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ファブリー病 UpDate 改訂第2版診断と治療社 | 書籍詳細:ファブリー病 UpDate 改訂第2版

一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療研究センター センター長&遺伝病治療研究所 所長/東京慈恵会医科大学名誉教授

衞藤 義勝(えとう よしかつ) 責任編集

東京慈恵会医科大学医学部看護学科健康科学疾病治療学 教授

大橋 十也(おおはし とうや) 責任編集

第2版 B5 並製ソフトカバー 2色刷(一部カラー) 372頁 2021年11月15日発行

ISBN9784787825308

定価:10,780円(本体価格9,800円+税)
  

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多くの医師に使用されたファブリー病診療のバイブル.前版の発刊から約8年間が経過し,ファブリー病の病態に関する知見,診断,治療法は大きく進歩した.本症では障害臓器が多岐にわたるため,診療科横断的な知識が必要である.本書はそのようなニーズに合致した目次構成とし,さらに各領域の専門家が最新情報をわかりやすく記載した.専門医のみならず,一般診療に携わる医師に向けたファブリー病診療の教科書.

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目次

序文 衞藤義勝,大橋十也
執筆者一覧


A ファブリー病の歴史と概要
 1 ファブリー病の歴史と概要 衞藤義勝

B 病因と病態
 1 ライソゾームと糖脂質 大友孝信
 2 病態生理学 酒井規夫
 3 分子生物学的病態生理学 櫻庭 均/月村考宏
 4 頻度,遺伝 奥山虎之
 5 遺伝子異常の基礎 石井 達/丸山弘樹

C 臨床症状
 1 総論 大橋十也
 2 疼痛および自律神経症状 中里良彦
 3 皮膚症状 金田眞理
 4 眼科的症状 高 静花
 5 消化器症状 小林博司
 6 循環器症状 竹中俊宏
 7 腎症状 伊藤由美/成田一衛
 8 神経系の症候および脳血管系の障害,精神症状 辻 省次
 9 耳鼻咽喉科的症状 宇田川友克
 10 内分泌異常 宮田市郎
 11 女性ヘテロ患者 小林正久

D 診断
 1 臨床症状と臨床検査 小林正久
 2 画像診断と心電図
  a 心血管系 本郷賢一
  b 脳血管系 米澤久司
  c 心電図 藤原優子
 3 組織病理学的診断 鈴木正章/原田 徹
 4 酵素診断,生化学的診断(バイオマーカー含む) 兎川忠靖/月村考宏
 5 遺伝子診断 丸山弘樹/田口惇美/三亀真理子/石井 達
 6 機能的異型と臨床的意義不明のバリアント 兎川忠靖/月村考宏
 7 鑑別診断 酒井規夫
 8 ファブリー病診療ガイドライン2020 小林正久
 9 重症度スコア表 大橋十也

E 治療
 1 対症療法
  a 食事療法 上田裕之/横尾 隆
  b 疼痛の治療 酒井規夫
  c 循環器症状の治療 駒村和雄
  d 腎症状の治療 杉山 斉
  e 脳血管障害の治療(脳梗塞など) 後藤 順
  f 耳鼻咽喉科的症状の治療 山本浩志
  g 消化器症状の治療 酒井規夫
  h 眼科的症状の治療 高 静花
 2 酵素補充療法
  a 概要と現状 小林博司
  b QOL,疼痛に対する効果 坪井一哉
  c 皮膚,自律神経症状に対する効果 坪井一哉
  d 循環器症状に対する効果 本郷賢一
  e 腎症状に対する効果 湯澤由紀夫/坪井直毅
  f 精神症状,神経症状,脳血管症状に対する効果 河野 優
  g 耳鼻咽喉科的症状に対する効果 櫻井結華
  h 眼科症状に対する効果 高 静花
  i 酵素補充療法の副作用とその治療 小林博司
  j 妊娠,授乳と酵素補充療法 衞藤 薫
  k 抗体産生とその治療 大橋十也
 3 薬理学的シャペロン療法
  a 原理 檜垣克美
  b 世界の治療の現状/効果 濱崎考史
  c 治療症例 保科宙生
 4 新規治療の開発(基質合成抑制治療薬,核酸治療薬) 櫻井 謙
 5 遺伝子治療 小林博司

F 経過,予後
 1 自然歴 大橋十也

G 予防,スクリーニング
 1 スクリーニングの課題 小須賀基通
 2 スクリーニングの方法 鈴木 健/衞藤義勝
 3 マススクリーニング,ハイリスクスクリーニングのわが国と世界の現状 澤田貴彰/中村公俊

H 遺伝カウンセリング
 1 遺伝カウンセリングの実際 奥山虎之

I 症例提示 
 1 古典型ファブリー病の症例 藤原優子/小林正久
 2 心亜型ファブリー病の症例 樋口公嗣/大石 充/竹中俊宏
 3 腎亜型ファブリー病の症例 田中元子/井上秀樹/松下恭久/向山政志
 4 女性ヘテロ接合体症例 藤原優子
 5 積極的な家系内調査により判明したファブリー病の大家系 山本沙織/後岡広太郎

J 診療施設,酵素・遺伝子診断施設
 1 診療施設 角皆季樹
 2 酵素・遺伝子診断施設 角皆季樹

K ライソゾーム病の医療費等助成認定基準
 1 医療費等助成認定基準 ―ファブリー病を中心に 西山由梨佳

L 患者団体の紹介
 1 患者会活動の役割と責任 原田久生


索引

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序文

序文

 ファブリー病(Fabry disease)はX連鎖の遺伝病であり,X染色体に局在するライソゾーム酵素であるα-ガラクトシダーゼA(GLA)の酵素欠損により発症します.また,他のX連鎖遺伝病とは異なり,男性ばかりでなく,女性保因者も臨床症状を呈する特異なライソゾーム病(lysosomal storage disease)の代表的な疾患の1つです.
 ファブリー病では皮膚,感覚器(眼,内耳),心臓,腎臓,脳血管,末梢神経組織,甲状腺等の内分泌臓器など多彩な臓器が障害されるため,患者が受診する診療科は小児科,腎臓内科,循環器内科,神経内科,皮膚科,眼科,耳鼻咽喉科,痛風科,リウマチ科,ペインクリニックなど多岐にわたります.小児期には四肢の非常に強い痛みから不登校などに至る症例も知られ,精神的なケアが必要です.成人期以降に腎不全,心不全,脳血管障害など重篤な症状を呈する患者では,各診療科の緊密な連携が重要となります.そのような背景から,ファブリー病診療においては,各診療科が関連して本症への理解を深め,互いに啓発することが望まれます.
 わが国のファブリー病患者は,現在1,000名以上が酵素補充療法(ERT)による治療を受けています.また近年,新たな治療法として,薬理学的シャペロン療法(PCT)が開発されました.PCTは遺伝子変異依存性で,経口薬による治療法です.さらに現在,基質合成抑制療法(SRT)あるいは遺伝子治療薬の開発が進められています.このように治療法の選択の幅が広がってきたことから,正確な知識のもとで治療効果の評価や,副作用などへの理解を深めていくことがより大切になっています.また,早期診断と早期治療を実現するための新生児スクリーニングもすでに開始されています.早期治療によって合併症を予防し,腎不全,心不全,脳梗塞などによる死亡を減らしていくことが望まれます.
 本書は以上のような観点から企画されました.本書の初版は2013年に『ファブリー病UpDate』として刊行され,ファブリー病診療のバイブルとして多くの先生方に利用されました.その後,約8年間が経過し,病態に関する知見,診断,治療法が大きく進歩したことから,本領域の専門家の先生方に新たな知見を記載していただき,本改訂版の発刊に至りました.ファブリー病診療に携わる各診療科の先生方におかれましては,本書をきっかけとしてよりいっそう本症に関する知識を深めていただき,早期発見,早期治療につなげ,連携して対応する際の一助としていただければ幸いです.そして,わが国のファブリー病患者の皆様のQOL向上に少しでも役立てば,責任編集者として望外の喜びです.
 最後に,如上のような企画意図にご賛同賜り,本書の編集にご協力いただいた諸先生方,さらには各項目をご執筆いただいた先生方に深甚の感謝を捧げると同時に,発刊ならびに編集制作にご尽力いただいた(株)診断と治療社の皆様に深謝申し上げます.

2021年10月
責任編集
一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療研究センター センター長/東京慈恵会医科大学名誉教授 衞藤義勝
東京慈恵会医科大学医学部看護学科健康科学疾病治療学 教授 大橋十也