患
 A 小児の機能性消化管疾患 工藤孝広
 B 小児における Rome IV 基準
  1 Rome基準の概要 中山佳子
  2 G5.機能性下痢 中山佳子
  3 G7.機能性便秘 中山佳子
  4 H2b.過敏性腸症候群 中山佳子
  5 H3a.機能性便秘 中山佳子
第2章 下 痢
 A 定 義 熊谷秀規
 B 発症機序(メカニズム)と分類
  1 発症機序からの分類 虻川大樹
  2 期間からの分類 竹内一朗
 C 診療手順:アルゴリズムと診断法 虫明聡太郎
 D 代表的な疾患と治療
  1 感染性腸炎 西亦繁雄
  2 偽膜性腸炎 西亦繁雄
  3 腸炎後症候群 新井勝大
  4 炎症性腸疾患 新井勝大
  5 消化管アレルギー 柏木項介,神保圭佑
  6 小児外科疾患:短腸症候群 松浦俊治
  7 自己免疫性腸症・IPEX症候群 岩間 達
  8 消化管ホルモン産生腫瘍 岩間 達
  9 胆汁酸性下痢症 坂口廣高,水落建輝
  10 微絨毛封入体病 加藤 健,水落建輝
  11 トランスポーター異常症 安田亮輔,水落建輝
  12 刷子縁酵素欠損症 幾瀨 圭
  13 Shwachman-Diamond症候群 幾瀨 圭
 E 生活習慣とホームケアへのアドバイス 工藤孝広
第3章 便 秘
 A 定義:便秘と便秘症 位田 忍
 B 排便のしくみと便秘の発症メカニズム 上野 滋
 C 小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン 友政 剛
 D 原因と代表的な疾患
  外科的疾患
  1 Hirschsprung病 松浦俊治
  2 Hirschsprung病類縁疾患 上野豪久
  3 直腸肛門奇形 井上幹大,鈴木達也
  4 二分脊椎による排便障害 秋山卓士
  内科的疾患
  1 代謝内分泌疾患:甲状腺機能低下症,高カルシウム血症,糖尿病 川井正信
  2 消化器疾患:囊胞性線維症 東海林宏道
  3 食物アレルギー 位田 忍
  4 薬剤による便秘 草刈麻衣
  5 食事に関連した便秘 奥田真珠美,藤野哲朗
  6 遺糞症 徳原大介
 E 治 療
  1 disimpaction(便塊除去) 佐々木美香
  2 維持治療 西澤拓哉,石毛 崇
  3 外科治療 内田恵一,小池勇樹
 F 生活習慣とホームケアへのアドバイス 位田 忍
資 料
 患者説明用①下痢 工藤孝広
 患者説明用②便秘 岡田和子

索 引

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序文

子どもの下痢も便秘も日常診療においてよく見かける症状です.大部分は急性に経過しますが,なかには慢性化し,健康状態やQOLを著しく損ね,専門医療機関へのコンサルトや転院が必要な場合もあり,診療にあたっては注意を要します.本書は研修医や一般小児科医を対象にした「下痢・便秘の入門書」ですが,消化器疾患専門の医療者にも利用していただけるものと考えています.

口腔から肛門に至る消化管の重要な役割は,食べ物を低分子の栄養素に消化(分解)し,消化管運動により内容物を消化管内で移動させ,適した場所に届けて吸収する機能であり,これらの栄養素は標的細胞に運ばれて生命活動のために使われます.また,消化管は免疫系,内分泌系,神経系の役割も担います.最近では脳の働きが消化管運動に作用するだけでなく腸の状態が脳の機能にも作用するといった脳腸相関が明らかになってきました.消化管の感染症だけでなくストレス,食生活,生活リズムなどさまざまな要因によって消化管機能が影響を受けます.
本書で扱っている下痢も便秘も消化管機能の異常と捉えることができます.その原因として器質的なものと機能的なものがありますが,本書ではさまざまな器質的疾患のみならず,機能性消化管疾患を一定の基準で議論し始めるきっかけとなったRomeの考え方をベースに用い,下痢については,田口班での全国調査研究の成果から,また,便秘および便秘症については日本小児消化管機能研究会と日本小児栄養消化器肝臓学会で作成した「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」をもとにしています.

日常診療のなかで,少し経過が長かったり,患者の様子が少し重症だったりと経過が気になる下痢や便秘に遭遇したときに,本書を開いて消化や吸収,消化管運動,腸内細菌叢の仕組みなどから下痢や便秘の機序を考えてみてください.田口班で作成された下痢の診断アルゴリズムも掲載しました.鑑別診断に使ってください.また患者や家族へのホームケアアドバイスの項目も設けました.

下痢も便秘も排便の問題で,ご家族にとっても心配事項です.さまざまな悪循環が生じ,子どもたちの成長や発達に影響する場合があります.そんななかで,本書が少しでも早く悪循環を断ち切ることのお役に立てれば幸いです.

本書の作成にあたり,辛抱強く助言をいただき,出版に漕ぎつけていただいた診断と治療社の土橋幸代様,島田つかさ様に感謝します.

2021年10月
編集者 位田 忍/工藤孝広