定評ある小児12誘導心電図の入門書を11年振りに改訂しました.5万人のサンプルから得られた正常値データから本書の内容を補足できるようにわかりやすく整理収載してあります.新しく小児の心電図を学ぼうとする初心者はもとより,最新データをもとに診断技術を磨きたいドクターにも役立つ内容になっています.
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目次
I 基礎編
1.小児心電図の意義
2.小児心電図のとり方
A. 泣かさない工夫
B. 鎮静剤投与
C. 小児電極の使用
D. なるべくフィルターを使用しない
3.心電図波形の成り立ち
A. 心筋細胞の活動電位
B. 興奮の伝播
C. 刺激伝導系
D. 不応期
4.小児の発達と心電図波形の変化
A. 出生直後の循環動態の変化
B. 体型や胸郭の変化に伴う心電図波形の変化
5.小児心電図波形の特徴と正常値
A. 心拍数
B. P波(P波の心電図)
C. PR(PQ)時間
D. QRS波
E. ST部分
F. T波
G. QT時間
H. U波
I. 正常心電図
J. 心電図心室肥大判定基準
K.児童生徒の新しい基準値と肥大基準
II 臨床編
6.先天性心疾患の心電図所見
A. 心房中隔欠損症 Atrial septal defect
B. 心室中隔欠損症 Ventricular septal defect
C. 動脈管開存症 Patent ductus arterisus
D. 房室中隔欠損症(心内膜床欠損症)
Atrioventricular septal defect(Endocardial cushion defect)
E. 肺動脈狭窄症 Pulmonary stenosis
F. 大動脈弁狭窄症 Aortic stenosis
G. エプスタイン奇形 Ebstein’s anomaly
H. ファロー四徴症 Tetralogy of Fallot
I. 両大血管右室起始症 Double outlet right ventricle
J. 修正大血管転位症 Corrected transposition of the great arteries
K. 三尖弁閉鎖症 Tricuspid atresia
L. 純型肺動脈閉鎖症
Pure pulmonary atresia(Pulmonary atresia with intact ventricular septum)
M. 完全大血管転位症 Complete transposition of the great arteries
N. 総肺静脈還流異常症
Total anomalous pulmonary venous return
O. 心奇形を伴わない右胸心(鏡像右胸心)
Mirror-image dextrocardia
7 後天性心疾患の心電図
A. 肥大型心筋症 Hypertrophic cardiomyopathy
B. 拡張型心筋症 Dilated cardiomyopathy
C. 急性心筋炎 Acute myocarditis
D. その他の疾患
8 不整脈
A. 上室性不整脈
B. 心室性不整脈
C. 脚ブロック
D. 房室伝導障害
E. 副伝導路症候群
F. QT延長症候群
G. Brugada症候群
H. 早期再分極症候群(J波症候群)
I. QT短縮症候群
J. ペースメーカーリズム
索 引
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序文
はじめに
近年,小児循環器学の領域では,先天性心疾患の診断において心電図より心エコー検査などが優先されることが多くなった.しかし心電図からも多くの情報が得られ,有用な検査であることを忘れてはならない.もちろん,不整脈の診断や治療には心電図が欠かせないことは言うまでもない.また学校心臓検診では心電図が心疾患発見の第一歩となることも少なくない.
2010年,若手医師や医療従事者の入門のために「小児心電図」を上梓したが,予想以上に好評とのことで4年後に改訂・改題版を発刊した.最近さらに出版社から改訂を依頼されたが,浅学非才の筆者にはすべてを書き改めることはできないと考え,長らくペンディングになっていた.
ところで,小児の心電図正常値に関しては30年前に大國眞彦先生らが出版されたが,その後,新しく検討されてこなかった.そこで心電図に造詣の深い小児循環器の先生方とともに小児心電図研究委員会を発足させ,約5万という膨大な数の健康児童生徒の心電図を検討し,10年近く費やし,2020年3月に「学校心臓検診のための小児心電図正常値ガイドブック」を発行することができた.また,そのデータを参考にして日本小児循環器学会心臓検診委員会の先生方とも検討し「学校心臓検診2検診対象抽出のガイドライン─1次検診の心電図所見から」を改訂上梓した(2019年).
そうした中,拙著「小児心電図」も一部変更が必要と考えるに至り,「学校心臓検診のための小児心電図正常値ガイドブック」からデータの一部を引用させていただき,不足ながら改訂作業を行なった次第である.詳細なデータは上記正常値ガイドブックにあるので,さらに関心のある方は是非ご高覧いただきたい.
なお,波形名については日本不整脈心電学会の心電図自動診断エキスパートコンセンサスステートメントに準じたが,今まで使用され慣れているものは括弧内に示した.
また,不整脈に関して最近の知見を一部追加したが,さらなる詳細な内容は不整脈の専門書をひもといてほしい.
本書も参考にして,さらに心電図の奥深さに触れ,診療・研究に役立てていただきたいと願っている.
2022年12月
著者