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EBウイルス関連胃癌 改訂第2版診断と治療社 | 書籍詳細:EBウイルス関連胃癌 改訂第2版

国立病院機構関門医療センター臨床研究部

柳井 秀雄(やない ひでお) 編集

山口大学大学院医学系研究科基礎検査学

西川 潤(にしかわ じゅん) 編集

島根大学医学部微生物学講座

吉山 裕規(よしやま ひろのり) 編集

改訂第2版 B5判 並製 136頁 2022年11月10日発行

ISBN9784787825698

定価:5,500円(本体価格5,000円+税) 電子書籍はこちら
  

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EB ウイルス関連胃癌は,TCGA による胃癌の4分類のうちの1つです.初版から6 年が経過し,EB ウイルスの感染によりがん化へ至る分子機序について,多くの新知見が報告され,免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法のEB ウイルス関連胃癌への効果も期待されています.低侵襲の内視鏡的胃粘膜下層剥離術の適応や,話題の光免疫療法の応用も紹介.現時点で判明しているEB ウイルス関連胃癌の全貌が理解できる一冊.

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目次

カラー口絵
はじめに  柳井秀雄
初版の序文  柳井秀雄
執筆者一覧

Ⅰ EBウイルス関連胃癌の臨床
1 EBウイルス関連腫瘍としてのEBウイルス関連胃癌  柳井秀雄,清水則夫
 はじめに
 EBVの感染と伝染性単核球症,EBV関連日和見B細胞性リンパ腫
 膿胸関連リンパ腫・Burkittリンパ腫・Hodgkinリンパ腫
 EBVのB細胞以外への感染
 EBV関連腫瘍としてのEBV関連胃癌の発見
 EBV関連胃癌の概観
 胃上皮細胞へのEBVの感染と発がん
 おわりに

2 EBウイルス関連胃癌の疫学  郡山千早,秋葉澄伯
 EBウイルス感染の自然史とEBウイルス関連胃癌
 地域分布と経年変化
 病理学的・臨床的特徴
 人口学的特徴
 生活習慣・生活環境
 ヘリコバクターピロリ菌感染などとの関連
 EBVの感染時期
 ウイルスの再活性化とそのバイオマーカー
 EBVのサブタイプ

3 EBウイルス関連胃癌の病理像(通常病理,HE像・粘液形質など)  牛久哲男,岩﨑晶子,阿部浩幸,牛久 綾
 肉眼像
 組織像
 粘液形質
 細胞接着因子
 腫瘍免疫環境

4 EBウイルス関連胃癌の臨床像  柳井秀雄,西川 潤
 はじめに
 実臨床におけるEBV関連胃癌の経験
 EBV関連胃癌病変の組織像とリンパ球浸潤の臨床像へ与える影響
 EBV関連胃癌と抗EBV抗体系・血漿EBV DNA
 EBV関連胃癌の存在部位と肉眼像
 EBV関連胃癌と背景の慢性萎縮性胃炎
 残胃におけるEBV関連胃癌
 EBV関連胃癌病変の内視鏡診断
 EBV関連胃癌病変のEUSなどによる診断の可能性
 EBV関連胃癌の予後
 非癌胃粘膜におけるEBVとピロリ菌
 おわりに

5 EBウイルス関連胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剝離術の可能性  大塩香織,辻 陽介,藤城光弘
 はじめに
 内視鏡的特徴
 内視鏡治療適応
 粘膜下層への浸潤を伴うEBV関連胃癌(pT1b-EBVaGC)のLNMリスク
 内視鏡治療の適応拡大
 おわりに

6 癌化学療法とEBウイルス関連胃癌  久保田洋平,設樂紘平
 はじめに
 EBV関連胃癌の臨床病理学的・分子学的特徴および免疫チェックポイント阻害剤の効果との関連
 EBV関連胃癌と化学療法および免疫チェックポイント阻害剤の効果

7 EBウイルス関連胃癌に対する様々な新たな治療法の試み  西川 潤
 はじめに
 免疫チェックポイント阻害剤
 Epigenetic治療(脱メチル化剤など)
 EBV関連胃癌の抗悪性腫瘍薬感受性
 EBV遺伝子に対する治療

8 特別寄稿 光免疫療法による胃癌治療への期待(NIR-PIT of gastric cancer)
   加藤卓也,小林久隆
 はじめに
 NIR-PITの概要
 NIR-PITと光線力学療法との違い
 頭頸部腫瘍に対する光免疫療法の現状
 胃癌に対するNIR-PITの応用
 EBV関連胃癌に対するNIR-PITの期待と展望
 おわりに

Ⅱ EBウイルス関連胃癌の基礎研究
1 EBウイルス関連胃癌―発生から進展まで―  深山正久
 EBV関連胃癌発生過程の病理形態学
 EBV関連胃癌の炎症・感染・発がんシーケンス
 EBV関連胃癌の発生過程の研究を振り返って

2 EBウイルスの胃上皮細胞への感染と不死化  小野村大地,Afifah Fatimah,吉山裕規
 はじめに
 上皮細胞へのEBVの感染
 EBV陽性胃上皮細胞
 組換えウイルスを用いたEBV陽性胃上皮細胞の作成
 EBV関連胃癌のはじまり
 EBV感染細胞の腫瘍化のメカニズム
 おわりに

3 EBウイルス関連胃癌と宿主細胞ゲノムメチル化  松坂恵介,金田篤志
 はじめに
 DNAメチル化とは
 胃癌臨床検体におけるDNAメチル化形質(エピジェノタイプ)
 EBV関連胃癌における第3のエピジェノタイプ
 EBV関連胃癌におけるDNAメチル化形質の特徴
 In vitroのEBV感染実験系によるDNAメチル化誘導パターンの解析
 おわりに

Ⅲ ヒト腫瘍ウイルスとしてのEBウイルス
1 全身におけるEBウイルス関連腫瘍概論  高原 幹
 はじめに
 Burkittリンパ腫(BL)
 Hodgkinリンパ腫(HL)
 鼻性NK/T細胞リンパ腫(NNKTCL)
 上咽頭癌(NPC)
 慢性活動性EBV感染症(CAEBV)
 移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)
 おわりに

2 EBウイルス感染の基礎知識―代表的な細胞株とウイルス遺伝子発現様式―  神田 輝
 EBウイルスの感染対象細胞とその仕組み
 EBVゲノムとウイルスサブタイプ
 代表的なEBV感染細胞株
 潜伏感染遺伝子発現様式による分類
 ウイルス感染細胞における再活性化
 おわりに

3 EBウイルスによるBリンパ球不死化機構  南保明日香
 はじめに
 EBVによるBリンパ球不死化
 Bリンパ球不死化におけるEBV遺伝子発現
 EBVによるBリンパ球不死化機構
 おわりに

4 EBウイルス感染とマイクロRNA  飯笹 久
 はじめに
 EBV由来miRNAの発見
 BART miRNAによる潜伏感染維持
 BART miRNAによる免疫機構からの回避
 BART miRNAによる腫瘍悪性化
 EBV関連腫瘍におけるBART miRNAの欠損
 まとめ

5 EBウイルス関連腫瘍における免疫治療  田村結実,保田朋波流
 はじめに
 EBV潜伏感染と免疫監視
 がん治療標的としての免疫チェックポイント分子
 EBV関連腫瘍における免疫チェックポイント阻害剤
 EBV関連腫瘍における特異的T細胞療法
 今後の展望と課題

 おわりに
 索 引

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序文

はじめに

 本書を手に取ってくださいました皆さまへ,心より感謝申し上げます.多くの読者の方々にとって,EBウイルス関連胃癌は,「存在は知っているがよく解らない」疾患ではないかと拝察致します.
EBウイルス関連胃癌は,The Cancer Genome Atlas Networkによる胃癌の4分類のうちの1つを占めるDNAメチル化に富む特徴的なサブタイプです.専門の執筆者の皆さまのお力をお借りして,編集者一同,知恵を絞り現時点で判明しているEBウイルス関連胃癌の全貌を本書にお示しできますよう努力致しました.
 2016年に本書の初版を出版してから6年が経過し,時代は平成から令和へと移り,私たちは新型コロナウイルス感染症の大波も経験致しました.この間,基礎研究者の皆さまの粘り強いご努力により,EBウイルスの胃上皮細胞への感染によりがん化へ至る分子機序について,多くの新知見が報告されています.また,臨床では,免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法が胃癌の標準治療へ定着しEBウイルス関連胃癌への効果も期待されています.低侵襲の内視鏡的胃粘膜下層剝離術のEBウイルス関連早期胃癌への適応も議論されるようになりました.さらに,新規の光免疫療法のEBウイルス関連胃癌への応用も待たれるところです.
 本書改訂第2版は,臨床を担当される読者の皆さまの便宜を図るため,初版とは異なり,I EBウイルス関連胃癌の臨床,II EBウイルス関連胃癌の基礎研究,III ヒト腫瘍ウイルスとしてのEBウイルス,の順に構成致しました.基礎研究者の皆さまには,逆にIII,II,Iの順でお読みいただくのがよいかもしれません.
 編集者らは,当初,髙田賢藏北海道大学名誉教授(当時,山口大学教授)のお導きのもと,ウイルス学と消化器病学との境界の隘路から未開の荒野に足を踏み入れる覚悟でEBウイルス関連胃癌の研究に参入しました.しかし,狭い狭い領域と思ったその先には,思いもかけず,全身にわたる内科学・免疫学・ウイルス学の再統合へと繋がる広々とした世界が開けておりました.
 編集者一同,本書が,EBウイルス関連胃癌の臨床のみならず,その病態と不可分の免疫学やウイルス学へと読者の皆さまを誘う足掛かりとなりますことを,祈念致しております.

2022年9月

編集者を代表して:
国立病院機構関門医療センター臨床研究部
柳井秀雄





初版の序文

 本書は,髙田賢藏北海道大学名誉教授のご指導の下での,編集者一同ならびに共同研究者諸氏の,山口大学や北海道大学での20年にわたる「EBウイルス関連胃癌」にかかわる苦しくも楽しい探求の成果を纏めたものです.編集者らの手に余る部分につきましては,各分野の権威の皆様のご助力をいただきました.執筆者の皆様に心より感謝申し上げます.
 去る平成27年11月には,本書の上梓を待たずして,わが国の消化器内視鏡医学発展の功労者の一人であられ,慢性胃炎の本態を「繰り返す表層性変化による萎縮性変化の進展」と喝破されました竹本忠良山口大学名誉教授がご逝去されました.その表層性変化の正体が,竹本教授ご自身がわが国での研究に先鞭をつけられたピロリ菌による慢性活動性胃炎であることが明らかとなりましたことは,周知の事項です.本書は,この慢性活動性胃炎を舞台として,隠れていたもう一つの新たな役者「EBウイルス」が,胃癌の病態に如何なる役割を演じているのかに迫ったものです.本書を,竹本教授にご笑覧いただくことが叶わなかったことが,残念です.
 EBウイルスは,ほぼすべての成人が保有しさまざまな病態に関与していますが,その消化管における感染の実態や病的意義は,いまだ不明瞭です.胃癌の診断治療や病態解明に日々取り組んでおられる臨床医や研究者の皆様にとりましても,EBウイルス関連胃癌は,興味はあるものの少し取りつきにくい対象であったかと思われます.本書により,読者の皆様へ,これまでに解明されましたEBウイルス関連胃癌の病像を,わかりやすくお示しできれば幸いです.
 編集者一同,本書の上梓が,多くの優れた臨床医・研究者の皆様のEBウイルス関連胃癌研究への参入の呼び水となり,皆様のお力で,EBウイルス関連胃癌のみならず現時点でEBウイルスの関与が不明瞭ないくつかの消化器疾患の病態の解明や治療法の進歩が得られますことを,心より期待しております.
 最後に,本書の作成に多大なご協力をいただきました,診断と治療社の皆様に,厚く謝意を表します.

2016年7月

編集者を代表して:
国立病院機構関門医療センター臨床研究部
柳井秀雄