世界10か国語に翻訳される名著が,カラーになって10年ぶりに帰ってきました!エネルギー代謝,脂質代謝,糖化,神経伝達物質,ビタミン代謝異常などの大幅ブラッシュアップはもちろん,各疾患の原因遺伝子を網羅し,遺伝子索引も収録.カラーとなった今版では代謝図がさらにみやすく・わかりやすくなりました.小児科をはじめ,代謝疾患にかかわるすべての先生方にご活用いただける1冊です.ぜひ白衣のポケットへ!
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
訳者一覧/訳者改訂第3版 序/原著第5版 序・原著序文/略語/重要な臨床群(前見返し)
第Ⅰ章 先天代謝異常症の診断と治療
1 基本的な臨床検査項目
2 臨床上重要な一連の徴候
2.1 一般的な留意事項
2.2 代謝救急
2.3 低血糖症
2.4 高アンモニア血症
2.5 代謝性アシドーシスとケトーシス
2.6 乳酸濃度の上昇
2.7 知的障害
2.8 てんかん性脳症
2.9 運動失調症
2.10 フロッピーインファント
2.11 運動不耐
2.12 心筋症
2.13 形態異常
2.14 肝疾患/肝不全
2.15 乳幼児突然死
2.16 死後の検査
2.17 胎児水腫
2.18 通常は認められない臨床所見
2.19 予期しない検査所見
2.20 代謝異常関連の特殊検査を必要としないもの
3 代謝異常関連の特殊検査
3.1 簡易な尿検査項目
3.2 アミノ酸
3.3 有機酸
3.4 カルニチン分析
3.5 その他の特殊な代謝学的検査
3.6 生検および酵素学的検査
3.7 分子遺伝学的検索
4 機能検査
4.1 代謝プロファイリング
4.2 長時間空腹試験
4.3 グルカゴン試験
4.4 テトラヒドロビオプテリン(BH4)試験
4.5 フェニルアラニン負荷試験
5 新生児マススクリーニング
5.1 遺伝性代謝疾患の新生児マススクリーニング
5.2 代謝異常症以外の新生児マススクリーニング
第Ⅱ章 各代謝経路と異常症
6 アミノ酸代謝異常症
6.1 治療の原則
6.2 尿素サイクル異常症と遺伝性高アンモニア血症
6.3 有機酸尿症
6.4 分枝鎖アミノ酸(BCAA)代謝異常症
6.5 フェニルアラニン・チロシン代謝異常症
6.6 含硫アミノ酸・硫化水素代謝異常症
6.7 セリン・グリシン代謝異常症
6.8 オルニチン・プロリン・ヒドロキシプロリン・グリオキシル酸・シュウ酸代謝異常症
6.9 リジン・ヒドロキシリジン・トリプトファン・ヒスチジン代謝異常症
6.10 グルタミン酸/グルタミン・アスパラギン酸/アスパラギン代謝異常症
6.11 アミノ酸輸送異常症
6.12 その他のアミノ酸代謝異常症
7 ペプチド・アミン代謝異常症
7.1 グルタチオン代謝異常症
7.2 その他のペプチド代謝異常症
7.3 メチルアミン・ポリアミン代謝異常症
8 炭水化物代謝異常症
8.1 ガラクトース・フルクトース代謝異常症
8.2 糖新生系異常症
8.3 グリコーゲン代謝異常症(糖原病,GSD,グリコゲノーシス)・解糖系異常症
8.4 ペントース代謝異常症
8.5 ヘキソースの膜間輸送と吸収の異常症
9 脂肪酸・カルニチン・ケトン体代謝異常症
9.1 脂肪酸酸化およびカルニチン代謝の異常症
9.2 ケトン体代謝異常症
10 代謝物校正機能異常症
11 エネルギー代謝異常症
11.1 ピルビン酸代謝とKrebsサイクルの異常症
11.2 クレアチン生合成異常症
11.3 ミトコンドリア呼吸鎖異常症
11.4 ミトコンドリア異常による症候群
11.5 ミトコンドリア異常症に対する臓器別アプローチ
11.6 ミトコンドリア異常症の分子的および機能的分類
12 脂質代謝異常症
12.1 脂肪族アシル鎖合成・伸長・再利用の異常症
12.2 ペルオキシソーム脂肪酸酸化およびペルオキシソーム生合成の異常症
12.3 エイコサノイド代謝異常症
12.4 グリセロ脂質代謝異常症
12.5 グリセロリン脂質代謝異常症
12.6 スフィンゴ脂質の合成と再利用の異常症
12.7 ステロール合成異常症
12.8 胆汁酸代謝異常症
13 リポタンパク代謝異常症
13.1 高コレステロール血症
13.2 高中性脂肪血症
13.3 混合性高脂血症
13.4 高密度リポタンパク(HDL)代謝異常症
13.5 LDL コレステロールと中性脂肪の低下を伴う異常症
14 プリン・ピリミジン・ヌクレオチド代謝異常症
14.1 プリン代謝異常症
14.2 ピリミジン代謝異常症
15 テトラピロール代謝異常症,ポルフィリン症
15.1 ポルフィリン症
16 先天性グリコシル化異常症(CDG)
16.1 タンパクN グリコシル化異常症
16.2 タンパクO グリコシル化異常症
16.3 脂質グリコシル化異常症/GPIアンカー生合成異常症
16.4 複数のグリコシル化経路異常症
17 複雑な分子の分解異常症―ライソゾーム病
17.1 スフィンゴ脂質分解異常症/スフィンゴリピドーシス
17.2 グリコサミノグリカン分解異常症/ムコ多糖症
17.3 糖タンパク分解異常症/オリゴ糖症
17.4 神経セロイドリポフスチン症
17.5 その他の複雑な分子の分解異常症
18 ビタミンおよび補因子の代謝異常症
18.1 プテリン(テトラヒドロビオプテリン)代謝異常症
18.2 コバラミンの吸収・輸送および代謝の異常症
18.3 葉酸の代謝と輸送の異常症
18.4 ビオチン代謝異常症
18.5 ビタミンB6(ピリドキサールリン酸)代謝異常症
18.6 その他のビタミン代謝異常症
19 微量元素・金属代謝異常症
19.1 銅代謝異常症
19.2 鉄代謝異常症
19.3 その他の微量元素・金属代謝異常症
20 神経伝達物質異常症
20.1 モノアミン神経伝達物質異常症
20.2 GABA代謝異常症
20.3 その他の神経代謝異常症
21 内分泌代謝異常症
21.1 インスリン制御異常症,先天性高インスリン血症
補 遺
有用なインターネット情報源
疾患に関連したデータベースと診断のための検査機関
ゲノム情報と変異データ
絶食中の遊離脂肪酸と3 ヒドロキシ酪酸
索 引
遺伝子名索引
救急医薬品(後見返し)
高アンモニア血症/その他/ビタミン・補因子類
ページの先頭へ戻る
序文
訳者改訂第3版 序
本書の原著名Vademecum Metabolicumを直訳すると「代謝必携」となる.その文字通り,これまで10か国語に翻訳され世界各国で活用されている.国内外には他にも先天代謝異常に関する優れた教科書やマニュアルがあるが,白衣のポケットに入れて携帯し,ベッドサイドで活用できるものは本書をおいてない.また,簡潔にして実践的なマニュアル本でありながら,随所に著者らの「哲学」が感じられる名著である.私たちは2006年に最初の邦訳本を刊行したが,幸い多くの読者の支持を得ることができた.
今回,原著が全面的に改訂・刷新され第5版となった.次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析の進歩に応じて各疾患の病因遺伝子がすべて記載され,遺伝子名からの索引も可能になった.多色刷りになったことで,代謝経路などの視認性が増している.原著の改訂に際しては,松原もアドバイザーとして助言を行った.例えば,シトリン欠損症については大浦敏博博士(仙台市立病院)による最新の診療指針が原著にも採用されている.この第5版の邦訳(改訂第3版)は,主に但馬剛(国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室長)が担当した.
本書が,代謝疾患を専門とする医師のみならずわが国の多くの医師にとって必携となり,ベッドサイドで活用されるとともに,多くの患者さんにとって福音となることを願っている.なお,細心の注意を払って推敲を重ねているが,薬剤の使用量などについては念のため成書や文献も合わせて参照されたい.
最後に,出版にご尽力いただいた診断と治療社編集部の土橋幸代,荻上文夫の各氏に深く感謝する.
2023年
訳者を代表して
松原 洋一
原著第5版 序
Vademecum Metabolicum(原著書名)第5版に前書きを執筆することを嬉しく思う.このたいへん有用な本書は,これまでにドイツ語,中国語,英語,ペルシャ語,フランス語,ハンガリー語,イタリア語,日本語,ポーランド語,ポルトガル語,ロシア語などの多くの原語に翻訳されている.本書が取り扱う範囲は,先天代謝異常症の分野とともに成長し続けてきた.と同時に,刊行当初の目標を遵守し,代謝異常症の診断と治療における系統的なアプローチを提供してきた.本書は今でも白衣のポケットに収まる大きさで,小児科や遺伝科の研修医に愛用されている.改訂によってその内容は最新のものとなり,とくにエネルギー代謝,脂質代謝,糖化,神経伝達物質,ビタミン代謝の異常について大きく刷新されている.多くの表にまとめられた体裁は,読者が論理的に診断を進めることができるようになっている.薬用量を含む適切な治療が記載されており,遺伝性代謝疾患の種々の診断と治療における均整のとれたアプローチに役立つものと考えられる.
米国カリフォルニア大学サンディエゴ校
ウィリアム・L・ナイハン
原著序文
先天代謝異常症は,そのすべてを合わせると約500人に1人の新生児が罹患するが,しばしば,遺伝性疾患の中の大きな一群で専門家のみが理解できるものとみなされている.このことは不幸なことであり,先天代謝異常症を特異的な診断アプローチと治療戦略を有する臨床的・生化学的に明確な一群の疾患として理解し,想起することは可能なはずである.多くの患児は急に発症し生命の危機にさらされるため,直ちに治療介入が必要となる.患児の予後は,迅速かつ特異的な治療に大きく左右される.拡大新生児スクリーニングと新しい治療法は,以前であれば進行性の障害や早期死亡が避けられないとされていた疾患においても,予後を劇的に変化させるようになった.このことを念頭に,これまで20年以上にわたり,本書は臨床医に実際的な手引きを提供することを目的としてきた.
分子生物学および生化学的技術の比類のない進歩によって,数多くの「新規」の病態が見出されてきた.その結果,この第5版は全面改訂・増補されたが,本書のコンセプトは不変である.前半のセクションは,代謝性疾患によって生じた可能性がある臨床症状や検査所見を呈する患者を診る医師の手助けとなるように工夫されている.詳細な実践的ガイドラインが提供されており,これらは多くの国における標準的診療を反映している.個々の代謝経路と関連する疾患を記載した後半のセクションは全面改訂されている.これまでと同様に重点が置かれているのは,疾患群全体に該当する臨床的特徴,病因遺伝子,有用な診断方法(基礎的および疾患特異的な診断検査),緊急対応と長期的治療の詳細である.遺伝形式は,特に記述されていない場合すべて常染色体劣性(潜性)である.記載順は,最近完成したInternational Classification of Inherited Metabolic Disorders(ICIMD)(www.icimd.org)によった.図はすべて新しく描き直した.すべてのタンパクは,固有識別のためその遺伝子の省略名で記載されている(*印は,関連する名称や別の番号を持つ複数の遺伝子が存在することを示している).多色刷りは複雑な経路のオリエンテーションに役立つことを願っている.本書に記載された疾患のほぼすべてにおいて遺伝的基盤が明らかにされており,基本的に,次世代シークエンスによってそのすべてを同定し,確認することが可能である.この手法は,その地域・施設での状況にもよるが,多くの場合に診断方法として選択されるようになってきている.したがって,診断方法の一手段としての遺伝子解析は,すでに自明のこととしてどこにも言及されていない.最初に遺伝子診断がなされたとしても,生化学的検査は依然として必須であり,新規の遺伝子変異の機能的影響を確認したり,機能的変化の度合いに関する情報を得ることができる.
これまでの版と同様,ゆるぎない継続的な支援を下さったNutricia Metabolics(フランクフルト)のBeate Szczerbak博士に大変お世話になった.Joachim OrtlebとThieme Verlag(シュトゥットガルト)社の同僚の,大変思いやりがあり先見の明のある専門的な助力にも深く感謝したい.創造的な討議とグラフィックデザインと版組みにおける不可欠の支援をしてくれたAnnette Zieglerに感謝する.
インスブルックとハイデルベルクにて
2020年11月
ヨハネス・チョッケ
ゲオルク・F・ホフマン