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書籍詳細

運動器の身体診察(フィジカル)×エコー超入門診断と治療社 | 書籍詳細:運動器の身体診察(フィジカル)×エコー超入門 動画

東京先進整形外科 院長

面谷 透(おもだに とおる) 編集

初版 A5判 並製 324頁 2024年06月05日発行

ISBN9784787826039

定価:7,150円(本体価格6,500円+税)
  

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身体診察から患者さんの病態の推定・絞り込みを行い,エコーを活用して診断・治療を行うというエコー初学者〜中級者が身につけておきたい実践的なスキルを現場の臨床に役立つ様々なエコー動画やテスト動画などのWeb動画を紹介しながらわかりやすくまとめました.
これから運動器疾患のエコー診療に携わる医師をはじめとした多くの医療関係者にとって必携の入門書です!

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目次

刊行にあたって
執筆者一覧
動画再生方法

Part 1 総 論 ―運動器における身体診察×エコーの基礎―

A 運動器の身体診察の基本
1.問診 視診 触診 酒井瑛平
2.徒手検査 橋口直史
3.神経診察 深澤真弓
B 運動器の身体診察におけるエコーの基本
1.エコーが楽しくなるかも? 超音波診断装置の仕組みと上手な
使い方を学ぼう 松崎正史
2.画面のみかたと調整方法,エコーを行う際のセッティング
佐々木克幸
C 運動器エコーの正常像と異常像の基本
1.骨,軟骨,関節包 加地卓万
2.靱帯 岩田秀平
3.筋肉 赤嶺尚里
4.腱 山田和矢
5.神経 小野健太郎

Part 2 各 論 ―運動器における身体診察×エコーの活用―

A 頚部 都竹伸哉
B 肩関節 山田唯一
C 肘関節 山田唯一
D 手関節 樫山尚弘
E 手部 長谷川英雄
F 腰部 片山裕貴
G 股関節 石塚光太郎,上村公介
H 殿部 高田知史
I 膝関節 下崎研吾
J 足関節 都甲 渓
K 足部 勝谷洋文

Part 3 ケース紹介 ―運動器における身体診察×エコーの実際例―

A 症例1 頚部 前田 学,前田奈々
B 症例2 肩関節 岩本 航
C 症例3 肘関節 木島丈博
D 症例4 手関節 面谷 透
E 症例5 手部 岩倉菜穂子
F 症例6 腰部 岩﨑 博
G 症例7 股関節 濱田博成,宇都宮 啓
H 症例8 殿部 錦野匠一,山本浩貴
I 症例9 膝関節 後藤和海
J 症例10 足関節 松井智裕
K 症例11 足部 岡田洋和

索 引

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序文

刊行にあたって

 X線画像を中心とした整形外科診療を行っていた私にとって,エコーとの出会いは衝撃的なものでした.体内がその場で可視化され,正確なエコーガイド下注射を行えるようになったことに対する興奮は今でも忘れられません.それまでの疑問点が次々と明らかにされていく体験は大変刺激的で,脳内に火花が散るような感覚を毎日味わっていました.
 一方で,エコーが使えるようになったからこそ,うまくいかないことも増えてきました.X線画像やMRIはもちろん,エコーでも明らかな異常所見がない患者さんがいかに多いかということがわかりました.患側と健側で画像を比較して,「ここがちょっと高エコーになっているかな…」「ここの組織の動きがちょっと悪いかもしれない…」といった「異常」な所見を自分で作り上げて,患者さんの痛みの理由や,注射を打つ目的を自作していたように思います.当然,確固たる裏付けがない診療ですので,安定した結果を出すことは困難でした.
 私がこの状況から脱することができたのは,2018年に移籍した船橋整形外科病院で菅谷啓之先生(現 東京スポーツ&整形外科クリニック 院長)の診療に入らせていただく機会を得てからでした.菅谷先生の外来には肩・肘を中心とした上肢系の患者さんが連日多数受診されます.菅谷先生は,どれだけ外来が混んでいようとも,丹念に一人ひとり身体所見を取られていました.身体診察の内容は診察部位や病態によってフォーマット化されており,基本的には常に患側と健側をチェックされておられました.そして,角度やテストの結果等を必ずカルテに記録します.
 はじめのうちはその理由もよくわからないまま,菅谷先生の診察を真似てひたすら可動域やテストを健側・患側とも取り続けました.しばらくすると,特定の症状を訴える患者群では特定の可動域が減少したりテストが陽性になったりすることが,手に取るようにわかってきました.また,毎回欠かさず身体所見を取り続けることで,一人の患者さんの中での変化を正確に把握できるようになりました.画像で明らかになるような構造的な異常だけではなく,画像化されない機能的な問題が存在することを実感・理解できるようになりました.
 患者さんが機能的な問題をもっていると確認できた場合,理学療法士の先生にリハビリテーションを依頼します.しばらくすると機能的な問題が改善し,初診時にみられていた可動域制限や陽性であったテストが正常化・陰性化し,症状の改善やスポーツ復帰に至る,という治療経過をたどることが一般的でした.
 ここで一つの疑問が湧きました.可動域が改善したりテストが陰性化することが症状の改善・スポーツ復帰への必要条件なのであれば,可動域やテストを注射で即時的に改善・陰性化させることができれば,どうなるのだろうか.もしそれが可能であれば,短期間での症状改善・復帰があり得るのではないか,という仮説をもつに至りました.
 注射を行う場所は,画像的な異常所見がみられる部位ではなく,身体所見の結果から異常があると想定される部位としました.たとえば,肩関節痛を有する患者さんに対しては,肩甲上腕関節の可動域を評価するためのCAT(combined abduction test)とHFT(horizontal flexion test)を行います.前方挙上の可動域制限を意味するCATは,相対する肩下方の広背筋の硬さを反映しているのではないかと仮説を立て,広背筋を支配する胸背神経をターゲットとしたハイドロリリースを打つことにしました.また,水平内転の可動域制限を意味するHFTは,相対する肩後方の三角筋・小円筋の硬さを反映しているのではないかと仮説を立て,三角筋・小円筋を支配する腋窩神経をターゲットとしたハイドロリリースを打つことにしました.これらの注射を打つと,即時的にCAT・HFTが改善する症例が非常に多いということがわかりました.また,痛みがあった動作が楽に行えるようになったり,スポーツ時の痛みの改善もみられました.人によってはその注射の効果が長く保たれるわけではなかったり,リハビリテーションの併用が必要であったりと,必ずしも注射単独で根本的な解決に結びつくわけではありませんが,自身の仮説には大きな間違いがないであろうと思うに至りました.
 現在も,診察の際に最も重視している項目は身体所見です.画像的にいくら異常があろうと,その逆に異常がなかろうと,身体所見から病態の仮説を立て,それに対して注射などの各種インターベンションやリハビリテーションによって症状の改善を試みるという検証ベースのスタンスは一貫しています.エコーはあくまで手段であり,目的ではありません.エコー画像や注射の手技ばかりに気を取られ,短絡的な思考で病態推測や注射を行っていた自分は,エコーそのものが目的化していた悪い例でした.
 この度は,こうした私自身の気づき・学びを書籍にする機会をいただきました.本書は全身の身体所見とエコー診療をともに網羅する,というコンセプトの斬新な内容です.身体所見から患者さんの病態の推定・絞り込みを行い,エコーを活用して診断・治療を行うというスキルを一人でも多くの方が身につけることができると幸いです.
 最後に,本書の執筆を快く引き受けてくださった先進整形外科エコー研究会(SMAP)の世話人およびお世話になっている関係者の先生方,Part3をご執筆くださいましたエキスパートの先生方,そして書籍の作成に根気強く付き合ってくださった診断と治療社の吉田様・土橋様・島田様にこの場をお借りして御礼を申し上げます.
2024年4月

東京先進整形外科 院長
面谷 透