紹介状は語る―.血液内科専門医が紹介状を読んでから診断へ至るまでの過程を,超リアルな37のコンサルト事例で解説!
血液疾患は多種多様な症状・症候・所見をきたし,多くは血液内科以外を受診,診断されますが,では血液内科に紹介後,患者はどのように診断され,どのような治療経過,転帰であったのか?非血液専門医,ジェネラリストに必要な血液疾患全体のオーバービューが得られる1冊.
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目次
はじめに
本書のマエセツ
略語一覧
基準値一覧
PART 1 痛み
基本のキ 痛み
【胸痛】胸痛を主訴とし血液検査異常を認めた51歳男性
【腹痛】1か月の経過後にCTで異常を認めた腹痛を主訴とする49歳男性
【頭痛①】頭痛に続いて運動障害が出現した38歳女性
【頭痛②】頭痛を主訴として副鼻腔腫瘍を認めた65歳男性
【腰背部痛①】49歳男性の椎骨多発性骨折による腰痛
【腰背部痛②】腹部触診で腫瘍を認めた腰痛を主訴とする72歳女性
●ここまでのまとめ
PART 2 発熱
基本のキ 発熱
【不明熱】1か月前から続く不明熱
【汎血球減少】発熱を主訴として汎血球減少を認めた58歳男性
【リンパ腫疑い】リンパ腫が疑われて紹介された発熱が続く31歳男性
●ここまでのまとめ
PART 3 神経系の症状
基本のキ 神経系の症状
【失神】失神をきたした77歳男性
【倦怠感】35 歳女性の倦怠感
【しびれ】しびれを訴え汎血球減少を認めた72歳男性
【意識障害①】縦隔腫瘍を認める患者の意識障害
【意識障害②】脳出血を合併した血友病患者
●ここまでのまとめ
PART 4 喉の症状
基本のキ 喉の症状
【悪性リンパ腫疑い】悪性リンパ腫が疑われて紹介された若年男性
【扁桃腫大】喉の症状が持続して受診した52歳男性
●ここまでのまとめ
PART 5 循環・呼吸器系の症状
基本のキ 循環・呼吸器系の症状
【呼吸困難①】弁形成術後の左大量胸水貯留
【呼吸困難②】腎性貧血による呼吸困難が疑われた72歳男性
【浮腫】35歳男性の浮腫,貧血,肝障害
【動悸】著明な貧血により動悸を訴え受診した73歳男性
●ここまでのまとめ
PART 6 消化器系の症状
基本のキ 消化器系の症状
【消化管出血】胃悪性リンパ腫からの出血
【黄疸】黄疸と貧血
【脾腫】脾腫を認め溶血性貧血を疑われた74歳男性
●ここまでのまとめ
PART 7 腎・尿路系の症状
基本のキ 腎・尿路系の症状
【肉眼的血尿】肉眼的血尿と血球減少を認めた32歳男性
【急性腎不全】急性腎不全と高カルシウム血症を認めた74歳女性
●ここまでのまとめ
PART 8 皮膚・皮下組織の症状
基本のキ 皮膚・皮下組織の症状
【皮疹】網状の皮疹を認めた76歳男性
【皮下出血】24歳女性の皮下出血と血小板減少
【(頸部)リンパ節腫脹①】32歳女性の発熱と頸部リンパ節腫脹
【(頸部)リンパ節腫脹②】東南アジア出身女性の頸部リンパ節腫脹
【(頸部)リンパ節腫脹③】71歳男性の硬い頸部リンパ節腫脹
●ここまでのまとめ
PART 9 血液検査異常
基本のキ 血液検査異常
【貧血】72歳女性の鉄欠乏性貧血
【赤血球増多(多血)】脳梗塞を合併した多血症
【白血球減少】健康診断でみつかった白血球減少
【白血球増多】健康診断でみつかった白血球増多
【血小板減少】5年前から徐々に進行した血小板減少
【血小板増多】手指のしびれと血小板増多
【汎血球減少】進行性の汎血球減少
●ここまでのまとめ
文献一覧
索引
著者略歴
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序文
日常の臨床の場においては,健康診断や他の機会に行った血液検査で異常を指摘されたり,手にした検査結果に“H”や“L”などの異常値を示す表示を見つけたりした場合以外で,患者さん自身が血液疾患を考えて血液内科を受診するケースはほとんどありません.血液疾患と診断される場合の大部分は,患者さんが何らかの症状・症候のために最初に血液内科以外の診療科(非血液専門医,ジェネラリスト)を受診して診断されます.血液疾患のテキストには,血液疾患の症状・症候として,貧血,リンパ節腫大,出血傾向,発熱くらいしか扱われていないことが多いですが,実際には血液疾患は非常に多彩な症状・症候・所見をきたし,患者さんは様々な症状・症候により受診されます. この本だけで血液疾患による多彩な症状・症候・所見のすべてを網羅することは不可能ですが,多彩な症状・症候・所見からどのように血液疾患を考える手掛かりを見つけてアプローチするかについてを,非血液専門医,ジェネラリストの先生方に実際の臨床の現場に近い形で提供して,ブラッシュアップの参考としていただくことをコンセプトとしてこの本は企画されました.このコンセプトのために,ジェネラリストの先生方が症状・症候を基に診察し,所見としてとらえて考えられたことを紹介状として提示することからスタートし,血液専門医が紹介状を読んだ時点から診断にいたるまでの過程,考え方を実際の診療の流れに沿って記載しました.
血液内科に限ったことではありませんが,患者さんを専門診療科に紹介すると,紹介先から速やかに患者さんが受診されたことと,「今後精査して…云々」という簡潔な報告と,紹介への謝辞が書かれた返事が届くと思います(場合によって院長名での受診報告だけのこともありますが…).しかし,その後精査により確定した診断や治療経過,転帰などについて報告があることは,自戒を込めて書いていますが,決して多くはないと思います. 特にその後紹介先でフォローされる場合は,紹介した患者さんが「紹介後に結局どうなったか」を紹介された先生方が知る機会は必ずしも多くなく,むしろ少ないのではないかと思います.この本は,患者さんを紹介した後に,血液内科医がどのように考えてアプローチをして診断し対応したかについて,そのアプローチは必ずしも一つでないこともありますので適切な表現ではないかもしれませんが,紹介状の「答え合わせ」として確認することで,様々な症状・症候・所見により受診する血液患者さんのアプローチと血液疾患のエッセンスを解説したテキストです.
これらの内容は,診断と治療社から上梓し,幸いなことにご好評をいただいている,『血液検査×総合診療 非血液専門医・ジェネラリストのためのBasic & Practical血液診療』の「Part B 臨床症状からのアプローチ」を補完して,非血液専門医,ジェネラリストの先生方の日常診療により即したものとなっています.したがって,ご自分で患者さんを血液専門医に紹介する立場にある非血液専門医,ジェネラリストの先生方がこの本のメインの対象ですが,内容はジェネラリスト以外の多くの診療科の先生方,および臨床研修中あるいは研修後で血液疾患に触れる機会の少なかった(少ない)先生方にも,日常診療で役に立つ内容になっていると思います.また,これまでとはかなり違うアプローチによる血液疾患のテキストですので,血液専門医や血液専門医を目指す先生方にも参考にしていただけるものと思います.
この本は,いつも真摯にプロフェッショナルとして診療に当たられ,患者さんをご紹介いただいている多くの先生方に負うところが極めて大きいです.先生方なくしてこのような本が生まれることはありませんでしたし,先生方からはいつも多くのものを学ばせていただいております.ご迷惑をおかけしたことも多々あったことと存じます.ここでお詫び申し上げるとともに深謝いたします.そして,至らない部分も多々あったはずですが,信頼して診療を担当させてくださり,言葉に尽くせない貴重な多くのものを与えてくださった患者さんたちに深く感謝いたします.
最後になりましたが,刊行にあたり大変お世話になった診断と治療社編集部の坂上昭子さま,そして前作から引き続き企画から刊行まであらゆる面でサポートしていただいた企画部の小室裕太郎さまに深く感謝いたします.
2023年3月 桃の節句に
獨協医科大学埼玉医療センター輸血部 部長
樋口敬和