前身となる「小児がん経験者(CCS)のための内分泌フォローアップガイド」(2011年公開)を経て,小児がんの治療前・治療中・治療後の内分泌的諸問題への包括的対応を目指し,日本小児内分泌学会CCS 委員会を中心に作成された.小児がん診療を行う小児血液腫瘍医,小児内分泌医,小児脳外科医にとり日々の診療に役立つ参考書.AYA世代・成人のがん患者の内分泌診療にも対応.
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目次
発刊にあたって (大薗恵一)
序 文 (依藤 亨)
執筆者一覧
本書について
第1章 小児がん治療前に行うべき内分泌対応
1 治療前に行うべき内分泌評価
2 治療前に必要な内分泌治療(脳腫瘍術前ホルモン補充など)
3 妊孕性温存
第2章 小児がん治療中の内分泌対応
1 小児がん治療中に起こりやすい急性内分泌代謝合併症
2 糖代謝異常
1 ステロイド糖尿病とその診断・治療
2 L-アスパラギナーゼによる糖尿病とその診断・治療
3 免疫チェックポイント阻害薬による糖尿病とその診断・治療
3 脂質異常症
1 化学療法中の脂質異常症とその診断・治療
4 副腎異常
1 ステロイドカバーの必要性の判断と実際
(ストレス時(感染症時・周術期・化学療法時など))
2 ステロイド治療に伴う副腎抑制とその診断・治療
3 褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)診断と周術期管理
5 甲状腺機能異常
1 頸部照射時の甲状腺機能異常とその診断・治療
2 脳腫瘍による甲状腺機能異常とその診断・治療
3 抗がん剤による甲状腺機能異常とその診断・治療
6 水・電解質異常
1 脳腫瘍術後の水・電解質管理
2 尿崩症患者の化学療法時の水・電解質管理
3 化学療法によるSIADH
4 化学療法中の高血圧
7 性腺障害
1 化学療法・放射線療法に伴う性腺障害の予防
8 骨カルシウム代謝異常
1 腫瘍に伴う高カルシウム血症の管理
2 ステロイド治療に伴う骨粗鬆症の管理
3 長期臥床に伴う不動性骨粗鬆症の管理
4 甲状腺摘出に伴う低カルシウム血症の管理
第3章 小児がん治療後の内分泌対応
1 原疾患・治療別の内分泌への影響
2 下垂体前葉障害
1 概説とモニタリング方法
2 機能異常に対する治療
3 甲状腺機能異常
1 モニタリング・診断
2 機能異常に対する治療
3 甲状腺結節,嚢胞,甲状腺がんに対する対応
4 副腎異常
1 機能異常に対するモニタリング・診断・治療
5 性腺障害
1 概説とモニタリング方法
2 機能異常に対する治療
3 妊娠・分娩
6 水・電解質異常
1 モニタリング・診断
2 水・電解質異常に対する治療
7 糖・脂質代謝異常
1 モニタリングと診断
2 糖・脂質代謝異常,肥満,高血圧に対する治療
8 骨カルシウム代謝異常
1 モニタリング・診断・治療
第4章 小児がん内分泌診療に有用な資料
1 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班による下垂体機能異常の診断基準
1 下垂体前葉機能低下症
2 ウェブリソース
1 診療ガイドライン・小児がん治療レジメン
2 関連学会・学術団体
3 患者向け資料
3 医療補助
1 医療費補助
2 病気や治療に伴う障害に関するもの
3 その他
4 移行期医療
5 おもな抗がん剤一覧
第5章 付 録
資料 1 日本人小児の成長曲線
資料 2 日本人小児の肥満度判定曲線
資料 3 小児の性成熟段階評価(Tanner段階)
資料 4 日本人小児の年齢別骨塩定量値(DXA法による腰椎L2-L4について)
資料 5 小児の高血圧診断基準
資料 6 メタボリックシンドロームの診断基準
資料 7 空腹時血糖値および経口ブドウ糖負荷試験2時間値の判定基準
(静脈血漿値,mg/dL)
索 引
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序文
発刊にあたって
このたび,日本小児内分泌学会CCS委員会が中心になって,「小児がん内分泌診療の手引き」が刊行されることになり,本学会理事長として,一言挨拶させていただきます.小児がん診療の発展による,小児がん患者の生命予後の改善により,小児がん経験者(Childhood Cancer Survivors: CCS)の数が増加しています.そのような状況の中で,CCSでは晩期合併症のリスクがあることが問題とされるようになり,晩期合併症の中核である,内分泌疾患に取り組む必要性が高まりました.日本小児内分泌学会はCCS委員会を発足させ,CCSの晩期合併症への対応を行ってまいりました.その一つの成果が,2016年に発刊された「小児がん経験者(CCS)のための長期フォローアップガイド」であります.これは,日本小児内分泌学会の会員のみならず,広く小児がんの診療にあたる医療関係者にも役立ったと思います.その後も,小児がん医療とその合併症診療の分野は拡大を続け,がん治療中の内分泌疾患に対する対応や,生殖医療と連携した妊孕性の温存も求められるようになってきました.そこで,CCSのための長期フォローアップガイドを,CCS委員会委員長の依藤亨先生が中心となって,改訂したのが,本書「小児がん内分泌診療の手引き」であります.手にとってご覧いただくとわかっていただけると思いますが,小児がん内分泌診療に関する事項を広範囲にカバーし,知識の整理とその実践に役立つ内容となっています.医療の充実のためには,チーム医療は欠かせません.本書により,小児内分泌科医もがん診療に積極的にかかわって,小児がん患者のためによりよい医療が提供できることを願っております.
2021年10月
一般社団法人日本小児内分泌学会理事長
大阪大学大学院医学系研究科小児科学教授
大薗恵一
序 文
このたび,日本小児内分泌学会CCS委員会が中心になって,「小児がん内分泌診療の手引き」を刊行することができました.CCS委員会が2011年9月に初版公開(2016年7月部分改訂)した「小児がん経験者(CCS)のための内分泌フォローアップガイド」の改訂版に相当しますが,従来の内容をさらに拡充し,小児がん「治療前」,「治療中」,「治療後」の3つのステージにおいて起こってくる内分泌的諸問題に包括的に対応できるようになりました.エビデンスの少ない領域で,ガイドラインの一般的な策定手順を踏むのは困難であるため,文献情報とエキスパートオピニオンによる「手引き」の体裁をとりましたが,執筆委員は小児がん診療の中核的施設で日々内分泌診療に関わる医師や,小児がん内分泌診療を主たる研究領域とする研究者で構成され,多くの経験をもとにして3年間以上にわたり議論を重ね,具体的な診療方法に踏み込んだものとなりました.また,刊行にあたっては日本小児血液・がん学会,日本小児がん研究グループの方々からもパブリックコメントのかたちで多くのご意見をいただきましたことを深謝いたします.
このようにしてできあがった「手引き」は他に類を見ない内容で,小児がんを扱う小児血液腫瘍医,小児内分泌科医,小児脳外科医などにとって日々の診療に役立つものとなったと思います.また,AYA世代や成人のがんに伴う内分泌疾患の診療を行う成人内分泌科医や,小児内分泌疾患の一般的な治療マニュアルとしても十分に使用できる内容となりました.実地診療に必要な参考資料も含む小児がん内分泌診療のワンストップの参考書として,本書が広く読まれ,小児がん患者さんとそのご家族すべての方々のがんとの闘いを支える一助になれば幸いです.
2021年10月 COVID-19の嵐の中で
一般社団法人日本小児内分泌学会CCS委員会委員長
依藤 亨
本書について
本書の使い方
本書では,小児がん治療前に行っておくべき内分泌的対応,治療中に起こってくるさまざまな内分泌にかかわる問題点への対応,治療後のフォローアップ中に起こる内分泌晩期障害のそれぞれに対する具体的な対応の仕方を記載しました.また,小児がんの治療薬やレジメンに不慣れな内分泌医,身近にコンサルトできる小児内分泌医がいない腫瘍治療医などにとって役立つ参考資料や患者さんの闘病を支える医療補助などに対する情報も付して,小児がん患者の発症から治療後に至るまでトータルな内分泌診療の参考となることを意図しました.
全体構成
第 1 章-1~3 には治療前,第 2 章-1~8 には治療中の内分泌合併症,第 3 章-1~8 には治療後の晩期合併症に対する対応をそれぞれ記載しました.時間がない方,全体をさっと把握したい方は,第 2 章- 1(表 1)と第 3 章
- 1(表 1~2)をまずご参照ください.
これからがん治療を行う場合
(1)第 1 章により治療前に必要な評価を行います.
(2)第 2 章-1 により,これから行う小児がん治療に伴って起こりやすい内分泌合併症を把握します.
(3)第 2 章-2~8 で,実際に治療中に起こった内分泌合併症に対する対応を確認できます.
がん治療終了後の患者の場合
(1)前身の「小児がん経験者(CCS)のための 内分泌フォローアップガイド」で好評であった「治療別晩期合併症の一覧表」は第 3 章の冒頭に新たな形で掲載しました.これにより,CCS 内分泌晩期合併症に必要なモニタリングや対応が一目でわかります.
(2)第 3 章-2~8 により,個々の臓器別晩期合併症のモニタリング,診断,治療の詳細を確認できます.
小児がんの内分泌診療のためのリソース,添付資料
巻末には小児がんの内分泌診療に必要なリソースや参考資料を添付しました.小児の発育についての正常値,患者が利用できる社会福祉リソースの一覧,小児がん治療に慣れない内分泌科医のための抗がん剤の一覧や,治療レジメンについてのリソースをまとめました.
【注】本手引きにおける治療の項は一般的な推奨として記載しました.実際には個々の患者の状態に応じて対応することが重要です.
利益相反開示
いずれの執筆者にも開示すべき利益相反(COI)なし