『基礎篇』『実践篇』の2分冊だったテキストを,1冊にまとめて大幅改訂!小児アレルギーエデュケーター(Pediatric Allergy Educator:PAE)認定制度の基礎講習に準拠し,アレルギー疾患の基礎知識から患者教育の指導技術まで,PAEに求められる内容をスペシャリストがわかりやすく解説している.理解を助けるサイドコラムや図表も満載.PAEを目指す看護師,管理栄養士,薬剤師に必携の書.
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目次
改訂第4版 刊行によせて 亀田 誠
改訂第4版 はじめに 伊藤 浩明
執筆者一覧
第Ⅰ章 患者教育総論
1 小児アレルギーエデュケーターに求められる能力と活動範囲 益子 育代
2 患者教育の基本的理解 益子 育代
A アドヒアランスとその阻害要因
B 患者教育を行うための基礎的理論
C 患者教育に役立つコミュニケーションスキルと指導技術
3 患者教育の目的 益子 育代
A 患者教育の目標
B 患者教育の対象
C 患者・家族とのパートナーシップの確立
D 治療目標の共有化
E アドヒアランスの向上
4 アドヒアランスのアセスメントと対応 益子 育代
A 認識不足により実行できないノンアドヒアランス
B 治療に対する心理的抵抗によるノンアドヒアランス
C 治療に対する負担が強いためのノンアドヒアランス
D 治療スキル不足
E 悪化因子の探索と対策
F 治療行動に対する自己効力感の強化
G 支援体制の調整
H 治療中断の防止
5 患者の自己決定支援 金子 恵美
A 患者と医療者の共同意思決定(SDM)
B 新規治療を導入する場合(自己注射を含む)などの支援
C 研究的な治療(経口免疫療法など)の開始
D 治療の継続・最終目標に対する自己決定
6 発達段階に応じた指導 田阪 祐子
A 乳児期
B 幼児期
C 学童期
D 思春期
E 成人移行
F 利用できる理論・ツール
第Ⅱ章 アレルギーの基礎知識
1 アレルギーの説明に必要な免疫の知識 二村 昌樹,井上 祐三朗
A アレルギーとは
B 自然免疫と獲得免疫
C アレルギー反応
D アレルギーにかかわる細胞や液性因子
2 アレルギーの疫学 吉田 幸一
A アレルギー疾患の発症・寛解
B 疫学調査デザイン
C わが国におけるアレルギー疾患の疫学調査
D アレルギー疾患での死亡
E アレルギー疾患有病率・期間有症率の経年的変化
F 海外との比較・国内での比較
3 アレルギー診療におけるEBM 二村 昌樹
A EBMとは?
B エビデンスに基づいたアレルギー疾患の診療
第Ⅲ章 社会的対応
1 アレルギー疾患対策基本法に基づく社会制度 福家 辰樹
A 対策基本法と基本指針
B 拠点病院と医療の均てん化
C 情報発信
2 標準治療と医療制度 福家 辰樹
A 標準的な医療の推進
B 医療費助成制度
C 指導料・管理料
3 子どもに関する社会資源 林 奈津子
A 発達障害のあるアレルギー疾患児への対応
B 公的制度,患者会,保護者のサポート
C 虐待への対応
4 学校・園における生活支援 林 奈津子
A 学校・保育所の対応ガイドライン
B 学校・教育委員会等との地域連携
5 災害に備えた対策 村里 智子
A 災害対応の基本理念
B アレルギーにおける「自助・共助・公助」の特徴と各々が果たす役割
C 災害に関する情報の入手
D 被災者への支援活動
第Ⅳ章 気管支喘息
1 病態生理 手塚 純一郎
A 呼吸器の構造と機能
B 喘息の定義,病態生理,診断,鑑別診断
C 合併症
2 病態評価のための検査法 手塚 純一郎
A スパイロメトリー
B 気道可逆性試験
C 気道過敏性試験(標準法,運動負荷試験)
D FeNO(呼気一酸化窒素濃度)
E アレルゲンの検索
3 危険因子とその対策(運動を含める) 手塚 純一郎
A 発症にかかわる危険因子
B 発症・増悪にかかわる危険因子とその対策
4 コントロール状態の評価と長期管理 宮本 学
A 長期管理の目標と重症度評価
B コントロール状態の評価
C 薬物療法(生物学的製剤を含む)
5 急性増悪(発作)への対応 宮本 学
A 急性増悪(発作)時の症状と重症度判定
B 家庭での対応
C 医療機関での対応
D 急性増悪(発作)時の薬物療法
6 年代別の特記事項 宮本 学
A 乳幼児期の喘鳴性疾患
B 思春期・青年期喘息
C 成人喘息(内科からのメッセージ) 岩永 賢司
7 患者教育 盛光 涼子
A 病態生理の説明
B 喘息治療についての説明
C 吸入指導 上荷 裕広
D 急性増悪(発作)への対応
E セルフモニタリング
F 危険因子の対策
8 行動医学的アプローチ 上荷 裕広
A 短期目標の設定
B 長期管理に向けたアドヒアランスの形成
C 発達段階に応じた指導内容
第Ⅴ章 アトピー性皮膚炎
1 定義・病態生理 川口 明日香,成田 雅美
A 皮膚の構造と機能
B 定義
C 病態
D 診断基準
E 症状
F 合併症
G 鑑別疾患
2 症状の重症度判定と検査 川口 明日香,成田 雅美
A 重症度評価
B 検査
3 治療Ⅰ:薬物療法・スキンケア 岡藤 郁夫
A 治療の目標と方法
B 薬物療法
C スキンケア
4 治療Ⅱ:悪化因子対策 岡藤 郁夫
A 悪化因子の検索と対策
B 難治患者への対応
5 患者教育 舟木 由乙世
A 病態生理の説明
B 薬物療法の説明
C スキンケア
D 悪化因子の対策
E 日常生活の指標
F 患者教育の流れ
6 行動医学的アプローチ 舟木 由乙世
A ノンアドヒアランスとなる要因
B アドヒアランスの向上と維持を目指した対策
C 治療の中断を起こさないために
7 皮膚科医からのメッセージ 矢上 晶子
A 成人に移行する患者
B 成人のアトピー性皮膚炎の治療
第Ⅵ章 食物アレルギー
1 基本的な知識 今井 孝成
A 定義,分類
B 疫学
C 発症機序(リスク因子と予防含む)
D 即時型食物アレルギー誘発症状・重症度分類・対症療法
2 原因食物の診断 平口 雪子
A 診断の流れ
B 病歴の把握
C 血液検査
D 皮膚プリックテスト
3 食物経口負荷試験と経口免疫療法 平口 雪子
A 食物経口負荷試験
B 経口免疫療法
4 典型的なIgE依存性食物アレルギー 近藤 康人
A 食物アレルゲン総論
B 鶏卵,牛乳,小麦
C 落花生(ピーナッツ),大豆,木の実類,ゴマ
D 甲殻類,軟体類,貝類
E 魚類,魚卵類
5 特殊な病態による食物アレルギー 近藤 康人
A 果物,野菜(OAS,PFASを含む)
B 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)
C その他の食物アレルギーまたは類似疾患
D 消化管アレルギー
6 安全な食生活の確保 上野 佳代子
A アレルギー表示
B 日常生活における誤食事故の防止
C 園・学校での食物アレルギー対応など
D 災害への備え
7 栄養・食生活の評価と対応 仲 佳代
A 身体発育・栄養状態の評価
B 栄養素摂取量の評価方法
C 必要な栄養素を代替する食事指導
D 食事の幅を広げる栄養食事指導
E 食物経口負荷試験の結果を踏まえた食事指導
8 QOL向上を目指した生活指導と移行支援 野間 智子
A 離乳食の進め方
B 幼児期の生活指導
C 学童期の生活指導
D 思春期の生活指導
E メンタルケア
F 食物アレルギー患者の成人移行
第Ⅶ章 アナフィラキシー
1 病態生理と症状 赤司 賢一
A アナフィラキシーの定義と症状
B 原因物質(薬剤,ラテックス,ハチ含む)
C リスク因子
2 治 療 赤司 賢一
A 誘発症状への対応
B 医療機関での治療
3 患者や家族への指導のポイント 山野 織江
A アドレナリン自己注射薬(エピペンⓇ)指導
B 症状の評価と対応
C 救急要請のしかた
D 発達段階を考慮した患者教育
4 学校や保育施設の教職員への指導のポイント 山野 織江
A 教職員が知っておくべき知識と事前の準備
B ロールプレイ
第Ⅷ章 その他のアレルギー疾患
1 アレルギー性鼻炎 増田 佐和子
A 定義と疾患概念
B 分類と診断
C 治療(アレルゲン免疫療法を除く)
D 舌下免疫療法の実際
2 アレルギー性結膜疾患 庄司 純
A 定義,分類
B 特徴
C 症状
D 予防,セルフケア
E 治療
F 合併眼疾患
3 その他のアレルギー関連疾患 長尾 みづほ
A 蕁麻疹
B アレルギー性接触皮膚炎
C 薬剤アレルギー(ワクチン含む)
索 引
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序文
改訂第4版 刊行によせて
小児アレルギーエデュケーター(pediatric allergy educator:PAE)制度は一般社団法人 日本小児臨床アレルギー学会が2009年に発足させた制度です.そして2013年に本テキスト初版を発刊しました.本テキストはメディカルパートナーが小児アレルギー疾患を系統的に学び,患者教育の理論や考え方を学ぶものとして画期的なものでした.すでに2回の改訂を行い,おもに治療,管理の進歩を反映させるよう努めております.さらに近年の進歩は著しく,治療面では生物学的製剤やアレルギー性鼻炎では根治も期待できる免疫療法が広がりつつあります.病状評価としては喘息における呼気中一酸化窒素濃度測定の普及や,アトピー性皮膚炎でのTARC(thymus and activation-regulated chemokine)があげられます.改訂の2つ目の理由として疫学面での大きな変化があげられます.アレルギー性鼻炎の有病率の増加や食物アレルギーでの原因食物の変化がそれにあたります.これもPAEは知っておかねばならない内容です.
治療・管理の進歩と同時に患者教育,患者支援もますます重視されています.アトピー性皮膚炎の診断治療アルゴリズムでは,薬物による“寛解導入療法”の前に“疾患と治療の目標(ゴール)の説明”と“薬物療法やスキンケアに関する具体的な説明,適正治療のための患者教育”を位置付けています.小児気管支喘息治療・管理ガイドラインでは移行期の患者への指導まで言及されました.食物アレルギーにおける管理栄養士の栄養指導はいうまでもありません.十分な治療効果を得るためには患者・家族の能動的な治療行動が必須です.そのために医療者が適切な医療を提供することは当然ですが,患者・家族が疾患や治療の必要性を理解し適切な薬物治療を実施できるような教育,支援が必要です.
このような背景から今回はテキストの構成を大きく変更し,改訂第3版までは「基礎篇」「実践篇」の2分冊だったものを1冊に統合しました.具体的にはPAEにとって最も重要な患者教育を冒頭に配置し,さらに近年特に重視される患者の自己決定権についても解説を加えました.患者・医療者間の良好なコミュニケーション,能動的な治療行動に結び付けるスキルは現代の医療では必要不可欠なものです.本書が皆様にとってアレルギー疾患指導のバイブルとなることを確信しております.
最後になりましたが,今回新たにアレルギー性鼻炎は国立病院機構 三重病院耳鼻咽喉科の増田佐和子先生に,アレルギー性結膜疾患は日本大学医学部視覚科学系眼科学分野の庄司 純先生にご執筆をいただきました.また,近畿大学病院総合医学教育研修センターの岩永賢司先生には引き続き執筆をいただいております.ご協力に厚く御礼申し上げます.
2023年3月
一般社団法人 日本小児臨床アレルギー学会
理事長 亀田 誠
改訂第4版 はじめに
小児アレルギーエデュケーター(pediatric allergy educator:PAE)制度は2022年度で第13期に至り,全国で約700人のPAEが活躍しています.2020年度からは新型コロナウイルスの影響もあり,一部オンラインを含む認定制度を取り入れてきました.これは,全国各地にPAE認定者を増やし,アレルギー疾患医療の均てん化に寄与する一つのチャンスにもなりました.
こうした流れも含めて,制度委員会においてPAE認定制度の合理化を目指す改革が検討され,2023年度(第14期)から新たな認定制度が実施されることになりました.新制度では,オンライン基礎講習からPAE受験講習会,筆記試験,レポート審査といったシンプルな流れを作って,受験しやすさを追求しました.さらに,認定したPAEのレベルは落とさずに合格率を向上させるべく,オンライン基礎講習とこのテキストを密接に関連づけて学習すべき内容を明確にし,それを筆記試験の出題範囲とも一致させることとしました.
新制度では,従来は筆記試験後に行われていた「患者教育の基本」まで受験講習会に含むため,試験の出題範囲となります.また,生物学的製剤をはじめとする新規治療薬や舌下免疫療法などがアレルギー診療の現場に次々と登場し,アレルギー疾患の治療内容も大きく進歩しています.これらの最新情報を含めて,筆記試験そのものは決して易しくなるわけではありませんが,オンライン基礎講習を視聴しながらこのテキストをしっかり読み込めば,きっと合格点が取れる仕組みになっています.
PAEには,アレルギー疾患に関する知識はもちろん,患者・家族に正しい治療行為を実践してもらうために,患者教育の理論を知って応用できることが期待されます.また,その活動範囲は「小児科」の医療に留まらず,アレルギー疾患をもつすべての「子ども」(皮膚科,耳鼻咽喉科,眼科などを含む)に対する医療,さらには成人のアレルギー疾患患者にも広がっていきます.医療の枠組みから出て,社会的な啓発活動や教育現場で活躍するPAEも少なくありません.そうした観点から,本テキストは「患者教育総論」という章で始まります.また,各章の随所に,単なる知識に留まらず,執筆者の患者指導に対する熱い想いや,指導を成功に導くヒントが込められています.それらを汲み取って,PAEの資格取得に向けて,あるいはPAE活動を進めるなかで立ち返るべき原点として,本テキストが皆様のお役に立つことを願っています.
本テキストは,現在学会やPAE制度を牽引している多くの医師とPAEが執筆しました.また,成人も含めたアレルギー疾患の情報として,内科・皮膚科・耳鼻咽喉科・眼科の各エキスパートの先生方にもご執筆をいただいています.極めて充実した解説をご執筆いただいた諸先生に,厚く御礼申し上げます.
2023年3月
一般社団法人 日本小児臨床アレルギー学会
制度委員長 伊藤浩明