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書籍詳細

ダウン症のある子どもの離乳食から食事へ診断と治療社 | 書籍詳細:ダウン症のある子どもの離乳食から食事へ
食べる機能を育てるために

大阪医科薬科大学小児科名誉教授

玉井 浩(たまい ひろし) 監修

日本ダウン症療育研究会摂食指導ワーキンググループ 編集

初版 B5判 並製 104頁 2023年08月04日発行

ISBN9784787826008

定価:2,530円(本体価格2,300円+税)
  

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ダウン症のあるお子さんの離乳食、食事はどうやって進めていけばよいか?そんな家族の悩みに答える,ダウン症のあるお子さんの特性に配慮した実践的な解説書.家族からよく受ける相談,困りごとをまとめたQ&A,また巻末付録には成長曲線も掲載.お子さんや家族を支える医師,看護師,栄養士など医療従事者や,保育士をはじめとする養育関係者、さらには教育関係者にも手に取って役立てていただきたい1冊です.

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目次

刊行にあたって  玉井 浩 
はじめに  小野正恵 
執筆者一覧

1 食べる機能を知るための実習
 ①どうして大人の食べ方を確認するのでしょう?  ②食べて確認してみましょう!
2 ダウン症のある子どもの特徴
 ①からだの特徴  ②発育・発達の特徴  ③合併症
3 食事の際の座らせ方,椅子の準備
 ①食べる姿勢と椅子  ②机と椅子の関係と座り方  ③その他の食事環境
4 離乳食・食事の進め方
 ①哺乳期  ②離乳食初期  ③離乳食中期  ④離乳食後期
 ⑤離乳食完了期  ⑥幼児期から学齢期の食事  ⑦青年期・成人期以降の食事
5 食具の選択と使い方
 ①離乳食期に使う食具の種類  ②各離乳食期の食具の選択  ③自分で食べる力を育てる
6 水分摂取
 ①水分代謝  ②必要水分量  ③体調不良時の水分摂取
7 栄養と食材
 ①各栄養素の働き  ②うちの子は何歳くらいの体重なの?  ③目安量はこのくらい
8 摂食Q&A
 ①哺乳瓶
  Q1 母乳は飲めますが,哺乳瓶では上手に飲めずすぐに口を外してしまいます.
   春から保育所に行くのですが,哺乳瓶が使えないとミルクが飲めず心配です
  Q2 たくさん食べるようになってきましたが,ミルクが大好きでなかなかやめられません.
   哺乳瓶は長く使い続けるとよくないって本当でしょうか?
 ②離乳食の開始
  Q3 6か月を過ぎましたが,からだの発達がゆっくりで首もすわっておらず,離乳食を始める気になれません.
   からだがしっかりしてくるまで待ってもよいでしょうか?
  Q4 生後5か月です.親が食べていると,じっとみて口を動かしています.
   まだ首はすわっていませんが,離乳食を開始してもよいでしょうか?
  Q5 鼻からチューブを入れてミルクを飲んでいます.そろそろ口から食べたり飲んだりする練習をしたいの
   ですが,哺乳瓶やスプーンを入れると嫌がります.どのように進めていけばよいでしょうか?
 ③摂食機能の発達
  Q6 口蓋裂があります.今は特別な哺乳瓶を使ってミルクを飲む練習をしていますが,今後私たちと同じように
   食べられるようになるのか不安です.
   手術をしたらほかのお子さんと同じように食べられるようになりますか?
  Q7 スプーンを口の奥に入れないように,また,一口量が多くなりすぎないよう気をつけて食事をあげようと
   すると,時間がかかってあまり食べられません.それでも,正しい方法であげたほうがよいですか?
   体重があまり増えていないので心配です
  Q8 咀嚼は上手になってきましたが,飲み込むときに舌を出しているのが気になります.
   どのように対応すればよいでしょうか?
  Q9 スプーンを舌で押し出してきます.食べたくないのでしょうか?
  Q10 中期食からなかなか後期に進めません.咀嚼を練習しましょうといわれるのですが,どのようなもので
   練習するとよいでしょうか?
  Q11 おかずは噛んで食べるようになりましたが,ご飯はいつまでたっても丸のみです.
   ご飯の咀嚼はどうやって練習したらよいでしょうか?
  Q12 5歳になりますが,生野菜は小さく刻まないと食べられないし,硬いものは口から出してしまいます.
   いつになったら家族と同じものを食べられるのでしょうか?
  Q13 歯茎で上手に噛んでいますが,なかなか奥歯が生えてきません.保育所から,そろそろ完了食に
   移行してはどうかといわれるのですが,大丈夫でしょうか?
  Q14 離乳食を始めて2か月経ちましたが,全く受けつけません.せっかく準備しても食べてくれないので,
   もう少し大きくなるまで離乳食をやめてもよいでしょうか?
  Q15 上手に唇を使ってスプーンから取り込めるようになったと思っていたのに,自分で食べるようになったら,
   また口の奥にスプーンを入れるようになってしまいました.
   一度できたのに,できなくなることはあるのでしょうか?
 ④食事の内容
  Q16 赤ちゃんの頃はなんでも食べていたのに,3歳を過ぎた頃から決まったものしか食べなくなりました.
   今では,納豆ご飯,うどん,ポテト,唐揚げくらいしか食べません.一生このままかと不安です.
   どうしたらよいでしょうか?
  Q17 ご飯とお肉はよく食べますが,野菜はお味噌汁などスープに入っているものしか口にしません.
   特にサラダを嫌がります.どうしたら野菜を食べてくれるでしょうか?
  Q18 11歳の女の子です.貧血で鉄分の錠剤を処方されています.薬を飲まず食事で鉄分を摂るには,
   レバーやほうれん草などがよいといわれましたが,どちらも苦手で困っています.
   ほかにどのような食材がよいでしょうか?
  Q19 15歳の男子です.中等度の肥満に加え,血液検査の結果,尿酸値が高すぎると指摘されました.
   運動のほか食事にも気をつけるようにいわれましたが,食べ盛りなので食事量を減らすのはかわいそうです.
   どうすればよいでしょうか?
  Q20 40代男性,最近,以前にもまして頑固な面が目立つようになってきました.食べ物にこだわりがあり,
   ご飯など炭水化物ばかり食べようとします.肥満を指摘されているため,ほかのものも食べるように促すの
   ですが,怒ってしまいせっかくの食事時間が楽しくないのが悩みです.どう介入したらよいでしょう?
  Q21 市販の離乳食の本をみると,月齢ごとに食べられる食材などが掲載されていますが,ダウン症のある子も,
   食形態さえ気をつければ,同じように食べてもよいものでしょうか?
  Q22 食べることが大好きでよく食べます.なくなると泣いて怒るのですが,どこまであげたらよいのか
   わかりません.泣いてもあげないほうがよいのでしょうか?
  Q23 食事の量が増えず,体重も増えません.無理に食べさせることもできないため困っています
  Q24 バナナが大好きでよく食べます.子どもは喜ぶし,親も便利なため欲しがるだけ食べさせてしまいます.
   毎食1本食べるのですが,やはり多すぎるでしょうか?
  Q25 20代女性です.作業所には徒歩で通っていますが,帰り道に喫茶店に寄り,甘いカフェラテを注文する
   ことを覚えてしまいました.ほとんど運動もしないせいか,カフェラテを飲み始めてから少しずつ体重が
   増えています.どうしたらよいでしょうか?
  Q26 30代女性で,通所施設に通っています.座ったままの仕事が多く,運動が足りていません.
  お弁当が出るので楽しみにしているのですが,一人だけ内容を減らすわけにもいかず,肥満傾向が心配です
  Q27 市販の離乳食はよく食べますが,手作りのものは食べてくれません.市販のベビーフードばかりあげても
  大丈夫でしょうか?
 ⑤水分摂取
  Q28 お茶やお水など,ミルク以外の飲み物を嫌がります.ジュースなら少し飲むのですが,夏の水分補給に
   ジュースをあげてもよいでしょうか?
  Q29 コップを練習中ですが,夏の外出では水分補給しやすいようにストローマグを使っています.
   ストローでは,舌を出して哺乳瓶のように飲んでいます.やっぱりよくないでしょうか?
  Q30 離乳食初期のペースト食を食べています.離乳食ではむせませんが,スプーンでお茶やスープを
   飲ませるとよくむせます.お茶やスープはあげないほうがよいでしょうか?
 ⑥自分で食べる
  Q31 手づかみ食べを始めてから半年経ちますが,いまだにスプーンやフォークを持ちたがりません.
   手づかみ食べはやめさせたほうがよいのでしょうか?
  Q32 そろそろ手づかみ食べをしてほしいのですが,自分から手を伸ばしたり,触ろうとしたりしません.
  どうしたらよいでしょうか?
  Q33 スプーンやフォークを練習させたいのですが,いつから始めたらよいでしょうか?
  Q34 自分で食べようとせず,食べさせてもらうのを待っています.このまま食べさせていて,いずれ一人で
   食べられるようになるのでしょうか?
 ⑦摂食指導
  Q35 ダウン症があったら,必ず摂食指導を受けないとだめですか?
  Q36 摂食指導で通っている病院のSTと,通所している療育施設のSTで,食べさせ方の指導が異なっています.
   どちらを信じたらよいのか混乱しています
  Q37 離乳食中期の押しつぶし食を1日に3回食べています.療育の摂食指導を2~3か月に1回受けていますが,
   なかなか形態が進まず不安です.もっと摂食指導を受けたほうがよいでしょうか?
 ⑧食事の環境
  Q38 まだまだ介助が大変なため,子どもだけ先に食べさせ,親は後で食べています.家族一緒に食事をした
   ほうがよいのでしょうか?
  Q39 食に興味がなく,あまり食べたがりません.DVDやスマホで動画をみせると口を開けるので,
   いつもみせながら食べさせていたら,動画をみせないと怒って食べないようになりました.
   食べなくても,みせないほうがよいでしょうか?
 ⑨気になる行動
  Q40 機嫌よく遊んでいるときに,よく舌を出しています.年齢ととも舌を出さなくなっていくのでしょうか?
  Q41 テーブルに手を伸ばしお皿やコップを投げたり倒したりします.叱っても効果がありません.
   どうしたらよいでしょうか?

付録1 ダウン症のある子どもの成長曲線
 0~36か月
 0~18歳
付録2 歯の成長の記録
付録3 離乳食の記録

参考文献
摂食Q&Aキーワードindex

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序文

刊行にあたって

本書は日本ダウン症療育研究会に設置されています,言語聴覚士(ST)分科会有志メンバーによって作成されたもので,咀嚼の基本的な発達過程を知り,それに合わせた食事の形態を考えていくものです.低緊張のため,哺乳力が弱いだけではなく,口唇を閉鎖する力も弱く,舌も突出しやすく,また咀嚼の発達自体もゆっくりで丸呑みしてしまいやすいため,ダウン症のあるお子さんを育てている家族にとって,離乳食や食事の進め方に悩まれている方は多いようです.離乳食の形態などはゆっくり進めるように指導はされますが,赤ちゃんによっては食べ終わるまで時間のかかるお子さん,逆に食欲旺盛なお子さんもいて,工夫が必要です.実際にどのように進めたらよいのか,具体的なことを,イラストを使ったり,わかりやすく説明している解説書,特にダウン症のあるお子さんの特性に配慮して説明されているものをぜひ届けたいという熱意で本書は書かれました.
一般の離乳に関する本は,乳児から幼児の初期くらいまでを対象にしていますが,将来の成人になってからの食べ方の基本はこの乳幼児の時期に決まることが多く,とても大切です.
さらに,Q&Aでは成人になってからの食に関する悩みについても解説していますので,「ダウン症のある方のための食に関する総合支援ガイド」といってもよいのではないかと思います.
健常のお子さんに比べ,ゆっくり育つことはわかっていても,どうしても他のダウン症のあるお子さんと比べてしまいます.将来の咀嚼機能の発達を支えているのは,いかにこの乳幼児期の離乳食・食事の食べ方を丁寧に観察・指導していくかですから,根気良くやっていきましょう.
多くのダウン症のあるお子さんにとって本書がその助けとなること,そして,ご家族が安心して食事を楽しむことができるようになっていただければ,それは望外の喜びです.

2023年6月

日本ダウン症療育研究会 会長
大阪医科薬科大学小児科 名誉教授
玉井 浩


はじめに

ダウン症のあるお子さんの離乳,そして食事の進め方については,お困りの方も少なくないと思われます.ご家族だけでなく,医師,看護師,栄養士などの医療関係者,そして保育士や教育関係者も含む,お子さんを取り巻くすべての方に,わかりやすい,実践的な指導書があれば,お役に立てるのではないかと考えました.
一般的な栄養摂取の基準や離乳食の進め方について書かれた手引書はたくさんありますが,月齢や体重だけで,そのまま当てはめることはできません.ダウン症のあるお子さんでは体格が小さい傾向にあり,また合併症治療が行われている場合もあります.さらに乳児期は哺乳力も弱く,唇をしっかり閉じる力も弱いです.首のすわりも遅く,いつからどのように離乳食を開始したらよいのか,どんな介助の仕方が望ましいのか,一つひとつ不安に思われることでしょう.
日本ダウン症療育研究会では,所属する言語聴覚士(ST)の有志を中心に構成した摂食指導ワーキンググループで,わかりやすく具体的な記述を心がけた指導書を作成することとしました.日常的にダウン症のあるお子さんに接し,ダウン症ならではの共通点,そして個人差,よく聞かれる質問など,同様の体験を重ねており,それらの経験を還元できればと思います.
定型発達児の月齢に合わせた離乳食の進め方で問題ないお子さんもいますが,当てはまらないお子さんが圧倒的に多いのが現状です.障害児対象の摂食指導書では専門職以外の利用は難しいと思われますので,やさしく書かれた本書を活用し,楽しく食事ができますようにと願っています.
愛情に溢れていても,食べてくれない,飲んでくれない,大きくならないと眉間に皺を寄せてため息をつきながら食べさせるのでは,お子さんも楽しくなれませんね.お子さんを取り巻く周囲の方々,どうか肩の力を抜いて,まずは「食べることは楽しいこと」をお子さんに伝えましょう.少しぐらい食べる量が少なくても,離乳が遅れても,まずは楽しい時間にしましょう.栄養内容,食事の介助方法など,お子さんの特徴を踏まえて,月齢や発達状況をみながら少しずつ修正していきましょう.
今回,私たち摂食指導ワーキンググループは,お子さんそれぞれの心身の発達に合わせ,無理なく十分に栄養が摂れること,生涯にわたり安全に美味しく食べる口の機能を育てることを目標に,介助の方法や食形態の目安,用具の選び方などをまとめました.さらに,私たちがよく受ける相談,ご家族や保育者の困りごとを,Q&Aの形でまとめました.どうぞご参考にしてください.
食事に関して悩むときは地元の発達センターや訪問リハのST担当の方,小児科医や歯科医,栄養士等の専門家が対応してくださると思いますが,相談相手によって少し指導に違いがあると感じるかも知れません.私たちも意見を擦り合わせ,共通認識を持つことのできた内容を記載しています.おおむね,どなたにも同意していただける基本としてご理解いただけますと幸いです.
さあ,楽しいお食事時間にしましょう!

2023年6月

よつばみらいクリニック 院長
東京逓信病院小児科
小野正恵