コミュニティ小児科学とは,小児科医が診察室にやってきた子どもの健康を支援するだけではなく,視点を診察室・病院の外,すなわちコミュニティへ向け,子どもの健康に影響を与える様々な因子に対して「健康の専門家」として働きかけることを促す概念です.
小児科医が知っておきたい医療・保健・福祉・保育・教育との連携を,実践例も提案しながら解説した「コミュニティ小児科学」に関する本邦初の一冊です!
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目次
緒言 五十嵐 隆
序文 小西恵理,阪下和美,土畠智幸,中村洋介
執筆者一覧
将来の小児科医への提言2018(2016年版改訂)
第I章 コミュニティ小児科学
1 コミュニティ小児科学とは 小西恵理
2 子どものアドボカシー 阪下和美
3 小児医療と公衆衛生 阪下和美
4 「コミュニティに目を向ける」とは 土畠智幸
第II章 小児に関連するコミュニティ資源
1 コミュニティ資源とは 土畠智幸,阪下和美
2 それぞれのコミュニティ資源
1)医療 中林洋介
2)保健 中林洋介
3)福祉① ~児童福祉 阪下和美
4)福祉② ~障害をもつ子どもの福祉 土畠智幸
5)保育 ~就学前の保育と教育 小西恵理
6)教育 土畠智幸,阪下和美
3 学校卒業後のコミュニティ資源 阪下和美
第III章 コミュニティ資源とのかかわり方
1 組織論 土畠智幸
2 関係機関との連携,かかわり方 土畠智幸
3 多職種カンファレンス 小西恵理
4 関係機関との連携・協働の具体的プロセス
1)コミュニティ資源の豊富な都市部における連携・協働 小橋孝介
2)地域のがんばっている専門職や支援者と顔のみえる関係をつくる 和田 浩
3)学校との連携で子どもたちの健やかな成長・発達を目指して ~学校医が行う健康相談活動の紹介 佐藤洋一
4)地域に根づいた子どもと家族に寄り添う小児科医療 蜂谷明子
第IV章 子どもとコミュニティのかかわり
1 ケースシミュレーション 阪下和美
① 健常児 阪下和美
② NICUを退院する医療的ケア児① ~重症新生児仮死 土畠智幸
③ NICUを退院する医療的ケア児② ~超低出生体重児 森田雄介,小西恵理
④ NICUを退院する医療的ケア児③ ~狭義の医療的ケア児(者) 土畠智幸
⑤ 発達障害 小林穂高
⑥ 慢性疾患 ~1型糖尿病 小西恵理
⑦ 悪性疾患 塩田曜子
⑧ 心身症 石﨑優子
⑨ 被虐待児 石倉亜矢子
第V章 コミュニティ小児科学における教育
1 教育 高村昭輝
2 コミュニティ小児科学を導入する ~ここから始めてみよう 小西恵理
第VI章 コミュニティ小児科学における研究
1 データ収集と分析 奈倉道明
2 小児プライマリ・ケアにおける研究 ~地域で活躍する一小児科医の研究 杉村 徹,尾崎貴視
3 大規模研究 奈倉道明
4 コミュニティ小児科学の研究活動を広げるために 阪下和美
コミュニティ小児科学に関連する法律・施策
利用できる制度・事業
索引
COLUMN 多職種の視点
[保健師]医療的ケア児に対するサポート体制 梅坪 光
[言語聴覚士]「つながる,広がる」 佐々木千晶
[養護教諭]子どものよりどころである保健室を目指して 島村さやか
[相談支援専門員]その子らしい暮らしを「一緒に」考える 宮本真希
[訪問看護師]今を楽しみ,機能するコミュニティを問い続ける訪問看護 松山なつむ
[医療ソーシャルワーカー]自分から会いに行く 藤井三四郎
[助産師]地域で守る支援の輪 川由京子
[自立支援員]ここにくればなんとかなるかも ~地域子どものくらし保健室を目指して 西 朋子
[管理栄養士]地域における管理栄養士のかかわり 久保香苗
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序文
本書は,コミュニティ小児科学に関するわが国で初めての書籍である.コミュニティ小児科学とは,小児科医が診察室にやってきた子どもの健康を支援するだけではなく,視点を診察室・病院の外,すなわちコミュニティへ向け,子どもの健康に影響を与える様々な因子に対して「健康の専門家」として働きかけることを促す概念である.コミュニティ小児科学は,決して新しい概念ではなく,すでに多くの小児科医が日常臨床で実践している様々な支援のかたちである.同時に,子どもの疾病構造が変化し,心理社会的背景が健康に及ぼす影響も注視せねばならない現在,さらに普及することが望ましい概念である.
本書では,第I~III章において,コミュニティ小児科学の概念,コミュニティ資源の紹介およびそれらとのかかわり方を説明する.さらに,第IV章では具体的なコミュニティ資源を読者がイメージしやすいよう,仮想症例を用いてかかわり方を示す.コミュニティ小児科学はすでに医療教育および学術研究の一分野として確立しており,第V~VI章で,その実践例を紹介する.
皆様が診察室で出会う子どものなかで,「親のかかわり方が少し心配」「生活習慣をもっとよくしてほしい」「学校でこうかかわってほしい」など,診察室だけでは解決できない問題を感じることがあれば,まず第IV章を開いてもらい,状況が近い仮想症例のページをご覧になっていただきたい.具体的なコミュニティ資源との連携のヒントをみつけていただき,さらに詳しい情報を知りたくなったら第II~III章をご覧いただきたい.本書は読者として小児科医を想定しているが,病院内や地域で子どもにかかわるいろいろな職種の方々にも手にとっていただければ幸いである.
本書が,小児科医がベッドサイドから診察室・病院の外へ目を向ける,そして活躍の場を広げるきっかけとなることを願って.
小西恵理,阪下和美,土畠智幸,中林洋介