好評につき待望の改訂版.年々増加している低侵襲の脳血管内治療では,術中の出血や血栓症などの合併症対策に習熟することが求められる.本書は脳動脈瘤治療のエキスパートによる,様々な場面で使える手術のトラブル解決法を紹介.ケースを通じ,145点のイラストと229点の写真による臨場感あふれる貴重なテクニックが学べます.
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目次
改訂第2版の序
初版の序
執筆者一覧
用語
総論
卜ラブルシューティング総論1―考え方と心構え―
卜ラブルシューティング総論2―遭遇するトラブル―
Ⅰ ガイディングカテーテルトラブル
Case1 ガイデイングカテーテルが上がらない
Case2 アクセス不良
Case3 ガイディング力テーテルでの解離
Ⅱ マイクロカテーテルトラブル
Case4 マイク口力テーテルが瘤内で安定しない
Case5 マイクロカテーテルが穿孔した
Case6 マイクロカテーテルを瘤の遠位に誘導できない
Ⅲ バルーンカテーテルトラブル
Case 7 バルーンカテーテルが見えにくい
Ⅳ コイルトラブル
Case8 コイルによる動脈瘤穿孔
Case9 コイルループが母血管に逸脱した
Csae10 留置中のコイルが瘤外ヘ突出してしまった
Case11 コイルが動かなくなった
Ⅴ ステントトラブル
Case12 ステントが瘤内に滑落してしまった
Case13 ステント内に血栓ができた
Case14 ステント併用コイリング中にカテーテルが逸脱した
Ⅵ フローダイバータートラブル
Case15 フローダイバーターが短縮した
Case16 マイクロカテーテルが動脈瘤遠位まで誘導できない
Case17 フローダイバーターが拡張しない
Ⅶ 分岐部デバイストラブル
Case18 術中に母血管を損傷した
Case19 WEBが逸脱してしまう
Ⅷ 術後トラブル
Case20 手術終了直後に意識障害を認めた
Case21 治療3か月後に意識障害をきたした
Index
あとがき
さらに極める
各種アプローチルートとデバイスを知る
シェイピングの工夫と器具
カテーテルの予期しない先進
オクリュージョンバルーンの種類と準備法
各種コイルトラブルと対処法を知る
アンラベル時のスネアワイヤーによる回収法
血栓症を事前に回避するポイン卜
WEBの構造と留置法を知ろう
Dr.吉村のワンポイントアドバイス
ガイディングカテーテルの重要性とバリエーション
アプローチの選択について
カテーテル穿孔が起きやすい状況を考えてみよう
マイクロカテーテル直線化のコツ
デバイスが見にくいときの工夫
コイル逸脱をどう防ぐか
フローダイバーターの落とし穴
大型・巨大脳動脈瘤治療の注意点
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序文
改訂第2版の序
わが国の脳動脈瘤治療の過半数が血管内治療となり,ついに「第一選択」と言われるようになりました.今後も新たなデバイスの導入が予定されているため,その治療数はさらに増えていくものと思われます.
しかし一方で,デバイスの増加や適応の拡大により,本治療によるトラブルも多岐にわたるようになりました.血管内治療は低侵襲で体にやさしいことが利点ですが,ひとたび合併症が起きてしまうと重度の後遺症や死亡につながることもあります.ではトラブルが起きたときにはどのように対応すればよいのでしょうか?
本書はこれまで多くの脳動脈瘤治療を行ってきた当チームのメンバーが,実際の経験をもとに治療現場でどのように考えて対応したかを紹介する一冊となっています.当施設では脳動脈瘤治療において徹底的に合併症を減らす工夫をして,しかもトラブルシューティングにも精通したことで重篤な合併症が極めて少なくなりました.このような経験から,皆さんにもぜひこのような情報を提供したいと思い,最新情報を加えて本書を改訂することとしました.
まず総論1では,脳動脈瘤治療におけるトラブルシューティングに関する考え方や心構えを紹介しています.実際の治療を行う場合には細かなテクニックの詳細よりもっと重要なことがあります.ぜひこの部分を読んでから次に進むようにしてください.
次に総論2では,脳動脈瘤治療におけるトラブルを概観し,解説を加えています.実際の治療でどのようなトラブルが起きるのかをまずざっと把握してください.
各論では実際の症例を示し,トラブルシューティングの候補,そして実際に行った治療を紹介しています.「あなたならどうする?」のところで必ず手を止め,現場にいる気持ちになって,「自分ならこうする」「もしそれでだめならこうする」などと考えを巡らせてからページをめくるようにしてください.この作業を繰り返すことによって,同様の状況に陥ったときに頭の中に治療候補が浮かんでくるようになるはずです.項目によっては「さらに極める!」や「ワンポイントアドバイス」などで知識が深まるようにしました.日常陥りやすいトラブルとその対処法がほぼ網羅できているはずです.
本書では私たちの経験を余すところなく紹介しています.皆さんの明日からの治療の一助となることを心から願っています.
2024年4月兵庫医科大学脳神経外科学講座主任教授
吉村紳一